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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

The City - Wu-Tang Clan 【和訳・解説】

Artist: Wu-Tang Clan

Album: Wu-Tang Forever

Song Title: The City

概要

1997年リリースの大作ダブルアルバム『Wu-Tang Forever』のDisc 2に収録された「The City」は、Inspectah Deckのソロトラックである。プロデュースはRZAではなく、Wu-Elementsの一員である4th Discipleが担当。重く引きずるようなブレイクビーツの上で、Stevie Wonderの1973年の名曲「Living for the City」のコーラスを歌い直し、ゲットーでのギリギリのサバイバルを描き出している。Inspectah Deckはグループの中でも最もミリタント(戦闘的)で、映像喚起力の高いリリシストとして知られるが、この曲でもその才能が遺憾無く発揮されている。映画や歴史上の人物(ナット・ターナーなど)の引用、そして5% Nationの教義を交えながら、政府の陰謀やストリートの暴力、そして黒人の解放に向けた闘争をハードコアな視点で綴ったコンシャスな一曲だ。

和訳

[Unknown conversation which carries over from the last track]

That's Black? What up, God?
あれはブラックか? 調子はどうだ、神(ブラザー)よ?

Ayo, shorty got beef with that nigga? Word?
エイヨォ、あの女、あの野郎と揉めてるのか? マジか?

{*blam, blam blam*} Oh, shit!!! Yo!
(銃声)おぉ、クソッ!!! ヨォ!

Hold the fuck up!
待て、ふざけんな!
※前のトラック「Deadly Melody」から続くスキット。ストリートでの唐突な発砲事件の情景。

[Intro: Inspectah Deck]

Ayo, yo, like eight niggas down (Just enough)
エイヨォ、ヨォ、8人くらいの野郎が倒れたな(ただギリギリで)

Fuckin' around with my sound (For the cit-ayyyy)
俺のサウンドにちょっかいを出して(この街のために)

It's a cold world
冷たい世界だ

Yo, bring backup (Cit-ayyyy)
ヨォ、バックアップ(応援)を呼べ(この街のために)

Fuckin' with me and mine
俺や俺の仲間に手を出しやがって

Murderous, check it
殺人的だぜ、チェックしな

[Verse 1: Inspectah Deck]

Yo! The world is shifty, we livin' just enough for the city
ヨォ!世界は狡猾だ、俺たちはこの街でただギリギリで生きている
※Stevie Wonderの社会派ソウル・アンセム「Living for the City」からの引用。ゲットーの貧困層がシステムの中で搾取されながら生き延びている現実。

The rough witty Killa Bee sting just like the jiggy
荒々しく機知に富んだキラー・ビーは、ジギーのように刺す
※「Jiggy」は当時のヒップホップ界で流行していたスラング(最高にイケている状態)。

My Family Stone, foes attempt to gradually clone
俺のファミリー・ストーン、敵は徐々にクローンを作ろうと企む
※伝説のファンクバンド「Sly and the Family Stone」の名称と、Wu-Tangという揺るぎない石(Stone)のように強固な家族(Family)をかけた言葉遊び。

Labelled MIA and I send the casualties home
MIA(戦闘中行方不明)のレッテルを貼り、死傷者を家に送り返してやる

In closed coffins, Wu stormin' like the light brigade
閉ざされた棺桶に入れてな、Wuは軽騎兵旅団のように突撃する

Ride the wave like Frankie Avalon
フランキー・アヴァロンのように波に乗るぜ
※60年代のビーチ映画(サーフィン映画)のアイドル。シーンの波(トレンド)を自在に乗りこなす余裕。

Inside the cyber age, crime pays
サイバーエイジの真っ只中、犯罪は割に合う

The law's long arm be tryna strong arm
法の長い腕が、力づくで押さえ込もうとしてくる

Walkin' time-bombs that thrive on firearms
銃器を糧にして増殖する、歩く時限爆弾ども

The charm smoker, I hit the dread with a poster
チャームを吸う奴、俺はポスターでドレッドを殴る

We told 'em to show him love and exposed the black toaster
奴に愛(リスペクト)を示せと言ったのに、黒いトースターを抜いてきやがった
※「toaster」は熱を持つもの=銃(特にMAC-10のような四角いサブマシンガン)を意味するストリートの隠語。

Composer was shook, I took your bad looks for joke
作曲家は震え上がった、俺はお前の睨みつけをジョークとして受け取ったぜ

Get your back broke, deep throat this Murder, I Wrote
背骨をへし折られて、「ジェシカおばさんの事件簿」を喉の奥まで深く飲み込みな
※有名な推理ドラマの原題『Murder, She Wrote』をもじり、自分が書き上げた殺人(破壊的なリリック)を敵に無理やり飲み込ませて屈服させるというエグいパンチライン。

