Artist: Earl Sweatshirt (feat. Na’kel Smith)
Album: I Don’t Like Shit, I Don’t Go Outside: An Album by Earl Sweatshirt
Song Title: DNA
概要
「DNA」は、アール・スウェットシャツの2ndアルバム『I Don't Like Shit, I Don't Go Outside』に収録された、アルバム内で最も感情的で生々しいドラマを持つトラックである。ビートはアール自身が手掛け、不穏でサイケデリックなループが延々と続く。ヴァース1では、アールがストリートの掟や名声による孤独、そして自身のラップスキルに対する絶対的な自負を冷酷にスピットする。しかし、この曲を真に伝説的なものにしているのは、アールの親友でありプロスケーターのNa'kel Smith(ナック)によるヴァース2だ。実はレコーディングのまさにその日、Na'kelのもとに幼馴染が亡くなったという悲報が届いた。アールはスタジオで打ちひしがれる彼にマイクを渡し、その場でのフリースタイルによる一発録りを促したのである。亡き友への語りかけ、ストリートで生きる者たちの生と死、そして弱虫(ビッチ)の要素など一切混ざっていない強靭な「DNA」を証明する、ヒップホップ史に残る真にリアルなドキュメンタリー的楽曲だ。
和訳
[Verse 1: Earl Sweatshirt]
Intercepting a fifth of whisky and necking it 'til I'm dizzy
ウイスキーのボトルを横取りして、目が回るまでラッパ飲みする
※「a fifth」は1/5ガロン(約750ml)の標準的な酒のボトル。「necking」はボトルの首(neck)を掴んで直飲みすること。
I never was defenseless, I never hugged the fence
俺は無防備だったことなんてないし、フェンスにしがみついたこともない
※「hug the fence(フェンスに抱きつく)」は「on the fence(どっちつかずの態度をとる)」の変形。自分の立場を明確にし、中途半端な真似はしないというストリートのスタンス。
I pick a side and trust in it, stomach full of drugs and shit
片方の側を選んで信じ抜く、胃袋はドラッグなんかで満杯だ
My niggas on some other, Cleanse Sunday, binge Monday
俺のダチらは別の次元にいる、日曜にデトックスして、月曜からまた酒浸りさ
※「Cleanse(浄化/解毒)」と「binge(暴飲暴食/どんちゃん騒ぎ)」の対比。週末に薬を抜いても週明けにはまた自堕落な生活に戻るというループ。
Then another six days, back to Sunday when it's done again (Shit)
それから6日間、それが終わればまた日曜に戻る (Shit)
And the pants better be creased on my corpse
俺の死体に穿かせるパンツには、しっかり折り目をつけておいてくれよ
※ストリートの美学。死んで棺桶に入る時(corpse)でさえ、アイロンの効いた折り目(crease)のついた服でキメていたいというプライド。
If you need that, run until the streetlights off
もしそれが必要なら、街灯が消えるまで走れ
※フッドの子供たちは「街灯が点いたら家に帰る」のがルールだが、成功を掴むためには夜通し(街灯が消える朝まで)ハッスルし続けろという教訓。
Back got bigger, got the team strapped on
背中がデカくなった、チームを背負ってるからな
※Odd Futureや自分のクルーの期待と責任を背負い、精神的にタフになったこと。
And you thought it was magic, but that's just the difference
お前らはそれを魔法だと思っただろうが、それがただの違いさ
Nigga, my team is magicians
なぁ、俺のチームはマジシャン揃いなんだ
※不可能に見えることを軽々とやってのける仲間たちへの賛辞。
We think of the shit that we want then we get it
欲しいものを思い浮かべて、それを手に入れる
Look, I got hoes in my britches
見ろよ、ズボンの中にビッチどもがいる
Big-up Dill and Britches, full part coming soon
ディルとブリッチェズにシャウトアウト、フルパートがもうすぐ出るぜ
※スケートカルチャーへのリファレンス。「Dill」は伝説的スケーターでありブランドFucking Awesomeの創設者Jason Dill。「full part」はスケートボードのビデオパートのこと。アールのスケーター人脈との深い繋がりを示している。
