UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Seasons - Mozzy, Sjava & REASON 【和訳・解説】

Artist: Mozzy, Sjava & REASON

Album: Black Panther: The Album

Song Title: Seasons

概要

本楽曲は、南アフリカのシンガーSjava、カリフォルニア州サクラメントのハードコア・ラッパーMozzy、そして当時TDE(Top Dawg Entertainment)に新加入したばかりのREASONという、異なる背景を持つ3人のアーティストが交差するポエティックなトラックだ。「季節(Seasons)」が巡るように絶えず繰り返されるゲットーの暴力、貧困、そしてシステムによる人種差別という普遍的な痛みをテーマにしている。Sjavaがズールー語で南アフリカのスラムの過酷さと希望を歌い上げ、MozzyとREASONがアメリカのストリートにおける「現代の奴隷制」や司法システムの不平等を冷徹に描写する。アウトロにおけるKendrick Lamarの「俺はティ・チャラであり、キルモンガーである」という宣言は、アフリカ大陸とアメリカのディアスポラ(離散した黒人)の分断を乗り越え、一つの家族として統合しようとする汎アフリカ主義(パン・アフリカニズム)の究極のメッセージである。

和訳

[Intro]

Seasons change
季節は変わっていく
※季節が巡り時代が変わっても、黒人が直面する社会構造の闇は変わらないという諦念と、それでも変化を信じる祈りが込められている。

There's still time for us to run away
俺たちがここから逃げ出す時間はまだ残されてる

Seasons change
季節は変わっていく

There's still time for us to run away
俺たちがここから逃げ出す時間はまだ残されてる

Seaso—
季節は—

[Verse 1: Sjava]

San'bonan endlini
みなさん、こんにちは
※ここから南アフリカのアーティストSjavaによる、ズールー語(南アフリカの公用語の一つ)のバースが始まる。

USjava kaJama Indlalifa igama ley'nsizwa
俺の名はスジャヴァ・カジャマ・インドラリファ(ジャマの息子スジャヴァ、後継者たる若者)だ

Mina, ng'phuma le enzansi, kwafel ubala
俺は、理由もなく命を落とすようなスラムのどん底からやってきた

Insizwa uma ina-thirty five, kthiwa is' indala
そこじゃ、男は35歳になっただけで「もう歳だ」と言われるんだ
※南アフリカの貧困層における平均寿命の短さと、暴力や病気(HIVなど)によって若くして命を落とす現実。35歳まで生き延びること自体が過酷であることを示している。

Laph' eng'phuma khona maw'phuma khona bathi aw'fiki la
俺の出身地からじゃ、こんな高い場所(成功)には到達できないって言われてきた

Ngyamangala, uma ngi-la
だから、自分が今ここにいることに驚いてるよ

Bebathi ng'yophelel emoyeni
奴らは、俺が空の彼方に消えて(失敗して)いくって言った

Beba right, manje ngiy'nkanyezi
ある意味奴らは正しかったな、今や俺は(空で輝く)星になったんだから
※ズールー語の極めて詩的なワードプレイ。「emoyeni」は「空中に(into thin air)」を意味し、「消え失せる/失敗する」の比喩。しかしSjavaは、空中に向かった結果、消えるのではなく「星(nkanyezi)=スター」になったと返し、ヘイターたちの言葉を逆手に取っている。

Njengoba ngik'tshela ngempilo yami
俺の人生について語りながら

Ng'funa uthathe nayi imfundiso yami (lalela la wena)
この教訓を受け取ってほしいんだ(おい、よく聞けよ)

Ithemba alibulali
「希望」は人を殺さない

Ukube l'yabulala ngabe nihamba phez'kwami
もし希望が人を殺すなら、お前らはとっくに俺の墓の上を歩いてるはずさ
※希望を持つことの虚しさに押し潰されそうになりながらも、決して絶望しなかったからこそ今の自分があるという、アフリカの力強いエンパワーメント。

[Chorus: Sjava]

(Seasons)
(季節は巡る)

Poverty, jealousy, negativity
貧困、嫉妬、ネガティブな感情

Ngith' ak'nandawo la
ここにはお前らの居場所はない

Go away (far away)
消え失せろ(遠くへな)

(Seasons)
(季節は巡る)

Poverty, jealousy, negativity
貧困、嫉妬、ネガティブな感情

Ngith' ak'nandawo la
ここにはお前らの居場所はない

Go away (far away)
消え失せろ(遠くへな)

[Verse 2: Mozzy with Kendrick Lamar]

I cried when lil' bruh died
弟分が死んだ時、俺は泣き崩れた

Got high and watched the sunrise
ハイになって、朝日が昇るのを見つめてた

Wiggle on 'em if it's one time
もしサツ(ワンタイム)が来たら、上手く躱してやる
※「one time」は警察を指すストリートスラング(一度見たら十分、あるいは一度捕まれば終わりという意味から)。

