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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

THE BENDS! (OG MIX) - JPEGMAFIA 【和訳・解説】


 

Artist: JPEGMAFIA

Album: EP!

Song Title: THE BENDS! (OG MIX)

概要

本作「THE BENDS! (OG MIX)」は、JPEGMAFIAが2020年にリリースした『EP!』に収録された、極めて政治的かつ挑発的なプロテスト・ソングである。楽曲の冒頭と結びには、当時のドナルド・トランプ大統領が「アフリカ系アメリカ人コミュニティからの圧倒的な支持」を騙る実際の演説音声や集会のコールがサンプリングされており、トランプ政権下で分断されたアメリカ社会への強烈な皮肉として機能している。制作された2020年はBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動が激化していた時期であり、歌詞には抗議デモの最中にホワイトハウスの地下壕に逃げ込んだトランプを「Bunker bitch(地下壕のビッチ)」と痛烈に批判するラインが含まれる。さらに、GTA(グランド・セフト・オート)のチートコードやマウンテンデューといったネットカルチャー・オタク文化の引用を交えつつ、白人至上主義者や右派のネットトロールたちへの怒りを冷徹なフロウで叩きつけている。JPEGMAFIAの持つアナーキーなアティチュードと、ブラックコミュニティを搾取する政治構造への鋭い批判眼が、ノイジーで実験的なビートの上で完璧に融合した傑作である。

和訳

[Intro: JPEGMAFIA & Donald Trump]

But the support we're getting from the African-American community has been overwhelming, and I wanna thank each and every one of you
我々がアフリカ系アメリカ人コミュニティから得ている支持は圧倒的なものであり、皆さん一人一人に感謝したい。
※2020年の大統領選に向けたドナルド・トランプの実際の演説音声をサンプリング。彼が黒人層から熱狂的な支持を得ているという虚偽に近いアピールを冒頭に置くことで、楽曲全体の痛烈な皮肉のセットアップとしている。

Shit (More clapping)
クソが(さらに拍手が続く)

[Verse 1]

Maybe I’m stuck in my ways
多分、俺は自分のやり方に固執してるんだろうな

Fantasies, fantasies, fantasies
空想、幻想、妄想ばかりさ

I should rap like Sly Tendencies
スライ・テンデンシーズみたいにラップすべきかもな
※「Sly Tendencies」は、Odd FutureのラッパーEarl Sweatshirt(アール・スウェットシャツ)が初期に名乗っていた別名。彼の初期のダークで複雑な多音節ライムや、アンダーグラウンドなスタイルを引き合いに出している。

Obviously, I’m who I meant to be (Facts)
言うまでもなく、俺はなるべき自分になっている (Facts)

My leader treat me like an enemy, he a casualty
俺のリーダーは俺を敵みたいに扱う、あいつは犠牲者だ
※「リーダー」とは大統領(トランプ)のこと。自国の黒人市民や抗議デモの参加者を「テロリスト」や「敵」として扱った当時の政権の姿勢を批判している。

Wonder if he cry when he see fans of me
あいつが俺のファンを見たら泣き出すんじゃないかな

Can't believe we thought he’d be the man for me
あいつが俺たちのための男だなんて思ってたことが信じられねえよ
※過去に一部の黒人層がトランプの経済政策などに期待を寄せていたことへの落胆と皮肉。

It’s sad, for real, melody
マジで悲しいことさ、メロディ

When we fuckin' you better pretend to be
俺たちがヤる時は、ふりをした方がいいぜ

Gotta keep that on-brand positioning
そのブランド通りの立ち位置をキープしなきゃな

No surprises, you know its the bends with me
驚くことじゃない、俺といると潜水病になるって分かってるだろ
※タイトルの「The Bends(減圧症/潜水病)」の回収。急激な圧力の変化によって引き起こされる症状であり、JPEGMAFIAの予測不可能な音楽性や、急激に変化する過酷なアメリカの政治状況の比喩。Radioheadの同名アルバムへのオマージュの可能性もある。

Now halt, niggas dyin', you know it’s y’all fault
さあ止まれ、黒人たちが死んでいる、お前らのせいだって分かってるはずだ

People pray for the press to impeach
人々はメディアが弾劾に向けて動くよう祈っている

Deeper down, know that vote is a loss
心の奥底では、その投票が無駄になるって分かっているのにな
※トランプの弾劾(impeach)を期待するリベラル層への冷めた視点。結局のところ、アメリカの政治システム自体が腐敗しており、投票という行為すら無力であるという深いニヒリズム。

It's sad (Yeah)
悲しいことだ (Yeah)

[Break]

Yeah, ooh-oh, ooh-oh

Ooh, oh, no no, yeah

Ayy, I don't got nothin' to say to remember this shit
Ayy、こんなクソみたいなこと、記憶に留めるような言葉は何もねえよ

