Artist: Eminem
Album: The Marshall Mathers LP 2
Song Title: Brainless
概要
2013年発表の『The Marshall Mathers LP 2』に収録された本作は、エミネムのキャリアの原点である「苛じめられっ子だった幼少期」から「世界最大のラップスター」へと成り上がる過程を、極めてシニカルかつコミカルに振り返るトラックである。プロデューサーであるエミネム自身の手によるオールドスクールなビートに乗せ、母親から「脳みそ(Brain)がない」と罵られていたコンプレックスを逆手に取り、「脳みそがなかったからこそ(Brainless)、狂気的なリリックを生み出し成功できた」と結論づける。中盤のVerse 2では、英語で最も韻を踏むのが難しいとされる単語「Orange(オレンジ)」を使った怒涛のライミング(door hinge, syringeなど)を披露し、天才的なボキャブラリーとラップスキルを見せつけている。過去の自分を救ったヒップホップという文化に対する深い愛情と、世間の批判(同性愛嫌悪や白人ラッパーへの偏見)を軽々とかわすスリム・シェイディの悪趣味なペルソナが完璧に融合した名曲だ。
和訳
[Intro]
"Or Eminem has a full line of chainsaws
「あるいはエミネムがチェーンソーのフルラインナップを持っているか」
"Eminem, Eminem, Eminem, Eminem
「エミネム、エミネム、エミネム、エミネム
Eminem, Eminem"
エミネム、エミネム」
"Marshall Mathers, Eminem, the rapper Eminem"
「マーシャル・マザーズ、エミネム、ラッパーのエミネム」
※メディアやニュースキャスターたちがエミネムの過激な行動や歌詞をセンセーショナルに報じている過去の音声クリップのサンプリング。
"Who can say for sure?
「誰に確かなことが言えるでしょうか?
Perhaps a frontal lobotomy would be the answer
おそらく前頭葉切裁術(ロボトミー手術)が答えになるでしょう
If science could operate on this distorted brain
もし科学がこの歪んだ脳を手術し
And put it to good use, society would reap a great benefit"
役立てることができるなら、社会は大きな恩恵を受けるはずです」
※1950年代のロボトミー手術に関するドキュメンタリーやB級ホラー映画のような不気味なナレーション。エミネムの脳が異常であることを示唆している。
[Verse 1]
I walk around like a space cadet, place your bets
俺はスペース・カデット(上の空の奴)みたいに歩き回る、さあ賭けな
Who's likely to become a serial killer? Case of Tourettes
誰が連続殺人鬼になりそうか? トゥレット症候群の患者だ
※トゥレット症候群は不随意のチックや汚言症を伴う神経疾患。彼自身の突発的で過激なリリックの吐き出し方をそれに喩えている。
Fuck, fuck, fuck, can't take the stress
クソ、クソ、クソ、ストレスに耐えられない
I make a mess as the day progresses
日が経つにつれて、俺はメチャクチャになっていく
Angry and take it out on the neighbors' hedges
怒って、それを隣人の生垣に八つ当たりするんだ
Like this is how I'll cut your face up, bitches
「こうやってお前らの顔を切り刻んでやるんだよ、ビッチども」ってな
With these hedge-trimmin' scissors with razor edges
このカミソリみたいに鋭い生垣用のハサミでさ
Imagination's dangerous, it's the only way to escape this mess
想像力は危険だ、だがこの惨状から逃れる唯一の方法でもある
And make the best of this situation, I guess
そしてこの状況を最大限に活かす方法でもある、たぶんな
'Cause I feel like a little bitch, this predicament's despicable
だって俺は自分がちっぽけなビッチみたいに感じるんだ、この苦境は卑劣すぎる
I'm sick of just gettin' pushed, it's ridiculous
ただ突き飛ばされるだけなのはもうウンザリだ、馬鹿げてる
I look like a frickin' wuss, a pussy, this kid just took my stick of licorice
俺はまるで弱虫の臆病者(プッシー)みたいだ、このガキは俺のリコリスの棒(お菓子)を奪い取って
And threw my sticker books in a picker bush
俺のステッカーブックをトゲだらけの茂みに投げ捨てやがった
I wanna kick his tush, but I was six and shook
あいつのケツを蹴っ飛ばしてやりたいが、俺は6歳でビビってた
This fucker was twelve and was six foot, with a vicious hook
このクソ野郎は12歳で身長は6フィート、それに凶悪なフック(パンチ)を持ってたんだ
※エミネムが実際に子供時代にDeAngelo Baileyという巨漢のいじめっ子から凄惨な暴力(頭蓋骨骨折の重傷)を受けていた実体験。
He hit me, I fell, I got back up, all I did was book
あいつが俺を殴り、俺は倒れ、立ち上がり、あとはただ一目散に逃げた(book)だけだ
Now there's usin' your head, momma always said
今こそ頭を使う時だ、母さんはいつも言ってた
[Chorus]
"If you had a brain, you'd be dangerous
「もしお前に脳みそ(知恵)があったら、お前は危険な存在になってただろうに
A brain, you'd be dangerous" (I'ma prove you wrong)
脳みそがあればな、危険な存在に」 (あんたが間違ってるって証明してやるよ)
Momma, I'ma grow one day to be famous
