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Matilda Mother - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Piper at the Gates of Dawn

Song Title: Matilda Mother

概要

1967年のデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き(The Piper at the Gates of Dawn)』に収録された、シド・バレットのイノセンスとサイケデリアが結晶化した楽曲である。元々はヒレア・ベロックの童話集『子供のための教訓詩集』を引用して作られたが、著作権の問題でシドが書き直したという背景を持つ。母親が読み聞かせるおとぎ話の世界へ退行しようとする幼児性の裏には、現実世界からの逃避と、やがて彼を飲み込むことになる精神的孤立の萌芽が垣間見える。リチャード・ライトとシドによる浮遊感のあるボーカル・ハーモニーと、中東風のミステリアスなオルガンの旋律が、聴く者をノスタルジックで危うい夢幻の世界へと誘う初期ピンク・フロイドの傑作だ。

和訳

[Verse 1: Richard Wright]
There was a king who ruled the land
その国を統べる王様がいてね。

His Majesty was in command
陛下はすべてを支配していた。

With silver eyes, the scarlet eagle
銀色の瞳を持つ、深紅の鷲が。

Showered silver on the people
人々の上に銀を降り注がせたのさ。
※シドが再構築したおとぎ話の一節。権力者(王)や神秘的な存在(鷲)が富(銀)をばらまくという情景は、童話特有の残酷さと美しさを併せ持つ。同時に、LSDによる強烈な色彩感覚(銀と深紅の対比)が反映されていると解釈できる。

[Refrain: Syd Barrett & Richard Wright]
Oh, Mother
ああ、母さん。

Tell me more
もっとお話を聞かせてよ。
※現実の重圧から逃れ、安全な子供部屋と母親の庇護下へ退行したいというシドの切実な願望の表れである。

[Bridge: Syd Barrett, Syd Barrett & Richard Wright]
Why’d ya have to leave me there
なぜ僕をそこに置き去りにしなきゃならなかったの?

Hanging in my infant air waiting?
幼い空虚の中で、待ちぼうけを食らわせたまま。
※物語の読み聞かせが終わってしまった後の、子供の孤独感と取り残されたような喪失感。のちのシドが直面する社会との決定的な断絶と「見捨てられ不安」を予見させる重い響きを持っている。

You only have to read the lines
ただ、その行を読んでくれるだけでいいのに。

They’re scribbly black and everything shines
黒い走り書きの文字から、すべてが輝き出すんだ。
※文字という単なる「黒い走り書き(scribbly black)」が、想像力と結びつくことで無限の光(幻覚的ヴィジョン)を生み出す様を描写している。シドの詩人としての天才的な言語感覚と視覚的想像力が融合した名ラインである。

[Verse 2: Richard Wright]
Across the stream with wooden shoes
木靴を履いて小川を越え。

With bells to tell the king the news
王様に知らせを届けるため、鈴を鳴らしながら。

A thousand misty riders climb up
霧に包まれた千人の騎兵たちが駆け上がっていく。

Higher once upon a time
ずっと高くへ、昔々あるところに。
※「昔々(once upon a time)」という童話の定型句を空間的な上昇(Higher)と結びつけている。ドラッグによる意識の高揚(ハイになる状態)と、物語世界への没入がシームレスに重ね合わされている。

[Refrain: Syd Barrett & Richard Wright]
Wandering and dreaming
さまよい、夢見ながら。

The words had different meaning
言葉はまるで違う意味を持っていた。

Yes, they did
ああ、本当にそうだったんだ。
※成長とともに失われてしまった幼児期の純粋な想像力への挽歌である。大人になるにつれ、言葉は単なる記号へと矮小化していくという、社会化への静かな絶望が込められている。

[Instrumental Break]

[Verse 3: Syd Barrett & Richard Wright]
(Sunshine) For all the time spent in that room
(陽の光よ)あの部屋で過ごしたすべての時間。

The doll’s house, darkness, old perfume
ドールハウス、暗闇、古い香水。

And fairy stories held me high
そしておとぎ話が、僕を高く抱き上げてくれた。

On clouds of sunlight floating by
流れゆく太陽の光の雲の上へと。
※子供部屋の閉鎖的で甘美な記憶(ドールハウス、母の香水、暗闇の安心感)の羅列。現実世界との関わりを断ち、内なる空想の雲の上(LSDのトリップ状態とも重なる)へと完全に浮遊していくシドの精神の行方を暗示している。

[Refrain: Syd Barrett & Richard Wright]
Oh, Mother
ああ、母さん。

Tell me more
もっとお話を聞かせてよ。

Tell me more
もっとお話を聞かせて。

[Outro: Richard Wright]
Ah
アー。

Ah
アー。

Ah
アー。

Ah
アー。

 

Matilda Mother

Matilda Mother

  • ピンク・フロイド
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