Artist: Ol’ Dirty Bastard (feat. Killah Priest)
Album: The Return to the 36 Chambers: The Dirty Version
Song Title: Don’t U Know
概要
1995年リリースのOl’ Dirty Bastard(以下ODB)の歴史的デビューアルバム『The Return to the 36 Chambers: The Dirty Version』に収録された、極めてユニークなストーリーテリング・トラック。RZAがプロデュースした重く不穏なベースラインの上で、ODBとWu-Tangファミリーの重鎮Killah Priestが、それぞれ全く異なるトーンの「女性とのエピソード」を語る。ODBがドラッグでハイになったまま教室で妄想を爆発させ、最終的に「オーラルセックスの授業」という荒唐無稽なエロティシズムへと突入していくのに対し、Killah Priestはノスタルジックで土臭い南部風の恋愛風景を描写する。イントロのスキットでは、女性たちがODBの「不潔さ(Dirty)」と「荒々しさ(Roughneck)」について議論を交わしており、ヒップホップにおける従来の「モテるラッパー像」を破壊し、コンプライアンス皆無の「Nasty(淫乱・下劣)」なキャラクターを己の最大の魅力として提示した、ODBの特異な美学が爆発している一曲である。
和訳
[Intro: Ol' Dirty Bastard]
Oh, cutie got it goin' on
あぁ、あのかわいこちゃん、イケてるわね
※ストリートの女性たちの井戸端会議のスキット。「かわいこちゃん」とはODBのこと。
Cute? What? That dirty motherfucker?
かわいい? はあ? あの小汚いクソ野郎が?
Yo, you buggin'
ちょっと、あんた頭おかしいんじゃないの
※「buggin'」はNY特有のスラングで、狂っている、バカなことを言っているという意味。
Ain't no buggin', he's an ugly motherfucker (You buggin')
おかしくなんてないわよ、あいつはただのドブスなクソ野郎じゃない(あんたがおかしいのよ)
Yo, look at his disposition, shorty got a stride
ヨォ、あいつの雰囲気を見てみなさいよ、あの子、歩き方がイケてるのよ
What stride?
歩き方がどうだって?
Bummy motherfucker, he ain't shit (Roughneck)
浮浪者みたいなクソ野郎よ、あいつなんてクソの価値もないわ(荒くれ者なのよ)
See, that's my flavor, roughneck, you don't know nothin' 'bout that, though
ほら、あれが私の好みなのよ。ラフネック(荒くれ者)、あんたにはその良さが全くわかってないみたいだけど
You got mad sour flavor, yo, 'cause that ain't shit at all
あんたの趣味はマジで最悪ね、ヨォ、あんなの何でもないわよ
I'm— yo, G, I don't think you really realize, look at him
私はね、ヨォ、G、あんた本当にわかってないと思うわ、あいつを見てみなさいよ
Look at what? Dirty motherfucker, he ain't shit
何を見るのよ? 小汚いクソ野郎、クソの価値もないわ
Hahaha, you don't see what I see, B
ハハハ、あんたには私が見てるものが見えてないのよ、B
I don't see nothin', you wear glasses, so
私には何も見えないわ、あんたはメガネかけてるからでしょ、だから
Hahaha, true, true, personality
ハハハ、そうね、確かに。パーソナリティ(個性)よ
I like that, motherfucker
私はそこが好きなのよ、クソ野郎
Oh, just look at homie's, just, disposition
あぁ、とにかくあのホーミーの、そう、雰囲気を見てみなさいよ
※メインストリームの小奇麗なR&Bシンガーやラッパーではなく、ODBのような制御不能で危険な男(Dirty, Roughneck)こそがストリートの女性を惹きつけるという、彼の特異なセックスシンボルとしての側面を自己言及的に示している。
[Verse 1: Ol' Dirty Bastard]
Approach the school 9:30, you're late
9時半に学校に到着、遅刻だな
The time happy, the solution was my date
楽しい時間、その解決策は俺のデート相手だった
Get in your class, walk to your chair
教室に入って、自分の席まで歩く
Pop is all you see and then eventually stare
ポンッと視界に入るもの、そしてついにはじっと見つめることになる
At the teacher, or students who were clockin' you
先生や、お前をじろじろ見てくる生徒たちをな
※「clockin'」は相手をじっと観察する、値踏みするというストリートスラング。
Lean back at this girl who kept clockin' you
俺をずっと見つめてくるこの女の子に向けて体をそり返す
Stimulated from a sensimilla blunt
シンセミラのブラントで刺激された状態でな
※「sensimilla」は受粉させていない強力な種なしマリファナ。マリファナで強烈にハイになった状態で学校の授業に出ているという無法な状況。
Tell the young girl, "Baby, you're the one I want"
その若い女の子に言うんだ、「ベイビー、俺が欲しいのはお前だ」って
She doesn't respond, pretends to ignore
彼女は反応しない、無視するふりをする
So you say to yourself, it be her cold and sore
だから心の中で呟く、あいつは冷たくて嫌な女だってな
Mentally visualize the aim on the board
黒板の上の目標を頭の中で視覚化する