母さん、俺はいつか成長して有名になるんだ
And I'ma be a pain in the anus (I'ma be the bomb)
そしてケツの痛み(厄介者)になってやる(俺は爆弾になってやる)
I'ma use my head as a weapon
俺はこの頭を武器として使うんだ
Find a way to escape this insaneness (Momma always said)
この狂気から逃げ出す方法を見つけるために(母さんはいつも言ってた)
"Son, if you had a brain, you'd be dangerous"
「息子よ、もしお前に脳みそがあったら、危険な存在になってただろうに」
Guess it pays to be brainless
どうやら脳みそがない(Brainless)方が割に合うみたいだな
[Verse 2]
Fast forward, some years later, a teenager, this is fun, sweet
早送りして数年後、ティーンエイジャーだ、これは楽しいぜ、最高だ
I just got jumped twice in one week, it's complete
一週間に2回も襲われた(リンチされた)んだ、完璧だな
It's usually once a month, this is some feat I've accomplished
普通は月に1回なのに、これは俺が成し遂げた偉業(feat)だぜ
They've stomped me into the mud, gee
奴らは俺を泥の中に踏みつけた、まったく
For what reason you stumped me?
どんな理由で俺を困らせた(踏みつけた)んだ?
But how do you get the shit beat out of you, beat down and be upbeat
だが、徹底的に叩きのめされ、打ち倒されて、それでもどうやって明るく(upbeat)いられるんだ?
When you don't have nothing?
お前が何も持っていない時に?
No valid shot at life, chance to make it or succeed
人生における有効なチャンスも、やり遂げる見込みも、成功する見込みもない
'Cause you're doomed from the start
だってお前は最初から運命づけられているからだ
It's like you grew up on Jump Street, from jump street
まるで「ジャンプ・ストリート」で育ったみたいにな、最初から(from jump street)
※「from jump street」は「最初から」という意味のスラング。テレビドラマ『21 Jump Street』(不良少年たちが集まる学校)と掛けた言葉遊び。
But if I could just get my head out my ass, I could accomplish any task
だが、もし俺が自分のケツから頭を引っこ抜く(まともになる/目を覚ます)ことができたら、どんな困難な任務でも達成できるはずだ
Practicin' trash-talkin' in a trance
トランス状態の中でトラッシュトークの練習をしてる
Locked in my room, yeah, but I got some plans, momma
部屋に閉じこもってな、ああ、でも俺には計画があるんだ、母さん
These damn rhymes are fallin' out of my pants pocket, I can't stop it
この忌々しいライムがズボンのポケットから溢れ落ちてくる、止められないんだ
And I'm startin' to blend in more in school, this shit helps for sure
そして俺は学校でもっとうまく溶け込めるようになってきた、こいつ(ラップ)は間違いなく役に立つ
I'm gettin' more self-assured than I've ever been before
俺はこれまで以上に自信を持ち始めている
Plus no one picks on me anymore
それに、もう誰も俺をいじめなくなった
I done put a stop to that, threw my first punch, end of story
俺がそれに終止符を打ったんだ、初めてのパンチを繰り出してな、それで話は終わりだ
Still, in my skull’s a vacant empty void, been usin' it more as a bin for storage
それでも、俺の頭蓋骨の中は空っぽの虚無で、それを物置のゴミ箱みたいに使ってきた
※ここからエミネムの伝説的な「Orange(オレンジ)」ライミングがスタートする。
Take some inventory: in this gourd, there's a Ford engine
在庫を調べてみよう:この頭(gourd)の中には、フォードのエンジン
Door hinge, syringe, an orange, an extension cord and a ninja sword
ドアの蝶番、注射器、オレンジ、延長コード、それに忍者の剣
Not to mention four linchpins, an astringent stored
言うまでもなく4本のリンチピン(留めピン)、保存された収斂剤(アストリンジェント)
Ironin' board, a bench, a wrench, a ore winch, an attention whore
アイロン台、ベンチ、レンチ、鉱石用のウィンチ、それに構ってちゃん(アテンション・ホア)
※「Orange」と完璧に韻を踏む単語はないと言われているが、エミネムは発音を崩し、これらのカオスな単語群(ドアヒンジ、シリンジ、オレンジなど)を全て「オレンジ」の音で連続して踏み倒している。ヒップホップにおける最高難度のライミングの証明。
Everything but a brain, but dome's off the fuckin' chain
脳みそ以外の全てが入ってる、だがこの頭(dome)はクソみたいに制御不能(off the chain)だ
Like an independent store, something's wrong with my head
個人経営の店みたいにな(チェーン店ではない=off the chain)、俺の頭は何かがおかしい
Just think if I had a brain in it, thank God that I don't
