Artist: Erykah Badu & The Alchemist
Album: Before the World Blows
Song Title: Echos
概要
本作「Echos」は、ネオ・ソウルの女王Erykah Baduと、現代ヒップホップ最高峰のプロデューサーであるThe Alchemistがタッグを組んだ、極めてコンシャスでスピリチュアルな楽曲である。The Alchemistのミニマルでありながら深みのあるループ・ビートの上で、Baduは長老(エルダー)としてのペルソナを纏い、人種問題、抑圧された女性の歴史、そして現代社会のシミュレーション的な虚無感に対して鋭くメスを入れている。ジョン・レノンやOdd Futureといった時代を超越した音楽的リファレンスを交えつつ、アメリカ先住民やアフリカ系アメリカ人の奴隷制という血塗られた歴史を振り返り、自らの先祖たちの名前を誇り高く列挙していく。最終的には、暴力(銃)よりも音楽や文化(ドラム)こそが後世まで生き残るという不屈のメッセージを提示し、分断された世界において「血」や「鎖」ではなく「愛」と「知性」で結びつくことの重要性を説いた、現代の祈りのような名曲である。
和訳
[Intro]
Red, yellow, black, white, or brown
赤、黄色、黒、白、それとも茶色
※人間の肌の色(人種)を指している。
(Got a hundred grand on my spade's hand)
(俺のスペードの手に10万ドル賭けてる)
※「Spades」はアフリカ系アメリカ人の間で伝統的に親しまれているトランプゲーム。
(Got a partner, I got the big joker)
(パートナーがいる、俺にはビッグ・ジョーカーがある)
Red, yellow, black, white, or brown
赤、黄色、黒、白、それとも茶色
(Chill, Nayrock, stick to the plan)
(落ち着け、ネイロック、計画通りにやれ)
※「Nayrock」はErykah Baduの別名、または側近の愛称。
Red, yellow, black, white, or brown
赤、黄色、黒、白、それとも茶色
[Verse 1]
Ah, if we can't agree on the God we pick
あぁ、私たちが選ぶ神について意見が合わないのなら
Then, my God
それなら、神よ
Let's at least agree on this snare and kick, ooh
せめてこのスネアとキックのビートについてだけは同意しましょう
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Oh, if you can't love the one you with
もしあなたが一緒にいる人を愛せないのなら
Ah, then you ain't her God, mm
それなら、あなたは彼女にとっての神ではないわ
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Ah, John Lennon said
ジョン・レノンは言ったわ
They treat women like the niggas of the world, yes, he did
彼らは女性をこの世界のニガのように扱っていると、ええ、彼はそう言ったわ
※ジョン・レノンとオノ・ヨーコによる1972年の楽曲「Woman Is the Nigger of the World(女は世界の奴隷か!)」からの直接的な引用。女性への普遍的な抑圧を黒人差別に例えた表現。
(So watch how you trеat your girl)
(だから自分の女の扱い方には気をつけな)
Ah, 'cause the future looking odd thеse days That's on Tyler, Frank, and Earl
だって最近の未来はおかしなことになってるから、それはタイラー、フランク、そしてアールに懸かってる
※「odd(おかしい)」という言葉から、ヒップホップ・コレクティヴ「Odd Future(オッド・フューチャー)」のメンバーであるTyler, the Creator、Frank Ocean、Earl Sweatshirtへの鮮やかなネームドロップ。次世代のアーティストたちへ未来を託している。
Oh, step in creation
さあ、創造の中に足を踏み入れて
Show us a new way, ways of old
新しい道、古き良き道を見せてちょうだい
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Ah, see
ほら、見て
After everything, we all the same
結局のところ、私たちはみんな同じなの
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
All under the same constitution, same illusion
同じ憲法の下、同じ幻想の下にいる
Same confusion, same institution
同じ混乱、同じ制度
Same simulation (Came to the same conclusion, yeah)
同じシミュレーションの中に(同じ結論にたどり着いたの)
I don't really know
本当のところは分からないけど
See, we used to be bound by blood
ほら、私たちはかつて血の繋がりで縛られていた
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Now we bound by love, yeah
今は愛によって結ばれているの
[Refrain]
Red, yellow, black, red, yellow, black
赤、黄色、黒、赤、黄色、黒
Red, yellow, black, red, yellow, black
赤、黄色、黒、赤、黄色、黒
Red, yellow, black, red, yellow, black
赤、黄色、黒、赤、黄色、黒
Red, yellow, black, red, yellow, black
赤、黄色、黒、赤、黄色、黒
[Verse 2]
'Cause they didn't believe that we'd break the chains
だって奴らは私たちが鎖を断ち切るなんて信じていなかったから
And we couldn't be programmed and we all the same
私たちはプログラムされることなんてないし、みんな同じだと
And we know the truth that you trying to separate us
あなたが私たちを分断しようとしている真実を、私たちは知っている
We are not no robots (We are not robots)
私たちは決してロボットなんかじゃない(私たちはロボットじゃない)
Select the squares with the crosswalks
横断歩道が写っているマスを選択してください
※インターネット上のボット認証システム(reCAPTCHA)のパロディ。システムによって「人間性」を証明させられる現代社会の抑圧とシミュレーションを皮肉っている。
They didn't believe that we was mighty, mighty
