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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Whole Foods - JPEGMAFIA 【和訳・解説】

Artist: JPEGMAFIA

Album: Veteran

Song Title: Whole Foods

概要

JPEGMAFIAの2018年の出世作『Veteran』の後半に収録された本作は、わずか2分強の尺の中に彼のシニカルなユーモア、メディア批判、そしてNINTENDO64時代のレトロゲームへの深い愛情が詰め込まれたトラックだ。タイトルの「Whole Foods」は、オーガニック食品を扱うアメリカの高級スーパーマーケットチェーンを指し、ストリート出身でありながらブルジョワ(boujee)を気取るラッパーたちや、SNSの承認欲求にまみれた現代のライフスタイルを皮肉っている。特に注目すべきは、世界的な音楽メディアであるPitchforkへの痛烈なネームドロップだ。売上(ユニット)を出していないアンダーグラウンドのアーティストにはコンプライアンスを押し付け、売れているスターの過激な言動は黙認するというメディアの偽善を鋭く突いている。後半のバースでは『ゴールデンアイ 007』や『パーフェクトダーク』といったレア社開発のFPSゲームのタイトルを連発し、オタク的な知識と殺し屋のメタファーを完璧に融合させる彼特有のリリシズムが光っている。

和訳

[Intro]

Sir
なぁ

Man, if I don't–, huh-uh-huh-uh-huh
おい、もし俺が…

Bitch, I shop at Whole Foods like I'm boujee
ビッチ、俺はホールフーズで買い物するぜ、ブルジョワ気取りでな
※「Whole Foods」は富裕層や意識高い系に人気のオーガニック高級スーパー。「boujee(ブルジョワジーの略)」な振る舞いをあえて誇張し、ヒップホップシーンの物質主義を皮肉っている。

Pass the blunt, my mind is missin'
ブラントを回せ、意識が飛んでるんだ

Tweet my shit, I need the mentions
俺の曲をツイートしろよ、メンションが欲しいんだ
※SNSでのバズや承認欲求に依存する現代のアーティストやリスナーの心理を自嘲気味に描写。

Stop pretendin'
取り繕うのはやめろ

Look, look
見ろよ、見ろ

[Verse 1]

Ridin' 'round the city like a side bitch
セカンドの女みたいに街を乗り回す

Hermit 'til I die, close the blinds, bitch (Bitch)
死ぬまで隠遁者だ、ブラインドを閉めろ、ビッチ
※パーティーやシーンの社交場を嫌い、ネットやスタジオに引きこもる(Hermit)ナードな気質をアピール。

Mama told me, "Baby, you's a prophet, so profit" (Profit)
ママは言ったんだ、「お前は預言者なんだから、しっかり利益を出しな」って
※「prophet(預言者)」と「profit(利益)」の同音異義語を使った巧みな言葉遊び。

Treat these fucking labels like a side-, hold up
このクソみたいなレーベルどもをセカンド扱いしてやる…待てよ
※メジャーレーベルに搾取されるのではなく、逆にレーベルを都合よく利用してやるというインディペンデントな姿勢。

Fuck it dog, I had to do it (Ooh)
クソくらえだ、やるしかなかったんだ

Reviewers looking stupid, stick to music
レビュアーどもは間抜け面だな、音楽に専念しな
※音楽評論家やメディアが的外れなレビューをしていることへの批判。

I am the Black God, fuck a human, Stanley Kubrick (Yeah)
俺はブラック・ゴッドだ、人間なんてクソくらえ、スタンリー・キューブリックさ
※伝説的な映画監督スタンリー・キューブリックをネームドロップ。彼の作品に見られる完璧主義や狂気、冷徹な人間観を自身に重ね合わせている。

You know this rappin' shit be therapeutic
このラップってやつはセラピーみたいなもんだって分かってるだろ

Pitchfork told me to never be abusive 'less I'm movin' units
ピッチフォークには、バカ売れしない限り過激な暴言は吐くなと言われたぜ
※インディー音楽メディアの最高峰である「Pitchfork」への強烈なディス。売上(movin' units)が少ないアーティストの過激な表現は非難するくせに、売れているスターラッパーの問題行動は甘く評価するというメディアのダブルスタンダードを暴いている。

I see what the truth is
真実が何かってことは分かってる

'Cause niggas preaching 'bout the pussy be the biggest douches
だって女のことばっかり説教垂れてる奴らが、一番のクズ野郎だからな
※フェミニストやリベラルを装いながら、裏では最低な振る舞いをしている偽善者たち(あるいはコンシャス・ラッパー)への痛烈な皮肉。

Wow
ワオ

[Verse 2]

Suh
サッ
※「What's up」の略語。

Nasty
エグいぜ

Damn, Peggy
くそっ、ペギー
※彼のシグネチャーであるプロデューサータグ。

I'm out the window lookin' real stupid, fuck that
窓から間抜けな顔して外を見てる、クソくらえだ

It's young Scully how I peep the ruins (Shh), trust that
廃墟を覗き込む若きスカリーさ、信じてくれ
※SFドラマ『X-ファイル』のダナ・スカリー捜査官からの引用。荒廃した社会やシーンの裏側を、真実を求めて調査・観察しているというメタファー。

I whip the whip like the shit been boosted (Whip it)
盗難車みたいに車を荒っぽく乗り回す
※「boosted」は盗まれたという意味。

My bus pass ain't been legit since I smashed Karrueche (Not true)
カルーシェを抱いてから、俺のバスの定期券は有効じゃなくなったぜ(嘘だけどな)
※Karrueche Tran(クリス・ブラウンの元恋人として知られるモデル)とヤッたという、ラッパーにありがちな女性関係のフレックス(自慢)。しかし直後の「Not true(嘘だけどな)」というセルフツッコミで、ヒップホップの虚構性を自ら笑い飛ばしている。

These people thinking that they warriors, they straight Kabuki (It happen)
こいつら自分を戦士だと思い込んでるが、ただの歌舞伎役者だぜ
※ストリートのタフガイを気取っている連中も、実際は「歌舞伎(Kabuki)」のように大げさな演技やパフォーマンスをしているだけの役者にすぎないという痛烈なディス。

I hit your mama with that Conker's Bad Fur Day
お前のママを『コンカーズ・バッド・ファー・デイ』みたいにぶちのめす
※1990年代後半にNINTENDO64で発売された、可愛いキャラクターが登場しながらも極めて下品で残酷な内容を持つ名作ゲーム(開発:レア社)の引用。

GoldenEye, hit 'em up (Uh)
『ゴールデンアイ』、あいつらを撃ち抜け

Perfect Dark nigga for the job, so I zip 'em up
この仕事にうってつけの『パーフェクト・ダーク』な黒人だ、だから奴らを死体袋に詰めてやる
※前の行から続くNINTENDO64の伝説的FPSゲーム『ゴールデンアイ 007』と『パーフェクトダーク』(どちらもレア社開発)の連続ネームドロップ。自身を「完璧な暗殺者」に見立て、敵を死体袋のジッパーで閉じる(zip 'em up)という冷酷なギャングスタの描写とオタク知識を鮮やかに掛け合わせている。

Put 'em in a bag like I'm pickin' up dog shit
犬のクソを拾うみたいに、奴らを袋にぶち込んでやる
※死体処理の表現を、日常的な犬のフンの始末に例える極めて無慈悲でシニカルなパンチライン。

Ooh
ウー