Artist: Drake
Album: ICEMAN
Song Title: Janice STFU
概要
本作「Janice STFU」は、ドレイクの最新アルバム『ICEMAN』に収録された、コンシャス・ヒップホップとそれを神格化するシーンの偽善に対する強烈なカウンター・トラックだ。特筆すべきは、ケンドリック・ラマーをはじめとする「意識高い系」のラッパーたちへ向けられた徹底的な弾劾である。白人の罪悪感(ホワイト・ギルト)を利用して評価を得ているという痛烈な批判や、カメラの前だけでフッドの慈善活動を行い、普段は高級住宅街に住む姿をフェイクだと一刀両断している。さらに、過去にドレイク自身がフックアップした事実(『Take Care』収録の「Buried Alive Interlude」への皮肉)や、レコード契約の裏事情まで赤裸々に曝け出している。タイトルの「Janice」は口うるさい批判者(ネット上のヘイターやフェイクな関係者)を象徴するスラング的ペルソナであり、メロウなビートに乗せて最も冷酷な真実を突きつける、王者の貫禄と凄みが同居した一曲である。
和訳
[Intro]
Emiliana, it's been so long since you texted me
エミリアナ、君からテキストが来てから随分経ったな
I finally took a break and now I feel like I'm on ecstasy
ようやく一息つけて、今はエクスタシーでキマってるような気分だよ
You say what my work means to me will one day be the death of me
君は、俺にとっての仕事の重みがいつか俺自身を殺すだろうって言う
They tried to kill me once, but, darling, you just resurrected me
奴らは一度俺を殺そうとしたが、ダーリン、君が俺を蘇らせてくれたんだ
[Chorus]
Reach me, baby
俺に連絡してくれよ、ベイビー
Call my phone and say you need me, baby
電話をかけて、俺が必要だと言ってくれ、ベイビー
I'm so green, you gotta teach me, baby
俺はまだまだ未熟だから、君が教えてくれなきゃ、ベイビー
※「green」は「未熟、初心者」を意味するが、この後に続く大麻や金(グリーン)とのワードプレイの前振りとなっている。
From Vancouver, you a BC baby
バンクーバー出身、君はBCのベイビーだ
※「BC」はカナダのブリティッシュコロンビア州(バンクーバーがある州)のこと。
Pull up Maybach, beep-beep, baby
マイバッハで乗り付ける、ビープ・ビープ、ベイビー
And my shit came with the heat seats, baby
俺の車にはシートヒーターが付いてるんだぜ、ベイビー
Swear my label gotta free me, baby
誓って言うが、俺のレーベルは俺を解放しなきゃならないぜ、ベイビー
※メジャーレーベルとの契約の縛りや、業界のシステムからの独立を示唆している。
Blow on me just like some green tea, baby
緑茶みたいに俺に息を吹きかけて冷ましてくれよ、ベイビー
※熱いお茶をフーフーと冷ます行為と、マリファナ(green)を吸う(blow)行為、さらにオーラルセックスの隠語を掛け合わせたセクシャルなトリプルミーニング。
Ayy, ayy
[Verse 1]
Ayy, buried alive, somеone come dig me up
エイ、生き埋めにされた、誰か俺を掘り起こしに来てくれ
※ヒップホップファンの間で最大の論争を呼んだライン。ドレイクの2011年の名盤『Take Care』に収録され、ケンドリック・ラマーが出世するきっかけとなった客演曲「Buried Alive Interlude」の直接的なリファレンス。「俺が終わった(生き埋めにされた)と言うなら掘り起こしてみろ」というケンドリックへの強烈な煽りである。
If I call up your shawty right now, shе pickin' up, yeah
もし俺が今お前の女に電話したら、彼女は絶対に出るぜ (Yeah)
※敵対するラッパーのパートナーを寝取る(あるいはすでに親密な関係にある)という、ドレイク特有の冷酷な精神攻撃。
You boys got big off my name, that's big enough
お前らガキどもは俺の名前を利用してデカくなった、もう十分だろ
※ケンドリックやA$AP Rockyなど、過去に自身がフックアップしたりツアーに同行させたりしたことでブレイクした同業者たちに対する「恩知らず」という批判。
We know how you OGs rockin' already, my nigga, the jig is up
お前らOGがどういうやり方をしてるか、俺たちはもう知ってるんだよ、マイ・ニガ、誤魔化しはここまでだ
※「the jig is up(悪事がバレる、年貢の納め時)」という意味。
