Artist: JPEGMAFIA
Album: All My Heroes Are Cornballs
Song Title: All My Heroes Are Cornballs
概要
本作は、実験的なノイズと過激なアティチュードでヒップホップの境界線を破壊し続けるJPEGMAFIA(愛称:Peggy)の3rdアルバムのタイトルトラックだ。インターネット・カルチャーの深淵から這い上がり、メインストリームへと「クロスオーバー」を果たした彼に対し、セルアウトだと騒ぎ立てる古参ファンや、ネット空間で極右化していくインセル(非モテ層)たちへの痛烈なモック(嘲笑)が込められている。空軍出身者らしい具体的な銃器のネームドロップと、ジェイデン・スミスやアン・ハサウェイといったポップアイコンの引用を交錯させるリリシズムは圧巻。そして、ハードコアな殺害予告めいたヴァースの直後に、ドライブスルーでハンバーガーを注文する間の抜けた日常の音声をアウトロに配置する構成は、「ラップゲームにおける虚構のワル」と「現実のありふれた自分」の境界をシニカルに笑い飛ばす、彼なりのパンクなステートメントである。「俺のヒーローたちはみんなダサい(Cornballs)」というタイトル通り、誰もが神格化を免れない現代において、彼自身もまたその矛盾を抱えながらゲームを生き抜いている。
和訳
[Intro]
One, two
ワン、ツー
JPEG, because I like JPEGs (Same, same)
JPEGよ、だって私がJPEGを好きだから (Same, same)
Um, for the resolution, the color
ええと、解像度とか、色合いとかね
※彼のアーティスト名「JPEGMAFIA」の由来に対する自虐的な小芝居。
You think you know me
お前らは俺を分かってるつもりなんだろ
※プロレス団体WWEの元スーパースター、エッジ(Edge)の入場テーマ曲からのサンプリング。Peggyの楽曲で多用されるシグネチャータグ。
Everything about JPEGs I like
JPEGの全てが好きなの
It's yours
君のものだ
Alright
よし
[Verse 1]
Aw, nigga, nigga, nigga, I'm stayin' (Yeah, huh)
Aw、なあ、俺はここに居座るぜ (Yeah, huh)
Aw, nigga, nigga, I'm just playin' (Playin', playin', playin', yeah)
Aw、なあ、冗談で言ってるだけさ (Playin', playin', playin', yeah)
Walk in the crib with the Glock 19 and a dirty clip
Glock 19と違法な拡張マガジンを持って家に入る
※元軍人である彼らしい、具体的な銃器モデル(Glock 19)のネームドロップ。「dirty clip」は装弾数を違法に増やしたマガジンのこと。
Snuck up in Coachella with a bong, lil' buddy, I ain't Jaden Smith (No)
ボングを隠し持ってコーチェラに潜り込む、兄弟、俺はジェイデン・スミスじゃねえんだよ (No)
※「bong」は大麻を吸う水パイプ。ウィル・スミスの息子であり、クリーンで意識の高いセレブの代表格であるジェイデン・スミスを引き合いに出し、自分は泥臭くアンダーグラウンドな存在であると対比させている。
Herman, nigga, of course (Of course), I'm flagrant (Facts)
ハーマンだ、当然だろ (Of course)、俺は目に余る存在だ (Facts)
※一部の考察では、かつてセクハラ疑惑などで物議を醸した黒人保守派政治家のハーマン・ケイン(Herman Cain)を指しているとされ、あえて炎上しやすい人物をネームドロップするPeggy特有の悪趣味なジョーク。
I can't keep no job, I can't commit
どんな仕事も長続きしない、一つのことに縛られないんだ
Hate goes into these bars, some niggas ain't built for it
この小節には憎しみが込められてる、耐えられない奴らもいるだろうな
I made rap my job, it's sacred
俺はラップを仕事にした、これは神聖なもんだ
You don't wanna get them guns involved (Doo-doo-doo-doo)
銃沙汰にはしたくないだろ (Doo-doo-doo-doo)
'Cause your wifey gon' be callin' the law, boys (Boys), alright
てめえの嫁さんがサツを呼ぶことになるからな (Boys)、わかったか
[Interlude]
Fuck
Motherfuckers, man
クソ野郎どもめ
Fuck, fuck
These niggas out here, man
ここの連中はよ
Gnarly, gnarly
エグいぜ、ヤバい
Fuck, fuck
Fuck (Fuck)
Gnarly
エグいぜ
[Verse 2]
Uh, damn, guess who had a big year? (Big year)
Uh、くそ、誰が大飛躍の年を迎えたと思う? (Big year)
No whips, no chains, just a few tears
高級車も、ゴールドチェーンもねえ、ただ少しの涙だけさ
※「whips」は車。ヒップホップ的なフレックス(見栄張り)の象徴を持たず、苦悩やトラウマ(涙)だけを抱えて成功を掴んだという矜持。
Pop filter, bump it and you get the stocking (Bah)
ポップフィルターだ、ぶつかればストッキングを被ることになるぜ (Bah)
※レコーディング時のノイズを防ぐ「ポップフィルター」と、強盗が顔を隠すために被る「ストッキング」を掛けたワードプレイ。
