Artist: Pixies
Album: Surfer Rosa
Song Title: Oh My Golly!
概要
1988年発表の歴史的デビュー・フルアルバム『Surfer Rosa』に収録された本作は、タイトルトラック的な役割を果たしつつ、Pixiesのルーツであるサーフ・ロックとハードコア・パンクのエネルギーが最もストレートに融合した楽曲である。フロントマンのブラック・フランシスが学生時代にプエルトリコへ交換留学した際の経験が色濃く反映されており、歌詞の大半は彼特有の文法が崩れた「ブロークン・スパニッシュ(Spanglish)」で歌われている。陽気なカリブ海の情景から一転して「人生はクソだ」と吐き捨てる虚無主義への急降下は、彼らのシニカルな美学そのものだ。さらに、楽曲の後半にはプロデューサーのスティーヴ・アルビニが意図的に残したスタジオ内での生々しい会話(キム・ディールに対するブラック・フランシスのブラックジョークの言い訳)が収録されており、バンド内の奇妙なテンションとドキュメンタリー的な空気感を封じ込めた重要曲としてファンの間で愛されている。
和訳
[Verse 1: Frank Black, Frank Black and Kim Deal]
Dentro las piñones y las olas pequeñas
松の木々と小さな波の中で
※ブラック・フランシスのプエルトリコでの体験に基づくスペイン語の情景描写。サーフ・カルチャーの爽やかさと異国情緒を漂わせている。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
Caminamos bajo la luna caribe
俺たちはカリブの月の下を歩くんだ
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
Besando, chicando con Surfer Rosa
キスをして、サーファー・ローザと戯れるのさ
※ここでアルバムのタイトルにもなっている架空のキャラクター「サーファー・ローザ」が登場する。「chicando」は標準的なスペイン語ではなく、ぶつかり合う(chocando)の変形、あるいは彼独特のスラング的造語であると考えられており、海辺での肉体的な交わりや情事を暗示している。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
Entonces se fue a su manera
そして彼女は自分の道を行ってしまった
※ひと夏の短い恋の終わり。熱狂的なコーラスとは裏腹に、呆気ない別れが語られる。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
[Chorus: Frank Black and Kim Deal]
Rosa, oh-oh-oh, Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Rosa, oh-oh-oh, Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Huh huh!
[Verse 2: Frank Black, Frank Black and Kim Deal]
Yo soy playero pero no hay playa
俺はビーチ・ボーイなのに、ここにはビーチがないんだ
※「playero」は海辺をうろつく若者やビーチ・バムを指す。海を愛しているのに海がない場所にいるという自己矛盾は、現実と理想のギャップや、社会における強烈な疎外感のメタファーである。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
Bien perdida la Surfer Rosa
サーファー・ローザはすっかり迷子だ
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
La vida total es una porquería, porquería
人生なんて全部クソだ、ただのゴミさ
※陽気なサーフ・サウンドに乗せて、突如として究極のニヒリズム(虚無主義)がスペイン語で爆発する。この極端な感情の振れ幅こそがPixiesのオルタナティヴな魅力の核である。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
Me hecho menos más que vida
俺は命以上に彼女が恋しいんだ
※スペイン語の「echo de menos(〜が恋しい)」を意図的か無意識か「hecho menos(自分をより小さくする)」と混同したようなブロークンな表現。ファンの間では「彼女を失って人生以上のものを失った」という哀愁と、「俺の人生なんてちっぽけなものだ」という自己卑下のダブルミーニングとして解釈されている。
Oh my golly! Oh my golly!
おお、なんてこった!なんてこった!
[Chorus: Frank Black and Kim Deal]
Rosa, oh-oh-oh, Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Rosa, oh-oh-oh, oh, Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Huh huh!
[Instrumental Break]
[Chorus: Frank Black and Kim Deal]
Rosa, oh-oh-oh, Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Rosa, oh-oh-oh-oh Rosa!
ローザ、おお、ローザ!
Huh huh!
[Spoken Word: Frank Black]
"You fucking die," I said to her
「ぶっ殺すぞ」って、俺は彼女に言ったんだ
I said, "You fucking die!" to her
「死にやがれ!」って、彼女にそう言ったんだよ
Huh? What?
え?なんだって?
No, no, I was talkin' to Kim
いや、違う、キムに話しかけてたんだ
I said, "You fuckin' die"
「ぶっ殺すぞ」って言ったんだよ
No, I-- we were just goofin' around
いや、俺は…俺たちはただふざけ合ってただけさ
No, no, it didn't have anything to do with anything
いやいや、深い意味なんて何もないんだ
She said, "Don't tou- anybody touches my stuff"
彼女が「私の機材に誰も触らないでよ」って言ったから
And I said, "You fuckin' die," like that
だから俺が「ぶっ殺すぞ」って、そんな感じで言っただけさ
I was finishing her part for her
彼女の言葉のオチをつけてやったんだよ
You know what I mean?
俺の言ってること、わかるだろ?
※プロデューサーのスティーヴ・アルビニが、スタジオ内のマイクを回したまま録音した歴史的なアウトテイク音声。自分のアンプや機材に他人が触れることを極端に嫌がったキム・ディールに対し、ブラック・フランシスが放ったキツい冗談を、スタジオの外にいる誰か(おそらくアルビニ)に慌てて弁明している様子が収められている。当時のバンド内の張り詰めた空気感と、それを面白がって楽曲の一部に組み込んでしまうアルビニのドキュメンタリー的なプロデュース手法を象徴する有名な一幕である。
