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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

heart pt. 6 - Kendrick Lamar 【和訳・解説】

Artist: Kendrick Lamar

Album: GNX

Song Title: heart pt. 6

概要

本作は、2010年から続くKendrick Lamarの象徴的な楽曲シリーズ「The Heart」の第6弾である。2024年の歴史的ビーフにおいて、Drakeが先手を打って同タイトルのディス曲「The Heart Part 6」をリリースし、この神聖なシリーズ名を汚そうとした事件は記憶に新しい。しかし、ケンドリックが『GNX』で正式に発表した「真のpt. 6」は、Drakeへの反撃ではなく、自身を育てたレーベル「TDE(Top Dawg Entertainment)」の仲間たちへの深い愛と感謝、独立に伴うすれ違いの告白、そして和解のメッセージであった。Ab-Soul、Jay Rock、ScHoolboy Q、Dave Free、Top Dawgらとの無名時代の過酷で美しい思い出を振り返り、「Black Hippy」が実現しなかった責任を自ら背負う。ネットでの煽り合い(ビーフ)を経験した彼が、次世代に向けて「SNSではなく、直接顔を合わせて心で対話しろ」と語りかけるこの曲は、Drakeの偽物を無効化し、ヒップホップにおける真の「Heart(心)」を取り戻した歴史的な名曲としてReddit等のコミュニティで絶賛されている。

和訳

[Verse 1: Kendrick Lamar]

Load up the Pro Tools and press three
Pro Toolsを立ち上げて、「3」を押す
※音楽制作ソフト「Pro Tools」において、テンキーの「3」は録音開始のショートカットキー。彼らのすべてがこの録音ボタンから始まったことを示している。

Studio filled with Jack In The Box and Pepsis
スタジオはジャック・イン・ザ・ボックス(ファストフード)とペプシで溢れかえってた

Niggas watchin' WorldStar videos, not the ESPYs
みんなESPY賞(スポーツの祭典)なんかじゃなく、WorldStarの喧嘩動画を見てたっけな

Laughin' at B. Pumper, stomach turnin', I get up and proceeded to write somethin'
B・パンパーを笑い転げて腹を抱えた後、俺は立ち上がってリリックを書き始めた
※「Brian Pumper」は2000年代後半にネットでネタ(ミーム)にされていた元ポルノ男優のラッパー。当時のスタジオの日常的でリラックスした風景を描写している。

Ab-Soul in the corner mumblin' raps, fumblin' packs of Black & Milds
部屋の隅ではアブ・ソウルがラップを呟きながら、ブラック&マイルド(葉巻)の箱をいじり

Crumblin' kush 'til he cracked a smile
ニヤリと笑うまで、クッシュ(大麻)を細かく砕いてた

His words legendary, wishin' I could rhyme like him
あいつの言葉は伝説的で、俺もあいつみたいに韻を踏めたらって願ってたよ

Studied his style to define my pen
俺のペン(作詞のスタイル)を確立するために、あいつのスタイルを研究したんだ
※TDEの盟友であり、複雑な言葉遊びと哲学的なリリックで知られるAb-Soulからの多大な影響を率直に認めている。

That was back when the only goal was to get Jay Rock through the door
ジェイ・ロックを業界のドアから押し込むことだけが、俺たちの唯一の目標だった頃の話さ
※TDEの中で最初にメジャーレーベル(Warner Bros.)との契約を勝ち取ったJay Rock。彼を成功させることが、当時無名だったTDEクルー全員の希望であった。

Warner Brother Records, hope Naim Ali would let us know
ワーナー・ブラザース・レコード、ナイム・アリが良い返事をくれるのを祈ってた

Was excited just to go to them label meetings
レーベルのミーティングに行けるってだけで興奮してたな

Wasn't my record deal, but still, I couldn't beliеve it
俺の契約じゃないのに、それでも信じられないくらい嬉しかったんだ

Me and Rock inside thе booth hibernatin'
俺とロックはブースの中に冬眠(ハイバネート)するようにこもってた

It was simple math, if he made it, that mean I made it
単純な計算さ、あいつが成功すれば、俺も成功したってことだからな

Everything I had was for the team, I remained patient
俺のすべてはチームのためのものだった、俺はじっと耐えて待ったよ

Grindin' with my brothers, it was us against them, no one above us, bless our hearts
兄弟たちと一緒にハスリングして、「俺たち対世界(奴ら)」だった、俺たちの上に立つ者なんていなかった、俺たちの心(Heart)に祝福を

[Chorus: Sam Dew & Ink]

Use your heart and not your eyes (Baby, just relax your mind)
目ではなく、心を使うんだ(ベイビー、心をリラックスさせて)

If you got time, then I got time (Yeah, yeah)
君に時間があるなら、僕にも時間がある(イェー、イェー)

Free your thoughts and watch them fly
思考を解放して、それが飛び立つのを見届けるのさ

Use your heart and not your eyes (Mm-hmm)
目ではなく、心を使うんだ(フーム)

[Verse 2: Kendrick Lamar]

