Artist: Future & Metro Boomin
Album: WE DON'T TRUST YOU
Song Title: Claustrophobic
概要
本作「Claustrophobic」は、FutureとMetro Boominによる歴史的ジョイントアルバム『We Don’t Trust You』において、物質的な成功の極致とそれに伴う精神的な閉塞感を描き出したトラックである。タイトルが意味する「閉所恐怖症」とは、桁違いの富によって現在の豪邸や高級車すら狭く感じるという特大のフレックスであると同時に、業界内に蔓延するフェイクな人間関係や重圧からくる息苦しさのメタファーとして機能している。特筆すべきは、イントロとアウトロに配置されたMobb Deepの故Prodigyによる辛辣なインタビュー音声のサンプリングだ。これは「Ice Attack」のアウトロから続く文脈であり、ストリートのリアルを知らないDrakeをはじめとする「コスプレ・ラッパー」に対する痛烈な批判として、Reddit等のヒップホップ・コミュニティで絶賛された。トラップの絶対王者としての矜持と、ヒップホップの純血主義が交差する重要曲である。
和訳
[Intro: Prodigy of Mobb Deep & Future]
All that other shit is garbage, that's what I mean, son
他の連中の曲は全部ゴミだ、俺が言いたいのはそういうことだよ
※【Prodigyのインタビュー・サンプリング】クイーンズが生んだ伝説のデュオ、Mobb Deepの故Prodigyの生前の肉声。アルバムの随所に散りばめられた彼の言葉は、FutureとMetro陣営がヒップホップにおける「本物(リアル)」を代弁していることを裏付けるための強力なステートメントとして機能している。
You know what I'm sayin'? Like, get the fuck out of here, son
言ってる意味わかるか? マジでここから消え失せろって感じだぜ
※フェイクなラッパーたちに対する嫌悪感の表明。
Shit is wack, son
あんなのクソダサいんだよ
※「wack」はヒップホップ・スラングで「ダサい、偽物、価値がない」という意味。
Cut it out, please
マジでいい加減にしてくれ
※シーンに蔓延る偽物たちへの心底呆れた態度。
Nobody's buying it, nobody likes it
誰もあんなの信じちゃいないし、誰も好きじゃねぇよ
※ストリート・クレド(不良としての実績や真実味)のないラッパーがギャングスタを気取っても、本物の人間から見れば滑稽でしかないという事実。
You be hurting our ears, that shit is annoying
俺たちの耳を腐らせる気か、あんなのただの公害だ
※中身のないラップに対する痛烈な批判。
Like, stop it, man
だから、もうやめとけって
※同上。
Just 'cause niggas got a chain, some jewelry, and they dress like the motherfucking part they wanna be, the rappers and shit
チェーンやジュエリーを身につけて、なりたい自分(ラッパーやギャング)のコスプレをしてるだけだからな
※【Drakeらへの痛烈なディス】裕福な環境で育ちながらマフィアのボスやストリートのハスラーを演じるDrakeら「コスプレ・ラッパー」の核心を突く言葉。Redditでは、このセリフが本作における最も鋭利な刃として議論された。
Ayy, cut it out
なぁ、もうやめろ
※同上。
We the professionals, son, we professionals at what we do, like, cut it out
俺たちはプロフェッショナルなんだよ、自分たちの生き方にプロとして筋を通してるんだ、ふざけんな
※ストリートの底辺から命懸けで這い上がってきたFutureたちこそが「本物」であるという強力な後押し。
Yeah
イェー
※Futureの冷徹な相槌。
[Chorus: Future]
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※「claustrophobic(閉所恐怖症)」。すでに所有している巨大な豪邸(Mansion)でさえ、これ以上ないほど膨れ上がった己の富と権力を収めるには「狭すぎる」と感じるという、極限のパラノイア的フレックス。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※超高級車マイバッハの広々とした後部座席でさえ、Futureにとっては窮屈に感じるほどの成功の肥大化。
Went back extеnded Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※「extended Phantom」はロールスロイス・ファントムのホイールベースを延長した最上級モデル。
Make surе that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカー(ドロップトップ)にしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※屋根があると圧迫感を感じるため、常に空が見えるドロップトップを選ぶという贅沢なこだわり。
