Artist: Wu-Tang Clan (feat. Cappadonna)
Album: Wu-Tang Forever
Song Title: Maria
概要
1997年の歴史的ダブルアルバム『Wu-Tang Forever』に収録された「Maria」は、Wu-Tang Clanが誇る生々しいストリートの現実と、赤裸々な性描写が交差するダーティな一曲だ。RZAがプロデュースした不気味でミニマルなホーンのループが、夜のゲットーに潜む誘惑と危険を絶妙に演出している。楽曲のテーマは、男たちを誘惑し破滅へと導く「マリア」のようなプロミスキャス(乱交的)な女性たちについてである。トップバッターを務めるOl' Dirty Bastard(ODB)は、一切の制御を失ったかのような下品で狂気的なフロウを炸裂させ、続くCappadonnaはスムースかつ直接的なナンパの情景を描き出す。そして圧巻なのはRZAの最終バースだ。彼はファム・ファタールに溺れる兄弟たちへの冷徹な警告と、性病(STD)のリアルなリスクを、シリアスで物語的な教訓ラップとして展開する。アウトロにはカンフー映画『The Four Assassins』のサンプリングが挿入され、欲望という目に見えない敵との精神的な戦い、あるいはヒップホップシーンで不可能に挑み続けるWu-Tangのスタンスを暗示している。
和訳
[Intro: Ol' Dirty Bastard & (a woman)]
(You my Dirty whore, you that Dirty whore)
(お前は俺の汚い娼婦だ、あのダーティな娼婦だ)
What else you gonna do to it?
他に何をしろってんだ?
But bust it, bust it though, baby, bust it
ただブチ込むだけだ、ヤるんだよ、ベイビー、ブチ込め
Who else.. who else is gonna do it?
他に誰が…誰がこんなことするってんだ?
This is dedicated to all you bitches!
これはお前ら全てのビッチに捧げるぜ!
(Maria)
(マリア)
[Verse 1: Ol' Dirty Bastard]
Knew this bitch named Trash, she had a hella fine ass
トラッシュって名前のビッチを知ってる、信じられないほど極上のケツをしてたぜ
Can't ask, threw my hoe in the past
聞かないでくれ、昔の女は過去に投げ捨てた
Niggarette gave me gonorrhea
あのビッチが俺に淋病をうつしやがった
※「Niggarette」はNiggaと女性形の接尾辞-ette(またはCigarette)を組み合わせたODB特有の奇妙な造語。使い捨ての女や特定のビッチを指すスラングとして機能している。
Pussy dick to the tippy-toe like ballerina
バレリーナみたいにつま先立ちで、イチモツをプッシーに沈める
Boy, you should've seen her
なぁ、お前もあいつを見るべきだったぜ
She had a baby face creamer Purinas, called up talkin' Tina
童顔のクリーマーで、ピュリナみたいに食いつきが良くて、おしゃべりティナみたいに電話をかけてくるんだ
I put my dick in her womb
あいつの子宮に俺のイチモツをブチ込んだ
She blew my head like a balloon, I had her walkin' on the Moon
あいつは俺の頭を風船みたいに吹いた、俺はあいつを月面歩行させてやったぜ
※「blew my head」はフェラチオの隠喩。「walkin' on the Moon」は快感で天にも昇るような状態(あるいはマイケル・ジャクソンのムーンウォークのように後ずさりさせる激しい行為)のダブルミーニング。
[Verse 2: Cappadonna]
Yo, I seen you at the five and dime, wastin' your time
ヨォ、ディスカウントストアでお前を見かけたぜ、時間を無駄にしてたな
※「five and dime」は安売り雑貨店(5セントや10セントで買える店)。
Oh, you shy, I'm lookin' at your ass from behind
おや、シャイなんだな、俺はお前のケツを後ろから見てるぜ
You walked by smellin' like watermelon
スイカのいい匂いをさせて、通り過ぎていった
You might make me a felon, my eyeballs swellin'
お前のせいで俺は重罪犯になっちまうかもな、眼球が腫れ上がるぜ
My nuts start yellin', excuse my prick
俺のタマが叫び始める、俺のイチモツを許してくれ
Wanna have a talk with you, I'm sick
お前と話がしたい、俺は病気(最高にイカれてる)だ
My medicine is can I walk with you
俺の薬は、お前と一緒に歩けるかってことさ
Tanned physique, after that we can cheat
日焼けした肉体、その後は浮気でもしようぜ
Laid on the bed, handcuffed with hard meat
ベッドに寝かされ、硬い肉で手錠をかけられる
Long stroke smackin', smack it then broke
ロングストロークで叩きつけ、ひっぱたいてぶっ壊す
Nothin' can't stop my continuous poke
俺の絶え間ない突きを止められるものは何もない
Compound, porno flick music
コンパウンド、ポルノ映画の音楽だ
Daddy Kane with it when I wrote it
これを書いた時、ビッグ・ダディ・ケインみたいにキメたぜ
※80年代のラップスターBig Daddy Kaneのように、プレイボーイで滑らかなフロウを意識しているという宣言。
[Verse 3: Ol' Dirty Bastard]
Dirt Dog be bouncin' on bitches like frog
ダート・ドッグはカエルみたいにビッチの上で跳ね回る
※「Dirt Dog」はODBの数ある別名の一つ。
I pollute the air up like smog, bitch
俺はスモッグみたいに空気を汚染するぜ、ビッチ
I'm up my Jacuzzi, peepin' this movie
ジャグジーに浸かって、この映画を覗き見てる
My bitch is a floozy
俺の女は淫乱だ
Dirt Dog ain't choosy, pussy move me
ダート・ドッグは選り好みしねぇ、プッシーが俺を突き動かすんだ
Pretty black dick up in the booty
