Artist: Isaiah Rashad
Album: IT’S BEEN AWFUL
Song Title: M.O.M
概要
本作「M.O.M」は、前作『The House Is Burning』から5年の沈黙を破り、2026年5月1日にリリースされたIsaiah Rashadの3rdスタジオアルバム『IT’S BEEN AWFUL』の2曲目に配置された楽曲である。タイトルの「M.O.M」はフックで繰り返される「Man on a mission(使命を帯びた男)」の頭文字をとったものだ。アルバムのオープニング「THE NEW SUBLIME」で提示された重くメランコリックな懺悔のトーンから一転し、プロデューサーのHollywood Coleらが手掛ける808ベースが効いたバウンシーでトラップライクなビートへとテンポが引き上げられる。しかし、軽快なサウンドとは裏腹に、リリックで描かれるのはドラッグ依存の再発、極度のパラノイア(被害妄想)、そして監視社会への恐怖といった生々しい現実である。「前進しようとする使命感」と「過去の沼に引き戻される引力」の間で揺れ動く(Back and forth)、Isaiahの複雑な内的葛藤が見事に表現された、本作を象徴するトラックの一つである。
和訳
[Intro]
But it's taking me back and forth
でもそれが俺を行ったり来たりさせるんだ
※前進しようとする意志と、ドラッグや過去のトラウマに引き戻される引力の間で、精神的に揺れ動いている状態を指している。
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back—
使命を持った男さ、なのに俺は引き戻されそうになる
Now I'm the man on a mission, but it's taking me back and forth
今じゃ俺は使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
※「使命(mission)」は、家族を養うこと、音楽で成功すること、あるいは単にシラフで生き続けることなど、彼が背負う様々な責任を意味する。
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's— (Ah)
使命を持った男さ、なのに俺は
[Verse 1]
Duh
My mama don't want no drugs up in this house, hide the dust
母さんはこの家にドラッグを持ち込むなって言う、だから粉を隠すんだ
※「dust(粉)」はコカインや他の粉末状のドラッグのこと。家族の目を盗んで依存症と闘っている生々しく悲痛な描写。
I'm levitating off this love and when you doubt, it's like you flushed it
この愛で宙に浮いてる気分さ、でも君が疑うと全部トイレに流された気分になる
※愛による「ハイ(levitating)」と、疑いを持たれることでその幸福がドラッグのようにトイレに流されて(flushed)台無しになってしまう虚無感を表現している。
That baby don't know the price to hit these heights, don't you touch
あの子はこんな高みへ行くための代償を知らない、お前は手を出さない方がいい
※「hit these heights」は成功の頂点と、ドラッグによる強烈なハイのダブルミーニング。その裏にある精神的な苦痛という「代償(price)」を警告している。
My mind was screaming, "Jump, jump, jump"
頭の中では「飛べ、飛べ、飛べ」って叫んでた
High and I'm fried, can you order some fries for me?
ハイになって頭がぶっ飛んでるんだ、ポテトでも注文してくれないか?
※「fried(ドラッグで脳が焼き切れたような状態)」と「fries(フライドポテト)」をかけたワードプレイ。マンチー(大麻などによる空腹感)に襲われているシーン。
Can you spot a lie when the government tied to it?
政府が絡んでる時、お前は嘘を見抜けるか?
A feast for your eyes, now they fucking your mind again
目にはご馳走だが、奴らはまたお前の精神をめちゃくちゃにする
A beep at the light got me upping the fire and shit
信号待ちでクラクションを鳴らされただけで、銃を構えちまった
※「up the fire」は銃(fire/firearm)を抜くこと。極度のパラノイアやPTSDに陥っており、些細な日常の音にすら過剰な警戒心を抱いてしまう危険な精神状態を描写している。
We got a bond that them niggas despise in here
俺たちには、あいつらが忌み嫌うような絆がある
Please give me time, don't be ticking the bomb to death
頼むから少し時間をくれ、死に向かって爆弾の時計を進めないでくれ
Wait, come alive, don't be doing a line again
待ってくれ、正気に戻れよ、またラインを引いたりしないでくれ
※「doing a line」は粉末のドラッグ(コカインなど)を線状にして鼻から吸う行為。リラップス(再発)の誘惑に対する彼自身の激しい内的葛藤。
In the car late waiting outside, damn, you must be reading my mind
夜遅くに外で車の中で待ってるなんて、クソ、君は俺の心を読んでいるに違いない
[Chorus]
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
The man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back—
使命を持った男さ、なのに俺は引き戻されそうになる
Now I'm the man on a mission, but it's taking me back and forth
今じゃ俺は使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back—
使命を持った男さ、なのに俺は引き戻されそうになる
I'm the man on a mission, but it's taking me back and forth
俺は使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
[Verse 2]
You ain't got nothing to hold on, baby
ベイビー、お前にはすがるものなんて何もないんだ
Boyfriend creeping and your girlfriend left you?