Thought you knew this, my nigga
知ってると思ってたぜ、兄弟
It's crackin' like french tips
フレンチチップスみたいに盛り上がってるぜ
※「crackin'」は「最高に盛り上がっている、ヤバい」というスラング。「french tips(フレンチネイルの付け爪)」が物理的に割れる(crack)ことと掛けたワードプレイ。
Just checking and balancing
ただ確認して、バランスを取ってるんだ
Checks and the salaries testing my friendships
小切手と給料が、俺の友情を試してる
※前の行の「checking and balancing」を引き継ぎ、「checks(小切手)」「balances(口座残高)」とお金の話へ移行。音楽で稼いだ大金が、周囲の人間関係を狂わせていく現実。
'Cause niggas get sour of this
金が絡むと奴らは不機嫌になるからな
Rap shit got the best of me
ラップのクソみたいな部分が俺を食い尽くした
I threw the rest off the balcony
残りはバルコニーから投げ捨ててやったよ
※業界のしがらみや不要なフェイクの人間関係を完全に切り捨てた閉鎖的なスタンス。
Shout out Da$H and RetcHy
ダッシュとレッチにシャウトアウト
※ニュージャージー出身のラッパーDa$HとRetcHへのネームドロップ。彼らはアールと音楽性やマインドセットを共有するアンダーグラウンドの盟友。
I know your bitch check for me, so much for chivalry
お前のビッチが俺をチェックしてるのは知ってるぜ、騎士道なんてそんなもんだ
※他人の彼女が自分になびいてくる状況を鼻で笑い、ストリートにモラルや義理(騎士道)など存在しないと冷笑している。
So long to every bitch tryna get intimate
親密になろうとしてくるビッチども、全員あばよ
I'm in my twenties now
俺ももう20代だ
Feet aimed at the jaws of the running mouth
おしゃべりな口の顎に、足を向けてる
※「running mouth(口だけ達者で文句ばかり言う奴)」の顔面を蹴り上げるという暴力的な描写。
Disdain for the law since a fucking child
ガキの頃から法律なんて軽蔑してる
Spotlights on me, I ain't stopping in my tracks
スポットライトが当たっても、俺は足を止めねえ
We taking it all, then we running out
全部奪い取って、逃げ去るんだ
Threw shade in the past, but you love me now, huh?
昔は陰口叩いてたのに、今は俺のことが好きだって?
※「throw shade」は陰口を叩く、ディスるというスラング。成功した途端に手のひらを返すヘイターたちへの皮肉。
Put your face in your palm when I come around you
俺が近づいたら、手のひらに顔を埋めな
※facepalm(呆れて顔を覆う動作)や、恐れ慄いて顔を隠すよう命じている。
Tell Mama get a gun if I get too popular
もし俺が有名になりすぎたら、銃を持てって母さんに伝えてくれ
※名声が高まるにつれて、ストリートの嫉妬や強盗の標的になる危険性が増すパラノイア。
I'm just being honest with her
ただ正直に言ってるだけさ
Tell her stop whining, it ain't no more problems
愚痴るのはやめろって伝えろ、もう問題なんてないんだ
I'm the best out of all these niggas
俺はこいつらの中で一番なんだよ
Watch your tone when you speaking (Yeah)
口を利くときは言葉遣いに気をつけな (Yeah)
Ain't no home for the weak
弱者に居場所はねえ
And no rest for your ass if I know that you're sleeping
お前が寝てるって分かったら、休ませてやんねえよ
※ラップゲームで油断している(sleeping)ライバルたちを徹底的に叩き潰すという宣言。
I'm here and I'm there and I'm up and I'm down
俺はあちこちにいて、上がったり下がったり
And I'm low and I'm peaking (Yup)
沈み込んだり、頂点に達したりしてる (Yup)
※薬物の影響や双極的なメンタルの波の激しさを表現している。
It's cold in the deep end (Yup)
深いところは冷たいぜ (Yup)