They say the truth will set you free, well, mine is gon' stream while you watch in HD
真実が人を自由にするって言うが、俺の真実は、お前が高画質で眺めている間にストリーミングされまくるのさ
They say that karma could take an eternity, yours is droppin' the same night as me
カルマが返ってくるには永遠の時間がかかるって言うが、お前のカルマは俺と同じ夜にドロップされるんだぜ
※敵対するアーティストがドレイクと同じリリース日(同じ夜)に作品をドロップし、チャート対決で敗北することこそが、奴への「カルマ(天罰)」であるという予言とフレックス。
Funny thing is that they ain't gon' compete, you gon' get yours while I'm doin' me
滑稽なのは、奴らが競争にすらならないってことだ、俺が俺のやり方でやってる間にお前は自分の報いを受けるのさ
You gon' get yours while I'm doin' me
俺が俺のやり方でやってる間にお前は自分の報いを受けるのさ
(Ayy, Janice, shut the fuck up)
(エイ、ジャニス、マジで黙りやがれ)
※「Janice」は口うるさく文句を言う白人女性のステレオタイプ(Karenに近いニュアンス)、あるいはネット上でドレイクを批判するヘイターたちの象徴。あるいは特定の業界関係者を名指ししている可能性もある。
[Chorus]
Reach me, baby
俺に連絡してくれよ、ベイビー
Call my phone and say you need me, baby
電話をかけて、俺が必要だと言ってくれ、ベイビー
Thought they had me in a deep sleep, baby
奴らは俺を深い眠りにつかせたつもりだったんだろうな、ベイビー
I'm still scorchin' hot in these streets, baby
俺はこのストリートでまだ焦げるほど熱いんだぜ、ベイビー
Pull up Maybach, beep-beep, baby
マイバッハで乗り付ける、ビープ・ビープ、ベイビー
And my shit came with the heat seats, baby
俺の車にはシートヒーターが付いてるんだぜ、ベイビー
See-through shirt, I get a sneak peek, baby
シースルーのシャツ、こっそり覗き見させてもらうぜ、ベイビー
Blow on me just like some green tea, baby
緑茶みたいに俺に息を吹きかけて冷ましてくれよ、ベイビー
Ayy, ayy
[Verse 2]
Tired of all of y'all tellin' me niggas is real, pussy, I know when it's real
お前ら全員が「あいつらはリアルだ」って俺に言ってくるのにはウンザリだ、ビッチ野郎、いつがリアルかなんて俺には分かってる
You only come home to pose and pop off a look, but you forgot how it feel
お前はポーズを決めて見栄を張るためだけに地元に帰ってくるが、本当の空気感なんてとっくに忘れちまってるだろ
※コンプトンやシカゴなど、危険なフッドをレペゼンしながらも、普段は安全な豪邸に住んでおり、ミュージックビデオの撮影の時だけ地元に帰って「リアル」を装うラッパーたちへのディス。
Chi-town, poppin' a pill, go on a drill, lookin' for someone to kill
シカゴ、ピルをキメて、ドリルに向かい、殺す相手を探し回る
※「Chi-town」はシカゴの愛称。シカゴ特有のドリル・ミュージックの暴力性や、カニエ・ウェストをはじめとするシカゴ出身アーティストのメンタルヘルス(薬物問題)と過激な言動を皮肉っている。
White kids listen to you 'cause they feel some guilt and that's how your soul gets fulfilled
白人のガキどもがお前の曲を聴くのは何らかの罪悪感を感じてるからだ、そしてそうやってお前の魂は満たされるのさ
※この楽曲における最大のハイライト。ケンドリック・ラマーのような「コンシャス(社会派)ヒップホップ」がグラミー賞などで絶賛されるのは、黒人の痛みを歌うことで白人層の「ホワイト・ギルト(過去の人種差別に対する罪悪感)」を刺激し、彼らに免罪符を与えているからに過ぎない、という極めて鋭利で残酷な分析である。
Handin' out turkeys on camera inside of your hood, then you go back to the hills
カメラが回ってる時だけフッドで七面鳥を配り、その後はビバリーヒルズの豪邸へ帰っていく
How many houses you build? How many souls did you heal off the back of your deal?
お前はいくつ家を建てた? お前のレコード契約の裏で、一体どれだけの魂を癒やしたって言うんだ?
