Artist: Steve Lacy
Album: The Lo-Fis
Song Title: The Song
概要
本作は、スティーヴ・レイシーが高校時代からSoundCloud上で公開していた初期の未発表デモ音源をまとめた2020年のコンピレーション・アルバム『The Lo-Fis』に収録されている。「The Song」という極めてシンプルなタイトルが付けられたこの短いトラックは、西海岸のビーチで女の子とチルアウトし、大麻を回し飲みしながら他愛のない時間を過ごすという、カリフォルニアのティーンエイジャーの日常を切り取ったスケッチである。当時の彼は、The Internetのメンバーとしてグラミー賞にノミネートされるなど天才的な才能を発揮しつつも、実生活ではiPhoneのGarageBandでビートを作る等身大の高校生であった。少し背伸びした強気な態度やスラング(Swisher Sweets、Gasなど)を散りばめつつも、最終的には一緒に大麻を吸って笑い転げるというピースフルで無邪気なオチがつく点に、彼の飾らないペルソナとユーモアセンスが表れている。Z世代のインディーR&Bアイコンの原点にある、レイドバックした青春の空気感が真空パックされた一曲だ。
和訳
[Verse]
If I'm at the beach
俺がビーチにいる時
※カリフォルニア出身のレイシーらしい、西海岸のレイドバックしたライフスタイルを背景にした情景描写。
You know I'm with a bitch
当然、イケてる女の子と一緒さ
※「bitch」はヒップホップ的な文脈で親しい女性や魅力的な女性を指すスラング。ティーンエイジャー特有の少し背伸びした強気なアティチュードが見え隠れする。
If I'm in the 4
4ドアの車に乗ってるなら
※「the 4」は4ドアの車(セダンやSUVなど)を指すストリート・スラング。仲間たちと車内でたむろする西海岸のユースカルチャーの象徴的な情景である。
I gotta pop a swish
スウィッシャーを巻かなくちゃな
※「swish」は安価な葉巻ブランド「Swisher Sweets」のこと。中身のタバコ葉を抜き取り、代わりに大麻を詰めてブラント(大麻を巻いた葉巻)を作るために若者たちの間で頻繁に用いられる。
My girl hella thick
俺の連れの女の子はめっちゃグラマーで
※「hella」はカリフォルニア(特に北カリフォルニア・ベイエリア周辺から広まった)特有の「とても」「めちゃくちゃ」を意味するスラング。「thick」は肉感的で魅力的な体型を指す。
She snappin' hella pics
写真を撮りまくってるんだ
※InstagramやSnapchatなどのSNSに夢中になるZ世代のリアルな生態を切り取っている。
She said she don't smoke
彼女はハッパは吸わないって言ったけど
I said "experiment"
俺は「試しにやってみなよ」って言ったんだ
※未経験の女の子に対して、大麻を勧めるティーンらしい少し不良っぽいやり取り。
Yes, I got some gas
ああ、極上のハッパを持ってるぜ
※「gas」は匂いが強く品質の高い大麻を指すスラング。
I hide it in my stash
俺の隠し場所にしまってあるんだ
She wanted some for free
彼女はタダで吸わせてって言ってきたけど
I told her kiss my ass
ふざけんなって言ってやったよ
※「kiss my ass」は「ふざけるな」「くそくらえ」という拒絶のスラング。相手が女の子であっても甘やかさず、対等で少し生意気な態度をとるレイシーのペルソナが面白い。
I be there for sure
俺は絶対にそこにいるから
She was hella mad
彼女はめちゃくちゃキレてたけど
※タダで大麻を分けてもらえなかった(あるいはからかわれた)ことで怒る女の子のコミカルな描写。
Then I smoked her out
結局、彼女にも吸わせてやって
※「smoke someone out」は「他人のために大麻を出して一緒に吸ってあげる」というスラング。散々もったいぶった挙句、最後には自分の持ち分を気前よく分かち合う優しさを見せている。
And all we did was laugh
あとはただ二人で笑い転げてただけさ
※大麻による酩酊(ハイな状態)で、さっきまでの喧嘩も忘れて無邪気に笑い合うピースフルなオチ。この気負いのなさがレイシーの最大の魅力である。
[Outro]
All we did was laugh
あとはただ二人で笑い転げてただけさ
All we did was laugh
ただ笑い転げてたんだ
All we did was laugh
ずっと笑い合ってただけさ
※余韻を残すように繰り返されるアウトロ。カリフォルニアのティーンの何気ない、しかし多幸感に満ちた青春のひとときが、ローファイな短いループの中に永遠に閉じ込められている。
