Artist: Radiohead
Album: The Bends (Collector’s Edition)
Song Title: Banana Co.
概要
1993年のシングル『Pop Is Dead』のB面としてアコースティック版が発表され、後にバンドサウンドとして再録音され『The Bends』コレクターズ・エディションなどに収録された本作は、Radioheadのディスコグラフィにおいて最も直接的に反帝国主義・反グローバリズムを掲げた政治的トラックである。タイトルの「Banana Co.」は、20世紀に中南米で苛烈なプランテーションを展開し「バナナ共和国」という言葉の語源となった米国の多国籍企業ユナイテッド・フルーツ・カンパニー(現チキータ・ブランズ)を指す。同時に、ノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスの魔術的リアリズム小説『百年の孤独』における、バナナ会社による労働者虐殺と隠蔽のエピソードが直接的なインスピレーション源となっている。先進国の豊かな生活が、第三世界の隠蔽された搾取と血塗られた労働の上に成り立っているという残酷な現実を、牧歌的なメロディに乗せて冷徹に告発する初期の重要曲である。
和訳
[Verse 1]
Oh, Banana Co
ああ、バナナ・カンパニー。
※「Banana Co.(バナナ会社)」は、中南米諸国の政治経済を支配し、苛烈な労働搾取を行った多国籍企業の隠語である。マルケスの小説『百年の孤独』において、架空の町マコンドに進出し、ストライキを起こした数千人の労働者を機関銃で虐殺した「バナナ会社」のエピソードを下敷きにしている。
We really love you, and we need you
僕らは本当に君を愛しているし、君を必要としている。
※搾取企業の産み出す安価な商品に完全に依存しきっている、先進国の消費者たちの無自覚な共犯関係。帝国主義的な資本主義システムへの皮肉めいた賛歌である。
And oh, Banana Co
そして、ああ、バナナ・カンパニー。
We'd really love to believe you
僕らは君の言葉を、本当に信じたいと思っているんだ。
※企業が掲げる「雇用創出」や「地域発展」といった欺瞞に満ちたプロパガンダ、あるいはグリーンウォッシュに対するシニカルな言及。本当は搾取構造に気付いているにもかかわらず、自らの豊かな生活を手放さないために「嘘を信じたい」と願う大衆の怠惰と自己正当化を突いている。
[Chorus]
But everything's underground
だけど、すべては地下に埋め隠されている。
※『百年の孤独』において、バナナ会社が虐殺した労働者の死体を貨物列車で海へ運び、その存在を歴史から完全に抹消(隠蔽)したエピソードとリンクしている。現代社会における第三世界の過酷な労働環境や環境破壊が、消費者の目に見えない不可視の領域(地下)に隠匿されているというグローバリズムの暗部を指す。
We gotta dig it up somehow
僕らはどうにかして、それを掘り起こさなければならない。
※隠蔽された歴史的真実や、資本主義の犠牲となった無名の労働者たちの死体を白日の下に晒す(dig it up)という、抑圧された者たちへの連帯と告発の意志。
Yeah, yeah
そう、どうにかして。
[Verse 2]
Oh, she said "No go"
ああ、彼女は「行かない」と言った。
※「彼女(She)」は、母なる大地(地球環境)の擬人化、あるいは搾取される現地のコミュニティや正義の象徴と解釈できる。開発という名の破壊を拒絶する声である。
She said she'd like to, she's seen you
彼女は「そうしたいけれど」と言った、君の正体を見てしまったから。
※企業の甘い誘惑や目先の利益供与に乗りたい気持ちはありつつも、彼らがこれまで他国や過去にもたらした血塗られた歴史の真実を目撃してしまったため、もはや騙されることはないという覚醒の描写。
And oh, Banana Co
そして、ああ、バナナ・カンパニー。
She knows if you die then we all do
彼女は分かっているんだ、君が死ねば、僕らも皆死ぬのだと。
※資本主義の恐ろしいパラドックス。多国籍企業(君)を憎み、打倒すべきだと分かっていても、すでに世界経済や人々の生活がそのシステムに完全に組み込まれているため、巨大企業が崩壊すれば社会全体も共倒れになるという絶望的な共依存関係(Too big to fail)を鋭く指摘している。
[Chorus]
And everything's underground
そして、すべては地下に埋め隠されている。
We've gotta dig it up somehow
僕らはどうにかして、それを掘り起こさなければならない。
Yeah, yeah
そう、どうにかして。
[Guitar Solo] [Chorus]
Everything's burning down
すべてが、燃え落ちていく。
※ジョニー・グリーンウッドのノイジーなギターソロを経て、隠されていた真実が暴露されることによるシステムの崩壊、あるいは過剰な搾取と環境破壊が行き着く先にある地球規模のカタストロフィが描写される。
We gotta put it out somehow
僕らはどうにかして、その火を消さなければならない。
※地下から「掘り起こす(dig it up)」段階から、燃え盛る世界を「消火する(put it out)」という、より切迫した生存の危機的状況への移行。手遅れになりつつある世界に対する、悲痛で無力な警告の叫びである。
Yeah, yeah
そう、どうにかして。
