Artist: A Tribe Called Quest
Album: People's Instinctive Travels and the Paths of Rhythm
Song Title: Go Ahead in the Rain
概要
「Go Ahead in the Rain」は、A Tribe Called Questの1990年のデビューアルバムに収録された、人生の困難を乗り越えるためのポジティブなアンセムである。楽曲の基盤にはSly & The Family Stoneの「Brave & Strong」などのパーカッシブなブレイクが敷かれ、イントロではJimi Hendrixの肉声がサンプリングされるなど、ロックやファンクのレジェンドたちからの精神的な継承が垣間見える。Q-Tipのリリックは、「雨」を黒人社会や若者が直面する社会構造的な抑圧、あるいは日常の憂鬱のメタファーとして捉え、それでも音楽とリズムの力で立ち向かえと鼓舞する。白人主導の音楽産業による文化の搾取(ハゲタカ)を鋭く批判しつつも、最終的にはアフロセントリックな自己肯定感と「体を揺らすこと」の根源的な喜びへとリスナーを導く。初期ATCQが持つ、シリアスなメッセージと快楽主義的なグルーヴの見事な融合を象徴する一曲だ。
和訳
[Intro: Jimi Hendrix & Q-Tip]
Rain all day
一日中雨が降っている
Rain all day
一日中雨が降っている
Don't you worry
心配するな
※イントロでは、ロック界の黒人レジェンドであるJimi Hendrixの声をサンプリングしている。雨という困難な状況下でも希望を失うなという楽曲のテーマを、偉大な先人の言葉を借りて提示している。
[Verse 1: Q-Tip]
All I wanna do is get down y'all
俺がやりたいのは、みんなで楽しむことだけさ
Have a ball y'all and freak freak y'all
みんなで大騒ぎして、ハメを外すんだ
Lifeless ventures ain't new boo
活気のない企みなんて目新しくもないぜ、なあ
So don't boo hoo, yeah, you too
だからメソメソ泣くんじゃない、そう、お前もだ
Gotta get a grip, white culture
しっかりしろよ、白人のカルチャー
Swoop down, swoop down like a vulture
ハゲタカのように急降下して獲物をさらう
※ヒップホップや黒人音楽の果実を、白人主導の音楽産業(ハゲタカ)が搾取していく構造への強烈な批判。アフロセントリックな思想に基づく、コンシャスな怒りが表現されている。
The rhythms will lurk into people
リズムは人々の中に潜み入り込んでいく
All funk ain't created equal
すべてのファンクが平等に創られているわけじゃない
※アメリカ独立宣言の有名な一節「すべての人間は平等に造られている」の痛烈なパロディ。真のファンク(黒人文化の神髄)と、商業的に作られた偽物のファンクとの間には明確な優劣があるというプライドの表れだ。
Lookin for the beat to rupture
破裂するようなビートを探し求めてる
Like the rapture, gotta capture
携挙のようにな、しっかり掴み取らなきゃならない
※「rapture(携挙)」はキリスト教における終末論的な奇跡。それほどまでに魂を別次元へ引き上げるような音楽体験を求めている。
Don't let the storm of life scare ya
人生の嵐に怯えるんじゃない
Get funky, let me prepare ya
ファンキーにいこう、俺に準備させてくれ
For the days of grimness and depression
残酷で憂鬱な日々のためにな
Aiyo bro, here's your lesson
エイヨゥ、ブラザー、これが俺からの教訓だ
Even though the rain starts pourin
たとえ土砂降りの雨が降り始めても
Start reachin, start soarin
手を伸ばし始めろ、高く舞い上がり始めろ
Don't stop, if you do, you're stallin
立ち止まるな、もし止まればお前は失速する
Rhythm savior, hear ya callin
リズムの救世主が、お前を呼ぶ声を聞いているぜ
Instrumental to be freaky
狂ったように楽しむために不可欠なもの
Go ahead in the rain and you'll see
雨の中を前へ進め、そうすれば分かるさ
[Verse 2: Q-Tip]
Can't we make you see
分からせることができないのか
I mean, the fact that is the key, I mean
つまり、この事実こそが鍵なんだよ
Devoted to the arts of movin' butts, so get on up and...
ケツを動かすという芸術に専念する、だから立ち上がって…
※同アルバムの収録曲「Rhythm (Devoted to the Art of Moving Butts)」のコンセプトを反復し、アルバム全体に一貫した哲学があることを示している。
Think about what's yours
自分自身のものについて考えてみな
I mean your culture and your laws
お前の文化と、お前自身のルールのことさ
I mean, I label you a sucka
お前をサッ力ーの烙印を押してやる
If you're dumber, just stay dumber
もしお前がバカなら、そのままバカでいればいい
But stay in line and keep groovin'
だが列を乱さず、グルーヴし続けろ
If it's movin, if it's soothin
もしそれが体を動かし、心を癒すものなら
Don't let a little thing like rain keep you under
雨みたいなちっぽけなもんに押さえつけられるなよ
Or the thunder, look and wonder
雷が鳴っても、顔を上げて驚嘆すればいい
Stomp til your soul is lifted
魂が持ち上がるまで足を踏み鳴らせ
Get with it, rhythm's with it
ノッてこい、リズムはそこにある
Get inside the groove and get nasty
グルーヴの中に入り込んで、ヤバくキメろ
Funky nasty, crazy classy
ファンキーでヤバくて、クレイジーなほどに上品にな
Money is a first on the list here
ここでは金がリストの一番上にある
It's the good time, it's the good cheer
楽しい時間だ、陽気な気分だ
If you got the ride then ride it
もし乗るものがあるなら、それに乗れ
Don't hide it, provide it
隠すんじゃない、提供するんだ
Drop, drop, drop down the pants, shake your fanny
パンツをずり下げて、ケツを振れ
'Cause it's handy, not an Annie
だって手軽だろ、ダサい小娘じゃないんだから
※「fanny(お尻)」と韻を踏ませるための「Annie」。ミュージカル『アニー』のような孤児、あるいは野暮ったくイケてない存在の比喩として用いられている言葉遊びだ。
Rock to the roll with the hair down
髪を振り乱してロックンロールしな
Get the lowdown, rhythm showdown
真相を探り当てろ、リズムの真剣勝負だ
The simple explanation is nada
簡単な説明なんて何もない
Make it hotter, thanks, de nada
もっと熱くしろ、ありがとう、どういたしまして
※スペイン語の「nada(何もない)」と「de nada(どういたしまして)」を使った軽快な言葉遊び。多様な言語や文化が交錯するニューヨークのストリート感を演出している。
If you wanna hear what I'm sayin'
もし俺の言ってることを聞きたいなら
Clean your ears and just come on and groove
耳の穴をかっぽじって、ただこっちへ来てグルーヴしな
