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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Kitchen - SZA 【和訳・解説】

Artist: SZA

Album: SOS Deluxe: LANA

Song Title: Kitchen

概要

SZAの大ヒットアルバム『SOS』のデラックス・エディション『LANA』に収録された「Kitchen」は、離れるべきだと分かっている有害な関係(Toxic Relationship)からどうしても抜け出せない女性の葛藤を赤裸々に描いたR&Bトラックだ。楽曲のタイトルでもある「キッチン」は、同棲生活のリアルな日常空間であり、そこで交わされるダンスやキスといった甘い記憶が、相手の過ちや自身の痛みを麻痺させてしまう。母親の忠告を無視し、ドラッグで現実逃避をしながら「どん底でのバカンス」を楽しむ自傷的なペルソナは、SZAがこれまでのキャリアで一貫して描いてきた「自己嫌悪と共依存」の極致である。頭では「正しいこと(別れ)」を理解しながらも、肉体的な快楽や積み重ねてきた歴史の重みに抗えない現代のインセキュアな心情を、美しいメロディに乗せて残酷なまでに鮮やかに切り取った傑作である。

和訳

[Verse 1]

You know we got a real history
私たちには本物の歴史があるって分かってるでしょ
※お互いに深く関わり合い、長く過ごしてきた過去があることの確認。

That's no reason I can't choose me (Ooh)
だからといって、私が自分自身を選べない理由にはならない
※過去のしがらみを理由に、自分の幸せ(自立して別れること)を犠牲にする必要はないという理性的な判断。

You know that dick been good to me (Ah)
あなたのそのモノが私を満足させてきたって分かってるでしょ
※ストレートな性的表現。理性を狂わせ、関係を断ち切ることを困難にさせている肉体的な相性の良さ。

You make it hard for me to choose me
あなたは私が自分自身を選ぶのを難しくするの
※相手の魅力や与えられる快楽が、結果的に自分自身を大切にするという「正しい選択」を妨げている。

[Chorus]

Dancing and kissing, the kitchen
キッチンで踊ってキスをする
※日常的で親密な空間であるキッチン。そこでのロマンチックな出来事が、彼女の判断を鈍らせる。

Makes me forget, I forgive him
すべてを忘れさせて、彼を許してしまうの
※どんなに傷つけられても、甘い瞬間が訪れると過去の過ちを許してしまうという共依存の恐ろしさ。

Mama told me I don't listen, back again
ママには忠告を聞かないのねって言われる、また元通り
※周囲の客観的で正しい助言(別れるべきだという母親の言葉)に耳を貸さず、再び元のToxicな関係に戻ってしまう自己嫌悪。

Crashing out on shrooms, I guard them
マジックマッシュルームでハイになってぶっ倒れて、私は彼らを守る
※「shrooms」は幻覚キノコのこと。薬物で現実逃避をして正気を失いながらも、自分たちの狂った関係性(あるいは幻覚そのもの)を必死に守ろうとする異常な心理状態。

Cursing you solves all my problems
あなたを呪うことが、私のすべての問題を解決してくれる
※根本的な解決には向き合わず、相手への怒りや恨みを原動力にすることで一時的に精神のバランスを保っている。

Vacationing in rock bottom, back again
どん底でバカンスを楽しんでいる、またここに戻ってきた
※「rock bottom(人生のどん底)」という絶望的な状況にいるにもかかわらず、もはやその痛みに慣れきってしまい、バカンスのように楽しんでしまっているという極めて自傷的でダークなパンチライン。

[Post-Chorus]

So hard to do the right thing (Ah)
正しいことをするのはとても難しい
※「正しいこと」とは、彼と別れて自分の人生を歩むこと。頭では分かっていても行動に移せない無力感。

So hard to do the right thing (Oh)
正しいことをするのはとても難しい

[Verse 2]

You know we got a real history
私たちには本物の歴史があるって分かってるでしょ

That don't mean I'll let you abuse me (Ooh)
だからといって、あなたに私を痛めつけさせていいわけじゃない
※長い付き合いだからといって、精神的・肉体的な暴力や軽視(abuse)を許容する理由にはならないという反発。

That pussy hit like royalty (Oh)
私の体は王族みたいに最高だったでしょ
※自分自身の性的魅力や価値を「royalty(王族)」に例え、相手にとって手放しがたい存在であると誇示するヒップホップ的なフレックス。

Must be hard for you to lose me
私を失うのはあなたにとって辛いことのはずよ
※自分だけでなく、相手もまたこの関係に深く依存していることへの優越感と皮肉。

[Chorus]

Dancing and kissing, the kitchen
キッチンで踊ってキスをする

Makes me forget, I forgive him
すべてを忘れさせて、彼を許してしまうの

Mama told me I don't listen, back again
ママには忠告を聞かないのねって言われる、また元通り

Crashing out on shrooms, I guard them
マジックマッシュルームでハイになってぶっ倒れて、私は彼らを守る

Cursing you solves all my problems
あなたを呪うことが、私のすべての問題を解決してくれる

Vacationing in rock bottom, back again (Oh)
どん底でバカンスを楽しんでいる、またここに戻ってきた

[Post-Chorus]

So hard to do the right thing (Oh)
正しいことをするのはとても難しい

So hard to do the right thing (Oh, do the right, oh, I)
正しいことをするのはとても難しい

So hard to do the right thing (So hard to do the right thing, ah)
正しいことをするのはとても難しい

So hard to do it (Ooh, so hard to do it)
とても難しいの

[Outro]

You know we got a real history
私たちには本物の歴史があるって分かってるでしょ

Dancing, kissing, the kitchen
踊って、キスをして、キッチンで

Makes me think I forgive him
彼を許したと錯覚させてしまうの
※1番のコーラスでの「I forgive him(彼を許してしまう)」から、「Makes me think I forgive him(許したと思い込ませる、錯覚させる)」に変化している。本当は許していないが、ロマンチックな雰囲気に飲まれて麻痺しているだけだという事実への痛切な気づき。

(Ba-ba, ba-ba-ba)

Dancing, kissing, the kitchen
踊って、キスをして、キッチンで

Makes me think I forgive him
彼を許したと錯覚させてしまうの

(Ba-ba, ba-ba-ba)