Artist: Lil Wayne (feat. D. Smith)
Album: Tha Carter III
Song Title: Shoot Me Down
概要
メガヒットアルバム『Tha Carter III』(2008年)に収録された、王者の孤独と絶対的な自己確信を描くメランコリックで重厚なトラックである。客演とプロデュースを務めたD. Smithによる、ピアノと力強いドラムが主導するロック/ソウル調のビートに乗せ、Wayneは自身を頂点から引きずり下ろそうとするヘイターたちの圧力(Shoot me down)を悠然と見下ろしている。「アルカトラズ刑務所の鉄格子(Bars)」に例えた強固なライミングや、FBI等の連邦機関を無視しストリートの掟のみを重んじる姿勢、そして最終的に「自分の最大の敵(目標)は鏡の中の自分自身である」という哲学的な帰結に至るまで、スターダムの頂点に立つ者の達観と狂気が、精緻なメタファーとワードプレイの連鎖によって見事に表現されたマスターピースである。
和訳
[Intro: Lil Wayne]
Open up your hearts, people
みんな、心を開いてくれ
Page one, chapter one, verse motherfucking one
1ページ目、第1章、クソ最高な最初のヴァースだ
※聖書や叙事詩の始まりを宣言するかのように、自らのラップが歴史的な教典であることを示唆している。
Yeah, uh-huh
イェー、アハ
I'm drinkin' hot tea, bitch
俺はホットティーを飲んでるんだ、ビッチ
※これほど張り詰めた空気感の中でも、優雅に温かい紅茶を飲んでリラックスしているという、頂点に立つ者の不気味なほどの余裕の表れ。
Feel me
俺を感じろ
[Verse 1: Lil Wayne]
Yeah, now if you let me, you won't regret me
ああ、俺の好きにさせてくれれば、後悔はさせねぇよ
Shit, if you let me, you won't forget me
クソ、俺の好きにさせてくれれば、俺を忘れられなくなるぜ
Remember? And if you don't, then ponder
覚えてるか? 忘れたって言うなら、よく考えてみな
Hold up, bow, bow, there's a reminder
待てよ、バウ、バウ(銃声)、これで思い出せるだろ
※相手が自分の恐ろしさを忘れたと言うなら、直接銃弾(または強烈なパンチライン)を撃ち込んで「思い出させる(Reminder)」というストリートの暴力的なジョーク。
I ain't kinda hot, I'm sauna
俺はちょっと熱い(ホット)なんてレベルじゃねぇ、サウナそのものだ
I sweat money and the bank is my shower
俺は金を汗として流し、銀行が俺のシャワーさ
Haha, and that pistol is my towel
ハハ、そしてあのピストルが俺のタオルなんだ
Haha, so stop sweatin' me, coward
ハハ、だから俺にまとわりつく(スウェッティン)のはやめな、臆病者ども
※「Hot (熱い)」「Sauna (サウナ)」「Sweat (汗)」「Shower (シャワー)」「Towel (タオル)」というサウナ関連の単語を羅列する天才的な連想ゲーム。「Sweatin' me」はスラングで「人にプレッシャーをかける、しつこく付きまとってイライラさせる」という意味。タオル(銃)でその汗(ヘイター)を拭き取る(始末する)という完璧なメタファー。
And I would die for ours
俺は仲間たちのためなら死ねる
Ride for hours, supply the flowers
何時間でも車を走らせて、花を供給してやるよ
※「Ride」は敵対組織へのドライブバイ・シューティング(報復の銃撃)に向かうこと。「Supply the flowers(花を供給する)」は、殺した敵の葬式に供花を送る(=敵を確実に死体にする)というマフィア的な表現。
This is history in the making
これは歴史が作られている瞬間だ
Now shut the fuck up and let me make it
だから黙って、俺に歴史を作らせろ
[Chorus: D. Smith & Lil Wayne]
Please don't shoot me down 'cause I'm flyin'
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ、俺は空を飛んでるんだ
I'm flyin', I'm higher
飛んでるんだ、もっと高く
Please don't shoot me down
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ
'Cause I'm flyin', I'm higher
だって俺は飛んでるんだ、もっと高みへ
I swear this tea is at a real good temperature right now
マジで、この紅茶は今、最高の温度(適温)だぜ
So am I, yeah, yeah
俺自身の「熱(バイブス)」もな、ああ
[Verse 2: Lil Wayne]
I spit Alcatraz bars, I know
俺はアルカトラズの「小節(バーズ)」を吐き出す、分かってるぜ