The antidote be seekin' like a buried treasure
解毒剤は埋もれた宝のように探求されている

By every measure, lethally inject your whole sector
あらゆる手段を使って、お前のセクター全体に致死量の注射を打ち込む

Wanted Dead or Alive, Rebel I escapes
生死を問わず手配される、反逆者「Rebel I」は逃亡する
※Inspectah Deckの別名「Rebel INS」。

Across the desert sand, leavin' no footprints to trace
砂漠の砂を越えて、追跡される足跡を一切残さずにな

Keep a war face, your place conceal the baby knives
戦闘用の顔を崩すな、お前の場所はベビーナイフを隠し持っている

On the North breaks, I still shine in shady times
北のブレイクで、この日陰の(怪しい)時代でも俺は輝き続ける

[Chorus: Inspectah Deck]

Yo, yo, we livin' just enough (Livin' just enough)
ヨォ、ヨォ、俺たちはただギリギリで生きている(ただギリギリで)

Just enough (For the cit-ayyyy)
ただギリギリで(この街のために)

Just enough for the cit-ayyyy
この街のために、ただギリギリでな

[Verse 2: Inspectah Deck]

Yo, in the jungle, I make moves like Iron Monkey
ヨォ、このジャングルで、俺はアイアン・モンキーのように動く
※1993年の香港アクション映画『アイアンモンキー』。腐敗した権力と戦う義賊のように、ストリート(ジャングル)で暗躍する。

Plots to bump me off, G-O-V-T on the hunt for me
俺を消そうとする陰謀、政府(G-O-V-T)が俺を追っている

We stay hungry for money, drugs and guns
俺たちは金、ドラッグ、そして銃に常に飢えている

Ones who fake get caught in the crossfire for crumbs
フェイクな奴らは、パン屑(はした金)のために十字砲火に巻き込まれる

Know the science be my guidance
科学が俺の導きであることを知れ
※5% Nationにおける「Science」。真実の知識や法則に従って生きていることの表明。

The facts tell, gats sell like sex and violence
事実は語る、銃(ギャット)はセックスと暴力のように売れるんだ

And break the project's silence
そしてプロジェクト(公営住宅)の沈黙を打ち破る

A vision, distance way beyond four corners
一つのビジョン、四つ角(ブロック)を遥かに超えた距離を見通す

Escape this mental prison before we're all goners
俺たちが全員手遅れになる前に、この精神の牢獄から脱出しろ
※ゲットーという物理的な閉鎖空間だけでなく、システムによって洗脳された「精神の牢獄」からの解放を説いている。

Now embrace the world before the World War explosive bomber
世界大戦の爆撃機が火を吹く前に、今この世界を抱きしめろ

Visionary soldier karma — my code of honor
先見の明を持つ兵士のカルマ、それが俺の行動規範だ

Mind still scarred from the drama
心は今も、あのドラマ(惨劇)の傷跡が残っている

Trauma sent to victim, witness them run, scream in horror
トラウマが犠牲者に送られ、奴らが恐怖に叫びながら逃げ惑うのを目撃する

Military chopper come gun down the slum
軍用ヘリがスラムを機銃掃射しにやって来る
※ゲットーに対する警察や国家の軍事的な制圧をディストピア的に描いている。

The outcome — do or die, son! It's bound to come
その結果は、やるか死ぬかだ、なあ! それは必ずやって来る

Mentally aware, I see truth within the square
精神的に覚醒し、俺は正方形の中に真実を見る
※「Square」は5% Nationのシンボルや教義において「正直さ、公平さ、真理」を表す。

The future's here, catch me on computer software
未来はここにある、コンピューターのソフトウェア上で俺を捕まえてみな

Warfare's inevitable, Rebel I hold several government official
戦争は避けられない、Rebel I(俺)は複数の政府高官を拘束する

Issue .38 specials, that step through
通り抜ける38口径のスペシャルを発行(発射)してやる

Like Nat Turner, create a spectacle
ナット・ターナーのように、壮大な見世物(反乱)を起こしてやる
※1831年に大規模な黒人奴隷の反乱を指導したナット・ターナー。アメリカの白人社会を震撼させた彼のように、抑圧に対する歴史的な反逆を誓うライン。

I may die in the scuffle, but I'm takin' forty devils
俺はこの乱闘で死ぬかもしれないが、40匹の悪魔を道連れにしてやるぜ
※5% Nationの教義において「Devil(悪魔)」は黒人を抑圧してきた白人や体制側を指す。革命のためには自己犠牲も辞さない兵士の覚悟。

[Chorus: Inspectah Deck]

We livin' just enough
俺たちはただギリギリで生きている

Just enough
ただギリギリで

Just enough
ただギリギリで

For the cit-ayyyy
この街のために

For the cit-ayyyy
この街のために

[Outro: Inspectah Deck]

Killa Beez, stingin' MC's
キラー・ビーズ、MCどもを刺し殺す

Yeah, Wu
イェー、Wu