Artist: Lil Wayne
Album: Tha Carter II
Song Title: Hit Em Up
概要
2005年リリースの名盤『Tha Carter II』に収録された本作は、Doe Boyzがプロデュースを手掛けた、南部バウンスのテイストを残しつつも重厚で攻撃的なストリート・バンガーである。タイトルの「Hit Em Up」は、2PacがThe Notorious B.I.G.に向けて放ったヒップホップ史上最も有名なディス曲を想起させるが、Wayneの本作は特定の個人に向けたものではなく、シーンに蔓延する口先だけのヘイター(motormouth)全体に対する無慈悲な警告と処刑宣告となっている。フックで「話し合おうとした(I tried talk to 'em)」と繰り返しつつも、バース内では結局銃火器(チョッパーやウージー)を用いた圧倒的な暴力で相手をねじ伏せるという、ギャングスターとしての冷酷な本性と矛盾がスリリングに描かれている。Wayneの全盛期を予感させる、常軌を逸したライミングとブラックユーモア(言葉遊び)が炸裂する一曲だ。
和訳
[Intro]
Yeah
イェー
I tried talk to 'em
俺は奴らと話し合おうとしたんだがな
[Verse 1]
Quit talkin', I'ma hang you by your tongue, yeah
喋るのをやめな、その舌を引っこ抜いて吊るしてやるぜ
※口先だけのヘイターに対する強烈な警告。言葉(舌)を武器にするラッパーに対し、その舌自体を拘束具(または絞首の縄)に変えて処刑するという物理的なメタファー。
Any motormouth could get hung high
口軽野郎は誰だって高く吊るし上げられるんだ
※「motormouth」はエンジンが回るように絶え間なく喋る(余計なことを言う)奴のこと。
We don't fuck with niggas like fungi, we don't even hear ya
俺たちは菌類みたいな奴らとは絡まねえ、お前らの声なんて聞こえもしないぜ
※「fungi(菌類/カビ)」は暗く湿った場所で繁殖する寄生的な存在。ストリートで他人の名声に寄生して陰口を叩くヘイターを指している。「fun guy(面白い奴)」との同音異義語の言葉遊びでもある。
Hollerin' bullshit, nigga, cut the diarrhea (Get 'em)
クソみたいな戯言を喚き散らしやがって、その口から垂れ流す下痢便を止めろ
※「bullshit(牛の糞)」から「diarrhea(下痢)」への汚物繋がり。口から出まかせ(shit talk)が止まらない状態を、口から下痢が出ていると表現する痛烈な侮辱。
Pistol lie inside of the armrest (Yeah), um, yes
ピストルはアームレストの中に寝かせてある、あぁ、その通りだ
※高級車の運転席における警戒態勢。いつでも引き金を引ける準備ができていることを示す。
Lay a nigga down in his own mess (Yeah), don't mess
口出しした野郎を自分の血とクソまみれにして寝かせてやるよ、だからちょっかい出すな
Player fuck around with the homeless (Yeah), charmless
プレイヤーはホームレスみてえな底辺の奴らとは関わらねえ、魅力のカケラもねえからな
You can leave out here armless, no homies (Go)
ここから腕無しで立ち去るハメになるぜ、仲間もいないままな
※「armless」は文字通り「腕を失う」ことと、「armed(武装した)」の逆で武器を持たない無防備な状態を意味する。「homeless」「charmless」「armless」の秀逸なライミング。
Honest, you niggas is harmless
正直なところ、お前らなんて無害なんだよ
I'm calm as a don is supposed to (Be), Cosa Nostra
俺はドンのように冷静に振る舞う、コーザ・ノストラさ
※「don」はマフィアのボス。「Cosa Nostra(コーザ・ノストラ)」はイタリアのマフィア組織のこと。ストリートのチンピラからマフィアのボスクラスへと自分の格が上がったことを示している。
Don't ever approach him (Nah), don't get close to him (Uh-uh)
奴には絶対に近づくな、距離を詰めようとするな
Shootouts ain't nothin' but rock and roll to him (Damn)
奴にとって銃撃戦なんて、ただのロックンロールに過ぎねえんだ
※銃撃戦の激しい騒音やカオスを、激しいロックンロールの音楽に例えている。Wayneがいかに暴力に慣れきっているかを示す狂気的なラインであり、のちに彼自身がロックアルバム『Rebirth』をリリースすることすら暗示しているかのようだ。
Leave your blood on the dash', call it rosewood (Ugh)
ダッシュボードにお前の血を残してやる、ローズウッドって呼んでやるよ
※「dash」は車のダッシュボード。「rosewood」は高級車の内装に使われる赤茶色の木材。敵の血(赤)が飛び散ったダッシュボードを高級なローズウッド(紫檀)の木目に見立てるという、恐ろしくも詩的で冷酷なメタファー。
'Nother murder, 'nother page out the notebook
また一件の殺人、ノートのページがまた一枚埋まるだけさ
※殺人を日常的な事務作業や、ラップのリリックを書き留めるノートの1ページ程度にしか感じていないサイコパス的な冷徹さ。
It ain't nothing and don't make it if you no good
こんなの大したことじゃねえ、腕がねえなら手出しするな
I tried talk to 'em, but then a nigga had to
