Artist: JPEGMAFIA (feat. Abdu Ali & Buzzy Lee)
Album: All My Heroes Are Cornballs
Song Title: DOTS FREESTYLE REMIX
概要
本作は、JPEGMAFIA(通称:Peggy)の3rdアルバム『All My Heroes Are Cornballs』(2019年)に収録された、彼の音楽的振れ幅と混沌とした精神性を象徴するトラックだ。前半はトラップのベースが効いたグリッチーなビート上で、マドンナやToonami(アニメ放送枠)などのネット・ポップカルチャーと、ヴェルサーチェ暗殺事件などのバイオレンスを交錯させたハードコアなラップを吐き出す。しかし、後半に入ると突如としてSasha SpielbergのソロプロジェクトであるBuzzy Leeの幻想的なボーカルが入り込み、全く別のメロウな楽曲へと変貌する。さらにアウトロでは、ボルチモアのアヴァンギャルド・アーティストAbdu Aliが「俺を泣かせてくれ」と感情を剥き出しにして叫ぶ。ヒップホップ特有の「有害な男らしさ(タフなラッパーの虚像)」から始まり、最終的に隠された脆弱性(Vulnerability)と痛みを露わにするこの構成は、アルバム全体のコアテーマである「強がりとトラウマの同居」を見事に体現している。
和訳
[Intro: JPEGMAFIA]
Uh
Stuff, stuff a‚ uh
詰め込む、詰め込むんだ、uh
[Verse 1: JPEGMAFIA]
I stuff a Glock in my bitch pocket (Hey)
グロックを俺のビッチのポケットにねじ込む (Hey)
Bitch‚ stop it‚ skinny nigga, big papi (Hey)
ビッチ、やめとけ、ガリガリの黒人だが、態度はビッグ・パピだ (Hey)
※「big papi」は元MLBの強打者デビッド・オルティーズの愛称。自分の体格は細身だが、ストリートでの存在感や器のデカさは大物級だというボースト。
I put the pedal to metal, we go Nicki Minaj (Huh)
アクセルをベタ踏みする、俺たちはニッキー・ミナージュみたいにブッ飛ばすぜ (Huh)
※「put the pedal to metal」はフルスロットルで加速すること。ニッキー・ミナージュのハイエナジーな楽曲やアグレッシブなスタンスへのリファレンス。
One deep‚ baby, can't top it (Brrat)
たった一人で乗り込むぜ、ベイビー、これ以上はないだろ (Brrat)
※「One deep」は仲間を連れず単独で行動すること。ストリートにおける自信の表れ。「Brrat」は銃声のアドリブ。
5'9", with the stick‚ I look like Big Papi
身長5フィート9インチ、スティックを持てばビッグ・パピに見えるだろ
※「stick」は拡張マガジン付きの銃と、野球のバットのダブルミーニング。小柄(約175cm)だが、銃を持てばデビッド・オルティーズのような脅威のバッターになるというパンチライン。
I keep a shotty, bottom bitches not harm me
ショットガンを常備してる、底辺のビッチどもじゃ俺に傷一つつけられねえ
※「shotty」はショットガン。
How could I not be? Everything you copy, huh (Bitch)
どうしてそうならないわけがある? お前らは全部俺のコピーじゃねえか、huh (Bitch)
I killed rock, now I'm sending bullets at you zombies
俺はロックを殺した、今はてめえらゾンビどもに弾丸を撃ち込んでる
※ヒップホップがロックに代わって最大のユースカルチャーとなったこと、あるいは古いロック的な価値観を破壊したという宣言。ゾンビは思考停止したラッパーやヘイターの比喩。
You never haunt me (Hah), niggas tried to Vietnam me (Yeah)
お前らが俺に憑りつくことはねえ (Hah)、連中は俺をベトナム戦争に引きずり込もうとしやがった (Yeah)
※「Vietnam me」はベトナム戦争のような泥沼の争い(ビーフやネット上の炎上)に巻き込むこと。退役軍人である彼らしい戦争のメタファー。
But I've been playing with pistols since you watching Toonami (Yeah)
だが俺は、てめえらが『Toonami』を見てた頃からハジキで遊んでたんだよ (Yeah)
※「Toonami」はアメリカで日本のアニメ(ドラゴンボールやガンダムなど)を放送していたカートゥーンネットワークの番組枠。ヘイターたちが安全な家でアニメを見ていた子供時代から、自分はストリートで危険と隣り合わせだったという対比。
I'm not a rapper, I'm white trash in a mocha body (Oh)