※「Bars」には「ラップの小節」と「刑務所の鉄格子」のダブルミーニングがある。かつて脱獄不可能と言われたアルカトラズ刑務所の鉄格子のように、誰も逃れることのできない強固で完璧なライミング・スキルを持っていることの証明。
And D-boys is the only Alphabet Boys I know
そして「Dボーイズ」が、俺の知る唯一の「アルファベット・ボーイズ」さ
※「Alphabet Boys」とは、FBI、CIA、DEA(麻薬取締局)、ATFなど、アルファベットの略称で呼ばれるアメリカの連邦捜査機関の蔑称。「俺はサツ(連邦機関)のことなんか知らねぇし認めねぇ、俺がリスペクトするのはD-boys(Dope boys=麻薬の売人たち)だけだ」というストリートの強烈なアティテュード。
Got a .380 on my waist and Rambo back home
腰には380口径の銃、家には「ランボー」を置いてるぜ
※「Rambo」は映画『ランボー』の主人公が使うような、AK-47などの巨大で破壊力のある自動小銃(アサルトライフル)のスラング。外出時用と自宅防衛用の武器を使い分けている。
No more bandana 'round my dome, bandana in my right pocket
頭(ドーム)にバンダナを巻くのはもうやめた、バンダナは右のポケットに入れてるんだ
※Wayneが所属するストリートギャング「Bloods(ブラッズ)」のシンボルである赤いバンダナ。若い頃のように頭に巻いて派手に誇示する子供っぽいギャング・スタイルは卒業し、今は右の後ろポケットにひっそりと垂らす(フラギングと呼ばれるギャングのシグナル)大人のスタイルに成熟したことを示している。
Bitch, I'm grown, fuck what you on
ビッチ、俺は大人になったんだ、お前らが何をしてようが知ったこっちゃねぇ
Now, watch me stand on the world as I sit in a throne
今、俺が玉座に座りながら、この世界の上に立つのを見てな
And if I jump, I'ma fly and look into the eagle's eye
もし俺がジャンプすれば、そのまま空を飛んで、ワシの目を覗き込めるぜ
And see, I am nothin' like you, why?
ほらな、俺はお前らとは全く違う存在だ、なぜか分かるか?
Bitch, see, it gets me how nothin' gets me or get to me
ビッチ、いいか、「何事も俺を捉えられないし、俺の心にダメージを与えられない(get to me)」って事実が、唯一俺を「苛立たせる(gets me)」のさ
※「Get to someone(人に影響を与える、動揺させる)」というイディオムを用いた言葉遊び。自分が無敵すぎて誰も自分を脅かすことができないという現状に、むしろ退屈さや苛立ちすら覚えているという絶対的王者の孤独。
And if you shootin' for the stars, then just shoot me
もしお前らが「星を撃とう(高い目標を狙おう)」としてるなら、ただ俺を撃てばいい
※「Shooting for the stars(星を目指す=大志を抱く)」という一般的な慣用句と、ラップ界の「大スター(Star)」である自分を「銃で撃つ(Shoot)」ことを掛けている。
But your bullets don't reach Mars
だがお前らの弾丸は、火星(マーズ)には届かねぇよ
※Wayneの定番のペルソナである「俺は火星人(エイリアン)だから、地球人のお前らとは次元が違う」という主張。地上から空(スター)に向かって撃っても、遥か彼方の宇宙にいる自分には傷一つつけられない。
Paws, claws because I'm a beast, I'm a dog
肉球(ポウズ)に、鋭い爪(クロウズ)、なぜなら俺は野獣で、狂犬だからな
I'll get you, my picture should be in the dictionary
お前を仕留めてやる、俺の写真は辞書に載るべきだ
Next to the definition of definition
「定義(デフィニション)」という言葉の定義の隣にな
※「俺こそがすべてを定義する存在(ヒップホップそのものの基準)である」という自己神格化の極致。
Because repetition is the father of learnin'
なぜなら、「反復は学習の父」だからだ
※ラテン語の古い格言「Repetitio est mater studiorum(反復は学習の母である)」の引用・改変。ヘイターたちが自分を引きずり下ろそうと何度も攻撃してくることが、結果的に自分をさらに学習させ、強くしているという解釈。
And son, I know your barrel burnin', but
なあ息子よ、お前の銃身(バレル)が焼け付いてるのは分かってるぜ、だがな
※前行の「反復」を受けて。俺を落とそうと何度も何度も弾を撃ち続け、銃身が熱で焼け付くほど必死になっているのは分かっているが、それでも無駄だという哀れみ。
[Chorus: D. Smith & Lil Wayne]
Please don't shoot me down 'cause I'm flyin'
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ、俺は空を飛んでるんだ
I'm flyin', I'm higher
飛んでるんだ、もっと高く
Please don't shoot me down
