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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Cry - Michael Jackson 【和訳・解説】

Artist: Michael Jackson

Album: Invincible

Song Title: Cry

概要

1991年の「Heal the World」や1995年の「Earth Song」の系譜を継ぐ、アルバム『Invincible』に収録された壮大なアンセムである。R&B界の巨匠R・ケリーによって提供された本作は、同時期に発生したアメリカ同時多発テロ(9.11)の直後にシングルカットされ、悲しみに暮れる世界に対して「共に涙を流すこと」による連帯と癒やしを提示した。特筆すべきは、ニック・ブラントが監督したショートフィルムにマイケル本人が一切出演していない点である。これは当時の所属レーベル(ソニー)との深刻なプロモーション対立が原因であったが、結果として世界中の人々が手を取り合う映像が強調され、「救世主としてのマイケル」ではなく「大衆自身の連帯」という楽曲の真のメッセージが浮き彫りになるという皮肉かつ感動的な歴史的背景を持っている。

和訳

[Verse 1]

Somebody shakes when the wind blows
誰かが風に吹かれて震えている
※「風(wind)」は社会的な困難や冷酷な現実のメタファー。世界中に存在する無名の弱者への視点から静かに幕を開ける。

Somebody's missing a friend, hold on
誰かが友を失い悲しんでいる、どうか持ちこたえてくれ

Somebody's lacking a hero
誰かが英雄(ヒーロー)を求めている
※「ヒーローの不在」。かつて世界を救うスーパーヒーローとして振る舞うことを求められたマイケル自身が、絶対的な救世主が存在しない現代の虚無感を冷徹に見つめている。

And they have not a clue
そして彼らには見当もつかないんだ

When it's all gonna end again
いつになれば、この悲劇がすべて終わるのか

[Verse 2]

Stories buried and untold
葬り去られ、語られなかった物語たち
※「buried(埋められた、葬られた)」という言葉は、前曲「Privacy」などでメディアに真実を歪められた彼自身の経験とも重なる。権力者によって隠蔽された歴史や真実へのプロテストである。

Someone is hiding the truth, hold on
誰かが真実を隠している、どうか持ちこたえてくれ

When will this mystery unfold?
いつになれば、この謎は解き明かされるのだろうか?

And will the sun ever shine
そして、太陽の光が差し込む日は来るのだろうか?

In the blind man's eyes when he cries?
盲目の人が涙を流す時、その両目に
※「盲目の人(blind man)」。物理的な盲目だけでなく、真実を見ようとしない大衆の暗喩。彼らが自らの愚かさに気づき、心からの涙を流した時に初めて真理の光(sun)が差し込むという宗教的な教訓が含まれている。

[Chorus]

You can change the world
君は世界を変えられる

(I can't do it by myself)
(僕一人ではできないんだ)
※マイケルとバックコーラスのコール&レスポンス。「We Are the World」で世界を牽引した王が、ここでは「自分一人では世界を変えられない」という無力感と脆さを率直に吐露している点が、キャリア後期の彼の精神状態を如実に物語っている。

You can touch the sky
君は空にだって手が届く

(Gonna take somebody's help)
(誰かの助けが必要なんだ)

You're the chosen one
君こそが選ばれし者だ

(I'm gonna need some kind of sign)
(僕には何らかの道標が必要なんだ)

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら
※「同時に泣く(cry at the same time)」。武器を取って戦うことや政治的なスローガンを掲げることではなく、世界中の人々が根本的な「悲しみ」を共有し、共感(エンパシー)によって繋がることこそが世界を変える唯一の魔法であるという、究極の平和主義の提唱である。

[Verse 3]

People laugh when they're feeling sad
人は悲しい時に笑い

Someone is takin' a life, hold on
誰かが命を奪っている、どうか持ちこたえてくれ

Respect to believe in your dreams
自分の夢を信じる心に敬意を払おう

Tell me, where were you
教えてくれ、君はどこにいたんだい?

When your children cried last night?
昨夜、君の子供たちが泣いていた時に
※社会の矛盾や戦争(命を奪うこと)を嘆くだけでなく、足元の「自分の子供の涙」に気づけているかという痛烈な問いかけ。マクロな世界平和とミクロな家族愛を直結させるマイケルの哲学が光る。

[Verse 4]

Faces fill with madness, oh
人々の顔は狂気に満ちている、oh

Miracles unheard of, hold on
未だ聞いたこともないような奇跡よ、持ちこたえてくれ

Faith is found in the winds
信仰(信じる心)は風の中に見出される

All we have to do
僕らがすべきことは、ただ一つ

Is to reach for the truth, the truth
真実に、真実に手を伸ばすことなんだ

[Chorus]

You can change the world
君は世界を変えられる

(I can't do it by myself)
(僕一人ではできないんだ)

You can touch the sky
君は空にだって手が届く

(It's gonna take somebody's help)
(誰かの助けが必要なんだ)

You're the chosen one
君こそが選ばれし者だ

(I'm gonna need some kind of sign)
(僕には何らかの道標が必要なんだ)

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら

[Bridge]

And when that flag blows
そしてあの旗が風に翻る時
※「あの旗(that flag)」。特定の国家の国旗ではなく、人類が一つになったことを示す平和と連帯のシンボルとしての旗を指している。

There'll be no more wars
もはや戦争は存在しなくなるだろう

(Ooh, why?)
(Ooh、なぜだろう?)

And when all calls
そしてすべての人が救いを求める時

I will answer all your prayers, yeah, yeah, yeah
僕は君たちのすべての祈りに応えよう、yeah, yeah, yeah
※R・ケリー的なゴスペルの高揚感。マイケルのボーカルが神、あるいは大いなる宇宙の意思と一体化し、人々の祈りを救済へと導く巫女のような役割を果たしている。

[Chorus]

You can change the world
君は世界を変えられる

(I can't do it by myself)
(僕一人ではできないんだ)

You can touch the sky, oh, no
君は空にだって手が届く、oh, no

(Gonna take somebody's help)
(誰かの助けが必要なんだ)

You're the chosen one
君こそが選ばれし者だ

(Come on, I need some kind of sign)
(さあ、僕には何らかの道標が必要なんだ)

If we all cry
もし僕ら全員が涙を流したなら

(Cry with me)
(僕と共に泣いてくれ)

At the same time tonight
今夜、同時にね

You can change the world
君は世界を変えられる

(I can't do it by myself, alright)
(僕一人ではできないんだ、そうさ)

You can touch the sky
君は空にだって手が届く

(Gonna take somebody's help)
(誰かの助けが必要なんだ)

You're the chosen one, whoa
君こそが選ばれし者だ、whoa

(I'm gonna need some kind of sign)
(僕には何らかの道標が必要なんだ)

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら

You can change the world
君は世界を変えられる

(Ooh, ooh, ooh)
(Ooh, ooh, ooh)

You can touch the sky
君は空にだって手が届く

(Gonna take somebody's help)
(誰かの助けが必要なんだ)

You're the chosen one
君こそが選ばれし者だ

(I'm gonna need some kind of sign)
(僕には何らかの道標が必要なんだ)

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら

If we all cry at the same time tonight
もし今夜、僕ら全員が同時に涙を流したなら

[Outro]

Change the world
世界を変えるんだ
※フェイドアウトしていく祈りの声。コーラスで「一人では変えられない」と弱音を吐いていた主人公が、最後に再び「世界を変えるんだ」と自らと大衆の行動を促して終わる、力強い余韻を残している。