俺は奴らと話し合おうとしたんだ、だがどうしてもこうするしかなくてな
[Chorus]
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
※「Hit up」は銃撃すること。2Pacへのオマージュとしての意味合いも強く持つ。
I ain't even wanna hit 'em up, really I was tryna be calm
本当は撃ちたくなんてなかった、マジで冷静になろうとしたんだ
But uh, that chopper rock, put his head in his arms
だがな、このチョッパーが火を吹き、奴の頭を自身の両腕の間に沈めさせた
※「chopper」はアサルトライフル(AK-47など)。銃撃によって相手が前のめりに倒れ伏す様子をリアルに描写している。
And man, I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
なぁ、俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, fuck it, make a nigga get loose
撃ちたくなんてなかった、だがクソ食らえだ、俺のタガを外させやがった
He had too much talk and not enough proof
奴は口先ばかりで、証明するもんが何もなかったんだ
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, hit 'em up
撃ちたくなんてなかった、撃ちたくは
I ain't even wanna hit 'em, but I hit 'em up
撃ちたくなんてなかったが、蜂の巣にしてやった
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em (Yo)
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
[Verse 2]
Take them shoes off your teeth, stop runnin' your mouth
歯からその靴を脱がせな、口を走らせる(喋りすぎる)のはやめろ
※「run your mouth(喋りすぎる、大口を叩く)」という慣用句の「run(走る)」という言葉に対し、「走るなら歯に履いている靴を脱げ」というWayne特有の捻ったシュールなユーモア。
No shoes, no feet, I'll run in your mouth (Huh)
靴も足もいらねえ、俺が直にお前の口に突っ込んでやるよ
※言葉でなく、物理的な暴力(銃口など)を相手の口に押し込むという脅し。
I'll come to your house, me and my goons
俺と仲間でお前の家に乗り込んでやる
Loadin' up bangers, ridin' under the moon (Yeah)
銃に弾を装填し、月明かりの下を車で流すのさ
※「banger」は銃。夜襲(ドライブバイ・シューティング)の情景。
Throwing up fingers, saying, "My side rule" (Yeah)
指でサインを掲げて、「俺たちの縄張りがルールだ」と宣言する
※「Throwing up fingers」はギャングサインを作ること。自身のクルーや地元への忠誠と支配権の誇示。
If a nigga disagree, that's when my side prove (Get 'em), yeah
もし異議を唱える奴がいれば、その時が俺たちが証明する時だ
※実力行使(殺害)によって自分たちの優位性を証明するという事。
That Maybach coupe a cockeyed fool
あのマイバッハのクーペは、斜視のイカれた野郎みたいだぜ
※マイバッハのクーペモデルの独特なヘッドライトの形状や威圧的な外観を「cockeyed(寄り目、斜視、あるいは狂った)」と擬人化している。圧倒的な富のフレックス。
And I'm in it like Bennett, ho, aren't I cool?
俺はベネットみたいにその中にいる、なぁビッチ、俺ってクールだろ?
※「In it like Bennett」は、80年代のR&B/ポップ界でよく使われたフレーズ(歌手のTony Bennettや様々なポップカルチャー由来)とも言われるが、単なる「in it」と韻を踏むためのストリートの定番スラング。
But if the thermostat switch and that needle move (Uh-oh)
だがもしサーモスタットが切り替わり、針が動いたとしたら
※「thermostat」は温度調節器。自分の忍耐の限界(温度)を超え、キレる(針がレッドゾーンに達する)ことの比喩。
Then the attitude switch and that heat'll move
そしたら俺の態度も一変して、この熱(銃)が火を吹くぜ
※「heat」は「熱」と「銃」のダブルミーニング。温度計の針(needle)が動くように、怒りで銃が動き出す。
I got that Chiquita banana clip for the tool
この道具(銃)にはチキータ・バナナのクリップが付いてるんだ
※「banana clip」は湾曲した形状の大容量マガジン(弾倉)。それを世界的に有名なバナナのブランド「Chiquita(チキータ)」にかけている、ヒップホップにおけるバナナクリップの比喩の最高峰の一つとされる名ライン。
Meet a disaster, pity the fool
大惨事に見舞われろ、愚か者を哀れんでやるよ
※「Pity the fool」は80年代のドラマ『特攻野郎Aチーム』のミスター・Tの決め台詞からの引用。
Eat a catastrophe, swallow the truth
破滅を喰らい、真実を飲み込め
Belch reality, how does it taste?
現実をゲップで吐き出せ、どんな味がする?
