Artist: John Lennon
Album: Imagine
Song Title: I Don’t Wanna Be a Soldier Mama
概要
1971年の名盤『Imagine』に収録された、ヘヴィで呪術的なグルーヴを持つ反戦ブルース・ロックである。ベトナム戦争の泥沼化に対する強烈なアンチテーゼとして書かれた本作は、単なる反戦歌にとどまらず、社会が個人に押し付ける「役割」や「職業」のすべてを根底から拒絶する極端なアナキズムの匂いを放っている。兵士や水兵だけでなく、弁護士や聖職者、金持ちになることすらも拒み、ただ「死にたくない」「泣きたくない」と母親(Mama)にすがるように繰り返すジョンの姿は、大人が作り上げた狂った社会システムに対する、子供のような純粋な抵抗である。ジョージ・ハリスンの焼け付くようなスライド・ギターとキング・カーティスの野性的なサックスが渦巻くサウンドは、プロデューサーのフィル・スペクターによる過剰なエコー処理によって泥臭くもサイケデリックな音の壁(ウォール・オブ・サウンド)を構築しており、後のグランジやオルタナティヴ・ロックにも通じる重苦しい凄みを宿している。
和訳
[Verse 1]
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
※ベトナム戦争で若者たちが消費されていく状況下における、素直で強烈な拒絶。「mama(ママ)」と呼びかけることで、勇敢な兵士としてのヒロイズムを完全に剥ぎ取り、恐怖に怯える一人の無力な子供としての本音を露わにしている。
Well, I don't wanna be a sailor, mama, I don't wanna fly
なあ、僕は水兵になんてなりたくないんだ、ママ、空へ吹き飛ばされたくはないよ
※海軍の兵士になることの拒絶。「fly」は文字通りの飛行ではなく、砲弾で空中に吹き飛ばされること、あるいは恐怖から逃れるためにドラッグでハイになることを暗示していると解釈されている。
Well, I don't wanna be a failure, mama, I don't wanna cry
なあ、僕は落伍者になんてなりたくないんだ、ママ、泣きたくはないよ
※兵役を拒否すれば非国民や社会的な敗北者(failure)の烙印を押されるという、当時の過酷な同調圧力に対するリアルな恐怖。
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Oh no, oh no, oh no, oh no
[Verse 2]
Well, I don't wanna be a rich man, mama, I don't wanna cry
なあ、僕は金持ちになんてなりたくないんだ、ママ、泣きたくはないよ
※「Imagine」でも歌われたような、資本主義における富の独占への幻滅。ジョン自身が世界的な成功と莫大な富を手にしてなお、深い孤独と悲哀を味わった経験が色濃く反映されている。
Well, I don't wanna be a poor man, mama, I don't wanna fly
なあ、僕は貧乏人になんてなりたくないんだ、ママ、ハイになりたくはないよ
※現実の過酷さから逃れるためにドラッグでハイになる(fly)貧困層の悲惨な現実への言及。金持ちになることも貧乏になることも拒絶し、システムからの完全な脱却を願っている。
Well, I don't wanna be a lawyer, mama, I don't wanna lie
なあ、僕は弁護士になんてなりたくないんだ、ママ、嘘をつきたくはないよ
※ビートルズ解散時の泥沼の法廷闘争において、アラン・クレインやポール・マッカートニー側の弁護士たちと争ったジョンの、法律家やシステムに対する激しい嫌悪感がストレートに表れている。
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Oh no, oh no, oh no, oh no
[Verse 3]
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Well, I don't wanna be a thief now, mama, I don't wanna fly
なあ、僕は泥棒になんてなりたくないんだ、ママ、逃げ回りたくはないよ
※「thief(泥棒)」は単なる犯罪者だけでなく、他人の利益を搾取する資本家や権力者の隠喩ともとれる。
Well, I don't wanna be a churchman, mama, I don't wanna cry
なあ、僕は聖職者になんてなりたくないんだ、ママ、嘆きたくはないよ
※「God」で宗教を否定したジョンならではの視点。神に仕えるポーズを取りながら、戦争などの現実の悲劇を前に嘆く(あるいは祈る)ことしかできない無力な宗教権威への痛烈な皮肉である。
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Oh no, oh no, oh no, oh no, oh no
Hit it!
ぶちかませ!
※バンドメンバーに対する合図。ここから重苦しく混沌としたインストゥルメンタル・セッションへと突入する。
[Instrumental Break]
※この間奏では、ジョージ・ハリスンのスライド・ギター、キング・カーティスのサックス、ニッキー・ホプキンスのピアノが絡み合い、狂気的で呪術的な音の渦を作り出している。言葉にならない怒りや絶望がサウンド自体に仮託された、本作のハイライトの一つである。
[Verse 1]
Oh well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
ああ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Well, I don't wanna be a sailor, mama, I don't wanna fly
なあ、僕は水兵になんてなりたくないんだ、ママ、空へ吹き飛ばされたくはないよ
Well, I don't wanna be a failure, mama, I don't wanna cry
なあ、僕は落伍者になんてなりたくないんだ、ママ、泣きたくはないよ
Well, I don't wanna be a soldier, mama, I don't wanna die
なあ、僕は兵士になんてなりたくないんだ、ママ、死にたくないよ
Oh no, oh no, oh no, oh no, oh no
