Artist: JID (feat. BJ the Chicago Kid)
Album: DiCaprio 2
Song Title: Skrawberries
概要
JIDの2ndアルバム『DiCaprio 2』(2018年)に収録された「Skrawberries」は、黒人コミュニティにはびこる有害な男らしさ(Toxic Masculinity)からの脱却を図り、女性への深い理解と敬意を綴ったソウルフルな楽曲である。アトランタの訛りである「スクロベリー(イチゴ)」をタイトルに冠した本作は、DVや中絶といったパートナーの重いトラウマに寄り添うJIDの内省的なストーリーテリングが光る。また、この温かくメロウなトラックはJ. Coleと共に、アルバムリリース直前の2018年9月に急逝したMac Miller(アレンジャーとして参加)が手掛けており、彼の遺した美しい音楽的遺産としての側面も持つ。BJ the Chicago Kidのゴスペルライクなコーラスが、過酷な現実の中で互いを支え合うことの重要性を包み込むように歌い上げる、シリアスとユーモアが同居した名曲だ。
和訳
[Verse 1: J.I.D]
My girl booty soft and it's shaped like a skrawberry
俺の女のケツは柔らかくて、イチゴ(スクロベリー)みたいな形をしてる
※「skrawberry」はアトランタ等の南部特有の「strawberry」の訛り/スラング表現。ハート型のような魅力的なお尻の形を指している。
Her pussy bald with a tat like Stephon Marbury
あそこはツルツル(パイパン)で、ステフォン・マーブリーみたいにタトゥーが入ってるぜ
※元NBA選手のステフォン・マーブリーは、スキンヘッド(bald)の側頭部に自身のブランド「Starbury」のタトゥー(tat)を入れていた。その頭部と女性の局部を掛け合わせた、ヒップホップIQの高いユーモラスなパンチライン。
Carry all my dirt to the grave, I'm the pallbearer
俺の抱える全ての秘密(泥)を墓場まで持っていく、俺は棺を担ぐ男(ポールベアラー)だ
※「dirt」は「泥」だけでなく「知られたくない秘密/罪」のメタファー。
Bury all of my sins, staring out of the Benz
ベンツの窓から外を眺めながら、俺の罪を全て埋葬する
Gone off weed, gone off Hen', gone with the wind
ウィード(大麻)で飛び、ヘネシーで飛び、風と共に去りぬ、さ
※「Gone with the wind」はJIDの地元アトランタを舞台にした歴史的名作映画『風と共に去りぬ』のタイトル引用。大麻や酒で意識が飛んでいる(ハイになっている)状態を「風と共に去った」と巧みに表現している。
Gone with the pretty long heiress with the fairest skin
色白で美しい、ロングヘアの女相続人と共に消え去るんだ
※「heiress(女相続人)」と「hair is(髪が〜である)」を掛けた発音のワードプレイ。
Yelling in her face, and she repeat it like a parrot and
彼女の顔に怒鳴り散らすと、彼女もオウム(パロット)みたいに同じ言葉を繰り返す
Apparently, she gone keep yelling at me, I'ma never win
どうやら(アパレントリー)、彼女は俺に怒鳴り続けるみたいだ。俺には勝ち目がないな
※「parrot and(パロット・アンド)」と「Apparently(アパレントリー)」の踏み心地の良いライミング。
Where your ass was at when I was sleeping on the couch
俺がカウチ(ソファ)で寝てた時、お前はどこほっつき歩いてたんだよ
And in the whip?
それに車(ウィップ)の中で寝泊まりしてた時は?
※売れる前の下積み時代(家がなく車や他人のソファで寝ていた時期)の苦労の描写。
Probably with another nigga, on another nigga dick
多分、他の男と一緒にいて、そいつのディックに乗っかってたんだろ
I'm on another tip, my skin so tint, strength on strength
俺は別の境地(チップ)にいる、俺の肌は深く色づき、力がみなぎってるんだ
※「tint(濃い色合い)」は、黒人としての誇りと強さを象徴している。
One on ten against me, I won't break, I don't bend
1対10で囲まれようと、俺は壊れないし、屈しないぜ
Watch your statements, guard your chin
発言には気をつけな、顎(チン)をガードしろ
Guard your heart, guard your light
心を守り、お前の中の光(希望)を守り抜け
Find your zen, mind your lightness
自分の禅(平穏)を見つけ、身軽さ(軽率さ)に気をつけろ
You doing without cause you ain't looking within
お前が何も手に入れられないのは、自分自身の内側(within)と向き合ってないからだ
But if you ever in doubt, give this a spin
だが、もし迷うことがあれば、この曲を再生(スピン)してみな
※「give this a spin(レコードを回す=曲を聴く)」という音楽的な締めくくり。
[Chorus: BJ the Chicago Kid]
Yeah, for life, baby, I'm dressed for the war
イェー、生涯を懸けてだベイビー、俺は戦いの準備ができてる
Baby girl, I'm your soldier
愛しい人、俺はお前のためのソルジャーだ
But trippin' like this, back and forth, wonder who gon' hold you (Who's gon')
でもこんな風に揉めて、行ったり来たりしてたら、一体誰がお前を支えるんだ?(誰が)
Everybody needs somebody to hold them down (I said)
誰だって、自分を支えてくれる(ホールド・ダウンする)誰かが必要なんだよ(俺は言ったぜ)
Everybody needs somebody to hold them down
誰だって、自分を支えてくれる誰かが必要なんだ
[Verse 2: J.I.D]
Check, look, cool
チェック、なぁ、いいか
I mean shawty had relations that we never could speak about
つまり、彼女には俺たちが口に出せないような過去の関係があったってことさ
You get mad, I'm mad, we sleep it out
お前は怒り、俺も怒る、そして一晩寝て忘れるんだ
And then she had a man who used to beat her
それから、彼女には昔、DV(暴力)を振るう男がいた
