Artist: RAYE (feat. Hans Zimmer)
Album: THIS MUSIC MAY CONTAIN HOPE.
Song Title: Click Clack Symphony.
概要
RAYEのアルバム『THIS MUSIC MAY CONTAIN HOPE.』に収録された本楽曲は、映画音楽の巨匠ハンス・ジマーをフィーチャリングに迎えた壮大なエンパワーメント・アンセムだ。うつ病や孤独感に苛まれ、家から出られなくなった女性が、友人たちとの「夜遊び(Girls night out)」を通じて自己を取り戻していく過程を、まるで一本の映画のようにドラマチックに描き出している。タイトルにある「Click Clack」とは、女性たちが履くハイヒールの足音のこと。ジマーの重厚なオーケストレーションに乗せて鳴り響くその足音は、悲しみという魔物と戦うための行進曲(シンフォニー)へと昇華されている。かつて抑圧されたインディーズ時代を経て独立を果たし、自身のトラウマと向き合い続けるRAYEのキャリアにおいて、本作は「白馬の王子様」の救済を否定し「自分自身で自分を救う」決意を宣誓する、記念碑的な自己救済の物語である。
和訳
[Intro]
Did you know the odds to be born on this Earth's one in four hundred trillion?
地球上に生まれる確率が400兆分の1だって知ってた?
※生命誕生の奇跡的な確率を引き合いに出し、それほど貴重な命でありながら、現在うつ病で身動きが取れない自身の状況に対する虚無感(実存的な危機)を強調している。
I conquered those odds, yet I can't conquer leaving this house
私はその途方もない確率を打ち破ったのに、家から出ることすら打ち勝てないでいる
I eat, sleep, scroll, and work, but there has to be more than just merely existing
食べて、寝て、スマホをスクロールして、働く。でも、ただ生存している以上の何かが人生にはあるはずよ
In fact, I was thinking there's not enough wine in the fridge to unleash me
実際のところ、私を解放するには冷蔵庫のワインじゃ全然足りないって考えてたの
And this feeling fiends for some feminine healing
そしてこの感情は、女性同士の癒やしを痛いほど渇望している
By that, I mean
つまり、私が言いたいのは
[Pre-Chorus]
I call my girls and said, "SOS, pick a dress
女友達に電話してこう言ったの。SOSよ、ドレスを選んで
Pick a time and an address
時間と集合場所を決めてちょうだい
For we are going out tonight"
今夜、私たちは街へ繰り出すんだから
[Chorus]
Send the call out, send the call out
招集をかけて、みんなを呼び出して
Calling all my baddest women, it's about to go down
私の最高の女たち全員に招集をかけるの。いよいよ始まるわよ
※「baddest」はヒップホップスラングで「最もイケてる、最高に魅力的な」という意味。落ち込んだ状態から一転、戦闘態勢に入るためのシスターフッド(女性同士の連帯)の宣誓。
Click-click-click clack symphony, I need that
カツカツと鳴るシンフォニー、私にはそれが必要なの
※アスファルトを叩くハイヒールの音を、オーケストラの交響曲(シンフォニー)に見立てている。ハンス・ジマーの重厚なストリングスアレンジと相まって、単なる足音が戦地へ向かう軍隊の足音のような壮大さを持つ。
Click-click-click clack symphony, I love the sound of it
カツカツと鳴るシンフォニー、その響きが大好きなの
Who let the girls out? I did, I did, darling
誰が女の子たちを解き放ったの? 私よ、私がやったのよ、ハニー
※Baha Menの2000年の世界的ヒット曲「Who Let The Dogs Out」の有名なフレーズをもじったユーモアのあるパンチライン。
She's empowered by the sound of us marching
彼女は私たちの行進する足音から力をもらっている
Her legs are hurting, but her back is still arching
脚は痛むけれど、背筋はピンと張ったまま
※ハイヒールを履き続ける身体的な苦痛と、それでも美しく姿勢を保とうとする女性たちのプライドと強さのメタファー。
And this sound reminds me that it's going to be alright
そしてこの音が、きっと大丈夫だって私に思い出させてくれる
[Verse 1]
And I never could have guessed I started my morning in tears
朝から涙を流して一日を始めることになるなんて、思いもしなかった
Got a great waterproof mascara I can recommend
おすすめの素晴らしいウォータープルーフのマスカラがあるわよ
※泣き崩れている現状を、美容トークにすり替える自虐的なユーモア。