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ
'Cause I'm flyin', I'm higher
だって俺は飛んでるんだ、もっと高みへ
Ayy, talk to my daddy
エイ、俺の親父に話してくれ
[Verse 3: Lil Wayne]
Papa, I did it to 'em, I'm a bastard
パパ、俺は奴らにやってやったぜ、俺はろくでなしの私生児(バスタード)だ
※「Papa」は、彼を実の息子のように育て上げたCash Money Recordsのボス、Birdman(Baby)のこと。または、彼をストリートで育てた亡き義父Rabbitへのメッセージ。
And I'ma do it again, like, nigga, backwards
そして俺はもう一度やってやるよ、「逆再生(バックワーズ)」みたいにな
※「Backwards」という言葉を次行の伏線として置いている。
These niggas backwards, but they behind us
こいつらは「後退(バックワーズ)」してるが、俺たちの「後ろ(ビハインド)」にいるんだ
※自分たちは前に進んでいるが、ヘイターたちは時代遅れで退化(Backwards)しており、常に自分の後ろ(Behind)で背中を追っているだけだという皮肉。
Now, watch me get high, like, time's up
さあ、俺がハイになる(高く飛ぶ)のを見てな、「時間切れ」みたいにな
Nah, D., bring the drums back
いや、D(D. Smith)、ドラムを戻してくれ
※プロデューサーのD. Smithに対するメタ的な指示。ここでビートから消えていた力強いドラムが再び鳴り響く。
And watch me hit 'em where they lungs at, like that
そして俺が、奴らの「肺」がある場所を撃ち抜くのを見てな、こんな風に
※肺(呼吸器)を潰して、二度とラップ(息)ができないように息の根を止めるという残酷な比喩。
I get respect 'cause if I don't, I'ma take it
俺はリスペクトを得る、もし奴らが示さないなら、力ずくで奪い取るからな
I see your boys hatin', and I see your girls naked
お前らのダチがヘイトしてるのが見えるし、お前らの女たちが(俺のベッドで)全裸になってるのも見えるぜ
Drum sound like a naked gun, switch clips with my thumb
ドラムの音が「裸の銃(ネイキッド・ガン)」みたいに鳴り響く、親指で弾倉(クリップ)を切り替える
※前行の「Naked(全裸)」から、コメディ映画『裸の銃を持つ男(The Naked Gun)』へと言葉を繋ぎ、音楽の「ドラム(打楽器)」と、銃の「ドラムマガジン(円筒形弾倉)」を掛けている。
Then, I pop another clip in and aim at his vision
そして、別のクリップ(弾倉)を装填し、奴の「視界(ビジョン)」に狙いを定める
'Cause Wayne is his vision, 'cause Wayne is the mission
なぜなら「ウェイン」こそが奴のビジョン(目標)であり、「ウェイン」こそが奴のミッション(使命)だからだ
I'm aimin' at a mirror
俺は、鏡に向かって銃の狙いを定めてるんだ
※RedditやGeniusで最も深く考察される本作のハイライト。前行までの「奴(His)」とは、実は他のラッパーではなく「Wayne自身」のことであった。自分を追い詰め、自分のビジョンを持ち、自分の使命を果たそうとする最大の敵(あるいはライバル)は、鏡の中に映る自分自身しかいないという、ラップゲームを完全に制覇した王者の究極の孤独と哲学。
[Chorus: D. Smith & Lil Wayne]
Please don't shoot me down 'cause I'm flyin'
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ、俺は空を飛んでるんだ
I'm flyin', I'm higher
飛んでるんだ、もっと高く
And I've done it before
俺は以前にもこれをやり遂げた
Please don't make me do it no more
お願いだから、これ以上俺にやらせないでくれ
Please don't shoot me down
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ
'Cause I'm flyin', I'm higher
だって俺は飛んでるんだ、もっと高みへ
Watch me soar
俺が舞い上がるのを見てな
Where the fuck is my guitar? Now roar (Ooh)
俺のギターはどこだ? さあ、吼えろ(オー)
※アウトロに向かってロック調のギターサウンドが泣くように響き渡り、頂点に立つ男のエモーショナルな叫びを代弁する。
Please don't shoot me down 'cause I'm flyin'
お願いだから、俺を撃ち落とさないでくれ、俺は空を飛んでるんだ
I'm flyin', I'm higher
飛んでるんだ、もっと高く
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