可愛い黒いイチモツをケツにブチ込む
I like it muddy and swampy
泥まみれで、沼みたいにグチャグチャなのが好きなんだ
By now, you find your ass up shitty creeky
今頃、お前のケツはクソみたいな小川に突っ込まれてる
※「up shit creek without a paddle(絶体絶命のピンチ)」という慣用句を、アナルセックスのダーティな描写と絡めた彼らしいワードプレイ。
Don't got no fuckin' room, me and my momma in my teepee
部屋なんてねぇよ、俺と母ちゃんで俺のティピー(テント)にいるんだから
Blackberry squeeze, bitch, you a tease
ブラックベリー絞り、ビッチ、お前は焦らすのが上手いな
Titties small, I got used to the squeeze
オッパイは小さいが、揉みしだくのには慣れたぜ
Fuck that shit! I'm through with this bitch
クソ食らえ! このビッチとはもう終わりだ
Old hen, please, can't get a bank of these welfare cheese
年増の雌鶏め、頼むぜ、ウェルフェア・チーズじゃこんな大金は稼げねぇよ
※「welfare cheese」は低所得者向けに政府から支給されるチーズのこと。ゲットーの貧困の象徴であり、安っぽい女や底辺の生活を揶揄している。
Now I'ma blow fifty G's overseas
さて、俺は海外で5万ドルを吹き飛ばしてくるぜ
I'm doin' the breeze in my 850
俺の850で風を切って走ってるのさ
※「850」は当時の高級車、BMW 850iのこと。
[Verse 4: RZA]
Suicidal, she been in more hotels than Bibles
自殺行為だ、あの女は聖書よりも多くのホテルに出入りしてきた
※アメリカのホテルの各部屋には「ギデオン聖書」が置かれているのが定番だが、それ以上に多くのホテルで体を売ってきたという、ヒップホップファンの間で高く評価されている秀逸なパンチライン。
Idol worshipin' bitch wasn't the type to make bridle
偶像崇拝のビッチは、手綱をつける(結婚する)ようなタイプじゃなかった
Strung on how the bitch maneuvered her tongue
そのビッチが舌をどう動かすかに、あいつは完全に夢中になっていた
From the top of his dick to the bottom of his ass split
あいつのイチモツの先から、ケツの割れ目の底までな
I told the God to jet quick, this wicked bitch was a harlot
俺は神(仲間)に早く逃げろと言ったんだ、この邪悪なビッチは売春婦だった
※「God」は5% Nation用語で黒人男性(同胞)を指す。
But had him trapped up inside the Charlotte Web
だが、彼女はシャーロットの蜘蛛の巣にあいつを罠にかけた
※名作児童文学『シャーロットのおくりもの(Charlotte's Web)』にかけて、抜け出せない女の罠を表現している。
She wasn't choosy, fucked for a movie and a loose leaf cigarette
あいつは選り好みしなかった、映画一本とバラのタバコ一本のためにヤッたんだ
Pussy stay wet and juicy like lemons, big ass in tight denim
プッシーはレモンのように濡れてジューシーで、タイトなデニムにデカいケツ
Had the most faithful niggas sinnin' against their women
一番誠実な黒人たちでさえ、自分の女を裏切って罪を犯させた
And enjoyed to watch relationships get destroyed
そして関係がぶっ壊れていくのを見て楽しんでいた
This unemployed welfare bitch was non-void
この無職の生活保護ビッチは、無効化できない存在だった
And shameless, her attitude was blameless
恥知らずで、彼女の態度は責められることもなかった
Even though she had a hundred dicks on her name list
名前のリストに100本のイチモツが載っていたとしてもな
Her obsession caused niggas to get the ass cheek injection
彼女の執着のせいで、黒人たちはケツの頬に注射を打つハメになった
※性病(梅毒や淋病など)の治療のために、クリニックで臀部にペニシリン注射を打たれることの生々しい描写。
The bitch lied, said she had Urinary Tract Infection
あのビッチは嘘をついて、単なる尿路感染症だと言い張った
I tried to warn him and bomb him, but she conned him
俺は彼に警告して衝撃を与えようとしたが、彼女は彼を騙した
Wanted the nigga to fuck her raw dog without no condom
あの黒人にコンドームなしの生(ロゥ・ドッグ)でヤらせたがったんだ
※「raw dog」はコンドームを着用せずに性行為をする危険なスラング。RZAはストリートの快楽の裏にある致死的なリスクを描写している。
*Woman moans*
(女のあえぎ声)
[Outro: Samples from The Four Assassins]
You people are all trying to achieve the impossible
お前たちは皆、不可能なことを成し遂げようとしている
That's exactly what we've done
それこそまさに我々がやってきたことだ
But you'll fail and you'll all die
だがお前たちは失敗し、皆死ぬだろう
If we die, the next generation will fight them too
もし我々が死ねば、次の世代も奴らと戦うだろう
And the one after them, for as long as they must
そしてその次の世代も、必要な限り戦い続ける
And eventually, we shall succeed
そして最終的に、我々は勝利するのだ
※1975年のショウブラザーズ映画『The Four Assassins(四刺客 / Marco Polo)』からのサンプリング。Wu-Tangの音楽シーンでの闘争と、次世代へ受け継がれる不屈の精神を宣言する象徴的なアウトロ。