My nigga Dave had a champagne Acura
ダチのデイヴはシャンパンゴールドのアキュラに乗ってた

A bunch of instrumentals I freestyled in the passenger
助手席で、山ほどのインストにフリースタイルを乗せたっけな
※「Dave」はDave Freeのこと。高校時代からの親友であり、TDE時代のマネージャー、そして現在ケンドリックと共にクリエイティブ集団「pgLang」を率いる最重要人物。

That nigga wore several hats, a producer, a manager, director, and DJ
あいつはいくつもの帽子を被ってた(役回りをこなしてた)、プロデューサー、マネージャー、ディレクター、そしてDJとね

A hothead squabblin', Bloods, Pirus, and Keeways
血の気の多い連中の揉め事、ブラッズ、パイル、キーウェイズ(クリップス)の間にも割って入ってた
※"Keeways"はCrips(クリップス)の別称。Dave Freeが、ストリートのギャングの抗争さえも治めながらTDEの活動を支えていた裏の苦労を明かしている。

For this little thing of ours we called TDE
俺たちが「TDE」と呼んでいた、この小さな組織のためにな

I watched you take some penitentiary chances to say the least
控えめに言っても、お前がムショ行き(ペニテンシャリー)になりかねないリスクを背負うのを見てきたよ

Remember in the county building with MixedByAli
ミックスド・バイ・アリと一緒に、郡の役所にいた時のことを覚えてるか
※「MixedByAli」はTDEの初期からすべての名盤を手掛けてきた天才レコーディング・エンジニア。

We tried to freak the system just to make a couple ends meet
その日暮らしをやりくりするために、システムを騙そう(不正受給など)としたよな

That's my nigga for shit sure
あいつは間違いなく俺のダチだ

He brought Q over, but Q didn't rap, but he learned from our inspo
あいつがQを連れてきたが、当時のQはラップをしてなかった、でも俺たちの影響から学んでいったんだ
※「Q」はScHoolboy Q。彼がTDEに加入した当初はラッパーではなく、ケンドリックたちの背中を見てラップを始めたという歴史的背景。

We split Louisiana chicken riverboat specials
ルイジアナ・チキンのリバーボート・スペシャルをみんなで分け合った

Sleepin' next to 02R consoles to be our refuge
O2Rのミキサーの横で眠るのが、俺たちの避難所だった

He was homeless and I left home
あいつ(Q)はホームレスで、俺も家を出てた

Q said, "Dot, you won't be slept on, you the nigga to bet on" (Use your h—)
Qが言ったんだ、「ドット、お前は絶対に見過ごされない、お前は賭ける価値のある男だ」ってな

Top had given us dominion in the home he lived in
トップ(・ドウグ)は、自分の住む家を俺たちの領土(スタジオ)として提供してくれた
※TDEの創設者Anthony "Top Dawg" Tiffithが、無一文だった若きラッパーたちを自宅のスタジオに住まわせ、面倒を見ていたエピソード。

Hopin' that we see some millions, God bless our hearts
いつか数百万ドル(の成功)を掴むことを夢見てな、神よ、俺たちの心に祝福を

[Chorus: Sam Dew & Ink]

Use your heart and not your eyes (Baby, just relax your mind)
目ではなく、心を使うんだ(ベイビー、心をリラックスさせて)

If you got time, then I got time (Yeah, yeah)
君に時間があるなら、僕にも時間がある(イェー、イェー)

Free your thoughts and watch them fly
思考を解放して、それが飛び立つのを見届けるのさ

Use your heart and not your eyes
目ではなく、心を使うんだ

[Verse 3: Kendrick Lamar]

Punch played Phil Jackson in my early practices
初期の練習で、パンチはフィル・ジャクソンのような役割を果たしてくれた
※「Punch」はTDEのプレジデント(社長)。「Phil Jackson」はマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントを率いてNBAで何度も優勝した伝説のヘッドコーチ。Punchが若きケンドリックを偉大なラッパーへと導いたメンターであったことを示している。

Strategies on how to be great amongst the averages
平凡な連中の中で、どうすれば偉大になれるかの戦略を授けてくれた

I picked his brain on what was ordained, highly collaborative
何が運命づけられているのか、彼から知識を吸収した、最高のコラボレーションだったよ

RET pushed the label the same, amongst the savages
RETも、この野蛮な連中の中でレーベルを同じように押し上げてくれた

Moose kept my name in the function that he would run in
Mooseは自分が仕切るパーティーで、いつも俺の名前を出して売り込んでくれた

TEEZ kept the vultures away from me that was comin'
TEEZは、寄ってくるハゲタカども(悪徳業者)を俺から遠ざけて守ってくれた

Sounwave let me borrow his clothes for shows as a hype man
サウンウェーヴは、俺がハイプマンとしてショーに出る時、服を貸してくれたっけな
※「Sounwave」はケンドリックの数々の名曲を生み出したプロデューサー。まだ衣装すら買えなかった頃、彼がJay RockのバックMC(ハイプマン)を務めていた下積み時代を回顧している。

To cook up in this room 'til the night ends
夜が明けるまで、この部屋で曲を仕込んできたんだ

Time flies, I'm carryin' debates of a top five
時は過ぎ、今じゃ俺がトップ5の議論の的になっている

Buryin' my opps and allies
敵も味方も葬り去りながらな
※Drake陣営との壮絶なビーフを経て、ヒップホップ界の絶対王者として君臨する現在の姿。

But I'd done a half job communicatin' feelings of being stagnant
でも俺は、停滞しているという感情を伝えるコミュニケーションを怠っていた

Life was gettin' bigger than just rappin'
人生は、ただラップする以上のデカいものになっていたんだ

The business, what I was lackin'
俺に欠けていたのはビジネスの視点だった

Top used to record me back when it was poor me
俺が貧しかった頃、トップ(・ドウグ)が録音してくれていた

And now we at the round table for what assures me
そして今、俺たちは俺の将来を確かなものにするため、円卓(交渉のテーブル)についている

I guess my motivation was the yearnin' for independence
俺のモチベーションは、独立への渇望だったんだと思う
※ケンドリックがTDEを離脱し、Dave Freeと共に「pgLang」を立ち上げた理由。決してTDEへの憎しみではなく、自身の成長と進化のための避けられない選択であったことを告白している。

Poured everything I had left in the family business
残っていたすべてを、このファミリービジネスに注ぎ込んだ

Now it's about Kendrick, I wanna evolve, place my skillset as a Black exec'
今度はケンドリック自身のことだ、俺は進化し、黒人のエグゼクティブとして自分のスキルを活かしたかった

I jog my memory, knowin' Black Hippy didn't work 'cause of me
記憶を辿るよ、ブラック・ヒッピーが上手くいかなかったのは俺のせいだって分かってる
※ファンの間で長年待ち望まれながら、ついにアルバムが出なかった伝説のユニット「Black Hippy(Kendrick, Q, Ab-Soul, Jay Rock)」。自分がクリエイティブ面で先に進みすぎてしまったことが原因であると、彼が初めて公式に全責任を認めた歴史的なライン。

Creatively, I moved on with new concepts in reach
クリエイティブな面で、俺は手の届く新しいコンセプトへと前に進んでしまったんだ

Top, remember all them sessions we would strategize
トップ、俺たちが戦略を練ったあのセッションの数々を覚えてるか

To hit the streets, then come back, record three records? Ah
ストリートに繰り出して、戻ってきて3曲録音した日々を? ああ

To tell the truth, it fucked me up when D-Man passed
本当のことを言うと、D-Manが亡くなった時はかなり打ちのめされたよ
※TDEの最初期から共に活動してきたラッパー兼関係者のD-Man(Dangerookipawaa)が2024年に逝去した事件。これが独立によるすれ違いを修復し、和解する決定的なきっかけとなった。

The motive was the condolences, but the pride crashed
最初は弔意を伝えるのが目的だったが、そこで俺のプライドは崩れ去った

I had to bypass old mythologies I had
自分が抱えていた古い神話(思い込み)を迂回しなければならなかった

Put my heart on display like it was an iMac
俺の心(Heart)を、初代iMacみたいに透け透けにして展示してやるのさ
※1998年に発売された中身が透けて見えるトランスルーセントデザインのiMacに例え、隠し事なしに自分の「心=Heart(The Heart pt. 6)」をすべて曝け出しているという秀逸なメタファー。

To all my young niggas, let me be the demonstration
すべての若いニガたちへ、俺を反面教師(お手本)にしてくれ

How to conduct differences with a healthy conversation
健全な対話で、意見の違いをどう処理するかってことをな

If that's your family, then handle it as such
もし相手が家族なら、家族として扱うべきだ

Don't let the socials gas you up or let emotions be your crutch
SNS(ソーシャル)に煽られたり、感情を言い訳の杖にしちゃダメだ
※Drakeとの世界中を巻き込んだネット上での泥沼のビーフを経験したケンドリックだからこそ言える、次世代への重い教訓。

Pick up the phone and bust it up before the history is lost
歴史が失われてしまう前に、電話を取って直接話し合え

Hand-to-handshake is good when you have a heart-to-heart
心と心(Heart-to-heart)で向き合える時、手と手を取り合う握手は素晴らしいものになるんだ
※Drakeが放った「The Heart Part 6」という憎悪に満ちた偽物を完全に葬り去り、真の「The Heart」シリーズが「愛と対話と内省」のものであることを証明して曲を締めくくる。

[Chorus: Sam Dew & Ink]

Use your heart and not your eyes (Baby, just relax your mind)
目ではなく、心を使うんだ(ベイビー、心をリラックスさせて)

If you got time, then I got time (Yeah, yeah)
君に時間があるなら、僕にも時間がある(イェー、イェー)

Free your thoughts and watch them fly
思考を解放して、それが飛び立つのを見届けるのさ

Use your heart and not your eyes (Mm-hmm)
目ではなく、心を使うんだ(フーム)

 

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