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※コーラスの反復。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※コーラスの反復。
Went back extended Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※コーラスの反復。
Make sure that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカーにしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※コーラスの反復。
[Verse 1: Future]
Sittin' inside the hybrid, lookin' like a pirate
ハイブリッドカーの中に座り、海賊みたいなナリをしてるぜ
※最新の環境配慮型高級車(ポルシェ・パナメーラ・ハイブリッドなど)に乗りつつも、片目を隠すようなサングラスや大量のジュエリーを纏い、まるで略奪者(pirate)のような野蛮なオーラを放っている様子。
Fresher than your stylist, fresher than a stylist
お前のお抱えスタイリストよりもイケてる、どのスタイリストよりもな
※「Fresh」は服の着こなしが最高であること。プロのスタイリストを雇うフェイクな連中よりも、自分自身のストリートのセンスの方が圧倒的に勝っているという自信。
Presidential Rolex, niggas big timin'
プレジデント・ブレスのロレックス、俺たちは本物のビッグ・タイマーだ
※「Presidential Rolex」は最高級のロレックス・デイデイト。「big timin'」は大金を稼ぎ、派手に使うこと(Cash Money Recordsのグループ名『Big Tymers』へのオマージュも含む)。
Eighty-five pointers, Ochocinco diamonds
85ポインター、オチョシンコのダイヤモンドだ
※【見事なスポーツ・リファレンス】「Eighty-five pointers」は0.85カラットのダイヤモンド。「Ochocinco」はNFLの元スター選手チャド・ジョンソン(背番号85)の愛称。彼の背番号とダイヤのサイズをかけた天才的なワードプレイ。
Million-dollar Phantom, I won't even drive it
100万ドルのファントム、俺は自分で運転すらしねぇよ
※超高額な車を買っても、ショーファー(お抱え運転手)に任せて後部座席でふんぞり返っているボスのフレックス。
Chauffeur, Louis Vuitton loafers when I'm slidin'
お抱え運転手、俺が滑り込む時はルイ・ヴィトンのローファーだ
※ストリート・スニーカーではなく、ハイブランドのローファーで優雅に車に乗り込む(slidin')姿。
Digital, niggas never visual
デジタルな稼ぎ方さ、奴らには到底見えやしない
※「Digital」は仮想通貨やストリーミング収益などの現代的な不労所得を指し、物理的な現金(visual)しか知らないストリートのハスラーたちから完全にレベルアップした状態を示す。
Residuals, rackies comin' plentiful
印税収入、札束が無限に転がり込んでくる
※「Residuals」は楽曲の権利による継続的な収益(印税)。「rackies(racks)」は1000ドルの札束。
Ice on my sleeve, got it out that mud
袖口にはアイス(ダイヤ)が輝く、泥沼から這い上がって手に入れたんだ
※「mud」は貧困や過酷なストリート環境のこと。苦労して底辺から這い上がった(got it out the mud)結果として、手首(sleeve)に最高級の時計やブレスレットを巻いている。
Transportin' cheese, we sellin' drugs
チーズ(金)を運び、俺たちはクスリを売り捌いてきた
※「cheese」は現金。過去のイリーガルなハッスルのレペゼン。
Tractor-trailer pull up on my way to re-up
ブツの仕入れに向かう途中、トラクター・トレーラーが横付けしてくる
※「re-up」はドラッグの在庫を再補充すること。キロ単位の大量の麻薬を、巨大なトレーラーを使って密輸・取引しているマフィア規模のビジネスの描写。
I know when you stay down, that's the way you T up
じっと耐え忍べば、それが上に登り詰める(T up)道になるってわかってるんだ
※「stay down」は苦境で腐らずに忠誠を誓い、地道に努力すること。「T up (Turn up)」は成功して盛り上がること。ストリートの掟と成功哲学。
European stylin', I go from the feet up
ヨーロピアン・スタイル、足元から完璧にキメるぜ
※ヨーロッパのハイブランド(グッチ、バレンシアガなど)でつま先から頭まで全身を固めること。
Every time we meet up, it's been gettin' bigger
俺たちが集まるたびに、規模はどんどんデカくなっていく
