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What Is Left To Say - Thundercat & The Lemon Twigs 【和訳・解説】

Artist: Thundercat & The Lemon Twigs

Album: Distracted

Song Title: What Is Left To Say

概要

サンダーキャットのアルバム『Distracted』に収録された本作は、70年代のバロック・ポップやソフト・ロックを現代に継承するニューヨーク出身の兄弟デュオ、ザ・レモン・ツイッグス(The Lemon Twigs)との予期せぬ、しかし見事なコラボレーション楽曲である。サンダーキャット特有のうねるような超絶技巧ベースと、レモン・ツイッグスの構築的で美しいコーラスワークが融合し、極上のサイケデリック・ポップを形成している。歌詞のテーマは「コミュニケーションの断絶」と「感情のコントロール」だ。他者との心の壁や、セラピー的な感情との向き合い方(内なる子供のメタファー)が描かれており、親友マック・ミラーの死をはじめとする深い喪失を経験してきたサンダーキャットの、諦念とメランコリーが色濃く反映されている。得意のSF・オタク的なパロディを交えつつも、LAの喧騒の中で孤独と向き合う現代人のリアルな心情を切り取った名曲である。

和訳

[Intro]

One, two, three, four
ワン、ツー、スリー、フォー

[Verse 1: Thundercat]

Why do you try to hide the feelings you feel inside?
心の中で感じてる気持ちを、なんで隠そうとするのさ?

Could it be that you need another mask to hide behind?
その後ろに隠れるための、新しい仮面でも必要なのかな?
※LAのエンターテインメント業界における「ペルソナ(仮面)」のメタファー。常に本音を隠し、SNSや公の場でのキャラクターを演じ続けなければならないアーティストたちの精神的な疲弊を指摘している。

And if so, why should I ask you why?
もしそうなら、俺が「なんで?」なんて聞く必要ないよね?

Then you turn around and say
そしたら君は振り返ってこう言うんだ

I've been up and down so many times, so save it for another day
「これまで何度も浮き沈みを繰り返してきたから、その話はまた今度にして」って
※「up and down(浮き沈み)」は、単なる気分の変化だけでなく、双極的な感情の波や、ドラッグのアップダウン、あるいは過酷な音楽業界での成功と挫折を示唆している。心の痛みに向き合うことを先延ばしにする現代人の防衛機制である。

[Chorus: Thundercat & The Lemon Twigs]

What is left to say when you've made up your mind?
君がもう心を決めちゃってるなら、俺から言えることなんて残されてないよ
※レモン・ツイッグスの兄弟による重厚で美しいハーモニーが加わることで、個人の呟きから、普遍的な「諦念」へと楽曲のスケールが押し広げられている。

You can spend your whole life trying to find the way that you feel inside
自分の本当の気持ちを見つけるために、一生を費やすことだってできるんだぜ

Could it all just be a lie?
それって全部、ただの嘘だったのかな?

Ooh, ah
ウー、アー

[Verse 2: Thundercat]

I don't need much, maybe a simple touch
俺は多くは求めてないよ、ちょっと触れ合うだけでいいんだ

It's in the way that you reply to me like you can see
君の返事の仕方でわかるよ、まるで全部見透かしてるみたいだ

You always shove me out until I'm stuck inside my mind
君はいつも俺を突き放して、俺は自分の心の中に引きこもっちゃうんだ
※対人関係での摩擦から逃れるため、アニメやゲームなど自分の内面的な安全地帯(セーフスペース)に引きこもってしまうサンダーキャットのオタク的な内向性が表れたライン。

I've been here so many times before, so why do I even try?
こんな状況、これまで何度も経験したのに、なんで俺はまだ頑張ろうとしてるんだろ?

[Chorus: Thundercat & The Lemon Twigs]

What is left to say when you've made up your mind?
君がもう心を決めちゃってるなら、俺から言えることなんて残されてないよ

You can spend your whole life trying to find the way that you feel inside
自分の本当の気持ちを見つけるために、一生を費やすことだってできるんだぜ

Could it all just be a lie?
それって全部、ただの嘘だったのかな?

Ooh, ah
ウー、アー

[Verse 3: Thundercat]

Feelings are like children in the car
感情ってやつは、車に乗ってる子供みたいなもんなんだ
※この楽曲における最大のハイライトであり、Reddit等でも深く考察されているライン。これは実際の心理療法(ACT:アクセプタンス&コミットメント・セラピー等)で頻繁に用いられる有名なメタファーである。自身のメンタルヘルスやセラピーの経験をオープンに語る彼らしい表現だ。

You can't put them in the trunk, but let them drive, you won't go far
トランクに押し込めることはできないけど、運転させたら遠くへは行けないんだよ
※前行からの続き。「感情(子供)」を無理やり抑圧する(トランクに閉じ込める)のは危険だが、かといって感情にすべてを委ねて暴走させる(運転席に座らせる)と人生は破綻するという、極めて深い心理的洞察である。

And if someone should ask me why
もし誰かに「なんで?」って聞かれたら

I'll turn around and say
俺は振り返ってこう言うね

These are the drugs you're looking for, go on your way
「これがお探しのドラッグだよ、さあ自分の道を行きな」って
※映画『スター・ウォーズ』のオビ=ワン・ケノービによる有名なセリフ「These aren't the droids you're looking for(これらはお前たちが探しているドロイドではない)」のパロディ。相手をマインドコントロールで追い払うジェダイの技を、LAにはびこるドラッグ・カルチャーと皮肉たっぷりに掛け合わせている。真摯な対話を諦め、相手が欲しがる安易な逃避(ドラッグや嘘)を与えて突き放すという、サンダーキャット流のダークでオタク的なユーモアの極致である。

[Chorus: Thundercat & The Lemon Twigs]

What is left to say when you've made up your mind?
君がもう心を決めちゃってるなら、俺から言えることなんて残されてないよ

You can spend your whole life trying to find the way that you feel inside
自分の本当の気持ちを見つけるために、一生を費やすことだってできるんだぜ

Could it all just be a lie?
それって全部、ただの嘘だったのかな?

Ooh
ウー