Artist: Dr. Dre
Album: 2001
Song Title: The Watcher
概要
1999年にリリースされた歴史的傑作アルバム『2001』の実質的なオープニングを飾る楽曲である。N.W.A.時代からギャングスタ・ラップの礎を築いてきたDr. Dreが、シーンの「傍観者(The Watcher)」という絶対的な高みから当時のヒップホップ・ゲームを俯瞰する一曲だ。Death Row Records離脱後の沈黙期間を経て、彼はストリートの最前線を離れ、家族を持つ「OG(オリジナル・ギャングスタ)」へと成長した。本作では、作られたイメージや虚勢に呑まれて命を落とす若手への警鐘、自身を「フッドから逃げた」と批判するヘイターへの反論、そして黒人をゲットーに縛り付ける警察や社会システムへの痛烈なメッセージが込められている。なお、Dr. Dreのヴァースは愛弟子であるEminemとRoyce da 5'9"によって書かれた(ゴーストライトされた)と言われており、フックでもEminemとKnoc-turn'alが援護射撃を行っている。西海岸のドンとしてのドレーの圧倒的な存在感と凄みを見せつけるクラシックである。
和訳
[Verse 1: Dr. Dre & Knoc-turn'al]
Things just ain't the same for gangstas
ギャングスタを取り巻く状況は、昔とはすっかり変わっちまった。
Times is changin', young niggas is agin'
時代は変わり、若い連中も年を取っていく。
Becoming OG's in the game and changin'
このゲームのOGになり、人間も変わっていくんだ。
※「OG」はOriginal Gangsterの略。シーンの古参やリスペクトを集める大御所を指す。
To make way for these new names and faces
新しい名前や顔ぶれに道を譲るためにな。
But the strangest things can happen from rappin'
だが、ラップ稼業ってのは奇妙なことが起きるもんだ。
When niggas get wrapped up in image and actin'
連中が作られたイメージや演技にのめり込んだ時にな。
※ギャングスタを「演じる」ラッパーたちが、現実と虚構の区別がつかなくなり破滅していくストリートの皮肉を突いている。
Niggas get capped up and wrapped in plastic
銃で撃たれ、死体袋のビニールに包まれるハメになるんだ。
※「capped up」は銃で撃たれること。「wrapped in plastic」は遺体安置所で使われる死体袋を指している。
Zipped up in bags, when it happens, that's it
袋のジッパーを上げられたら、それが起きたら、もうそこでお終いさ。
I've seen 'em come, I've watched them go
俺は奴らが現れては消えていくのを見てきた。
Watched them rise, witnessed it, and watched them blow
奴らがのし上がり、それを目撃し、自滅していくのを見てきたんだ。
※「blow」はここでは成功してブレイクする意味と、銃で吹っ飛ばされる(自滅する)というダブルミーニングである。
Watched them all blossom, and watched them grow
全員が花開き、成長していくのを眺めてきた。
Watched the lawsuits when they lost the dough
金を失った途端に起きる訴訟沙汰も見てきたぜ。
※Suge Knightとの泥沼の法廷闘争や、Death Row Recordsを離脱した際の一連の金銭・権利トラブルを暗示している。
Best friends and money? I lost them both
親友と金?俺はどっちも失ったよ。
※親友であったEazy-Eや2Pacの死、そしてDeath Row脱退時に数千万ドルの権利を自ら放棄した歴史的背景を指している。
Went and visited niggas in the hospital
病院にいるダチの面会にも行った。
It's all the same shit all across the globe
世界中どこへ行っても、同じようなクソみたいなことばかりだ。
I just sit back and watch the show (The Watcher)
俺はただ後ろに座って、このショーを見物させてもらうよ(傍観者としてな)。
[Chorus: Eminem & Knoc-turn'al]
Everywhere that I go
俺がどこへ行こうとも。
Ain't the same as befo' (The Watcher)
昔と同じってわけにはいかねぇ(傍観者)。
People I used to know
昔馴染みの奴らも。
Just don't know me no mo' (The Watcher)
もう俺のことを知らないふりをする(傍観者)。
But everywhere that I go
だが、俺がどこへ行こうとも。
I got people I know (The Watcher)
俺には顔が利くダチがいる(傍観者)。
Who got people they know
そいつらにもまた、ヤバいコネを持ったダチがいるんだ。
So I suggest you lay low (I'm watchin')
だから大人しくしとくことをお勧めするぜ(俺は見ているぞ)。
※「lay low」は目立たないようにする、息を潜めるという意味。Dr. Dreの持つネットワークの広さと裏の権力を示唆している。
[Verse 2: Dr. Dre & Knoc-turn'al]
I moved out of the hood for good, you blame me?
俺はフッドから完全に足を洗って引っ越した、俺を責めるか?
Niggas aim, mainly, at niggas they can't be
連中は大抵、自分がなれない奴らを標的にするもんだ。
But niggas can't hit niggas they can't see
だが、見えない相手を撃つことなんてできねぇだろ。
I'm out of sight now, I'm out of their dang reach
俺はもう連中の視界から消えた、あのクソみたいな手の届かない場所にいるんだ。
How would you feel if niggas wanted you killed?
もしお前が誰かに命を狙われてたら、どう思うよ?
You'd probably move to a new house on a new hill
きっと新しい丘の上の新居に引っ越すだろうな。
And choose a new spot, if niggas wanted you shot
もし撃たれそうになったら、新しい場所を選ぶはずだ。
I ain't a thug, how much 2Pac in you you got?
俺はサグじゃねぇ、お前の中にはどれだけ2Pacが宿ってるってんだ?