So she told me she wanted out
だから彼女は、その関係から抜け出したいと俺に打ち明けたんだ
Got a couple abortions, now that pussy's a haunted house
何度か中絶も経験した、今じゃ彼女のあそこは「幽霊屋敷(ホーンテッド・ハウス)」みたいだ
※本作で最も物議を醸し、同時に最もヘヴィなライン。「幽霊屋敷」というショッキングな言葉選びは、生まれなかった命の霊が漂っているような深いトラウマと罪悪感、喪失感を、一切のオブラートに包まず生々しく具現化した表現である。
Now her heart cold, Antartica, Siberia
今や彼女の心は冷え切っている、南極やシベリアみたいにな
Had it planned out, curriculum, criteria
人生の計画(カリキュラム)や基準(クライテリア)はちゃんと立ててたはずなのに
Change, she feel pain, strain, built-up anger
予定は狂い、彼女は痛みや重圧、そして蓄積された怒りを感じている
From dealing with a dickhead, putting her life in danger
命を危険に晒すような、クソ野郎(ディックヘッド)と関わっちまったせいでな
I understand, it's times that you go through your women things
分かるよ、女特有の厄介な時期を乗り越えなきゃならない時もある
And sometimes can't gauge clearly on what you be thinking
お前が何を考えてるか、俺には正確に測れない(ゲージできない)時もあるさ
I swear I got your back and got the tab on what you drinking
でも誓って言うぜ、俺はお前の味方だし、お前が飲む酒のツケ(タブ)は俺が払う
You ain't gotta move a finger or pinky when we linking
俺たちが一緒にいる時(リンキング)は、指一本、小指(ピンキー)すら動かさなくていいぜ
Whatever keeps your boat afloat or ship sinking
お前のボートを浮かべ続けるためなら、俺の船が沈んだって構わない
From loose lips of side women stepping out of position
出しゃばってきた浮気相手(サイド・ウーマン)の失言(ルーズ・リップス)のせいで沈んだとしてもな
※第二次世界大戦時の米軍のプロパガンダ標語「Loose lips sink ships(口は災いの元/おしゃべりが船を沈める)」をサンプリング。他の女の噂話で自分たちの関係(Ship/Relationship)が沈みかける危機を巧みに表現している。
Breaking out of a system, prison
システム(社会の枠組み)や牢獄(プリズン)から抜け出す
Parallelogram, shaping the prism, stop signs never stopped I
平行四辺形(パラレログラム)がプリズムを形成する、一時停止の標識だって俺の目(アイ)は止められなかった
※「I(私)」と「Eye(目)」のダブルミーニング。視覚や幾何学的なメタファーを用い、社会のルールや限界に囚われない自身の生き方を示している。
Let's be realistic, I been trying to get in touch with my senses
現実を見ようぜ、俺は自分の感覚(感情)と向き合おうとしてきた
And be better to my sisters
そして、自分の姉妹(黒人女性たち)にもっと優しくあろうと努めてきたんだ
But niggas think that you feminine when you sensitive
でも、男が繊細(センシティブ)だと、周りの野郎どもは「女々しい(フェミニン)」って見下すんだよ
※黒人コミュニティやヒップホップ文化に根強く残る「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」への批判。「感情を見せることは男らしくない」というステレオタイプに異議を唱えている。
My homegirl rap, and she feminist
俺の女友達はラップをやってて、彼女はフェミニストだ
Hold it down for the women, I call her "Feminem"
女たちのために堂々と声を上げてる、俺は彼女を「フェミネム」って呼んでるぜ
※「Feminist」と「Eminem(エミネム)」を組み合わせたJID特有の造語。圧倒的なラップスキルを持つ女性ラッパーへの最大級の賛辞。Geniusでは、彼と頻繁にコラボするNonameやRapsodyを指していると考察されている。
Tell 'em how you really feel headass
本音をぶつけてやれよ、クソ野郎どもに
'Cause ass shots are dead ass and fake tits been around, we gas it
だって豊尻手術(アス・ショット)なんてもう完全に終わってる(デッド・アス)し、豊胸(フェイク・ティッツ)も溢れかえってて、俺らはそれを持て囃す(ガス・イット)ばかりだ
※「Ass shots(ケツへの注射)」と「Dead ass(死んだケツ/スラングで「マジで」の意)」のワードプレイ。SNS等で画一化された美容整形文化と、それを消費する男性側の責任に言及している。
Girl, you perfect without that makeup or the plastic surgery
なぁ、お前はメイクアップや整形手術なんてしなくたって、そのままで完璧だぜ
I'ma tell you how it is like Ron Burgundy
ロン・バーガンディみたいに、俺が真実(ありのまま)を伝えてやるよ
※ウィル・フェレル主演のコメディ映画『俺たちニュースキャスター(原題:Anchorman)』の主人公Ron Burgundyの引用。ニュースキャスターである彼のように「事の真相をありのままに(how it is)伝える」というユーモアを交えた誠実なメッセージ。
[Chorus: BJ the Chicago Kid]
Yeah, for life, baby, I'm dressed for the war
イェー、生涯を懸けてだベイビー、俺は戦いの準備ができてる
Baby girl, I'm your soldier
愛しい人、俺はお前のためのソルジャーだ
But trippin' like this, back and forth, wonder who gon' hold you (Who's gon')
でもこんな風に揉めて、行ったり来たりしてたら、一体誰がお前を支えるんだ?(誰が)
Everybody needs somebody to hold them down (I said)
誰だって、自分を支えてくれる誰かが必要なんだよ(俺は言ったぜ)
Everybody needs somebody to hold them down
誰だって、自分を支えてくれる誰かが必要なんだ