もしこの中に脳みそが入っていたらと考えてみろ、入ってなくて神に感謝するぜ
'Cause I'd probably be Dahmer, 'cause Momma always said
だって俺はたぶんジェフリー・ダーマー(連続殺人鬼)になってただろうからな、なぜなら母さんはいつも言ってた
[Chorus]
"If you had a brain, you'd be dangerous
「もしお前に脳みそ(知恵)があったら、お前は危険な存在になってただろうに
A brain, you'd be dangerous" (I'ma prove you wrong)
脳みそがあればな、危険な存在に」 (あんたが間違ってるって証明してやるよ)
Momma, I'ma grow one day to be famous
母さん、俺はいつか成長して有名になるんだ
And I'ma be a pain in the anus (I'ma be the bomb)
そしてケツの痛み(厄介者)になってやる(俺は爆弾になってやる)
I'ma use my head as a weapon
俺はこの頭を武器として使うんだ
Find a way to escape this insaneness (Momma always said)
この狂気から逃げ出す方法を見つけるために(母さんはいつも言ってた)
"Son, if you had a brain, you'd be dangerous"
「息子よ、もしお前に脳みそがあったら、危険な存在になってただろうに」
Guess it pays to be brainless
どうやら脳みそがない(Brainless)方が割に合うみたいだな
[Bridge]
Now my mom goes wahm-wahm-wahm
今じゃ母さんはワム・ワム・ワムと喚いてる
※Charlie Brownに登場する大人たちの理解不能な言葉の響き、あるいは泣き言。
'Cause I'm not that smart, but I'm not dumb
だって俺はそこまで賢くないが、バカでもないからな
I was on the bottom of the pile, gettin' stomped
俺は一番下敷きになって、踏みつけられていた
But somehow I came out on top
だがどういうわけか、俺は一番上(トップ)に這い上がったんだ
[Verse 3]
I told you one day, I said they'd have that red carpet rolled out, yo
いつか言ってやったよな、あいつらが俺のためにレッドカーペットを広げる日が来るって
I'm nice, y'all, fuck it, I'm out cold
俺はナイスだぜ、お前ら、クソくらえ、俺は気を失うほど(最高)だ
Now everywhere I go, they scream out, "Go"
今じゃ俺がどこへ行っても、奴らは「行け!」って叫ぶんだ
I'm 'bout to clean house, yo
俺は家を掃除(一掃)してやるぜ
I'm Lysol, now I'm just household
俺はライゾールだ、今や俺はただの家庭用品(誰もが知る名前)さ
※「Lysol」は有名な除菌スプレーのブランド。俺のラップ(毒舌)は除菌スプレーのように全てを一掃し、今やアメリカのどの家庭にもある日用品(household name=誰もが知る有名人)になったというメタファー。
Outsold the sell-outs, freak the hell out
魂を売った奴ら(セルアウト)よりも売り上げ(アウトソールド)を叩き出し、パニックを引き起こす
Middle America, hear 'em yell out
ミドルアメリカ(保守的な白人層)が、叫び声を上げるのを聞け
In terror, they were so scared, and those kids
恐怖でな、奴らはめちゃくちゃ怯えていた、そしてあの子供たちは
Just about belted out whatever spouted or fell out
俺の口から飛び出した言葉やこぼれ落ちたものを、何でも大声で歌っていたんだ
My smart aleck mouth, it was so weird (Haha)
俺の生意気な口からな、最高に奇妙だったぜ(ハハ)
Inappropriate? So be it, I don't see it
不適切だって? ならそれでいい、俺にはそうは見えないがな
Maybe one day when the smoke clears, it won't be as
もしかしたら、いつか煙が晴れた時、それは今ほど
Motherfuckin' difficult, yeah
クソ難しくはなくなるかもしれないな、ああ
'Til then, hopefully you lil' homos get over your fears and phobias
それまでは、お前らチビのオカマ野郎どもが、恐怖や恐怖症(フォビア)を克服してくれることを願うぜ
※自身が批判されてきた「ホモフォビア(同性愛嫌悪)」という言葉を逆手に取り、過激なラップに怯える世間(彼ら自身)こそがフォビア(恐怖症)を抱えていると皮肉っている。
It's okay to be scared straight, they said I provoke queers
恐怖で震え上がる(scared straight)のも悪くないぜ、奴らは俺がクィアを挑発していると言った
※「scared straight」は不良少年を刑務所に入れて更生させるプログラムの名前だが、同時に「恐怖のあまりストレート(異性愛者)になる」という言葉遊び。
'Til emotions evoke tears, my whole career's
感情が涙を呼び起こすまでな、俺のキャリア全体が
A stroke of sheer genius, smoke and mirrors, tactical, practical jokes, yeah
真の天才の閃きであり、煙と鏡(イリュージョン)、戦術的で、悪ふざけのイタズラだったのさ、ああ
You motherfuckin'— insert insult here
このクソったれな—(ここに侮辱の言葉を挿入しろ)
※放送禁止用語をあえて伏せ字のように言い、検閲を小馬鹿にするギミック。
Who the fuck woulda thunk that one little old MC'd
一体誰が考えただろうな、一人の中年(昔の)ちっぽけなMCが
Be able to take the whole culture and reupholster it?
