Artist: Public Enemy
Album: Yo! Bum Rush the Show
Song Title: Timebomb
概要
1987年にリリースされたPublic Enemyの歴史的デビューアルバム『Yo! Bum Rush the Show』に収録された、政治的メッセージと圧倒的なスキルが交差する重要曲である。Chuck Dの低く力強いバリトンボイスによる流れるようなライミングが、当時としては革新的であったミニマルかつファンキーなビートの上で展開される。特筆すべきは、単なるセルフボースト(自己誇示)にとどまらず、音楽業界における人種間の経済的不平等や、南アフリカのアパルトヘイト政権への痛烈な批判、そしてブラックパンサー党の急進的な思想への賛同を、わずかなラインの中に巧みに忍ばせている点である。自らを社会に投下された「時限爆弾(Timebomb)」になぞらえ、いつ爆発(蜂起)してもおかしくない黒人コミュニティの怒りとエネルギーを代弁した、PEのミリタントなスタンスの原点とも言える名曲だ。
和訳
[Intro: Flavor Flav]
Hey, Chuck, we got some non-believers out there…
おい、チャック、あそこには信じない連中がいるぜ…
Yo, we got to do somethin' about that, man…
なあ、奴らをどうにかしてやらなきゃな…
Yo, we got to get stupid
なあ、俺たちで思いっきりブチかましてやろうぜ
Yo, we gotta let ‘em know what time it is
なあ、奴らに今が何時か(どんな状況か)を分からせてやらなきゃな
[Verse: Chuck D]
You go ooh and aah when I jump in my car
俺が車に飛び乗ると、お前らは「おお」「ああ」と歓声を上げる
People treat me like Kareem Abdul Jabbar
人々は俺をカリーム・アブドゥル=ジャバーのように扱うのさ
※NBAの伝説的センタープレイヤー。彼のような圧倒的な高さ(ステータス)と存在感を持っているというフレックス。
No matter who you are, when I'm up to par
お前が誰であろうと、俺が本領を発揮すれば
I betcha go hip hop, hurray or hurrah
きっとお前はヒップホップ、万歳、ヤンヤと叫ぶだろうよ
But the aahs and oohs is my kind of news
だがその「ああ」や「おお」という歓声こそが、俺にとってのニュースだ
Pop your tape in, put your car in cruise
お前のテープを突っ込んで、車をクルーズ・コントロールに設定しな
I never heard the boos, I never drank booze
ブーイングなんて聞いたことがないし、俺は酒を飲んだこともない
'Cause I just rock the rhythm, left alone the blues
俺はただリズムをロックし、ブルース(憂鬱)は置き去りにするからさ
The L.I. mystique, you sneak to peek
ロングアイランドの神秘、お前らはこっそり覗き見しに来る
※「L.I.」はPublic Enemyの地元であるニューヨークのロングアイランド。
A look and then you know that we're never weak
一目見れば、俺たちが決して弱くないってことが分かるはずだ
I know you can't wait, it's never too late
待ちきれないのは分かってる、遅すぎるなんてことはないぜ
No fear I'm here, and everything is straight
恐れるな俺がいる、すべて上手くいくさ
Cycles, cycles, life runs in cycles
サイクル、サイクル、人生は周期的に巡るものだ
New is old, no I'm not no psycho
新しいものは古くなる、いや、俺はサイコ野郎じゃないぜ
The monkey on the back makes the best excel
背中の猿(プレッシャー)が、最高の力を引き出してくれるのさ
※「monkey on the back」は本来ドラッグ依存などの重荷を指すが、ここではプレッシャーや重責を逆手にとって卓越する(excel)という意味。
The people in the crowd makes the rock well
群衆の中にいる人々が、このロックを素晴らしいものにする
The people in the back lets you know who's wack
後ろにいる人々が、誰がワック(偽物)かを教えてくれる
And those who lack, the odds are stacked
そして実力がない奴らは、不利な状況に置かれるのさ
The one who makes the money is white not black
金を稼いでいるのは白人で、黒人じゃない
※音楽業界において、黒人が文化を生み出しても、実際に巨大な利益を搾取しているのは白人の経営層であるという鋭い社会批判。
You might not believe it but it is like that
お前らは信じないかもしれないが、それが現実だ
When you come to my show, watch me throw
俺のショーに来たら、俺が繰り出すのを見てみな
Down with the other brothers toe to toe
他のブラザーたちと真っ向からやり合う姿をな
When you make a move, new not used
お前が行動を起こす時は、使い古しじゃなく新しいものを生み出せ
And watch the bro here just bust a groove
そして、ここのブラザーがグルーヴを爆発させるのを見届けるんだ
A fat lady soprano, loads my ammo
太ったソプラノ歌手が、俺の弾薬を装填する
※「It ain't over till the fat lady sings(太った女性歌手が歌うまでオペラは終わらない=最後まで勝負は分からない)」という英語の慣用句を用いた比喩。
Hear my jam with a funky piano
ファンキーなピアノに乗せた俺のジャムを聴きな
Easy on the wall but hard on the panel
壁には優しいが、パネルには厳しい
A fool smokes Kools 'cause he chokes on Camels
愚か者はキャメルでむせるから、クールを吸うのさ