Difference between niggas gettin' you out of your deal and lettin' you out of your deal, damn
仲間が契約から「抜け出させてくれた」のと、単に「契約を切られた」のとの違いだぜ、クソが
※レーベルからの独立を「自由を勝ち取った」と美化するアーティストに対し、実際は用済みとして契約を解除されただけだろうという痛烈な暴露。
Against your will, how many new names do you got on your will? Damn
お前の意思に反して、お前の遺言書にはどれだけ新しい名前が書き足されたんだ? クソが
※「will(意思)」と「will(遺言書)」のワードプレイ。周囲のハイエナたちに搾取され、遺産を狙われている状況を揶揄している。
How many more times is y'all gon' keep callin' it soft when it's silk? Damn
お前らはこれが「シルク」なのに、あと何回「ソフト(ヤワ)」だって呼び続けるつもりだ? クソが
※ドレイクのメロウでR&Bライクな音楽性を、ハードコアなヘイターたちは「ソフト(男らしくない)」と批判するが、それは最高級品の「シルク」のように滑らかで上質なのだという見事な切り返し。
How many more interviews y'all gonna do just to get Ice to chill? Damn
アイスマンを冷めさせるために、お前らはあと何回インタビューに答えるつもりなんだ? クソが
They tryna cover it up like a quilt
奴らはキルトの布団みたいに隠蔽しようとしてる
'Rari go skrrt on a boy like a kilt
フェラーリで奴に向かってタイヤを鳴らす、まるでキルトみたいにな
※車のタイヤが鳴る擬音「skrrt」と「skirt(スカート)」をかけ、スコットランドの伝統的な男性用スカートである「kilt(キルト)」と踏んだ高度なワードプレイ。
Kept it a hundred on paper like Wilt
ウィルトみたいに、紙の上で100パーセントをキープしたぜ
※NBAの伝説的選手「ウィルト・チェンバレン」の1試合100得点記録と、「keep it a hundred(100%リアルでいる、嘘をつかない)」をかけたパンチライン。「紙の上(on paper)」は、契約書において一切妥協しなかった、あるいはリリック(紙に書く歌詞)において完璧であるという意味のダブルミーニング。
Trickin' it off on her, payin' her bill
彼女に金を貢いで、彼女の請求書を払ってやる
That's just how I do the sauce and the spill
それが俺のソースの垂らし方、こぼし方ってもんさ
※「sauce(魅力、スタイル、金)」を惜しみなくばら撒く(spill)というフレックス。
These hoes know how I pop it for real
このビッチどもは、俺がどうやって本気でキメるか知ってるぜ
These hoes know how I pop it for real, yeah
このビッチどもは、俺がどうやって本気でキメるか知ってるぜ (Yeah)
Yeah, yeah
I made way too much in a week
俺は一週間で稼ぎすぎちまった
Must be two hundred and fifty at least
少なくとも2億5千万は下らないはずだ
※2億5千万ドル(約370億円)という莫大な収益。ユニバーサルミュージックとの巨額の包括契約などを暗示している。
Like the money just grew off a tree
まるで金が木から生えてきたみたいだ
Like the money just came in for free, for real, yeah
まるで金がタダで舞い込んできたみたいだ、マジでな (Yeah)
And Muhammad, shit skinnin' my knee
そしてモハメド、膝の皮が剥けちまうようなクソな状況だ
Like how long you been runnin' the streets? For real, yeah
お前は一体どれくらい長くストリートを走ってきたんだ? マジでな (Yeah)
She just text me, like, "Oui, oui, oui, oui"
彼女がテキストを送ってきた、「ウィ、ウィ、ウィ、ウィ」ってな
※「Oui」はフランス語の「Yes」。
We in Paris like two hundred deep, for real
俺たちはパリにいる、200人の大所帯でな、マジで
And I went bought a whip for my brother
そして俺はブラザーのために車を買いに行った
Same body, but two different colors
同じ車種だが、色は2つ違うやつをな
And I might just tell Ky get another
それに、カイにもう一台買えって言うかもしれないぜ
※ドレイクのボディガードや取り巻きの一人と思われる人物への言及。
Small price 'cause he kept it one hundred
あいつが100パーセントの忠誠を誓ってくれたんだから、安い代償さ
And I might book a flight out to London
それからロンドン行きのフライトを予約するかもしれないな
(Ayy, Janice, shut the fuck up)
(エイ、ジャニス、マジで黙りやがれ)