I should try my luck in Hollywood and find some auditions
ハリウッドで運試しして、オーディションでも受けてみるべきかもね
Because the way I fake this smile could pay the mortgage and the rent
だって、この作り笑いの才能があれば、住宅ローンも家賃も払えそうなくらいだから
※内面はボロボロなのに、世間や音楽業界に対して完璧なポップスターを演じ続けなければならなかったRAYE自身の過酷なバックストーリーへの言及。
I climb into my lonely throne before my TV
テレビの前の孤独な玉座によじ登る
※ただのソファを「孤独な玉座」と呼ぶことで、家という閉鎖空間で孤立している様を演劇的に表現している。
I feel alone, I feel like no one really needs me
孤独を感じる、誰にも必要とされていないような気がする
So thank you, Carly, for having a sixth sense
だから、カーリー、第六感を働かせてくれてありがとう
※実際の友人の名前を出してリアリティを持たせている。親友が彼女の危機的な精神状態を察知してくれたことへの感謝。
And for calling to remind me
そして、電話をかけて私に思い出させてくれて
We don't settle for depression on a Friday night
金曜の夜に、うつ病なんかに甘んじてちゃダメだってことを
[Pre-Chorus]
I need a pep talk, I need a hug, I need a dance floor
私には励ましの言葉が必要、ハグが必要、ダンスフロアが必要なの
I got one little life, I need to get out the house more
たった一度きりの短い人生なんだから、もっと家から出なくちゃ
And really start living it
そして、本当に人生を生き始めなくちゃ
Heavy is the burdens that are weighing on me
私に重くのしかかるこの重圧
I will lay them down under some pink and blue lights
ピンクとブルーのネオンライトの下で、それをすべて下ろすの
Call my girls and said, "SOS, pick a dress
女友達に電話してこう言ったの。SOSよ、ドレスを選んで
Pick a time and an address
時間と集合場所を決めてちょうだい
For we are going out tonight"
今夜、私たちは街へ繰り出すんだから
[Chorus]
Send the call out, send the call out
招集をかけて、みんなを呼び出して
Calling all my baddest women, it's about to go down
私の最高の女たち全員に招集をかけるの。いよいよ始まるわよ
Click-click-click clack symphony, I need that
カツカツと鳴るシンフォニー、私にはそれが必要なの
Click-click-click clack symphony, I love the sound of it
カツカツと鳴るシンフォニー、その響きが大好きなの
Who let the girls out? I did, I did, darling
誰が女の子たちを解き放ったの? 私よ、私がやったのよ、ハニー
She's empowered by the sound of us marching
彼女は私たちの行進する足音から力をもらっている
Her legs are hurting, but her back is still arching
脚は痛むけれど、背筋はピンと張ったまま
And this sound reminds me that it's going to be alright
そしてこの音が、きっと大丈夫だって私に思い出させてくれる
[Verse 2]
Jim-Jimmy Choo, it's time to open up the closet
ジ、ジミー・チュウ、今こそクローゼットを開ける時間よ
※世界的な高級靴ブランド。ここから靴のモチーフが続く。
It's a sad sight to see Manolo Blahnik gather cobwebs
マノロ・ブラニクが蜘蛛の巣を張っているのを見るのは悲しい光景だわ
※『セックス・アンド・ザ・シティ』などで有名な高級靴。長いうつ病のせいで外出もドレスアップもできず、美しい靴が放置されていたことへの深い哀愁。
Why, I'm like an alien in every dress I try
どうしてかしら、どのドレスを試着しても、自分がエイリアンみたいに浮いて見える
Sigh, let me turn my music louder and pretend it's fine
はあ、音楽のボリュームを上げて、平気なフリをさせて
Everything that's hurt me, left and gave up on me
私を傷つけ、置き去りにし、見放したすべてのもの
Am I just the product of everything that was done to me?
私はただ、自分にされたすべての仕打ちが生み出した産物にすぎないの?