※前の「Eat」「swallow」から続く食事のメタファー。ヘイターに厳しい現実(死や敗北)を無理やり食わせている。
Powder your face, you a bitch, nigga
顔に粉でも塗っとけ、お前はただのビッチ野郎だ
※女性がメイクで粉(パウダー)をはたく行為にかけて、相手を女々しいと侮辱している。同時に「powder」は火薬(gunpowder)やコカインの意味も含意している。
All pussy, stop comin' out your lips, nigga
女々しい言葉ばかり、その唇から吐き出すのはやめな
I tried talk to 'em, but then a nigga had to
俺は奴らと話し合おうとしたんだ、だがどうしてもこうするしかなくてな
[Chorus]
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, really I was tryna be calm
本当は撃ちたくなんてなかった、マジで冷静になろうとしたんだ
But uh, that chopper rock, put his head in his arms
だがな、このチョッパーが火を吹き、奴の頭を自身の両腕の間に沈めさせた
And man, I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
なぁ、俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, fuck it, make a nigga get loose
撃ちたくなんてなかった、だがクソ食らえだ、俺のタガを外させやがった
He had too much talk and not enough proof
奴は口先ばかりで、証明するもんが何もなかったんだ
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, hit 'em up
撃ちたくなんてなかった、撃ちたくは
I ain't even wanna hit 'em, but I hit 'em up
撃ちたくなんてなかったが、蜂の巣にしてやった
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
[Verse 3]
Real talk, boy, chill with the talk, boy (Yeah)
マジな話だ坊や、喋るのはその辺にしとけ
That Tommy gun'll tear your neighborhood apart, boy (Blatt)
そのトミーガンがお前のフッドを木っ端微塵に引き裂くぞ
※マフィア御用達のトンプソン・サブマシンガン(トミーガン)の破壊力を示唆。
Yeah, leave your feelings in your heart, boy
お前の感情なんて心の中にしまっておけよ
※ストリートでは感情(情けや恐怖)を表に出すことは命取りになるという掟。
You start with the wrong boy, it end with a song, boy (Oh)
お前は間違った相手(俺)に手を出した。その結末はこの歌で終わるんだ
※Wayneという「間違った敵(the wrong boy)」を怒らせた結果、その死(または敗北)がWayneのディス曲(a song)のネタとして消費されて終わるという恐ろしい宣告。
With your friends to carry you along
お前のダチどもが、お前を運んでいくことになる
To a concrete mattress and a fluffy tombstone (Yeah)
コンクリートのマットレスと、ふわふわの墓石の元へな
※通常は「ふわふわのマットレスと冷たい石の墓石」だが、言葉を入れ替えることでストリートの現実の歪みや、死後の世界の冷酷さをシュールに表現している。死体が安置されるコンクリートの冷たさを強調する高度なポエトリー。
Fuck the discussion, I ain't into it, boy
話し合いなんかクソ食らえだ、俺はそんな柄じゃねえよ
※イントロやフックで「話し合おうとした(I tried talk to 'em)」と言っていたが、結局のところWayneの本質は即座に実力行使に出るギャングスターであると告白している。
I just get to it, let's do it, rip through a boy (Bah)
俺はすぐに行動に移す、さあやろうぜ、野郎を切り裂いてやる
Big Uzi, just shoot a boy (Brr)
デカいウージーで、野郎をただ撃ち抜く
※Uzi(イスラエル製の短機関銃)による銃撃のオノマトペ(Brr)が挿入されている。
I'm inside looking out, you just an intruder, boy (Get 'em)
俺は内側から外を見てる、お前はただの侵入者に過ぎねえよ
※Wayneはヒップホップゲーム(またはストリートの頂点)の「内側(支配者側)」に完全に陣取っており、自分に歯向かうヘイターは外からやってきた無力な「侵入者」に過ぎないと見下している。
You need sutures on your smoochers, boy, but
お前のその唇には縫合糸(スーチャー)が必要だな、だが…
※「smoochers」はキスをする唇(またはおしゃべりな口)のふざけた表現。「sutures(縫合)」で韻を踏み、喋りすぎる口を物理的に縫い合わせて黙らせるという強烈なパンチライン。
I tried talk to 'em, but then a nigga had to
俺は奴らと話し合おうとしたんだ、だがどうしてもこうするしかなくてな
[Chorus]
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, really I was tryna be calm
本当は撃ちたくなんてなかった、マジで冷静になろうとしたんだ
But uh, that chopper rock, put his head in his arms
だがな、このチョッパーが火を吹き、奴の頭を自身の両腕の間に沈めさせた
And man, I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
なぁ、俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, fuck it, make a nigga get loose
撃ちたくなんてなかった、だがクソ食らえだ、俺のタガを外させやがった
He had too much talk and not enough proof
奴は口先ばかりで、証明するもんが何もなかったんだ
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
Hit 'em up, hit 'em up
奴らをブチ抜く、蜂の巣にしてやる
I ain't even wanna hit 'em up, hit 'em up
撃ちたくなんてなかった、撃ちたくは
I ain't even wanna hit 'em, but I hit 'em up
撃ちたくなんてなかったが、蜂の巣にしてやった
I tried talk to 'em, I tried talk to 'em
俺は話し合おうとしたんだぜ、警告はしたんだ
