Artist: Frank Ocean
Album: channel ORANGE
Song Title: Fertilizer
概要
フランク・オーシャンの名盤『channel ORANGE』(2012年)の合間に挟まれる、わずか40秒弱の短いインタールード(幕間)トラックだ。本作は、数々のR&Bトップアーティストと仕事をしてきたグラミー賞受賞シンガーソングライター、ジェイムス・フォントルロイ(James Fauntleroy)が過去に制作した同名楽曲をカバーしたものである。ラジオのチャンネルを切り替えるようなノイズ音とともに、70年代のCMジングルやAMラジオを彷彿とさせるローファイでノスタルジックなサウンドが響き渡る。非常に短い楽曲ではあるが、そのリリックには秀逸なダブルミーニングが隠されている。恋人の吐く「嘘」や「言い訳」、あるいは理不尽な扱いといったネガティブな要素を「Bullshit(牛の糞=肥料)」に見立て、たとえそれが最低なものであっても、二人の愛を育む「Fertilizer(肥料)」になるのなら喜んで受け入れるという、盲目的で自己破壊的な愛の形を描いている。アルバム全体に漂う、満たされない愛や不完全な関係性への執着を見事に象徴する小品である。
和訳
[Intro]
Really, though, I think—
マジな話さ、俺が思うに…
※テレビやラジオのチャンネルを回している最中に、ふと耳に飛び込んできたかのようなトーク番組の断片。アルバム全体のコンセプトである「オレンジ色のチャンネル(channel ORANGE)をザッピングする」というシネマティックな演出の一環として挿入されている。
[Verse]
Fertilizer
肥料さ
※タイトルにもなっている「Fertilizer(肥料)」。ここでは植物を育てるための物理的な肥料と、冷え切った関係性や枯れかけた愛を再び育むための要素というメタファーとして機能している。
I'll take bullshit if that's all you got
君にそれしか出せないなら、くだらない嘘だって受け入れるよ
※この曲における最大のパンチライン。「bullshit」にはスラングとしての「でたらめ、嘘、くだらない言い訳、理不尽な扱い」という意味と、文字通りの「牛の糞(=肥料)」という2つの意味がかけられている。相手が誠実な愛情をくれず、ひどい態度や「でたらめ(bullshit)」しか与えてくれないとしても、それを愛を育てるための「肥料(bullshit)」として飲み込むという、深く歪んだ自己犠牲の精神を表している。コアなR&Bファンの間でも、このたった1行に込められた極めて高度で皮肉なリリシズムが高く評価されている。
Some fertilizer
いくらかの肥料を
※ただ相手の傍にいるために、相手の不誠実な振る舞いすらも「関係を続けるための栄養」だと正当化しようとする切実な心理が漂う。
Fertilizer
肥料さ
※AMラジオのジングル風の軽快でポップなメロディとは裏腹に、どうしようもない関係にすがりつく主人公の痛切な本音が響き渡り、余韻を残したまま唐突に次のトラックへと切り替わっていく。