彼氏は浮気してて、彼女には捨てられたって?
Real live streaming and the world don't love you?
リアルタイムで配信してるのに、世界は誰も愛してくれないか?
Elon digging through the cell phone records?
イーロンが携帯の通話履歴を漁りまわってるって?
※イーロン・マスク(Elon Musk)によるX(旧Twitter)の買収やテクノロジー企業によるプライバシー侵害、現代の監視社会へのパラノイアを表現している。
Everything for sell, even hell, my nigga
何でも売り物にされる時代さ、地獄すらもな、マイ・ニガ
Soon they'll be tryna sell the air, my nigga
そのうちあいつらは空気さえも売りつけようとするだろうよ
Paid my bills and it still don't work
請求書を払ったのに、まだ何も上手くいかない
Ask my dog if we still on Earth
俺の犬に聞いてみてくれよ、ここはまだ地球なのかって
※現実と虚構の区別がつかなくなっているほどの精神的な乖離(解離症状)や、強烈なトリップ状態を示唆している。
[Verse 3]
We at it again
俺たちまたやってるな
Lies, truths, the average between
嘘と真実、そしてその間にある平均値
You wanna try too, reality is..
お前も試してみたいんだろ、現実ってのはな…
I got a bag full of Avril Lavigne
アヴリル・ラヴィーンでいっぱいの袋を持ってることさ
※「Avril Lavigne(アヴリル・ラヴィーン)」は白人のポップロックスター。ヒップホップにおけるスラングで白人女性のセレブ名は「コカイン(White Girl)」の隠語として多用される。純度の高いドラッグが詰まった袋(パケ)を持っていることを意味する極めてドープなメタファー。
[Bridge]
Don't just dance (Don't just dance), go on, get loose (Go on, get loose)
ただ踊るだけじゃなく、もっとハメを外そうぜ
Go on, put everything you had in the booth (Go on, get loose)
さあ、お前の持ってる全てをブースにぶつけるんだ
Let's get gone (Let's get gone), go on, pop two (Gon' pop two)
どこか遠くへ行こうぜ、さあ、2錠キメろよ
※「pop two」はピル(パーコセットやザナックスなどの医療用麻薬の錠剤)を2つ飲むこと。
Wait (Wait), don't overdo it
いや待てよ、やりすぎちゃダメだ
※ハメを外そうとする自分と、破滅の恐怖から自制しようとする理性との間のリアルな葛藤がダイレクトに表れている。
Don't just dance, go on, get loose
ただ踊るだけじゃなく、もっとハメを外そうぜ
Go on, put everything you had in the booth
さあ、お前の持ってる全てをブースにぶつけるんだ
Let's get gone, go on, pop two
どこか遠くへ行こうぜ、さあ、2錠キメろよ
Wait, don't overdo it
いや待てよ、やりすぎちゃダメだ
[Chorus]
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
The man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back—
使命を持った男さ、なのに俺は引き戻されそうになる
Now I'm the man on a mission, but it's taking me back and forth
今じゃ俺は使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back—
使命を持った男さ、なのに俺は引き戻されそうになる
I'm the man on a mission, but it's taking me back and forth
俺は使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
Man on a mission, but it's taking me back and forth
使命を持った男さ、なのに俺は行ったり来たりしている
[Outro]
(Cole, you stupid)
※「Cole, you stupid」は本楽曲のビートを手掛けたプロデューサーの一人「Hollywood Cole」のシグネチャータグ。G HerboやDrake、J. Cole関連のプロデュースでも知られる彼のアトランタ由来のバウンシーなビートアプローチが、Isaiahの悲痛なリリックと絶妙なコントラストを生み出している。