※FutureとMetro Boomin、あるいはFreebandzのクルーが集結するたびに、ビジネスや影響力が莫大に膨れ上がっている事実。
Every presidentials, I got my credentials
すべてのプレジデント・ブレスを持ってる、俺のクレデンシャル(資格)は証明済みだ
※ロレックスのすべてのプレジデント・モデルをコンプリートしており、それが自分が業界の「大統領(絶対王者)」であることの証明(credentials)となっている。
Cobra deadly venom, push a button and send 'em
コブラの猛毒だ、ボタン一つで奴らをあの世へ送ってやる
※「Cobra deadly venom」は自身の冷酷さや、殺傷能力の高い武器の比喩。「push a button」はマフィアのボスが直接手を下さず、指示(ボタンを押す)だけでヒットマンに敵を始末(send)させる絶対権力を示す。
Raised around these sinners, now we gang members
罪人たちに囲まれて育ち、今じゃ俺たちはギャングのメンバーだ
※犯罪者ばかりのゲットーで育った過酷なバックグラウンド。
Copped a big bazooka for my main hitter
俺のメインの殺し屋のために、デカいバズーカを買ってやったぜ
※右腕となるヒットマンのために、重火器(bazooka=大型のアサルトライフルなどの比喩)を資金提供するボスの余裕。
[Chorus: Future]
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※コーラスの反復。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※コーラスの反復。
Went back extended Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※コーラスの反復。
Make sure that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカーにしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※コーラスの反復。
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※コーラスの反復。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※コーラスの反復。
Went back extended Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※コーラスの反復。
Make sure that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカーにしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※コーラスの反復。
[Verse 2: Future]
Atlanta to Skyami, goin' back to Cali'
アトランタからスカイアミへ、そしてカリフォルニアへ戻る
※「Skyami」は高層ビルが立ち並ぶマイアミの空(Sky)を表現した造語。全米の主要都市をプライベートジェットで飛び回るジェットセットなライフスタイル。
Snakes and deadly venom, bitch, I'm super slatty
蛇と猛毒だ、ビッチ、俺はスーパー・スラッティだぜ
※「slatty」はアトランタの盟友Young Thugが率いるYSL(Young Stoner Life)レコードのスラング「Slatt (Slime Love All The Time)」の派生。蛇(Snake)は彼らのシンボルであり、逮捕され獄中にいるYoung Thugへの連帯とリスペクトを示している。
Work out in the snow, Rocky Balboa
雪の中でワークアウトするぜ、ロッキー・バルボアみたいにな
※映画『ロッキー4』で、雪に覆われたロシアで特訓するロッキーの姿と、「snow(コカインの隠語)」を売り捌いてハッスル(ワークアウト)するストリートの生活をかけた秀逸なダブルミーニング。
Pull up 'Ventador, look like Chapo
アヴェンタドールで乗り付ける、まるでエル・チャポみたいだろ
※「'Ventador」はランボルギーニ・アヴェンタドール。「Chapo」はメキシコの伝説的麻薬王エル・チャポ(ホアキン・グスマン)。車もビジネスの規模もカルテルのボス級だというフレックス。
Servin' Kurtis Blow, I got dirty snow
カーティス・ブロウを売り捌く、俺は汚れた雪(コカイン)を持ってるぜ
※【ディープなワードプレイ】「Kurtis Blow」は1980年代のオールドスクール・ヒップホップのレジェンドだが、ここでは「Blow(コカインを鼻から吸うこと、またはコカインそのもの)」というスラングに掛けている。「dirty snow」も不純物が混ざった、あるいは裏社会の血で汚れたコカインの隠語である。
Parked outside the store, ten trucks in a row
店の外に車を停める、10台のトラックが一直線に並んでるぜ