They done hung all of my people
奴らは俺の同胞たちを全員首吊りにしやがった
※アメリカにおける黒人に対するリンチ(私刑)の歴史的トラウマ。ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」に通底する痛み。

I love all of my people
俺は同胞たちみんなを愛してる

I'm in the slums with all of my people
俺は同胞たちと一緒にこのスラムにいるんだ

They tryna tell us that we all equal
奴らは「みんな平等だ」なんて言いやがるが

We get no justice so it ain't peaceful, yeah (seasons)
正義なんて与えられねえ、だから平和なんかじゃねえんだよ、イェー(季節が巡る)
※「No Justice, No Peace(正義なくして平和なし)」というBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動を象徴するスローガンを反映している。

They can bluff you, they can beat you
奴らはお前を騙し、打ちのめすことができる

Paid attorney, we gon' need it
金のかかる私選弁護士、俺たちにはそれが必要になる
※国選弁護人(Public Defender)ではまともな弁護が受けられず有罪にされるため、有能な弁護士を雇う大金が必要になるという司法制度の不平等。

Momma told me there was demons
母ちゃんは「悪魔はいる」って教えてくれた

And she ain't never lied on her Jesus'
そして彼女はジーザスに誓って、一度も嘘はつかなかった
※ゲットーに蔓延する暴力やドラッグという「悪魔」。黒人コミュニティにおける強いキリスト教信仰が背景にある。

She worked her ass off just to feed us
俺たちに飯を食わせるためだけに、死ぬほど働いてくれたんだ

She went to Ross to cop the new Adidas
ロスに行って、新しいアディダスを買ってくれた
※「Ross(Ross Dress for Less)」はアメリカのアウトレット・ディスカウントストア。貧困家庭の母親が、子供に少しでも良い服(アディダス)を着せるために安売り店に走るという、リアルで切ない描写。

She used to tap in with all the teachers
母ちゃんは先生たち全員とちゃんと連絡を取り合ってた

They wasn't teachin' nothin', it's no secret (seasons)
あいつらが何も教えてなかったなんて、公然の秘密だろ(季節が巡る)
※貧困地域における公教育システムの崩壊。学校が機能しておらず、若者たちがストリートに流れる構造的欠陥を批判している。

Whole lotta crime, lil' niggas beefin'
犯罪だらけ、ガキどもが殺し合ってる

We gotta keep it or end up a victim
チャカを持たなきゃ、被害者で終わっちまう

Trapped in the system, traffickin' drugs
システムに閉じ込められ、ドラッグを密売する

Modern-day slavery, African thugs
現代の奴隷制、アフリカのサグたちさ
※刑務所産業複合体(Prison Industrial Complex)を指す。ドラッグ密売で黒人を大量投獄し、刑務所内で低賃金労働させるアメリカのシステムを「現代の奴隷制」と喝破している。

We go to war for this African blood
俺たちはこのアフリカの血のために戦争に行くんだ
※ワカンダを守るための戦い(映画のストーリー)と、アメリカのストリートで流れる黒人の血の抗争をオーバーラップさせている。

We go to war for this African blood
俺たちはこのアフリカの血のために戦争に行くんだ

When I put niggas on, it was all out of love
俺が仲間を引き上げた時、それは全て愛からだった

You was disloyal, can't call it no love
お前は裏切った、あれは愛なんかじゃ呼べねえよ

[Chorus: Sjava]

Poverty, jealousy, negativity
貧困、嫉妬、ネガティブな感情

Ngith' ak'nandawo la
ここにはお前らの居場所はない

Go away (far away)
消え失せろ(遠くへな)

[Verse 3: REASON]

(Season change) You know we off the stove with it
(季節が変わる) 俺たちがコンロから離れたのは知ってるだろ

We stove whippin', niggas know we gon' get it
コンロでかき混ぜてた、俺たちが必ず手に入れるって皆分かってた
※「stove whippin'」はコンロでコカインを重曹と水で煮詰め、クラック(固形麻薬)を精製するストリートの隠語。そこから足を洗い、ラップで成功を掴むという決意。

(Season change) Dodgin' cops
(季節が変わる) サツの目を掻い潜る

Fuck around and get locked, you ain't never comin' home with it
ヘマしてパクられたら、二度と家に帰れなくなるぜ

Look, my nigga, I came from the sewer
なあマイ・ニガ、俺は下水道(スラム)から這い上がってきたんだ

Don't shit on my past, you ain't come from manure
俺の過去をクソみたいに言うな、お前は肥やし(底辺)の出身じゃねえだろ
※「sewer(下水道)」「shit(クソ)」「manure(肥料・糞)」という排泄物に関連するワードを繋げ、底辺からの成り上がりを強調する巧妙なワードプレイ。

You see Reason and you see LA (seasons)
リーズン(俺)を見れば、LAの現実が見えるはずだ(季節が巡る)