Uh

[Verse 2]

MAGA raps, caught a body in a MAGA hat (Yeah)
MAGAラップ、MAGAハットを被って死体を転がす (Yeah)
※「MAGA」はトランプの強硬なスローガン「Make America Great Again」の略。保守派のラッパーを嘲笑しつつ、トランプ支持者(MAGAハットを被った白人至上主義者など)が実際にマイノリティに暴力を振るう現実を描写している。

Who try get rid of me? Let my bottom bitches handle that
誰が俺を排除しようとしてる? 俺のボトム・ビッチたちに処理させな
※「bottom bitch」はピンプ(ポン引き)スラングで、一番稼ぎが良く信頼できる一番手の娼婦のこと。ここでは、自分に牙を剥くヘイターへの処理を身内の精鋭に任せるという比喩。

Nah, baby, I don’t wanna go, ah
いや、ベイビー、俺は行きたくないんだ、ah

Made men make it look close, fuck the polls
成功者たちは接戦のように見せかける、世論調査なんてクソ喰らえだ
※「Made men」はマフィアの正式メンバーや権力者のこと。支配層が選挙戦や世論調査(polls)を意図的に操作し、大衆をコントロールしているという指摘。

Change the language when they decipher the code
奴らが暗号を解読したら、言語を変えてやる

Flip the script, now the caption is closed
台本をひっくり返せ、今や字幕は閉じられた

Vice City, used to print all my codes
バイスシティ、昔はよく俺のチートコードを印刷してたっけな
※人気ゲーム『Grand Theft Auto: Vice City』のこと。昔、プレイヤーたちがゲームを有利に進めるためのチートコードを紙に印刷していたというネット世代・ゲーマー世代ならではの引用。

Strap on my hip 'cause I’m bitter and old
腰には銃を下げてる、俺はひねくれたジジイだからな

Mountain Dew sippers, they hatin' the scroll (Yeah, yeah, yeah)
マウンテンデューをすする連中、奴らはスクロールを嫌がってる (Yeah, yeah, yeah)
※「Mountain Dew sippers」は、ネットの掲示板に入り浸る右派のインセルやステレオタイプなゲーマー(トランプ支持層)を揶揄した表現。「scroll」はSNS等のタイムラインのスクロールを指し、自分たちに都合の悪い現実の情報から目を背けている様を描写している。

Bunker bitch decoratin' his home, uh
地下壕のビッチが自分の家を飾り付けてやがる、uh
※ヒップホップファンの間で高く評価される強烈なディスライン。「Bunker bitch」とはドナルド・トランプのこと。2020年にホワイトハウス周辺でBLM抗議デモが激化した際、彼が恐怖のあまり地下壕(Bunker)に一時避難したという報道に対する痛烈な嘲笑。

Black man got it sowed
黒人が種を撒いたんだ

Get the money, y’all can keep all the hope
金は俺がもらう、希望なんてものは全部お前らが持っておけ

Rich, all my enemies is broke
俺は金持ちで、敵は全員一文無しだ

Big bank and we rakin' in more, yee
デカい銀行口座、俺たちはさらにかき集める、yee

Off a probation, them cases is closed, woo
保護観察期間は終了、奴らの事件は解決済みだ、woo

I'ma tell we like Trump told you
トランプがお前らに言ったみたいに言ってやるよ

Fuck it, nigga, what we got to lose?
クソが、俺たちに失うものなんてあるか?
※2016年の大統領選で、トランプが黒人有権者に向けて放った「What do you have to lose?(私に投票して失うものが何かあるのか?)」という悪名高い発言のサンプリング的引用。JPEGMAFIAはこの言葉をストリートのハングリー精神と反逆のアティチュードとしてフリップしている。

Ain't gon' be no peace with the crew
このクルーに平和なんて訪れないだろうな

'Cause it's one piece we gon' aim at you
だってお前らを狙うための一丁があるからな
※「peace(平和)」と「piece(銃を意味するスラング)」をかけた高度なダブルミーニング。

[Outro]

Baby, baby don't leave
ベイビー、ベイビー、行かないで

Baby don't leave
ベイビー、行かないで

We're ready to leave
私たちは出発の準備ができている

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち
※トランプ陣営が用意した「Blacks for Trump」というプロパガンダ運動のシュプレヒコール音声。

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち

I can't believe
信じられないよ

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち

Blacks for Trump
トランプを支持する黒人たち
※アウトロでこの言葉を不気味にループさせることで、一部のマイノリティが自身を迫害する権力者を支持・加担させられてしまうという、アメリカ社会の洗脳的でディストピアな現実を強烈に皮肉り、楽曲を締めくくっている。