UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Corporal Clegg - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: A Saucerful of Secrets

Song Title: Corporal Clegg

概要

1968年発表の第2作『神秘(A Saucerful of Secrets)』に収録された、ロジャー・ウォーターズの作詞作曲による痛烈な反戦歌である。本作は、第二次世界大戦で父親を亡くしたウォーターズが、後の『ザ・ウォール』や『ファイナル・カット』で執拗に追求することになる「戦争のトラウマと国家の欺瞞」というテーマに初めて直接的に言及した重要な原点だ。義足となった帰還兵の悲哀を歌いながらも、カズー(滑稽な音の出る笛)のソロや明るいコーラスを交えることで、戦争を賛美する社会の狂気と無関心をブラックユーモアを交えて冷笑的に描き出している。ドラマーのニック・メイソンが珍しくボーカルに参加している点でも歴史的価値が高い。

和訳

[Verse 1: David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright & Roger Waters]
Corporal Clegg (Corporal Clegg) had a wooden leg
クレッグ伍長(クレッグ伍長)、彼には木の義足があった。
※「木の義足」は名誉の負傷というより、戦争によって肉体と人間性を奪われた兵士の痛ましい現実を象徴している。

He won it in the war in 1944
彼はそれを、1944年の戦争で「勝ち取った」のさ。
※ウォーターズの実父が戦死したのがまさに1944年(イタリアのアンツィオの戦い)である。「失った」のではなく、勲章のように「勝ち取った(won)」と皮肉を込めて表現している。

Corporal Clegg (Corporal Clegg) had a medal too
クレッグ伍長(クレッグ伍長)、彼は勲章も持っていた。

In orange, red, and blue, he found it in the zoo
オレンジ、赤、そして青色のそれを、彼は動物園で見つけたんだ。
※国家から授与されるはずの名誉ある勲章が、動物園に落ちているガラクタと同列に扱われている。戦争の無意味さと、兵士の犠牲を軽視する国家権力への痛烈な冷笑である。

Dear, oh, dear, oh, are they really sad for me?
やれやれ、ああ、奴らは本当に僕を哀れんでいるのだろうか?
※世間の同情が表面的なものでしかないことへの帰還兵(あるいは遺族としてのウォーターズ)の不信感と疎外感。

Dear, oh, dear, oh, will they really laugh at me?
やれやれ、ああ、奴らは僕を心の底から笑い者にしているのだろうか?

[Chorus: Richard Wright & Roger Waters]
Mrs. Clegg, you must be proud of him
クレッグ夫人、さぞかしご主人が誇らしいことでしょうね。
※無責任な世間(あるいは国家)が遺族や家族にかける空虚な慰めの言葉。

Mrs. Clegg, another drop of gin?
クレッグ夫人、ジンをもう一滴いかがです?
※誇りなどではなく、アルコール(ジン)で悲しみと現実を麻痺させるしかない帰還兵の妻の残酷な日常を描写している。

[Kazoo Solo]
[カズー・ソロ]
※悲惨なテーマとは裏腹に、間抜けで滑稽なカズー(笛)の音色が鳴り響く。戦争の悲劇を美談に仕立て上げる社会の欺瞞を、あえて狂騒的なブラックユーモアで表現したフロイド特有のアヴァンギャルドな演出である。

[Verse 2: David Gilmour, Nick Mason, Richard Wright & Roger Waters]
Corporal Clegg (Corporal Clegg), umbrella in the rain
クレッグ伍長(クレッグ伍長)、雨の中で傘をさしている。

He’s never been the same, no one is to blame
彼はもう、昔の彼とは違う。そして、誰のせいでもないのさ。
※PTSD(心的外傷後ストレス障害)によって精神を蝕まれた帰還兵の姿。「誰のせいでもない」という言葉には、戦争の責任を誰一人取ろうとしない無責任な国家や社会に対するウォーターズの静かなる怒りが込められている。

Corporal Clegg (Corporal Clegg) received his medal in a dream
クレッグ伍長(クレッグ伍長)、彼は夢の中で勲章を受け取った。

From Her Majesty the Queen, his boots were very clean
女王陛下その人からね。彼のブーツはひどく綺麗に磨かれていたよ。
※現実では動物園で拾ったようなガラクタだが、夢の中では女王から授与されるという幻想。泥にまみれたはずの戦場とは無縁の「綺麗なブーツ」が、権力者が安全な場所から消費する「美化された戦争」の虚構性を暴き出している。

[Chorus: Richard Wright & Roger Waters]
Mrs. Clegg, you must be proud of him
クレッグ夫人、さぞかしご主人が誇らしいことでしょうね。

Mrs. Clegg, another drop of gin?
クレッグ夫人、ジンをもう一滴いかがです?

[Outro: Richard Wright & David Gilmour]
Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。

Corporal Clegg, Corporal Clegg
クレッグ伍長、クレッグ伍長。
※無機質に繰り返される名前。一個人の尊厳が奪われ、単なる「兵士の記号」として消費されていく虚無感と共に、楽曲は不気味なフェードアウトを迎える。

 

Corporal Clegg

Corporal Clegg

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes