Artist: Lil Wayne
Album: Tha Carter II
Song Title: On Tha Block #1 - Skit
概要
本作は、2005年の名盤『Tha Carter II』に収録されたスキット(語り)である。マイアミのサウスビーチでの実体験を元に、当時まだシーンに根強かった「南部(サウス)のラッパーはリリシズム(作詞能力)に欠ける」という偏見に対するリル・ウェインの痛烈な反論が展開されている。素人からのフリースタイル・バトルの挑発を「それでいくら稼げるんだ?」と一蹴する姿には、無償のバトルなどする次元にないトップスターとしての矜持が窺える。南部の出自を理由に自らのラップスキルを過小評価するヘイターどもに対し、「俺には敵わない」と絶対的な自信を見せつける本作は、彼が「生きている中で最高のラッパー(Best Rapper Alive)」へと覚醒するアルバムのテーマを強烈に裏付けている。
和訳
[Skit]
Ayy, man
エイ、なあ。
I'm, I'm walkin' on South Beach the other day, right?
こないだ、マイアミのサウスビーチを歩いてたんだよ。
You know, the Memorial Day weekend shit thing
ほら、あのメモリアルデー・ウィークエンドの時さ。
※「Memorial Day weekend(戦没将兵追悼記念日の週末)」は、毎年5月末の連休。マイアミのサウスビーチでは「アーバン・ビーチ・ウィーク」と呼ばれ、全米からヒップホップ・ファンや黒人層が集結する巨大なパーティー期間となる。ウェインも当然その喧騒の中にいたことを示している。
Yeah, so they got a nigga come up to me with a video camera, right?
で、ある野郎がビデオカメラを持って俺のところに近づいてきたんだ。
And you know motherfuckers come up to me with cameras every day, so I don't be trippin'
カメラを持ったクソ野郎どもが毎日寄ってくるのはいつものことだから、別に俺もいちいち気にしてなかった(トリップしてなかった)。
All day, every day, you know what I mean?
毎日、四六時中だからな、言ってること分かるだろ?
So, but guess what this nigga asked me?
だけど、その野郎が俺に何て聞いたと思う?
"Yo, can I battle you on camera?"
「ヨォ、カメラの前で俺とラップバトルしてくれないか?」だってよ。
I was like, "Dawg, how much we gon' make for this?"
だから俺は言ってやったんだ。「なあ、これをして俺たちにいくら金が入るってんだ?」ってな。
※ストリートの無名ラッパーにとってフリースタイル・バトルは名声を得る手段だが、すでにマルチプラチナ・アーティストであるウェインにとって、無償のバトルに応じる義理はない。彼の関心が「名誉」から「ビジネス(金)」へと完全に移行しているトップスターとしてのリアリズムを表している。
You, you really think, yo
お前、お前らマジで本気で思ってんのか、ヨォ。
Yo, for all you niggas thinkin' y'all can see me
ヨォ、俺と対等にやり合える(シー・ミー)と勘違いしてる野郎ども全員に言ってやるよ。
※「See me」は「(レベルが同じだから)姿を捉えることができる」、つまり「ラップのスキルで対等に渡り合える」という意味のヒップホップ・スラング。
And think it's really a game 'cause I'm from the South or I don't really be boastin' and braggin' 'bout that flowin' shit
俺がサウス(南部)出身だからって、遊び半分だと思ってるんだろ。俺が自分のラップスキル(フロウ)について、わざわざ大口を叩いたり自慢したりしないからってな。
※2000年代中盤のヒップホップ・シーンにおける非常に重要な文脈。当時、複雑なライムやリリシズムは東海岸(NY)の特権とされ、南部(サウス)のラップは「クラブ向けのバウンス・ミュージックばかりで、リリックは単調で浅い」という強い偏見が存在した。ウェインはこの偏見に対し、沈黙していただけで自分のスキルはNYのトップ層をも凌駕しているという強烈なアンチテーゼを提示している。
Dawg, I got this shit, dawg
なあ、俺はこのゲームを完全に掌握してるんだよ、ブラザー。
You niggas think you could fuck with me?
お前らみたいな奴らが、この俺の相手になると思ってんのか?