※サグライフを体現し悲劇的な最期を遂げた2Pac(Tupac Shakur)を引き合いに出し、無謀なギャングスタを気取る若手ラッパーたちを冷笑している。
I ain't no bitch, neither
だが、俺はビッチ(臆病者)でもねぇぞ。
It's either my life or your life, and I ain't leavin' – I like breathin'
俺の命かお前の命か、どっちか一つなら俺は逃げない。息をして生きるのが好きだからな。
'Cause, nigga, we can go round for round
だってよ、俺たちラウンドごとにトコトンやり合えるぜ。
Clip for clip, shit, four pound for pound
弾倉撃ち尽くして、44口径の撃ち合いだってできる。
※「Clip」は銃の弾倉。「four pound」は44口径マグナム(.44 caliber)を意味し、いざとなれば激しい銃撃戦にも応じるという凄みを見せている。
Nigga, if you really want to take it there, we can
もし本気でそこまでヤリたいってんなら、受けて立つぜ。
Just remember that you fuckin' with a family man
ただ、お前が喧嘩を売ってる相手は「家族を持つ男」だってことだけは忘れんなよ。
※失うものがないストリートの若者と違い、守るべき家族がいる男の持つ真の覚悟と恐ろしさを突きつけている。
I got a lot more to lose than you
俺はお前より失うものがずっと多いんだ。
Remember that when you wanna come and fill these shoes (The Watcher)
俺の後釜に座ろうとする時は、そのことをよく覚えとけよ(傍観者)。
※「fill these shoes」は誰かの後釜に座る、代わりを務めるというイディオムである。
[Chorus: Eminem & Knoc-turn'al]
Everywhere that I go
俺がどこへ行こうとも。
Ain't the same as befo' (The Watcher)
昔と同じってわけにはいかねぇ(傍観者)。
People I used to know
昔馴染みの奴らも。
Just don't know me no mo' (The Watcher)
もう俺のことを知らないふりをする(傍観者)。
But everywhere that I go
だが、俺がどこへ行こうとも。
I got people I know (The Watcher)
俺には顔が利くダチがいる(傍観者)。
Who got people they know
そいつらにもまた、ヤバいコネを持ったダチがいるんだ。
So I suggest you lay low (I'm watchin')
だから大人しくしとくことをお勧めするぜ(俺は見ているぞ)。
[Verse 3: Dr. Dre & Knoc-turn'al]
Things just ain't the same for gangstas
ギャングスタを取り巻く状況は、昔とはすっかり変わっちまった。
Cops is anxious to put niggas in handcuffs
サツの奴ら、やたらと俺たちに手錠を掛けたがりやがる。
They wanna hang us, see us dead, or enslave us
奴らは俺たちを吊るし首にしたいか、死体を見たいか、奴隷にしたいんだ。
Keep us trapped in the same place we raised in
俺たちが育ったのと同じゲットーに閉じ込めようとしてる。
※N.W.A.時代から続く、人種差別的な警察の暴力と、黒人をゲットーに縛り付ける社会システムに対する鋭い批判である。
Then, they wonder why we act so outrageous
そのくせ、なんで俺たちがこんな凶暴に振る舞うのかって不思議がるんだぜ。
Run around, stressed out and pull out gauges
ストレス抱えて走り回り、ショットガンを引き抜く理由をな。
※「gauges」はショットガン(12-gauge shotgunなど)を指す。
'Cause every time you let the animal out cages
なぜなら、檻の中から動物を解き放つたびに。
It's dangerous to people who look like strangers
見慣れない顔の奴らにとって、そいつは危険な存在になるからさ。
※ゲットーという「檻」から解放された黒人が、白人社会(strangers)にとって脅威と見なされるという社会構造を動物と檻のメタファーで描いている。
But now, we got a new era of gangstas
だが今じゃ、新しい時代のギャングスタたちが登場した。
Hustlers and youngsters livin' amongst us
ハスラーやガキどもが俺たちの中に紛れ込んで生きてやがる。
Lookin' at us now, callin' us busters
今じゃ俺たちを見て、腰抜け(バスター)呼ばわりしやがるんだ。
※「busters」は臆病者、ヘイター、ダサい奴を意味する西海岸特有のスラングである。
Can't help but reminisce back when it was us
俺たちの時代だった頃をつい懐かしく思っちまうぜ。
Nigga, we started this gangsta shit
おい、このギャングスタ・シットを始めたのは俺たちなんだぞ。
※N.W.A.のメンバーとして「ギャングスタ・ラップ」というジャンルそのものを確立したDr. Dreの絶対的な自負である。
And this the motherfuckin' thanks I get?
で、その見返りがこのクソみたいな扱いかよ?
It's funny how time flies
時が経つのはホントにおかしいくらい早いな。
I'm just having fun, just watchin' it fly by (The Watcher)
俺はただ楽しんでるだけさ、時代が過ぎ去っていくのを眺めながらな(傍観者)。
[Chorus: Eminem & Knoc-turn'al]
Everywhere that I go
俺がどこへ行こうとも。
Ain't the same as befo' (The Watcher)
昔と同じってわけにはいかねぇ(傍観者)。
People I used to know
昔馴染みの奴らも。
Just don't know me no mo' (The Watcher)
もう俺のことを知らないふりをする(傍観者)。
But everywhere that I go
だが、俺がどこへ行こうとも。
I got people I know (The Watcher)
俺には顔が利くダチがいる(傍観者)。
Who got people they know
そいつらにもまた、ヤバいコネを持ったダチがいるんだ。
So I suggest you lay low (I'm watchin')
だから大人しくしとくことをお勧めするぜ(俺は見ているぞ)。
[Outro: Knoc-turn'al]
The Watcher
ザ・ウォッチャー(傍観者)。
I'm watching
俺は見ているぞ。
The Watcher
ザ・ウォッチャー。
The Watcher
ザ・ウォッチャー。
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