When I hit the stage, I hope that my enemies watchin'
俺がステージに立つ時、敵どもがそれを見てることを願うよ
Damn, I wonder when they droppin' (When they droppin')
くそ、あいつらはいつ曲を出すんだろうな (When they droppin')
Why these wiggas only showin' up when niggas be poppin'? Bruh
なんでこの白人ラッパーもどき共は、黒人がブレイクした時にしか現れねえんだ? なあ
※「wiggas」は黒人(niggas)のストリート文化を表面だけ真似る白人(white)を指す侮蔑語。トレンドに乗っかるだけのカルチャー・ヴァルチャー(文化の搾取者)をディスしている。
Don't turn yourself into a target (Into a target)
自ら的になるような真似はするな (Into a target)
'Cause we can take this shit from beef to somethin' exhaustin'
俺たちはこの単なるビーフを、もっと消耗する泥沼の争いに変えることだってできるんだからな
Glock 43X with the sticky holster (Bah-bah-bah)
滑り止め付きホルスターに収めたグロック43Xだ (Bah-bah-bah)
Pistol whip 'em, I can't waste the bullet in no poser (Blat)
銃のグリップでぶん殴ってやる、ポーザーなんかに弾を無駄にはできねえ (Blat)
※「poser」は格好だけの偽物。撃つ価値すらないため、銃による打撃(Pistol whip)で沈めるという侮蔑。
Incels gettin' crossed 'cause I crossed over
俺がメインストリームにクロスオーバーしたからって、インセルどもが怒り狂ってやがる
※「Incel(不本意な禁欲主義者)」はネット上のミソジニー(女性嫌悪)やオルタナ右翼的な非モテ層を指す。アンダーグラウンドのネットカルチャーで支持されていたPeggyが、大衆的な成功(crossed over)を収めたことに対し「裏切られた」と騒ぐオタクたちを嘲笑している。
How they go from Anne Hathaway to Ann Coulter?
どうやったらアン・ハサウェイからアン・コールターに変わっちまうんだ?
※ハリウッドの愛される女優アン・ハサウェイから、過激な極右の政治評論家であるアン・コールターへの変貌。前行のインセルたちが、ネットの深みにはまり極端な右派思想へと先鋭化していく現代の病理を巧みなネームドロップで揶揄している。
All that shootin' in the air is for posers (Is for posers)
空に向かって銃を撃つなんてのは、ポーザーのやることだ (Is for posers)
Fast break, we jammin' it, nigga, no floaters
ファストブレイクだ、俺たちはダンクをブチ込むぜ、フローターなんて使わねえ
※バスケットボール用語。速攻(Fast break)で確実かつ豪快にダンク(jammin')する。小手先のシュート(floaters)は使わず、正面から力でねじ伏せるというメタファー。
Lames gettin' bolder, straps on the shoulder
ダサい奴らが図に乗って、肩に銃を提げている
※「straps」は銃のこと。
They gon' have to get the chap' to console you
連中はてめえを慰めるために従軍神父を呼ぶ羽目になるぞ
※「chap'」はchaplain(従軍神父・牧師)の略。敵が死に直面し、最後の祈りを捧げられる状態になるという軍隊経験者ならではのパンチライン。
[Interlude]
You know, everybody wanna say I do this, I do that (Don't play me)
みんな「俺はあれをやってる、これをやってる」って言いたがるだろ (Don't play me)
Everyone wanna act like they hard and shit
誰もが自分はハードなワルだって振る舞いたがる
But just stop, you're all shit
だがやめとけ、お前らは全員クソなんだからな
Damn, haha
くそっ、ハハ
[Outro]
Let me
俺に
Let me get, uh, uh
俺に、ええと
Let me get a double bacon, a double bacon, double
ダブルベーコン、ダブルベーコン、ダブルをくれ
Nah, not a double bacon, uh, uh
いや、ダブルベーコンじゃなくて、ええと
A bacon, a bacon smokehouse meal with no cheese
ベーコン、ベーコン・スモークハウス・ミールをチーズ抜きで
Mhm
Yeah, with, with no cheese on that thang, and uh
Yeah、その、チーズは抜きで頼む、それから、ええと
Would you like the meal large?
ミールのサイズはLになさいますか?
The meal is gon' be large, the meal is
ミールはLサイズで、ええと
What to drink?
お飲み物は?
Uh, the meal, uh, is gon' come with a...
ええと、ミールには、ええと、セットで...
※ファストフードのドライブスルーでのリアルな日常会話。ハードコアなラップとバイオレンスの描写の直後に、極めて平凡で滑稽な注文風景を挿入することで、ラッパーとしての虚構のペルソナと、ただの一人の人間としての現実の落差をシニカルに浮き彫りにしている。