But bitch I ain't come for no ruin
だがなビッチ、俺は破滅するためにここに来たわけじゃねえ

Just know all of my niggas, we struggled for it
分かってくれ、俺の仲間たちはみんな、これのために死に物狂いで苦労したんだ

Had to hustle for it, cried puddles for it
ハッスルしなきゃならなかった、水たまりができるほど涙を流したんだ

My pops watched his sister get locked for it
俺の親父は、自分の妹がこれでパクられるのを見てきた

I done seen my niggas get knocked for it like {gunshot}
俺は仲間たちがこれでブチ込まれる(殺される)のを見てきたぜ、まるで(銃声)

Gimme that, I carry Del Amo like a piggyback
それを寄こせ、俺はデル・アモをおんぶ(背負って)して歩くぜ
※REASONの地元であるカリフォルニア州カーソンの地区「Del Amo(デル・アモ)」。街の期待と重圧を背負ってラップゲームに挑む姿勢。

I carry my city like guilt that ain't got no forgiveness
許されることのない罪悪感みたいに、俺は自分の街を背負ってるんだ
※自分だけがフッドから抜け出し成功したことに対する「サバイバーズ・ギルト(生き残った者の罪悪感)」。

No way out, shit we locked in the system
出口はねえ、クソ、俺たちはシステムに閉じ込められてる

Catch a case and they not gon' forgive ya
事件を起こせば、奴らはお前を絶対に許しちゃくれない

White skin, you be out before Christmas
白人の肌なら、クリスマス前にはシャバに出られるのにな
※アメリカの司法における「制度的レイシズム(Institutional Racism)」への痛烈な批判。同じ罪を犯しても、白人は保釈や減刑でクリスマスを家で過ごせるが、黒人は重刑を科されるという現実。

Shit, auntie missed eight of those days
クソ、叔母さんはその(クリスマスの)日々を8回も逃したんだ
※前述の「親父の妹」が、刑務所で8年間の刑期を務めた(8回のクリスマスを家族と過ごせなかった)という具体的な悲劇の描写。

Tears from me, had to pray those days
俺からは涙がこぼれ、祈らざるを得ない日々だった

Had to slave those days
奴隷みたいに働くしかなかった日々

Shit, we had to hit up a couple hood giveaways those days
クソ、あの頃はフッドの無料配給所をいくつも回らなきゃならなかった
※「giveaways」は教会やコミュニティが行う食料や衣服の無料配給。極貧生活の生々しい記憶。

Thank God for every inch that he gave us
神が与えてくれたすべての少しの恩恵に感謝する

Thank God for everything 'cause he made us (seasons)
神が俺たちを創ってくれたんだ、全てに感謝するぜ(季節が巡る)

Like when that car bent the block, blat blat
あの車がブロックを曲がってきて、ブラッ、ブラッ(と撃ち込んできた時みたいに)
※ドライブバイ・シューティング(車からの通り魔的銃撃)の描写。

Hit the homie but we made it to ER and he saved us
ダチに当たったが、なんとかER(救急救命室)に辿り着き、神が救ってくれたんだ

Thinkin' that he could've died, nigga
アイツは死んでたかもしれねえんだぜ、ニガ

We was prayin' to the sky and his momma cried rivers
俺たちは空に祈り、アイツの母ちゃんは川ができるほど泣き叫んだ

Healed up, but tough luck, he tried to get revenge
怪我は治ったが、不運なことに、アイツは復讐しようとしたんだ

Had to drop, bullets popped and they killed him
倒れなきゃならなかった、銃弾が放たれ、奴らはアイツを殺しちまった

Worst part is that it sound so familiar
一番最悪なのは、この話が「よくある話」に聞こえちまうってことだ
※復讐が復讐を生み、最終的に命を落とす。ゲットーではこの悲劇が「ありふれた日常(so familiar)」として消費されてしまうことへの強烈な虚無感と問題提起。映画におけるキルモンガーの復讐劇の末路とも完璧にリンクしている。

[Outro: Kendrick Lamar]

I am T'Challa, I am Killmonger
俺はティ・チャラだ、俺はキルモンガーだ
※アルバムのエグゼクティブ・プロデューサーであるKendrick Lamarによる、作品全体を総括するアウトロ。伝統を守るアフリカの王(ティ・チャラ)と、抑圧の歴史への怒りから世界を壊そうとするアメリカのスラム出身の戦士(キルモンガー)。Kendrickはこの相反する二つのアイデンティティが、黒人の心の中に同居していることを宣言している。

One world, one God, one family
一つの世界、一つの神、一つの家族
※海を隔てて分断されたアフリカ大陸の人々と、アフリカ系アメリカ人(ディアスポラ)が、映画の結末を超えて「一つの家族」として連帯するパン・アフリカニズムの理想。

Celebration
祝祭だ
※血と痛みの季節(Seasons)を乗り越え、黒人文化と生命を讃える究極のセレブレーションとして楽曲が締めくくられる。