Artist: Vince Staples
Album: Hell Can Wait
Song Title: Screen Door
概要
「Screen Door」は、ヴィンス・ステイプルズが2014年にリリースしたEP『Hell Can Wait』に収録された、彼の自伝的かつ冷酷なリアリズムが光る一曲だ。タイトルの「網戸(Screen Door)」は、彼が育った家と、外の危険なストリートやドラッグ中毒者たちとを隔てる薄い境界線を象徴している。本作で彼は、かつて実父がドラッグの売人であり、自身もその過酷な環境で育った幼少期の記憶を淡々と描写している。プロデューサーのHaglerによる重苦しくミニマルなビートの上で、ギャングスタ・ラップの暴力性を美化するのではなく、機能不全家族やゲットーの抜け出せない貧困のサイクルを描く彼の視点は極めて客観的だ。イントロではA$AP Mobとも関わりの深いA$ton Matthewsが、N.W.A.の伝説的なフレーズをオマージュして幕を開け、ロングビーチのリアルな情景をより一層ディープに引き立てている。
和訳
[Intro: A$ton Matthews]
What's the word, what's the word, what's the word, what's the word?
調子はどうだ、調子はどうだ、調子はどうだ、調子はどうだ?
※「What's the word?」は「最近どう?」「何か情報はあるか?」を意味するストリートの挨拶。
You are now about to witness the strength of narcotics
お前たちは今から、麻薬の持つ真の力を目撃することになる
※西海岸の伝説的グループN.W.A.の大名曲「Straight Outta Compton」のイントロにおけるドクター・ドレーの台詞「You are now about to witness the strength of street knowledge(ストリートの知識の力を目撃する)」を引用し、「street knowledge」を「narcotics(麻薬)」に置き換えている。これから語られるドラッグ・ディーラーの生々しい物語への完璧な導入。
[Hook: Vince Staples]
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
※ドラッグを求める客が網戸越しに家を訪ねてくる光景を描写している。
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
※「fiend」は重度の薬物中毒者、または強く欲求することを指すスラング。
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
[Verse 1: Vince Staples]
Bobby Johnson ain't my OG, this ain't no movie role
ボビー・ジョンソンは俺のOGじゃない、これは映画の役作りなんかじゃないんだ
※「Bobby Johnson」は1992年のフッド映画『South Central』の主人公の名前。ヴィンスが語る物語は架空のギャング映画ではなく、実生活に基づくリアルな現実であることを強調している。
Pop's was off that O.E., trippin', gettin' his Tookie on
親父はO.E.で酔っ払って、ラリって、トゥーキーみたいに暴れ回ってた
※「O.E.」はゲットーで安価に買えるアルコール度数の高いモルトリカー「Olde English 800」のこと。「Tookie」は悪名高いギャング組織クリップス(Crips)の創設者の一人スタンリー・“トゥーキー”・ウィリアムズ。父親がアルコールで凶暴になり、生粋のギャングバンガーのように振る舞っていたことを描写している。
Thunderbird with Gold D's, a felon and parolee
ゴールドのデイトンを履かせたサンダーバード、重罪犯で仮釈放中の身だ
※「Gold D's」はローライダー文化で絶大な人気を誇るDayton社製のゴールド・ワイヤー・ホイール。「Thunderbird」はフォードの車種。
McDonald's for the Double Cheese, pockets fit a couple C—
ダブルチーズバーガー目当てでマクドナルドに行く、ポケットには何枚かの100ドル札が入るが—
※「C-Notes」で100ドル紙幣(Cはローマ数字で100)を意味する。この行の「C」と次行の「Notes」が繋がる、高度なエンジャブメント(行またぎのワードプレイ)になっている。
Notes up on the screen door saying to pack it up and leave
網戸には荷物をまとめて立ち去れという立ち退き通知が貼られてる
※前行の「C-Notes(100ドル札)」から「Eviction Notes(立ち退き通知)」へと見事に意味が切り替わる。ドラッグビジネスで大金を持ち歩いているにも関わらず、家賃すら払えず追い出されそうになっているゲットーの矛盾と不安定な生活環境を描いている。
But we don’t read those
でも俺らはそんなもん読まねえ
'Cause the money comin' faster than your bitch, nigga