奴らは私たちが力強い存在だなんて信じていなかった
They didn't know we'd rise up from the
奴らは私たちが舞い上がるなんて知らなかったのよ
Fire like a phoenix
不死鳥のように炎の中から
We was in the rubble, but we
私たちは瓦礫の中にいたけれど
Found our own solution
自分たち自身の解決策を見つけ出したの
There's an awful lot of cough syrup
ひどく大量の咳止めシロップがあるわ
That's on Mary Catherine (Houston)
それはメアリー・キャサリンのせいね(ヒューストン)
※ヒューストン発祥の咳止めシロップを使ったドラッグ「リーン(Lean)」文化への言及。
We can't be separated
私たちは決して引き離されたりしない
You can't trick us, devil
私たちを騙すことなんてできないわ、悪魔よ
Go back to the ground
地の底へ帰りなさい
Red, yellow, black, white, or brown
赤、黄色、黒、白、それとも茶色
You ain't at the top of the list
あなたはリストのトップにはいないのよ
We don't give a damn 'bout taxes
税金のことなんて知ったこっちゃないわ
But we was here way before you
でも私たちはあなたたちよりもずっと前からここにいたの
We built our own structure
私たちは自分たち自身の構造を築き上げた
You wanna tear us down
あなたは私たちを引きずり降ろしたいのね
Feed us medicine and bullshit
私たちに薬とデタラメを飲ませて
We walkin' 'round like zombie
私たちはゾンビみたいに歩き回っている
But we done changed the game
でも私たちはすでにこのゲームを変えたのよ
Goddammit, we done changed the rules, ah
忌々しいことに、私たちはすでにルールを変えたの
Inside our DNA structure
私たちのDNAの構造の内部からね
(You can't stop me, baby)
(私を止めることなんてできないわ、ベイビー)
(You can't stop me, baby)
(私を止めることなんてできないわ、ベイビー)
[Verse 3]
I'm through picking your cotton
あなたたちの綿花を摘むのはもう終わり
※アフリカ系アメリカ人の奴隷制における歴史的な労働搾取への直接的な言及。
I'm through wiping your face
あなたたちの顔を拭くのももう終わり
I'm through making excuses
言い訳をするのももう終わり
I'm 'bout to take my place
私は自分の居場所を奪い返そうとしているの
You could try to race my brilliance
私の輝きと競い合おうとしてもいいわ
You could try to erase my face
私の存在を消し去ろうとしてもいい
But I done taught my babies
でも私はすでに自分の子供たちに教え込んだの
They rise up in my place
あの子たちが私の代わりに立ち上がるってね
You can't stop this train
あなたにこの列車は止められない
Ooh, my train is on schedule, huh
私の列車は予定通りに進んでいるのよ
Big Chief for the Choctaw
チョクトー族のビッグ・チーフ
※アメリカ先住民のチョクトー族への言及。黒人とネイティブ・アメリカンの歴史的な交差点や、彼女自身のルーツを示唆している。
My ancestors, thank you (yeah)
私の先祖たち、ありがとう
And I put that on Odessa
オデッサにかけて誓うわ
And I put that on Rebecca
レベッカにかけて誓うわ
And I put that on Viola
ヴィオラにかけて誓うわ
Sherwood, Marilyn, Sharon, Dorothy
シャーウッド、マリリン、シャロン、ドロシー
And I put that on Toosie
トゥージィにかけて誓うわ
Put that on Ju-Ju, oh
ジュジュにかけて誓うわ
AB, Mildred, Soony, Doonie, Gwendolyn, and Mimi, Thelma Lo'
AB、ミルドレッド、スーニー、ドゥーニー、グウェンドリン、そしてミミ、テルマ・ロー
※ここから彼女の家族、先祖、またはコミュニティの敬愛する女性たちの名前を列挙し、自らの血脈とルーツへの深い敬意と誇りを示している。
[Bridge]
I'm 'bout to wake the dead
私は死者たちを目覚めさせようとしているの
Was wrote down long ago
ずっと昔に記されていたことよ
I'm the one that they prayed for
私は彼らが祈り求めていた存在なの
They don't believe in you no more
彼らはもうあなたのことなんて信じていない
They don't believe in you no more
彼らはもうあなたのことなんて信じていない
They don't believe in you no more
彼らはもうあなたのことなんて信じていない
They don't believe in you no—
彼らはもうあなたのことなんて—
They don't believe in you no more
彼らはもうあなたのことなんて信じていない
[Outro]
See, we used to be bound by blood
ほら、私たちはかつて血の繋がりで縛られていた
Now we're bound by love, yeah
今は愛によって結ばれているの
We used to be bound by chains
私たちはかつて鎖で縛られていた
Now we bound by brains
今は知性によって結ばれているの
(Red, yellow, black, white, or brown)
(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Used to be bound by pain, ooh
かつては痛みで縛られていた
And now we heal through rain
そして今、私たちは雨を通して癒やされているの
Surely, ooh
きっと
Surely, the drums
きっと、ドラムの音が
Surely (Red, yellow, black, white, or brown)
きっと(赤、黄色、黒、白、それとも茶色)
Surely, the drums will
きっと、ドラムの音が
Surely, the drums will outlast the gun
きっと、ドラムの音は銃声よりも長く響き渡るわ
※白人社会からの暴力(gun)によって弾圧されてきた歴史を超え、アフリカ系アメリカ人の音楽や文化(drums)こそが永遠に生き残るという、不屈の精神を表した美しいパンチライン。