カルチャー全体を乗っ取り、その布地を張り替え(作り直す)ことができるなんて?
And boy, they did flock, can't believe this little hick locked
そしてなぁ、奴らは群がってきたんだ、信じられないぜ、このちっぽけな田舎者(hick)が
This hip-hop shit in his hip pocket, and still the shit got
このヒップホップというクソを自分の尻ポケット(手中に収めた)に突っ込んだなんて、そして今でもこのクソは
That white-trash traffic in gridlock, shit hoppin' like six blocks
あのホワイトトラッシュ(貧しい白人)の交通渋滞を引き起こしている、クソみたいに跳ね回ってるぜ、6ブロック先から
From a Kid Rock/Insane Clown Posse concert in mid-Oc-
10月中旬の、キッド・ロックとインセイン・クラウン・ポッセのコンサートからな
※Kid RockとICP(Insane Clown Posse)は共にエミネムと同郷のミシガン州デトロイト出身であり、白人の労働者階級(ホワイトトラッシュ)から絶大な支持を得ているアーティスト。彼らと同じように、エミネムが白人層の心を完全に掴んだことを表している。
-tober, and God forbid I see a wizard
-tober(10月)、そして神に誓って、もし俺が魔法使い(オズの魔法使い)に出会って
And get a brain in my titanium cranium, y'all 'cause I'll turn into the Unabomber
俺のチタン製の頭蓋骨の中に脳みそをもらったら大変だぜ、お前ら、だって俺はユナボマー(連続爆弾魔)になっちまうからな
※映画『オズの魔法使い』のカカシが「脳みそ」を欲しがったことへのオマージュ。もし本当に脳みそ(知性)を手に入れたら、ラッパーではなく本物の凶悪なテロリスト(ユナボマーことテッド・カジンスキー)になっていただろうというブラックジョーク。
Momma always said
母さんはいつも言ってた
[Chorus]
"If you had a brain, you'd be dangerous
「もしお前に脳みそ(知恵)があったら、お前は危険な存在になってただろうに
A brain, you'd be dangerous" (I'ma prove you wrong)
脳みそがあればな、危険な存在に」 (あんたが間違ってるって証明してやるよ)
Momma, I'ma grow one day to be famous
母さん、俺はいつか成長して有名になるんだ
And I'ma be a pain in the anus (I'ma be the bomb)
そしてケツの痛み(厄介者)になってやる(俺は爆弾になってやる)
I'ma use my head as a weapon
俺はこの頭を武器として使うんだ
Find a way to escape this insaneness (Momma always said)
この狂気から逃げ出す方法を見つけるために(母さんはいつも言ってた)
"Son, if you had a brain, you'd be dangerous"
「息子よ、もしお前に脳みそがあったら、危険な存在になってただろうに」
Guess it pays to be brainless
どうやら脳みそがない(Brainless)方が割に合うみたいだな
[Outro]
"Insaneness" ain't even a word, you stupid fuck
「Insaneness(狂気ネス)」なんて言葉は存在しねえよ、このクソバカ野郎
※コーラスで自分が使った造語「insaneness」に自分でツッコミを入れている。正しい英単語は「insanity」。
Neither is "ain't"
「ain't」も(正式な単語じゃ)ないけどな