※Futureが買い物をしている間、完全武装した護衛の車列(トラック)が外で待機しているモブ(マフィア)的な情景。
Pocket full of bread, sittin' inside the Rolls
ポケットはパンパンのパン(金)で溢れてる、ロールスロイスの中でくつろいでるぜ
※「bread」は現金の定番スラング。
I been on a roll, over a billion sold
ずっと絶好調だ、10億以上を売り上げたからな
※「on a roll(絶好調)」と「Rolls(ロールスロイス)」の言葉遊び。「a billion sold」はストリーミングの再生回数やレコード売上だけでなく、裏社会でのドラッグの総売上(10億ドル規模)をも暗に示している。
Only one was chose, I secured my goals
選ばれたのは俺ただ一人、自分の目標を確実に手に入れた
※The Chosen One(選ばれし者)としての孤高の境地。
Cookin' so much coke, I need another stove
コカインを調理しすぎて、もう一つコンロが必要なレベルだ
※クラック・コカインの精製(Cookin')に関するストリート・メタファー。楽曲制作(スタジオでのクッキング)が止まらないというワーカホリックな側面とのダブルミーニングでもある。
Made myself a plug, I can move a load
俺自身が元締め(プラグ)になったんだ、大量の荷(クスリ)を動かせるぜ
※末端の売人から、カルテルと直接取引する大物(Plug)へと成り上がったストリート・サクセスストーリー。
Took it from lil' Mexico across the globe
リル・メキシコから、世界中へそれを広めてやったんだ
※「lil' Mexico」はアトランタのKirkwood地区(Futureが育ったZone 6の一部)の通称。貧しいゲットーからキャリアをスタートさせ、今や世界的なスーパースター(あるいは世界的シンジケート)へと到達したという壮大な締めくくり。
[Chorus: Future]
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※コーラスの反復。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※コーラスの反復。
Went back extended Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※コーラスの反復。
Make sure that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカーにしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※コーラスの反復。
Had to buy another mansion, I'm gettin' claustrophobic
また別の豪邸を買わなきゃならねぇ、閉所恐怖症になりそうだぜ
※コーラスの反復。
Went and bought a bigger Maybach, I'm gettin' claustrophobic
もっとデカいマイバッハを買いに行った、息が詰まりそうだからな
※コーラスの反復。
Went back extended Phantom, I'm gettin' claustrophobic
ストレッチ仕様のファントムに戻したぜ、閉所恐怖症になっちまうからな
※コーラスの反復。
Make sure that 'Rari a drop 'cause I get claustrophobic
フェラーリは絶対にオープンカーにしとけよ、俺は閉所恐怖症だからな
※コーラスの反復。
[Outro: Prodigy of Mobb Deep]
Stop it, man
やめとけって
※アウトロでも再びProdigyのインタビューが挿入される。
You know what I mean? Do somethin' else, stop tryna do what everybody else doin', you know?
言ってる意味わかるか? 何か別のことをしろよ、他の全員がやってることをただ真似するのはやめろって言ってんだよ
※トレンドを追いかけるだけの模倣ラッパーたちへの厳しいアドバイス。
You know? 'Cause I know that's what's goin' on
だろ? なぜなら、俺には今シーンで何が起きてるかお見通しだからな
※ヒップホップ業界の表面的な商業主義を見透かすレジェンドの視点。
'Cause these niggas ain't supposed to be rappin'
だって、こいつらは本来ラップなんかするべき人間じゃないんだから
※【血統の否定】ストリートの苦しみやカルチャーの歴史を背負っていない人間が、金儲けのためだけにラップというアートフォームを安易に利用することへの根本的な怒り。
I mean, who really like these niggas?
ていうか、誰がこんな奴らのこと本気で好きなんだ?
※Prodigyの強烈な冷笑で曲が締めくくられる。これはリスナーに対して「お前たちはフェイクを支持するのか、それともリアル(Future&Metro)を支持するのか?」という究極の問いを投げかけており、アルバムの対立構造を完璧に補強するアウトロとなっている。
