UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Let There Be More Light - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: A Saucerful of Secrets

Song Title: Let There Be More Light

概要

1968年発表の第2作『神秘(A Saucerful of Secrets)』のオープニングを飾る、ロジャー・ウォーターズ作のSF的サイケデリック・ナンバーである。シド・バレットの精神崩壊と離脱というバンドの存続を揺るがす危機において、ウォーターズが主導権を握り始めた過渡期の重要曲だ。冷戦下の米軍が駐留するイギリスの基地(ミルデンホール)へのUFO飛来という緊迫したテーマと、ビートルズへのオマージュ、そして新加入のデヴィッド・ギルモアを象徴するヘヴィなギターソロが交錯する。シドの無垢な狂気から、ウォーターズの冷徹で社会的な眼差しへとピンク・フロイドが変貌を遂げる第一歩を刻んだ、歴史的な一曲である。

和訳

[Instrumental Intro]
※ロジャー・ウォーターズによる不穏で反復的なベースラインが、迫り来る未知の脅威(UFOあるいは狂気)を暗示するように響き渡る。

[Verse 1: Richard Wright and Roger Waters]
Far, far, far, far away, way
遥か、遥か、遥か彼方で。

People heard him say, say
人々は彼がこう言うのを聞いたんだ。

"I will find a way, way
「俺は必ず道を見つけ出す。

There will come a day, day
いつの日か、必ずその時はやって来る。

Something will be done"
何かが成し遂げられる日が」と。
※切迫したコーラスの反復(エコー)が、遠く宇宙からの交信、あるいはシド・バレットを失ったバンドが新たな方向性を必死に模索する決意の独白のようにも聞こえる。

[Chorus: David Gilmour]
Then at last, the mighty ship
そしてついに、その巨大な船が。

Descending on a point of flame
炎を噴き上げながら降下し。

Made contact with the human race at Mildenhall
ミルデンホールにて、人類との接触を果たしたのだ。
※「ミルデンホール(Mildenhall)」は実在するイギリス空軍基地であり、当時は冷戦下でアメリカ空軍の戦略爆撃機も駐留していた。SF的な異星人遭遇のモチーフを借りつつ、冷戦下の核戦争の脅威や、軍事基地という生々しい現実をサイケデリアに持ち込んでいる。

[Verse 2: Richard Wright and Roger Waters]
Now, now, now
今こそ、今こそ。

Is the time, time, time
その時が来たんだ。

To be, be, be aware
気づくべき時が、目を覚ますべき時が。
※ウォーターズ特有の「大衆への覚醒の呼びかけ」である。後の『狂気』や『アニマルズ』へと繋がる、無自覚な資本主義社会に対する警告のメッセージがすでに現れている。

[Chorus: David Gilmour]
Carter’s father saw him there
カーターの父親は、そこで彼を見た。
※エドガー・ライス・バローズのSF小説『火星のプリンセス』の主人公、ジョン・カーターへの言及とする説が有力である。

And knew the road revealed to him
そして、自分に示されたその道を悟ったのだ。

The living soul of Hereward the Wake
ヘレワード・ザ・ウェイクの、生ける魂の道筋を。
※「ヘレワード・ザ・ウェイク」は11世紀のノルマン・コンクエストに抵抗したイングランドの伝説的な反逆者。異星の力(あるいはLSDによる新たな知覚)が、歴史上の反逆者の魂を呼び覚ますというダイナミックで文学的な飛躍である。

[Verse 3: Richard Wright and Roger Waters]
Oh, my
ああ、なんてことだ。

Something in my eye, eye
僕の目に、何かが映っている。

Something in the sky, sky
あの空に、何かがいるんだ。

Waiting there for me
そこで僕を待っている。
※空を見上げる個人の視点。UFOを待つSF的な情景であると同時に、ドラッグによる幻覚のヴィジョン、あるいは絶対的な救済を求める人間の孤独と畏怖を描写している。

[Chorus: David Gilmour]
The outer lock rolled slowly back
宇宙船の外扉が、ゆっくりと後ろへ回転し。

The service men were heard to sigh
軍人たちが息を呑むのが聞こえた。

For there revealed in glowing robes was Lucy in the sky
なぜなら、光り輝くローブを纏ってそこに現れたのは、「空のルーシー」だったのだから。
※ビートルズの代表的サイケデリック曲「Lucy in the Sky with Diamonds」への直接的なオマージュ。武装した軍隊(現実・冷戦の象徴)の前に、純粋なサイケデリアの象徴(ルーシー)が降臨するという痛烈な皮肉であり、当時のカウンターカルチャーの希望を体現している。

[Verse 4: Richard Wright and Roger Waters]
Oh, oh
おお、おお。

Did you ever know, know?
君は知っていただろうか?

Never ever will they
奴らが知ることなんて、決してないだろう。

I can't say
僕には言えないよ。
※特権的な知識(サイケデリックな覚醒)を得た者と、無知な大衆(they)との決定的な分断。前作から続く「コミュニケーションの断絶」というテーマが引き継がれている。

[Chorus: David Gilmour]
Summoning his cosmic powers
彼の宇宙的なパワーを召喚し。

And glowing slightly from his toes
足元から微かに光を放ちながら。

His psychic emanations flowed
彼の精神的な放射線が、溢れ流れ出したのだ。
※新メンバーであるギルモアのボーカルによって歌われるこのパートは、シド・バレットというカリスマが去った後も、彼が遺した精神的な影響(psychic emanations)が依然としてバンドに深く流れ込んでいることを暗喩しているかのようにも響く。

[Instrumental Outro]
※重厚で攻撃的なデヴィッド・ギルモアのギターソロが炸裂する。シドの浮遊するような演奏とは異なる、ブルースとハードロックに根ざしたギルモアの加入が、ピンク・フロイドという「巨大な船」を新たな軌道へと推し進めたことを高らかに宣言するエンディングである。

 

Let There Be More Light

Let There Be More Light

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes