Artist: The Alchemist (feat. Boldy James)
Album: LIQUID FORM
Song Title: On The Spectrum
概要
ジ・アルケミスト(The Alchemist)のプロジェクト『LIQUID FORM』に収録された本作は、デトロイト出身の冷徹なストーリーテラー、ボルディ・ジェームス(Boldy James)をフィーチャーした極めてドープな一曲である。アルケミストとボルディは『The Price of Tea in China』などの名盤を生み出してきたヒップホップ界屈指の黄金タッグであり、本作でもその相性の良さは健在だ。アルケミストのミニマルで不穏なループビートの上で、ボルディは感情を排したモノトーンのフロウで、デトロイトの過酷なストリートライフ、殺しの美学、そしてハスラーとしての覚悟を淡々とスピットする。タイトルの「On The Spectrum(スペクトラム上にある)」とは、感情や躊躇が欠落した冷酷なヒットマンを「自閉症スペクトラム」に例えた残酷なパンチラインに由来する。ボクシングの用語やデトロイトの地理を巧みに織り交ぜながら、法の目をすり抜けるマフィオソ・ラップの真髄を見せつけるマスターピースである。
和訳
[Intro: Boldy James]
Shit giving me big mafia vibes
これはマフィアのヴァイブスを強く感じるぜ
Ay
Jack God
ジャック・ゴッド
※ボルディ・ジェームスのクルーに関連する掛け声。
Two-way deuce, siete
ツー・ウェイ・デュース、シエテ
※「227(Two = 2、deuce = 2、siete = スペイン語で7)」。ボルディが所属するデトロイトのクルー「Concreatures」を象徴する数字であり、彼らの地元のブロックを表す。
Café, what else?
カフェだ、他に何がある?
[Verse 1: Boldy James]
Road raging, fourteen years old with a white-gold Skagen
ロードレイジ、14歳でホワイトゴールドのスカーゲンを着けていた
No faking, before we was spot running, we was stealin' cars
嘘じゃねえ、拠点を仕切る前は、俺たちは車を盗んでいたんだ
Stealin' large, name rings, rallies tryna build a charge
デカい盗みをやり、名前が売れ、サツは俺たちの容疑を固めようと躍起になっていた
Shot Deshaun in front of his little niece, don't know what I be thinking
幼い姪の目の前でデショーンを撃った、自分が何を考えていたのか分からねえ
I be tweaking, leaking the fuck out, murder is my attraction
俺はイカれてる、血を流させる、殺人が俺の魅力なんだ
Love is blind, and all I see is red like a crime of passion
愛は盲目、俺に見えるのは情痴犯罪のような赤だけだ
※血の「赤(red)」と、激情に駆られた犯罪(crime of passion)を掛けた表現。
Head over heals for these federal bills
この連邦紙幣に首ったけなのさ
※連邦紙幣=ドルのこと。「Head over heels(首ったけ)」でお金への強い執着を示している。
Been had morе money than my teacher, nеver paid for my protection
昔から学校の先生よりも金を稼いでいたし、みかじめ料なんて払ったことはない
Doing all of that campaigning in this race gon' get elected
このレースで選挙運動ばかりしてりゃ、そのうち当選しちまうぜ
※ストリートで目立つ行動(campaigning)ばかりしていると、いずれ標的として撃たれる(get elected=当選する)という比喩。
My hitman, he special ed, you gotta rate him on the spectrum
俺のヒットマンは特別支援学級だ、あいつはスペクトラムで評価しなきゃならねえ
※タイトルの伏線。「special ed(特別支援教育)」と「spectrum(自閉症スペクトラム)」を用い、他者の感情に共感せず、冷酷に殺人を遂行するサイコパス的な殺し屋を描写した強烈なパンチライン。
If I call you my brother that mean we gang, you can't just up and outie
俺がお前を兄弟と呼ぶなら、それはギャングってことだ、急に抜け出すなんてできねえぞ
This shit for life, it ain't no if's, and's, or but's about it
これは一生もんだ、もしも、そして、でもなんて言い訳は通用しねえ
Quick to ratatat, tat 'em when that strip blaze
ストリートが燃え上がる時、すぐにラタタタッと撃ち込む
It's 227, this shit tatted on my ribcage
これは227、俺の肋骨に彫られたタトゥーだ
The biggest creature, don't mistake me with your favorite rapper
最大のクリーチャーだ、お前のお気に入りのラッパーと俺を勘違いするな
※彼が率いる「Concreatures」に掛けている。
Run with them movers and them shakers, takers and them smackers
実力者たち、奪い取る奴ら、そして殺し屋たちとつるむのさ
[Chorus: Boldy James]
Curtis Curb to Pickford Ave, we with the riff and raff
カーティス・カーブからピックフォード通りまで、俺たちはゴロツキどもと一緒だ
※デトロイトの実在するストリート名。
I shot them niggas with one bullet, made 'em split the tab
1発の弾で奴らを撃ち抜き、お勘定を割り勘にさせてやった
※一発の銃弾で2人を殺害することを、レストランの「会計を分ける(split the tab)」に例えた秀逸なメタファー。
He should've listened to his corner and watched for the hook
あいつはセコンドの言うことを聞いて、フックを警戒すべきだったな
Choke up a kidney where I'm from, you better zig or zag
俺の地元じゃ腎臓をえぐり出される、ジグザグに動いた方がいいぜ
Or push that button on 'em, chip 'em with an uppercut
それとも奴らのボタンを押し、アッパーカットで削り取ってやるか
Chop him, caught him with a sucker punch, he couldn't slip the jam
叩き斬り、不意打ちを見舞う、あいつは窮地を抜け出せなかった
※このコーラス全体に渡って「corner(セコンド)」「hook(フック)」「uppercut(アッパー)」「sucker punch(不意打ち)」「slip(パンチをかわす)」というボクシング用語が散りばめられている。
These niggas cops, the only thing they missing is a badge
こいつらはサツだ、足りないのはバッジくらいだ
We dibble dabble in narcotics, tryna ditch the tags
俺たちは麻薬に手を出し、タグを捨てようとしている
※「tags」は追跡装置や値札、あるいは警察の監視を撒くこと。
[Verse 2: Boldy James]
Double-A-12, Moross to Mack, making 'caine sales
AA12、モロスからマックへ、コカインを売り捌く
※「AA12」は強力なフルオートマチック・ショットガン。「Moross」と「Mack」はデトロイトの交差点。
Run with them boys across the track like a train rail
列車のレールのように、線路の向こう側の奴らとつるむ
Twelve got on us, had to toss the strap, took 'em on one
サツが迫ってきた、銃を捨てなきゃならなかった、タイマンでやってやる
※「Twelve」は警察を意味するスラング。「strap」は銃。
I smoke until my eyes bleed, poppin' pain pills
目から血が出るまで吸い、鎮痛剤を飲む
Stacking extras off the pros because I know the recipe
俺はレシピを知っているからな、プロから余分に掠め取って稼ぐのさ
You know that bag don't ever close, call that open sesame
あのバッグが閉まることはない、「開けゴマ」って呼んでくれ
I never lack, Quick Draw McGraw, told her to open registry
隙は見せない、早撃ちマッグロウだ、彼女にレジを開けろと指示した
※「Quick Draw McGraw(早撃ちマッグロウ)」はハンナ・バーベラの西部劇アニメのキャラクター。銃を抜くのが速いことの例え。
When I was packing up the raw selling blow excessively
純度の高いヤクを詰め込み、コカインを過剰に売り捌いていた頃
Where was you at when me and Clark took this shit to new heights
俺とクラークがこのビジネスを新たな高みへ引き上げた時、お前はどこにいたんだ?
Duck the long of the law, running from the red and blue lights
法の長い手をかわし、赤と青のランプから逃げ回る
We cook the beef when it unthaw, went wrong don't make it two rights
解凍されたらビーフを料理する、間違いを重ねても正しいことにはならない
※「beef」は肉と「揉め事」のダブルミーニング。「two wrongs don't make a right(悪に悪で報いても善にはならない)」ということわざの引用。
When you uncut without a flaw, you can't be scared to do life
傷ひとつない純度100パーセントの存在なら、終身刑を恐れちゃいけない
※「uncut」は混ぜ物のない純度の高いコカインを指し、同時にハスラーとしての純度や覚悟の強さを表す。
If they book me without a bond I'll sit my mom's front row
保釈なしでブタ箱に入れられたら、母親を法廷の最前列に座らせるさ
'Least I know what I had coming, what I signed up for
少なくとも自分がどうなるか、何にサインしたかは分かってる
Been had my mind made up, I know what came with this shit
とっくに覚悟は決まってる、この道に何がつきまとうか知ってるんだ
Talking in cursive, got the Feds like, "what language you speak?"
筆記体で話す、連邦捜査官は「お前は何語を話してるんだ?」って顔をしてるぜ
※「talking in cursive(筆記体で話す)」とは、警察には理解できないストリートの高度なスラングや暗号を使って滑らかに喋ること。
[Chorus: Boldy James]
Curtis Curb to Pickford Ave, we with the riff and raff
カーティス・カーブからピックフォード通りまで、俺たちはゴロツキどもと一緒だ
I shot them niggas with one bullet, made 'em split the tab
1発の弾で奴らを撃ち抜き、お勘定を割り勘にさせてやった
He should've listened to his corner and watched for the hook
あいつはセコンドの言うことを聞いて、フックを警戒すべきだったな
Choke up a kidney where I'm from, you better zig or zag
俺の地元じゃ腎臓をえぐり出される、ジグザグに動いた方がいいぜ
Or push that button on 'em, chip 'em with an uppercut
それとも奴らのボタンを押し、アッパーカットで削り取ってやるか
Chop him, caught him with a sucker punch, he couldn't slip the jam
叩き斬り、不意打ちを見舞う、あいつは窮地を抜け出せなかった
These niggas cops, the only thing they missing is a badge
こいつらはサツだ、足りないのはバッジくらいだ
We dibble dabble in narcotics, tryna ditch the tags
俺たちは麻薬に手を出し、タグを捨てようとしている
[Outro Sample]
