Artist: Rome Streetz & Westside Gunn
Album: Sock It 2 My Pocket
Song Title: Marathon or Race
概要
Griselda Recordsの首領Westside Gunnと、同レーベルの中核を担いNYアンダーグラウンドを牽引する気鋭Rome Streetzによる凶悪なコラボレーション楽曲。アルバム『Sock It 2 My Pocket』に収録された本作は、ドラッグディールから世界的アーティストへと成り上がったハスラーたちの冷徹な哲学が交錯するマフィオソ・ラップの真髄である。前半でRome Streetzがマラソンと短距離走の対比を用いて己の長期的ビジョンと圧倒的なラップスキルを誇示すれば、後半ではWestside Gunnがプロレスのリファレンスやハイブランドのネームドロップ、連邦刑務所でのリアルな体験を特有の甲高いフローと銃声アドリブで生々しく描き出す。ストリートの冷酷なリアリティとハイエンドなアート志向が完璧なバランスで融合した、現行Griseldaサウンドの最高到達点とも言える一曲である。
和訳
[Intro: Rome Streetz]
(Griselda by Fashion Rebels)
You know what the fuck it is
何が起きてるか分かってるだろ
Yo
[Verse 1: Rome Streetz]
Feel a rush when we touch papes (Uh-huh)
札束に触れる時に興奮を覚えるんだ (Uh-huh)
※「papes」はペーパー、つまりお金(ドル札)のこと。
Copped drugs, opened up duct tape, my aim's to fill up safe
クスリを仕入れ、ダクトテープを開封する、俺の目標は金庫を満杯にすることだ
My nigga just came home from upstate (Yeah)
俺のダチがアップステートから帰ってきたばかりだ (Yeah)
※「upstate」はニューヨーク州北部に位置する刑務所を指す隠語。
Next stop is top of the world like Brandy and Mase
次の目的地はBrandyとMaseのように世界の頂点だ
※R&BシンガーBrandyの1998年のヒット曲「Top of the World (feat. Mase)」からの引用。
Ferraris to race, the mule and the forty-acre plays (Uh-huh)
レース用のフェラーリ、ラバと40エーカーの土地の駆け引き (Uh-huh)
※南北戦争後に解放奴隷に約束されたが反故にされた「40エーカーとラバ(40 acres and a mule)」という歴史的背景を引用。白人社会からの補償を待つのではなく、自らの手でフェラーリに乗るような巨富を勝ち取るというハスラーの意志。
Still with a trap phone ringin', they used to call for base (What?)
今でもトラップフォンが鳴り響いている、昔はベースを求めて電話がかかってきたもんだ (What?)
※「base」はフリーベース(クラック・コカイン)。違法なビジネスから合法的な音楽ビジネスへ移行しても、ハッスルは続いているという描写。
Cuddies in the hall, saw it all, knew it was more to chase
廊下には仲間たちがいた、全てを見てきた、もっと追い求めるべきものがあると知っていた
Tell me how you view this shit, a marathon or a race? (What?)
教えてくれ、お前はこの世界をどう見ている? マラソンか、それとも短距離走か? (What?)
※亡きNipsey Hussleの「The Marathon Continues」という長期的ビジョンと、ストリートの刹那的な生き残りの対比。
No comparison to my pace, I'm still lappin' niggas
俺のペースとは比較にならない、俺は今でも奴らを周回遅れにしている
Dumb thinkin' we neck and nеck, they only seein' half the picture
互角だと思ってるバカども、奴らは絵の半分しか見ていないんだ
Thе other half of the Kodak Black
Kodak Blackのもう半分をな
※写真フィルムの「Kodak」とラッパーの「Kodak Black」を掛けた秀逸なパンチライン。前行の「picture(全体像)」の半分しか見えていない連中に対し、残りの半分(Black)が見えていないという高度なワードプレイ。
Tunnel vision what they lack, that's why we ain't never interact (Never)
奴らに欠けているのは一つの目標を見据える集中力だ、だから俺たちが交わることは決してない (Never)
Old-school shit, put a little ammonia in the crack
オールドスクールなやり方さ、クラックに少しアンモニアを垂らすんだ
※コカインをフリーベースに精製する際、重曹の代わりにアンモニアを使う古いストリートの化学。より強力な効果をもたらすとされ、自身のラップの純度と殺傷力を喩えている。
Different kind of batch, when I rap, it's like Cinemax
次元が違うバッチだ、俺がラップすればCinemaxのようになる
※「batch」は精製されたドラッグのロット。「Cinemax」はアメリカの有料映画チャンネル。自分の楽曲が映画のようにシネマティックで生々しいという比喩。
Songs from a sinner, few regrets, I gotta live with that
罪人からの歌だ、後悔は少しあるが、俺はそれを背負って生きていかなきゃならない
Pour the gas, lit the match, now it's all flames
ガソリンを撒き、マッチで火をつける、今や全てが炎に包まれている
I'm Ghost Rider speedin' in the lanes, swingin' chains
俺は車線を爆走するゴーストライダーだ、チェーンを振り回している
※マーベル・コミックの『ゴーストライダー』が地獄の炎を纏ったチェーンを操る姿と、太いゴールドチェーンを揺らしながら車を飛ばす自身の姿を重ねている。
