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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

How Do You? - Radiohead 【和訳・解説】

Artist: Radiohead

Album: Pablo Honey

Song Title: How Do You?

概要

1993年発表のデビューアルバム『Pablo Honey』に収録された、Radioheadのディスコグラフィの中でも異色なほどストレートなパンク/グランジ・サウンドを鳴らすアグレッシブな楽曲である。歌詞では、イギリス特有の階級社会や保守的な政治家、あるいは有毒な男性性(トキシック・マスキュリニティ)を体現するような「危険な偏見主義者(bigot)」への強烈な皮肉が歌われている。特筆すべきはアウトロに挿入されている通話音声のサンプリングだ。これは当時メンバー間で流行していたアメリカのコメディアンによるイタズラ電話カセット『The Jerky Boys』からの引用であり、ここから「Pablo, honey?」というフレーズが切り取られ、記念すべきデビューアルバムのタイトル由来となった歴史的に重要なトラックである。

和訳

[Verse 1]

He's bitter and twisted
彼はひねくれ、憎悪に満ちている。
※「bitter and twisted(恨みがましくひねくれた)」は、特権階級に属しながら不平を漏らす傲慢な人物像や、当時のイギリスの保守的な権力者を揶揄する定型的な表現である。

He knows what he wants
自分が何を求めているかは、よく理解しているようだ。

He wants to be loved and
彼は愛されたがっているし、

He wants to belong
どこかに帰属したいと切望している。
※傍若無人な振る舞いの裏にある、強烈な承認欲求や孤独感という人間の脆弱性を突いている。暴君が抱える幼稚なルサンチマンを冷徹に解剖する、トム・ヨークの鋭い観察眼が光る一節だ。

He wants us to listen
僕らに耳を傾けさせたがり、

He wants us to weep
僕らに涙を流させたがる。
※権力者が大衆の感情をコントロールし、同情や服従を強要するファシズム的な心理構造を皮肉っている。彼らは悲劇の主人公を演じることで大衆を支配しようとする。

And he was a stupid baby who turned into a powerful freak
そして彼は、強大な権力を持った化け物へと変貌した、ただの愚かな赤ん坊だった。
※「powerful freak」は、政治家やメディアの権力者を指すメタファーである。未熟な精神のまま権力を持ってしまった者への痛烈な批判であり、Reddit等ではドナルド・トランプなどの後年のポピュリスト政治家の出現を完全に予見していたフレーズとして高く評価されている。

[Chorus]

But how do you?
だが、お前はどうなんだ?

How do you?
お前自身はどう生きている?

How do you?
一体どうやって生きていくつもりだ?
※対象への糾弾であると同時に、鏡写しのように聴き手(あるいはトム自身)の倫理観やスタンスを問い詰めるフレーズ。曲名にもなっているこの言葉は、解答のない社会への苛立ちを反復している。

[Verse 2]

He lives with his mother
彼は母親と一緒に暮らしている。

But we show him respect
なのに、僕らは彼に敬意を払っている。
※マザコン的で自立していない幼稚な男にも関わらず、社会的地位や権力、あるいは家柄があるため周囲がへつらっているという、社会の歪んだヒエラルキーを嘲笑している。

He's a dangerous bigot
彼は危険な偏見の塊だ。
※「bigot(狂信者、偏見を持つ人)」という強い言葉を使用し、レイシズムやミソジニーを内包した特権階級の害悪を明確に非難している。サッチャリズム以降のイギリスの右傾化に対するポリティカルな怒りが滲む。

But we always forget
しかし、僕らはいつもそのことを忘れてしまう。
※大衆の記憶の短さや、権力者の不祥事がいとも簡単に風化していく社会の構造的な欠陥(アパシー)を鋭く指摘している。Radioheadの反体制的なスタンスの原点とも言えるラインである。

And he's just like his daddy
そして彼は、彼の父親とそっくりだ。

'Cause he cheats on his friends
平気で友人を裏切るのだから。
※腐敗や裏切りが、家父長制や階級社会の中で世代を超えて再生産されていく「血の呪い」のような構造を描写している。

And he steals and he bullies
盗みを働き、弱い者をいじめる。

Anyway that he can
彼にできる、あらゆる卑劣な手段を使って。
※「bully(いじめっ子)」という表現から、パブリックスクール(アビンドン・スクール)時代にトム・ヨークが目撃した、あるいは自身が受けたであろういじめのトラウマと、社会の権力構造を重ね合わせていることが推測される。

[Chorus]

But how do you?
だが、お前はどうなんだ?

How do you?
お前自身はどう生きている?

How do you?
一体どうやって生きていくつもりだ?

[Outro]

“Please come to Florida.”
「お願いだ、フロリダへ来てくれよ。」

“Who the hell is this?”
「一体誰なんだ、お前は?」

“You bastard, you.”
「この野郎。」

“Hello?”
「もしもし?」

“Pablo?”
「パブロ?」

“Yeah?”
「あぁ?」

“You, you bastard. Pablo?”
「お前、この野郎。パブロか?」
※アメリカのコメディアン「The Jerky Boys」によるイタズラ電話の録音テープからのサンプリング。この理不尽で攻撃的な電話のやり取りに登場する「Pablo」という呼びかけが、アルバムタイトル『Pablo Honey』の直接的な由来となった。無作為な暴力性やコミュニケーションの断絶を象徴する不条理な音声として、楽曲の破壊的なトーンを見事に締めくくっている。