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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Something Inbetween - Olivia Dean 【和訳・解説】

Artist: Olivia Dean

Album: The Art of Loving

Song Title: Something Inbetween

概要

UKネオソウル・シーンの気鋭、オリヴィア・ディーンのアルバム『The Art of Loving』に収録された「Something Inbetween」は、現代の流動的な恋愛観とアイデンティティの揺らぎを精緻に描いたミッドテンポ・ナンバーだ。愛を実践的な技術として捉えるアルバムのコンセプトにおいて、本作は関係性に明確な名前(レッテル)を付けることの息苦しさを浮き彫りにしている。「恋人か他人か」「すべてか無か」という二元論を拒絶し、誰の所有物にもならない「中間の何か(Something Inbetween)」を求める彼女のペルソナは、他者と同化することで自己が失われることを恐れる現代の若者世代のインサイトを鋭く突いている。窮屈さを感じながらも相手を完全に手放すことはできないという複雑な心理が、彼女の温かくも切実なボーカルによって見事に表現された、深い自己探求のアンセムである。

和訳

[Verse 1]

Don't say a lot of things we might regret, don't kiss anymore
後悔するかもしれないことはあまり言わないで、もうキスもしない
※決定的な言葉や行動を避けることで、後戻りできなくなる事態を防ごうとする防衛的な姿勢。

We're both tryin' to keep it clean on the cuttin' room floor
私たち、編集室の床をきれいに保とうとしているのね
※「cutting room floor」は映画の編集室でカットされたフィルムが落ちる床のこと。不要なものや見せたくない感情を切り捨て、関係を綺麗に取り繕おうと慎重になっている状態の秀逸なメタファー。

I'm too young to believe until the end, too scared to cut it short
最後まで信じ抜くには若すぎるし、途中で切り捨てるには怖すぎる
※「永遠」を誓うほどの成熟や確信はないが、関係を終わらせて孤独になる勇気もないというリアルな葛藤。

But this time, if I don't say it right, I don't care anymore
でも今回は、うまく言えなかったとしても、もう気にしない

I'm still here, but you're not getting me
私はまだここにいるけれど、あなたは私を手に入れることはできない
※物理的に一緒にいることと、精神的に所有されることは別であるという強い意志表示。

[Chorus]

I'm not leaving, just feel tightly squeezed, and
離れていくわけじゃない、ただ窮屈に感じているだけ

Love needs breathing
愛には呼吸が必要なの
※過度な束縛や期待は関係を窒息させる。愛を長続きさせるためには、お互いに自由な「余白(息継ぎ)」が必要不可欠であるという主張。

I'm not his, I'm not hers
私は彼のものでも、彼女のものでもない

I'm not your, "All or nothing"
私はあなたの「すべてか無か」のどちらかではない
※白黒はっきりさせる極端な二元論(All or nothing)で関係を定義されることへの明確な拒絶。

I'm more, can we still be something in between?
私はそれ以上の存在よ、私たちはまだその中間の何かでいられるかな?
※タイトル回収。「something in between」は恋人と他人の間、あるいは既存のラベルに当てはまらない自由で流動的な関係性のこと。

[Verse 2]

There's no point giving up on honesty, it's no use feeling bad
正直になることを諦めても意味がないし、嫌な気分になっても仕方がない

Is it thinking too high of myself to not wanna be sad?
悲しみたくないと思うのは、自分を過大評価しすぎているのかしら?

It's too much to belong to anyone, I'm too scared to be changed
誰かのものになるなんて重すぎる、自分が変わってしまうのが怖すぎるの
※他者に深くコミットすることで、自分のペースやアイデンティティが浸食され、不可逆的に変化してしまうことへの本能的な恐怖。

I know you call it selfish when I say
私がこう言うと、あなたは身勝手だと呼ぶのは分かっているわ
※自分の自由を守ろうとする態度が、相手から見れば単なる「都合のいい関係」を求めているように映ることも自覚している。

[Chorus]

I'm not leaving, just feel tightly squeezed, and
離れていくわけじゃない、ただ窮屈に感じているだけ

Love needs breathing
愛には呼吸が必要なの

I'm not his, I'm not hers
私は彼のものでも、彼女のものでもない

I'm not your, "All or nothing"
私はあなたの「すべてか無か」のどちらかではない

I'm more, can we still be something in between?
私はそれ以上の存在よ、私たちはまだその中間の何かでいられるかな?

[Bridge]

Oh, I don't know
ああ、分からない

They say the grass is greener where you water it
人は、水をやった場所の芝生が青くなると言うけれど
※有名なことわざ「The grass is always greener on the other side(隣の芝生は青い)」の現代的な派生表現。「他の人を羨むのではなく、今いる場所に水をやり(努力し)関係を育てればそこが青くなる」という教訓の引用。

But I, I don't know
でも私には、私には分からない

If I can grow here
ここで成長できるかどうかなんて
※「水をやれば育つ」という一般論は理解しつつも、今の息苦しい関係性の中に留まることが、果たして自分自身の本当の成長や幸福に繋がるのかという根本的な迷い。

[Chorus]

And I'm not leaving, just feel tightly squeezed, and
離れていくわけじゃない、ただ窮屈に感じているだけ

Love needs breathing
愛には呼吸が必要なの

I'm not his, I'm not hers
私は彼のものでも、彼女のものでもない

I'm not your, "All or nothing"
私はあなたの「すべてか無か」のどちらかではない

I'm more, can we still be something in between?
私はそれ以上の存在よ、私たちはまだその中間の何かでいられるかな?

Mm, something in between
その中間の何かで
※答えを出すことを急がず、曖昧なままの余白を残すように楽曲が静かに幕を閉じる。