だって金が入ってくるスピードは、お前のビッチがイクより早いからな
All my life, I wanted to be a rich nigga
生まれてからずっと、俺は金持ちになりたかったんだ
But homie, let me proceed
だがな兄弟、話を続けさせてくれ
Pops was moving slowpoke, that's way before the codeine
親父は鈍く動いてた、コデインが流行るずっと前の話さ
※「slowpoke」は動きが鈍いこと。現代のヒップホップシーンで主流となっているリーン(コデイン入りシロップ)ではなく、当時別の薬物の影響で父親の動きが鈍くなっていたことを示唆している。
Just methadone and powdered H to junkies with the sour faces
不機嫌な顔をしたジャンキーどもに、メタドンと粉末のヘロインをさばくだけだ
※「powdered H」はヘロインのこと。
Knocking on the screen door, asking for their homie Nate
奴らは網戸をノックして、ダチのネイトはいるかと尋ねてくる
※「Nate」はヴィンス・ステイプルズの実父の名前。
Ten to twenty each, 4 p.m. he leave, so don't be late
1つ10ドルから20ドル、親父は午後4時には出かけるから遅れるなよ
Mom up off of work asking me if anybody came
仕事から帰ってきた母さんが、誰か家に来たかと俺に聞く
To kick it with my dad, or was he chilling in the alleyway?
お父さんと遊ぶために誰か来た? それとも裏路地でたむろしてたの?ってな
"He was in the alleyway"—that's what he always had me say
「裏路地にいたよ」—親父はいつも俺にそう言わせてたんだ
※真面目に働く母親に対して、父親が自宅でドラッグを売っている事実を隠すため、子供であるヴィンスが嘘をつくことを強いられていた痛ましい情景。
Slangin' for them bills he had to pay—somebody at the door
払わなきゃならない請求書のためにハスリングしてたのさ—誰かがドアの前にいる
[Hook: Vince Staples]
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
[Verse 2: Vince Staples]
Pots on top of the furnace, Glocks on top of the kitchen
コンロの上には鍋、キッチンの上にはグロックが置かれてる
※鍋(Pots)はクラック・コカインの精製に使われる。家庭の台所がドラッグの製造工場であり、同時に銃(Glocks)が無造作に置かれているという異常な環境。
Table-tables is turning, now my father is tripping
形勢が逆転していく、今度は親父自身がおかしくなってる
※「tables is turning」は状況が一変すること。売人であったはずの父親自身がドラッグの沼にハマり、中毒者へと転落していく様子を描写している。
He shooting, sniffing, and sipping, pigs recruiting 'em snitches
注射を打ち、鼻から吸い、シロップをすする、サツは密告者たちを雇い入れる
※「shooting」はヘロイン等の静脈注射、「sniffing」はコカインの吸引、「sipping」はコデインの飲用。「pigs」は警察の蔑称。警察がストリートの人間を情報屋(スニッチ)として利用するシステムの存在。
'Cause testimonies from homies can lead to longer convictions
ダチからの証言があれば、刑期をより長くできるからな
Police knocking at my door, pretending nobody hear 'em
警察が俺の家のドアをノックする、誰にも聞こえていないフリをしてな
Police knocking down my door with judicial system permission
警察が俺の家のドアを蹴破る、司法制度の許可証を持ってな
※あえて居留守を使っていると見なし、捜索差押許可状(令状)を行使して強制的に家宅捜索に踏み込んでくる理不尽なプロセス。
Contraband in where we living, hope I don't get thrown away
俺らの住処には違法な品が溢れてる、ブタ箱にぶち込まれないことを祈るぜ
※「Contraband」は禁制品(ドラッグや違法銃器)。「thrown away」は刑務所に送られ人生を棒に振ること。
In the prison, dogs are sniffing, backyard full of K's
刑務所の中だ、犬どもが嗅ぎ回ってる、裏庭にはAKが山ほど埋まってるんだ
※「dogs」は警察犬、「K's」はAK-47などのカラシニコフ系自動小銃。自宅の裏庭に大量の武器を隠しているというストリートのリアル。