As how to buy pussy you cannot afford
自分には手の届かないプッシーをどうやって手に入れるかっていう目標をな
※学校の授業内容など全く聞いておらず、頭の中は目の前の女の子とセックスすることだけだという描写。
This girl who was slim and trim
スリムで均整のとれたこの女の子は
Whispered in her friend's ear quietly, "I want him"
友達の耳元で静かに囁いた、「彼が欲しいわ」
I took out my books to write my notes in my class
俺は授業のノートを取るために教科書を取り出した
But I kept fantasizing my dick in that ass
だが俺はずっと、あのケツに俺のチンコをブチ込む妄想を続けてた
So I turned around to arrange a date
だから俺はデートを取り付けるために振り向いた
Swingin' episode, baby, number one's gotta say it
イケてるエピソードの始まりさ、ベイビー、ナンバーワンの俺が言わなきゃな
She popped her gum, cold twist her curl
彼女はガムを鳴らして、冷たくカールした髪をねじった
I said, "Baby, how you feel?" She said, "Shirl"
俺が「ベイビー、気分はどうだい?」って聞くと、彼女は「シャール」って答えた
Then I said, "Shirl," I just found my thrill
それで俺は言った、「シャール」、俺はちょうどスリルを見つけたところさ
Where? In the classroom? No, on Blueberry Hill
どこで? 教室の中でか? いや、ブルーベリー・ヒルでさ
※Fats Dominoなどの歌唱で知られる1940年代のR&Bの不朽の名曲「Blueberry Hill」の一節「I found my thrill on Blueberry Hill」の完璧な引用。ODBのルーツにある古いソウルやブルースの教養が、不純な文脈の中で突如として輝くパンチライン。
But also said, "Just bottle your hate"
だが彼女はこうも言った、「その憎しみは瓶に閉じ込めておいて」
She put her face on the desk, this is what the bitch said
彼女は机に顔を伏せて、このビッチはこう言ったんだ
"Because of you, I am hurting
「あなたのせいで、私は傷ついているの
Within my, within my heart
私の、私の心の中が
'Cause, no, I'm not right to be flirting
だって、ダメよ、私がイチャイチャするのは間違ってる
But our relationship has to start
でも、私たちの関係は始まらなきゃいけないの
You're the one that I'm clocking
私がずっと見つめてるのはあなたなのよ
It's time for you to stop mocking
もう私をからかうのはやめて
Don't want you to see me cry
私が泣くところを見られたくないの
This is why, this is why, this is why"
これが理由よ、これが理由、これが理由なの」
※ここでの女性のセリフも、古いR&Bやドゥーワップの歌詞を模したようなメロディアスな口調でラップされており、ODB特有の演劇的なパフォーマンスが光る。
[Verse 2: Killah Priest]
I met a girl named Chandra from way down yonder
俺はずっと南の向こうから来た、チャンドラって名前の女の子と出会った
※「yonder」は南部訛りで「あそこ、向こう」の意。ここからKillah Priestによる、都会のストリートとは一味違う、少し土臭くノスタルジックな情景描写が始まる。
The apple of my eye, had a Snapple and some fries
俺の瞳のリンゴ(お気に入り)、彼女はスナップルとフライドポテトを持ってた
※「Snapple」はアメリカで定番のフルーツ飲料ブランド。90年代の若者の日常的なアイテム。
Forgot the ketchup, that's when I pressed up
ケチャップを忘れてて、そこで俺は距離を詰めたんだ
"I've been watchin' you mowin' your lawn"
「君が芝生を刈ってるのをずっと見てたんだ」
The thoughts were flowin' while I'm holdin' her palm
彼女の手のひらを握りながら、いろんな考えが溢れ出していた
"Hey, what's that on your menu?" From there, we continued
「ねえ、君のメニューには何が載ってるんだい?」 そこから俺たちは続けた
To talk about this and that, we chit and chat
あれやこれやと語り合い、雑談に花を咲かせた
Sipped on the Coke, then I stroked her back
コーラをすり、俺は彼女の背中を撫でた
As she giggled and I wiggled to the bra
彼女がクスクス笑い、俺はブラジャーへと指を這わせた
She said, "Nah," that's when I noticed her pa
彼女は「ダメよ」と言った、その時俺は彼女の親父に気づいたんだ
Big Tank, who did nothin' but the spank
ビッグ・タンク、子供を引っぱたくことしかしない男さ
At parties, drink Bacardi and didn't think
パーティーではバカルディを飲み干して、何も考えずに
Just act silly with his brother Willy
兄弟のウィリーと一緒にただバカ騒ぎするだけ
Another hillbilly gettin' ill with the Philly
フィリー・ブラントで悪酔いしてる、もう一人の田舎者さ