俺はラッパーじゃねえ、モカ色の肉体に入ったホワイトトラッシュさ (Oh)
※ヒップホップのステレオタイプな「黒人ラッパー」の枠組みを拒絶し、あえて「ホワイトトラッシュ(貧困層の白人)」の精神性や反骨心を持っていると自称する、彼のアイデンティティの複雑さとパンクなアティチュード。
Ain't no career, I'm just hoping Madonna adopts me (Facts)
キャリアなんてねえよ、マドンナが俺を養子にしてくれないかと願ってるだけさ (Facts)
※マドンナがマラウイ共和国から黒人の子供たちを養子に迎えた事実に対するブラックジョーク。音楽業界でキャリアを築くより、白人セレブのペット(養子)になったほうが手っ取り早いという痛烈な皮肉。
I get it popping, fuck rock, bump Poppy (Brrat)
俺はブチ上げるぜ、ロックなんかクソくらえだ、ポピーを爆音で流せ (Brrat)
※「Poppy」はYouTuberから奇抜なポップ/メタルシンガーへと転身したアーティスト。古いロックを否定し、ネット発のオルタナティブなポップアイコンを支持する彼特有のネットカルチャー愛。
I put the stock in, I'm scheming, I'm not plottin' (Hah)
ストックを肩に当てる、俺は企んでるんだ、ただの陰謀じゃないぜ (Hah)
※「stock」は銃の銃床。「scheming(実行を伴う企み)」と「plottin'(頭の中だけの計画)」を対比させ、自分が確実に行動を起こす人間であることを示している。
These niggas steppin' to me, end up Gianni Versace'd, nigga
俺に突っかかってくる奴らは、ジャンニ・ヴェルサーチェと同じ末路を辿るぞ、なあ
※高級ブランド「ヴェルサーチェ」の創業者ジャンニ・ヴェルサーチェは、1997年に自宅前で銃殺された。敵対する者は彼のように射殺されるという過激なネームドロップ。
[Interlude: JPEGMAFIA]
Say, say
なあ、おい
Do a feature for what?
何のために客演するって?
Bro, I been dyin' to kick it
兄弟、俺はずっと遊びたくてウズウズしてたんだぜ
I'm too big for my britches
俺は図に乗りすぎてるな
※「too big for one's britches」は「生意気だ、思い上がっている」という慣用句。
I'm too rich for these bitches
こんなビッチどもの相手をするには、俺はリッチすぎるんだ
Rich in spirit, not in wealth, nigga
魂がリッチなんだよ、富の話じゃないぞ、なあ
Don't get it confused, you feel me?
勘違いするなよ、言ってる意味わかるか?
Again, do a feature for what?
もう一回聞くが、何のために客演するって?
(Like, like, what the fuck for?)
(っていうか、マジで何のためだよ?)
[Verse 2: Buzzy Lee]
And you know that I'm afraid of everything
あなたは私がすべてを恐れているって分かってるわよね
※ここからBuzzy Leeの透き通るようなボーカルに切り替わり、Peggyの攻撃的なラップから一転して、内省的で脆い感情の世界へと引き込まれる。
Written like a ghost stuck behind the wind
風の後ろに閉じ込められた幽霊のように描かれている
And you know that I'm a fool with the thing
そして私がそれに関しては愚か者だって分かってるでしょ
Written like a ghost in the wind
風の中の幽霊のように描かれている
[Outro: Abdu Ali]
Keep goin', baby
そのまま続けろよ、ベイビー
Make me cry, nigga
俺を泣かせてみろよ、なあ
Like, make me fuckin' cry
なあ、俺をマジで泣かせてくれよ
Make me fuckin' cry
俺をマジで泣かせてくれ
We talkin' about this story, I'm 'bout to fuckin' cry
この物語について話してたら、マジで泣きそうになってきたぜ
※ボルチモアのアーティストAbdu Aliによる、感情を剥き出しにしたスポークンワード。マッチョイズムが絶対視されるストリート・ヒップホップにおいて、「泣く」という脆弱性(Vulnerability)を肯定し、強がりの裏にあるトラウマを解放するアルバムのハイライト的な演出。
We talkin' about this story, I'm 'bout to fuckin' cry
この物語について話してたら、マジで泣きそうになってきたぜ
