Artist: Yoko Ono
Album: Yoko Ono/Plastic Ono Band
Song Title: Paper Shoes
概要
1970年に発表されたオノ・ヨーコの初ソロ・アルバム『Yoko Ono/Plastic Ono Band(ヨーコの心)』の最後を飾る、重厚でカオティックなアヴァンギャルド・トラックである。ジョン・レノン(ギター)、クラウス・フォアマン(ベース)、リンゴ・スター(ドラムス)による、まるで暴走する列車のような執拗な反復リズムと、鼓膜を劈くジョンのギター・フィードバックが空間を支配する。ヨーコは言葉を捨て去り、サウンドの一部として動物的な叫びや摩擦音のようなボイス・パフォーマンスを展開していく。アルバム全編を通じてプライマル・セラピー(原初療法)によって引き出されたトラウマや、世間からの容赦ないバッシングに対する怒りをスクリームとして吐き出し続けた彼女だが、この凄まじいノイズの嵐の果てに、唐突な静寂とともにたった一言のメッセージを残す。前衛音楽とノイズ・ロックの先駆として後のオルタナティヴ・シーンに絶大な影響を与えた本作は、極限の狂気と混沌を描き切った果てに訪れる、奇妙な平穏と母性的な癒しを提示している。
和訳
[Instrumental]
※プラスティック・オノ・バンドによる、暴力的でヒプノティック(催眠的)なインプロヴィゼーション(即興演奏)。明確な歌詞は存在せず、ヨーコの言葉にならない絶叫や息遣いがパーカッションのように絡み合う。この圧倒的な音の壁は、彼女やジョンが直面していたメディアの容赦ない攻撃や、1960年代末から70年代初頭にかけての社会の混沌とした暴力性を音響的に表現したものであると解釈されている。「Paper Shoes(紙の靴)」というタイトル自体が、雨や泥にまみれればすぐに破れてしまう、人間の脆さや危うい精神状態を暗示するシュールなメタファーとして機能している。
[Outro]
[Spoken: Yoko Ono]
Don't worry
心配しないで
※約7分間にわたって繰り広げられた凄まじいノイズと狂乱のジャム・セッションが唐突に途切れた後、完全な静寂の中でヨーコがマイクの近くで優しく囁く一言。怒りと苦痛に満ちた絶叫で構成されたこの前衛的なアルバムが、最終的にこの極めて人間的で慈愛に満ちた言葉で締めくくられることは非常に象徴的である。ディープなファンの間や批評においては、これが共に傷つきながら闘ってきた夫・ジョンへのパーソナルな励ましであると同時に、激動の時代を生き抜き、心の闇と向き合ったすべての傷ついた魂に対する、芸術家ヨーコ・オノからの究極の肯定であり、救済のメッセージであると深く考察されている。