※メンソールで吸いやすい「Kool」と、キツいタバコである「Camel」。タフぶっているが実は軟弱な連中を嘲笑する巧みなメタファー。
In effect, the crew's in check
結果として、クルーは統制されている
Run by the posse with the gold around the neck
首にゴールドチェーンを巻いたポッセによって仕切られてるのさ
Homeboy's in heat, lookin' for sweet
ホームボーイは発情し、甘い出会いを探してる
Ladies in the crowd so they can meet
群衆の中のレディたちと、出会えるようにな
Somebody to body, makin' a baby
誰かと体を重ねて、赤ん坊を作る
Givin' it to grandma then makin' her crazy
そしておばあちゃんに預けて、彼女を狂わせる(苦労させる)のさ
※フッドで多発する10代の妊娠と、無責任な若者によって祖母世代が子育てを押し付けられるゲットーの社会問題を描写。
I'm a MC protector, U.S. defector
俺はMCの保護者であり、アメリカの離反者だ
South African government wrecker
南アフリカ政府の破壊者だ
※当時の南アフリカにおけるアパルトヘイト(人種隔離政策)に対する強烈な批判と闘争宣言。
Panther power, you can feel it in my arm
パンサー・パワー、俺の腕からそれを感じるだろう
※ブラックパンサー党(Black Panther Party)の急進的な黒人解放運動に対する深いリスペクト。
Lookout y'all 'cause I'm a timebomb
お前ら気をつけな、俺は時限爆弾だからな
Tickin', tockin', all about rockin'
チクタクと時を刻み、ロックすることがすべて
Makin' much dollars while the crazy one's clockin'
クレイジーな奴が見張っている間に、しこたまドルを稼ぐのさ
The rhythm, to shake the house downy down
このリズムで、家を根底から揺るがしてやる
Bounce to the ounce, sound so crown
オンスに合わせてバウンスしろ、王冠のように響くサウンドだ
※ZappのP-Funkクラシック「More Bounce to the Ounce」のリファレンス。
The man, the enemy, Public King, no thing
この男、社会の敵、パブリック・キング、どうってことない
All fall to the force of my swing
すべては俺のスウィングの力で倒れ込むのさ
Like Ali, Frazier, Thriller in Manila
モハメド・アリ、ジョー・フレージャー、マニラのスリラーのようにな
※1975年にフィリピンで行われた、ボクシング史に残る伝説の死闘「Thrilla in Manila」の引用。
Pinpoint, point blank, microphone killer
ピンポイントで、至近距離から狙い撃つ、マイクロフォン・キラーだ
Am I, no need to lie, got the Flavor Flav
俺はそうだ、嘘をつく必要はない、俺にはフレイヴァー・フレイヴがいる
To prove I'll win and if not the save
俺が勝つと証明するために、さもなきゃ救済だ
I'll pick up, rack up, put your whole shack up
俺は拾い上げ、かき集め、お前の小屋を丸ごと賭けさせる
Just choose to lose the bet, emcee stick up
賭けに負けることを選ぶんだな、これはMCの強盗(ホールドアップ)だ
This is the wiz, but the mic's not his
これは魔法使い(ウィズ)だ、だがマイクは奴のものじゃない
It's mine, one time, let the star shine
俺のものだ、一度だけ、スターを輝かせろ
And I'm tellin' you, yellin' at you, you're through
お前に言ってるんだ、お前に叫んでる、お前はもう終わりだ
Don't think you're grown 'cause your mustache grew
口ひげが生えたくらいで、大人になったと思い上がるなよ
I'm number one, you know it weighs a ton
俺がナンバーワンだ、1トンの重みがあるって分かってるだろ
※彼らの代表曲「Miuzi Weighs a Ton(俺のウージーは1トンの重さ)」のセルフリファレンス。
And I'll be the burger, you can be the bun, girl
俺がバーガー(中身)になるから、君はバンズ(包み込むもの)になってくれ、ガール
※性的なメタファーを交えたコミカルなライン。
Surroundin', my steady poundin'
囲まれながら、俺の絶え間ない連打が続く
Get on down to my funky sound, and
俺のファンキーなサウンドに合わせて踊りな、そして
Rock the rhythm rhyme, one time your mind
リズムとライムをロックしろ、一度だけお前の心をな
Rhythm roll, two-time control
リズムが転がり、2倍のコントロールで支配する
The mauler and the caller of your doom
打ちのめす者、そしてお前の破滅を宣告する者
And when I'm ready to leave, you're gonna know I go boom
そして俺が立ち去る準備ができた時、俺が爆発(boom)するのを思い知るだろう
Three times y'all, rhythm rhyme and rock
3回だ、リズム、ライム、そしてロック
Then you'll that the D is on the block
そうすりゃお前らは、Dがこのブロック(街)にいると分かるはずだ
※「D」はChuck D自身のこと。
Four times y'all and never ever the wack
4回だ、そして絶対にワック(偽物)にはならない
It's the hour to the minute, time to blow, black
分刻みで迫る時間だ、爆発の時だぜ、ブラック(同胞たちよ)
※抑圧された黒人社会(black)に向けて、今こそ行動(爆発)を起こす時だと呼びかける強烈なエンディング。