※過去のトラウマや人間関係によって自己評価がどん底まで落ち、自分自身のアイデンティティを見失っている心理状態の吐露。
Run to me, come to me, someone bring the sun to me
私の元へ走ってきて、ここへ来て、誰か私に太陽を連れてきて
I can see the glimmer of the girl who once believed
かつて信じていた頃の女の子の、微かな希望の光が見えるの
[Pre-Chorus]
(She just needs, just needs) She needs a pep talk
彼女には励ましの言葉が必要なの
She needs a hug, she needs a dance floor
彼女にはハグが必要、ダンスフロアが必要なの
※ここで主語が「I」から「She」へと切り替わる。映画のカメラが引いていき、ハンス・ジマーの音楽と共に客観的なナレーター視点へと移行するシアトリカルな演出。
She's got one little life, she needs to get out the house more
たった一度きりの短い人生なんだから、彼女はもっと家から出なくちゃ
And try and start living it
そして、人生を生き始めようとしなくちゃ
Heavy is the burdens that are weighing on me (Me)
私に重くのしかかるこの重圧
I will lay them down under some pink and blue lights (Pink and blue lights)
ピンクとブルーのネオンライトの下で、それをすべて下ろすの
Call my girls and said, "SOS, pick a dress
女友達に電話してこう言ったの。SOSよ、ドレスを選んで
Pick a time and an address
時間と集合場所を決めてちょうだい
For we are going out tonight"
今夜、私たちは街へ繰り出すんだから
[Chorus]
Send the call out, send the call out
招集をかけて、みんなを呼び出して
Calling all my baddest women, it's about to go down
私の最高の女たち全員に招集をかけるの。いよいよ始まるわよ
Click-click-click clack symphony, I need that
カツカツと鳴るシンフォニー、私にはそれが必要なの
Click-click-click clack symphony, I love the sound of it
カツカツと鳴るシンフォニー、その響きが大好きなの
Who let the girls out? I did, I did, darling
誰が女の子たちを解き放ったの? 私よ、私がやったのよ、ハニー
She's empowered by the sound of us marching
彼女は私たちの行進する足音から力をもらっている
Her legs are hurting, but her back is still arching
脚は痛むけれど、背筋はピンと張ったまま
And this sound reminds me that it's going to be alright
そしてこの音が、きっと大丈夫だって私に思い出させてくれる
[Bridge]
Though this season of her life had been cold, lonely and tough
彼女の人生のこの季節は、冷たく、孤独で、厳しいものだったけれど
※楽曲はクライマックスを迎え、完全に童話の語り部のような俯瞰視点になる。
Though she slipped back into a darkness she had hoped by now to have overcome
とうの昔に乗り越えたと思っていた暗闇に、彼女は再び足を踏み入れてしまったけれど
She had learned a beautiful lesson
彼女は美しい教訓を学んだ
And she kissed her girls goodbye and thanked them for getting her out the house
彼女は女友達に別れのキスをして、家から連れ出してくれたことに感謝した
That maybe everything was going to be alright
もしかしたら、すべて上手くいくかもしれないと
And even if only for a moment
たとえ、ほんの一瞬だったとしても
Everything is going to be alright
すべてはきっと大丈夫
Yeah, it's going to be alright
ええ、きっと大丈夫
Going to be alright
大丈夫になる
[Chorus]
Send the call out, send the call out
招集をかけて、みんなを呼び出して
Calling all my baddest women, it's about to go down
私の最高の女たち全員に招集をかけるの。いよいよ始まるわよ
Click-click-click clack symphony, I need that
カツカツと鳴るシンフォニー、私にはそれが必要なの
Click-click-click clack symphony, I love the sound of it
カツカツと鳴るシンフォニー、その響きが大好きなの
Who let the girls out? I did, I did, darling
誰が女の子たちを解き放ったの? 私よ、私がやったのよ、ハニー
She's empowered by the sound of us marching
彼女は私たちの行進する足音から力をもらっている
Her legs are hurting, but her back is still arching
脚は痛むけれど、背筋はピンと張ったまま
And this sound reminds me that it's going to be alright
そしてこの音が、きっと大丈夫だって私に思い出させてくれる
[Outro]
Then she put her headphones in
そして彼女はヘッドフォンをつける
And there she danced under the weight of her clouds
彼女に重くのしかかる雨雲の下で、彼女は踊った
※アルバムの冒頭曲「Intro: Girl Under The Grey Cloud.」からの見事な伏線回収。灰色の雲(うつ病やトラウマ)は完全に消え去ったわけではないが、それに押し潰されるのではなく、その下で踊れるようになったという圧倒的な成長を描いている。
But for the first time in a long time
でも、本当に久しぶりに
She believed that one day, she would again feel the sun
いつかまた、太陽の光を感じられる日が来るのだと彼女は信じられた
She must be patient
彼女は忍耐強くならなければならない
She must have faith in the seeds that are planted beneath the snow
雪の下に植えられた種を信じなければならない
She must hold on and she must let go
しがみつくことと、手放すことの両方を学ばなければならない
She'll be alright, no riding, shining, armoured knight
彼女はきっと大丈夫。馬に乗った、輝く鎧の騎士なんていらない
※ディズニー映画や古典的な童話で描かれる「白馬の王子様」による他者からの救済を明確に否定するパンチライン。男性依存やロマンチックな幻想からの完全な脱却。
She will save herself this time
今回は、彼女自身が自分を救うのだから
And in fact, tonight she did confirm
そして実際、今夜彼女はそれを確信した
The cold never lasts, my darling
厳しい寒さは永遠には続かないのよ、ハニー
It just teaches the heart how to burn
寒さはただ、心に燃え上がり方を教えてくれるだけなのだと
※ファンの間で最も愛されているリリカルな結びの句。深く傷つき凍てついた極寒の経験(トラウマ)こそが、未来へ向かって強く生きるための情熱(炎)を生み出す燃料になるという、RAYEの魂の叫びが込められた完璧なクロージング。