Catch a case and knock it out, niggas fighting every day
パクられては無罪を勝ち取る、奴らは毎日戦ってる
※「Catch a case」は起訴されること。「knock it out」は裁判で打ち勝つ(起訴を取り下げさせる、無罪になる)ことを意味するスラング。司法システムとの終わりのない闘い。
Choppers circle 'cause a nigga chop hard on the blade
ヘリコプターが旋回してる、ダチが通りで派手に売り捌いてるからな
※「Choppers」は警察のヘリコプターのこと。「chop」はコカインを細かく刻む(販売用に分ける)こと。「the blade」は売春やドラッグ密売が行われる危険なストリートを指すスラング。
Got broads on the base, slanging rude, we banging too
女どもはベースをキメてる、荒っぽく売り捌いて、俺らもバンギンしてる
※「base」はフリーベース(純度の高いコカイン)。「banging」はギャングとしての活動や抗争(ギャングバンギング)を行うこと。
Where you from? If they got that back, we clapping, coming through
どこ中のモンだ? もし奴らが言い返してきたら、俺らはブッ放す、乗り込むぜ
※「Where you from?」はロサンゼルスのギャングが相手の所属を尋ねる際の極めて危険な決まり文句。返答や態度次第では即座に銃撃(clapping)に発展する。
Going dumb, forties, selling water, profit from the slums
バカ騒ぎして、40オンスを飲み、水を売る、スラムから利益を搾り取る
※「forties」は40オンスのビール。「water」はPCP(フェンサイクリジン)を指すドラッグのスラングで、タバコなどを浸して吸う。
Since we was young, money been the motive
ガキの頃から、金がすべての動機だった
Nigga, get you some guns and dope
なぁ、銃とハッパを手に入れな
Bruh, I love them guns and dope, find me slanging for the low
ブラザー、俺は銃とハッパを愛してるぜ、安値で売り捌いてる俺を見つけてみな
※「for the low」は安値で提供すること。薄利多売で危険なストリートビジネスを回しているハスラーとしての矜持。
Come around, you getting domed, somebody at the door
近づいてくれば、頭を撃ち抜かれるぜ、誰かがドアの前にいる
※「domed」は頭部(dome)を撃たれること。
[Hook: Vince Staples]
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
Who's that peeking in my screen door?
俺の家の網戸を覗き込んでるのは誰だ?
I got what you need, what you fiend for
お前が必要としてるもの、ヤミツキになってるものを俺は持ってるぜ
[Outro: A$ton Matthews]
Hanh? Hello? (What's the word?)
あぁ? もしもし?(調子はどうだ?)
Fuck is you doing, man? (Brrp-brrp!)
何してんだよ、お前? (Brrp-brrp!)
Qué pasa, Gotti? What's bracking? (Hanh?)
調子はどうだ、ゴッティ? 何か起きてるか?(あぁ?)
※「Qué pasa」はスペイン語で「調子はどう?」。LAのストリートにおけるヒスパニック文化との交差点。「Gotti」はA$ton Matthewsの通称の一つ(Aston Gotti)。「What's bracking」は「What's cracking」のCをBに変えた、ブラッズ(Bloods)由来のスラング表現。
Got five muhfuckers down with that on-dizzy
そこにいる5人の野郎どもとつるんでるぜ
※「on-dizzy」はハイになっている状態や、イカれた行動に出る準備ができている状態を指すストリートスラング。
You know? 'Cause we really out here trippin', my nigga, you know what I'm sayin'? (What's the word?)
分かるか? 俺らはマジでここで暴れ回ってるんだ、言ってること分かるか?(調子はどうだ?)
Right here wildin', my G (Brrp-brrp!)
ここで暴れまくってるぜ、マイG (Brrp-brrp!)
Whatever you need, I got it
お前が必要なものは何でも揃ってる
Just come with them ends (Ayy!)
ただ金だけ持って来な (Ayy!)
※「ends」は札束、金のこと。
Or get socked on! Hanh? Ayy!
さもなきゃぶん殴られるぞ! あぁ? Ayy!
※「socked on」は顔面を強く殴られること。
Ch-ch-ch!