You niggas is small change, the biker jacket is Balmain (Uh)
お前らは小銭みたいなもんだ、このバイカージャケットはBalmainだ (Uh)
This the eight ball in the corner pocket, I call game
こいつはコーナーポケットに沈むエイトボールだ、俺の勝ちだ
※ビリヤードのエイトボールで最後に沈める球と、ドラッグの1/8オンス(エイトボール)のダブルミーニング。ゲームを完全に支配し終わらせるという宣言。
Pull out your cord, fall on your sword, absorin' all game (Yeah)
お前のコードを引き抜き、自分の剣の上に倒れろ、すべてのゲームを吸収する (Yeah)
※「fall on your sword」は自ら責任を取る、自決するという慣用句。
I'm a lord, you a fuckin' stain
俺は君主で、お前はただのクソみたいな染みだ
Get knocked off like dark-skin Jermaine, no need to explain (Bow-bow)
色黒のジャーメインみたいに消されるんだ、説明する必要もないだろ (Bow-bow)
※敵対者を容赦なく始末するストリートの暗黙のルールを示唆している。
[Interlude: Westside Gunn]
Brrt
(Super FLYGOD)
Ayo
[Verse 2: Westside Gunn]
Prada stains on the Willy Chava' (Ah), phones is liver (Ah)
Willy Chavarriaにプラダの染みだ (Ah)、電話は鳴りっぱなしだぜ (Ah)
※「Willy Chava'」はハイエンドなメンズウェアブランドのWilly Chavarria。高級品を日用品のように扱うGunn特有のファッション・リファレンス。
Meet me at the Ritz in a half an hour
30分後にリッツ・カールトンで会おう
If the money ain't all there, then shoot his ass (Boom-boom-boom-boom-boom)
もし金が全額揃ってないなら、あいつのケツを撃ち抜け (Boom-boom-boom-boom-boom)
I came through, .40 cal in a lucha mask (Boom-boom-boom-boom-boom)
俺が乗り込むぜ、ルチャリブレのマスクを被って.40口径を構えてな (Boom-boom-boom-boom-boom)
※Westside Gunnのアイコンであるプロレス(ルチャ)の覆面と、ストリートの暴力の融合。
Same shit from Rey Mysterio versus the Big Show
レイ・ミステリオ対ビッグ・ショーの時と同じだ
※WWEの伝説的なマッチアップ。小柄なミステリオが大柄なビッグ・ショーに立ち向かうように、ストリートでの規格外の戦いを比喩している。
Jaden Smith melt the Louboutins on my big toe
ジェイデン・スミスが俺の親指のルブタンを溶かす
※Jaden Smithのような最先端のファッションアイコンにも引けを取らない、自身の狂気的なファッションセンスの誇示。
Lick up by the liquor store and wait for my signal
リカー・ストアのそばで獲物を狙い、俺の合図を待て
※「Lick」は強盗や襲撃のこと。
If he gotta go, we gotta— (Mm)
もしあいつを消さなきゃならないなら、俺たちは— (Mm)
You outta pocket, get your shit lopsided (Boom-boom-boom-boom-boom)
お前は図に乗ってる、顔面を歪ませてやる (Boom-boom-boom-boom-boom)
※「outta pocket」は出しゃばる、ラインを越えるという意味。
Eastside Buffalo niggas all violent (Brrt, doot-doot-doot-doot)
イーストサイド・バッファローの奴らはみんな凶暴だ (Brrt, doot-doot-doot-doot)
※Westside Gunnの地元であるニューヨーク州バッファローのイーストサイドへの強烈なシャウトアウト。
Pray for your Co-Ds, niggas stay silent (Ah)
お前の共犯者たちのために祈りな、ダチどもは沈黙を貫く (Ah)
※「Co-Ds」はco-defendants(共同被告人、共犯者)。警察に捕まっても絶対に密告しない(No Snitching)というストリートの絶対的な鉄則。
Gas stoves tickin', lit the pilot for the malice (Woo)
ガスコンロの音がチクタク鳴る、悪意のために種火をつけるんだ (Woo)
※コカインを調理するためのコンロの点火を「悪意(malice)の始まり」と表現している。
I was up in USP in designer (Ah)
俺は連邦刑務所の中ですらデザイナーズブランドを着ていたぜ (Ah)
※「USP」はUnited States Penitentiary(連邦刑務所)。刑務所内でもハスラーとしての格格を保っていたことの証明。
055, in my cell eatin' lasagna (Mm)
055番、独房の中でラザニアを食っていた (Mm)
I know you know your whole clique vagina (Ah)
お前がお前のクルー全員が女々しいクソ女だって分かってるのは知ってるぜ (Ah)
I know you know (I know you know)
お前も分かってるはずだ (I know you know)
[Outro: Westside Gunn]
You know what I'm sayin'?
言ってる意味わかるか?
I just feel like, you know, nobody can fuck with me
俺に逆らえる奴なんて誰もいないって感じてるんだよ
So, but like Rome, incredible artist
だから、それにしてもRomeは、信じられないほど素晴らしいアーティストだ
Incredible, this is just the beginnin' with him
信じられないぜ、彼にとってはこれがまだ始まりにすぎないんだ