※「hillbilly」はアメリカの田舎者(特にアパラチア山脈周辺の白人貧困層を指すことが多いが、ここでは粗野な田舎者全般)を指す。「Philly」はフィリー・ブラント(葉巻の中身を抜いてマリファナを詰めたもの)。
And moonshine, but it's a new time of day
密造酒もな、だが今はもう新しい時間帯だ
※「moonshine」はアメリカ南部の伝統的なトウモロコシの密造酒。
On the stoop doing the Patty Duke, okay
玄関の階段でパティ・デュークを踊ってる、いいぜ
※「Patty Duke」は1960年代のシットコムに由来する古いダンスのステップ。
It's like the old flip flaps through the shower caps
まるでシャワーキャップを通した昔のフリップフラップみたいだ
The platform shoes to Apple Jacks
厚底靴からアップル・ジャックスまでな
※70年代のファンクやディスコの時代を象徴する厚底靴(Platform shoes)や、大きなキャスケット帽(Apple Jack hat)といった、昔のブラックカルチャーのファッションアイテムを列挙し、古き良き時代の空気感を表現している。
Chub-chub
ぽっちゃりさん
[Interlude: Ol' Dirty Bastard]
Yo, you, niggas, niggas be actin' like
ヨォ、お前ら、野郎どもはこんなふうに振る舞い上がってよ
They be lovin' them, them, them fancy bitches
あいつら、あんな、あんな気取った上品なビッチどもを愛してるフリをしてやがる
I, I likes me a nasty bitch
俺は、俺は淫乱(ナスティ)なビッチが好きなんだよ
Bitch that's willin' to do anything at any given time
いついかなる時でも、喜んで何でもヤッてくれるようなビッチがな
Bitch gotta be nasty 'cause I'm a nasty nigga, I'll do anything, baby
ビッチは淫乱じゃなきゃダメだ、だって俺自身が淫乱な野郎だからな、何だってヤッてやるぜ、ベイビー
I wouldn't give a fuck what it was
それが何だろうと俺の知ったこっちゃねえ
I'll, ah, anything, I'm a nasty motherfucker, girl
俺は、あぁ、何でもするぜ、俺は最高にナスティなクソ野郎だからな、ガール
※ヒップホップにおけるステレオタイプな「トロフィー・ワイフ(見栄えのいい上品な女)」を否定し、己の欲望の赴くままに獣のように交尾できる「Nasty」な女性こそが最高だという、ODBの嘘偽りのない異常なスタンスの表明。
[Verse 3: Ol' Dirty Bastard]
I'm just sittin', right? In my class at a quarter to 10, right?
俺はただ座ってたんだ、だろ? 10時15分前の教室にな、だろ?
Waiting patiently for the class to begin, right?
授業が始まるのを大人しく待ってたんだ、だろ?
Teacher said, "Open up your texts
先生が言った、「教科書を開きなさい
And read the first paragraph on oral sex"
そしてオーラルセックスについての最初の段落を読みなさい」
※Verse 1からの続き。ハイになったODBの脳内で、学校の授業が突如としてポルノ映画のような妄想の世界へと切り替わる。
I said, "Oral sex, what kind of class is this?"
俺は言った、「オーラルセックスだと、一体何の授業なんだこれは?」
The girl next to me said, "What's wrong with you, miss?"
隣の女の子が言った、「どうしたの? お嬢さん」
※ODBに対して意図的に「miss(お嬢さん)」と呼びかけ、からかっている。
"This is a lesson that makes you feel fine
「これはあなたを最高の気分にさせるためのレッスンよ
Kind to ease your nerves and relax your mind"
あなたの神経を和らげて、心をリラックスさせるようなね」
I said, "Don't try to use no hypnotic spell"
俺は言った、「催眠術なんか使おうとするなよ」
She said, "Be my assistant, I'd show, rather tell"
彼女は言った、「私の助手になりなさい、言葉で説明するより、実際に見せてあげるわ」
My knees buckled, heart startin' to drop
俺の膝はガクガク震え、心臓は落ちそうになった
My dick grew to a size that my nerves couldn't stop
俺のチンコは神経でも止められないほどのサイズにまで膨れ上がった
I tried to run, she yelled out, "Freeze"
俺は逃げようとしたが、彼女は叫んだ、「動くな」
Pulled down my drawers, dropped to her knees
俺のパンツを引きずり下ろし、彼女は膝をついた
Ripped off my drawers as if she had claws
まるで爪が生えているかのように、俺のパンツを引き裂いた
Broke the rules that defied sex laws
性の法則に逆らうルールをぶち壊したんだ
She responded quick with a slick
彼女の反応は素早くて、滑らかだった
Welcoming kiss and an ice cream lick
歓迎のキス、そしてアイスクリームを舐めるような手つきさ
Oh, I begged, I begged
あぁ、俺は懇願した、懇願したよ
"Easy on my balls, they're fragile as eggs"
「俺の金玉には優しくしてくれ、卵みたいに繊細なんだ」
Part two comin' up
パート2に続くぜ
※強烈な下ネタのオチをつけ、B級映画の予告編のように無理やり話を終わらせる。狂気とユーモアの天才であるODBの面目躍如たるエンディング。