※プールの「deep end(深み)」を比喩に使い、自分の中の深い憂鬱やストリートの闇がどれほど冷酷であるかを示している。
(I'm low and I'm creeping)
(どん底で這い回ってる)
[Chorus: Earl Sweatshirt]
Bitch nigga, we the train, if you see 'em wave
クソ野郎、俺たちは列車だ、奴らが手を振るのが見えたら
※自分たちを誰にも止められない「列車」に例え、ヘイターが降参して手を振る(逃げる)のを嘲笑っている。
Ain't no bitch in my DNA
俺のDNAにビッチの要素はねえ
※「ビッチ(弱虫、臆病者)」の血は自分の中に一滴も流れていない。ストリートを生き抜く強靭な生まれと覚悟の誇示。ここから続くNa'kelのヴァースへの強烈な前フリとなる。
Bitch nigga, we the train, if you see 'em wave
クソ野郎、俺たちは列車だ、奴らが手を振るのが見えたら
Ain't no bitch in my DNA
俺のDNAにビッチの要素はねえ
[Verse 2: Na'kel Smith]
Hunnid blunts, niggas change, that's my day to day
100本のブラント、奴らは変わっちまう、それが俺の日常だ
※大量のマリファナを吸い、周囲の人間が金や名声で変わっていくのを見る虚無感。
Niggas tryna ride my train like they fucking strays
野良犬みたいに、俺の列車に乗ろうとする奴ら
My bro left today, fuck
今日、俺の兄弟が逝っちまった、クソ
※このラインはフィクションではない。レコーディングの当日、Na'kelの幼馴染が亡くなったという知らせが入った。この曲自体が、打ちひしがれる彼のためにアールが録音マイクを開放し、追悼のために吐き出させたリアルな生の感情の記録である。
Hot sauce in my cup of noodles; you taught me that
カップヌードルにホットソース、お前が教えてくれたんだ
※亡き友との些細だが愛おしいフッドの日常の思い出。貧しい生活の中で工夫して食べていたソウルフード。
I ain't seen you in some years
ここ数年、お前に会ってなかったな
And this news right here almost made me have a heart attack
そしてこの報せで、心臓発作を起こしそうになったよ
Your mama heart intact
お前のお母さんの心はなんとか持ち堪えてる
※訃報を聞いて友人の母親に連絡を取り、残された遺族を気遣う悲痛な描写。
We just spoke, I couldn't stomach that
さっき話したけど、俺は耐えきれなかった
I'm going to London on the first
1日にロンドンに行くんだ
I'm bringing you something back
お前に何かお土産を買ってくるよ
※スケーターやアーティストとして成功し、海外へ行けるようになった自分の姿を友に見せようとしている。
A house on the hill with a big-ass grill
丘の上の家、デカいグリルがあるやつ
Where we could have a boxing match
そこで俺たち、ボクシングの試合ができるようにな
※成功したら一緒に豪邸に住み、庭でふざけ合うという、叶うことのなくなったかつての夢。
Japan, Australia, I know you'd be proud of that
日本、オーストラリア、お前なら誇りに思ってくれるよな
※世界中を飛び回る親友の成功を、亡き友も喜んでくれるはずだという確信。
I got a couple bitches now, I ain't gotta lie 'bout that
今じゃ何人か女もいる、それについては嘘をつく必要もねえ
I know you in a better place, I can't even cry about that
お前がもっと良い場所にいるって分かってるから、泣くことすらできねえよ
※悲しみに耐え、強がることで「DNAにビッチの要素はない」ことを証明しようとしている姿が胸を打つ。
When I look into the clouds, I know you look down on me
雲を見上げれば、お前が俺を見下ろしてくれてるって分かる
Right next to grandmammy
ばあちゃんのすぐ隣でな
※先に亡くなった祖母と共に、空から見守ってくれているという霊的な繋がり(=DNA)の確認。
And the rest of the ones who wanna see me happy
俺の幸せを願ってくれてる他の皆と一緒に
(See me happy)
(俺の幸せを)
(See me happy...)
(俺の幸せを...)
※涙を堪えるような震える声のリフレインで曲がフェードアウトする。ストリートの冷酷さと失われた命の重さが交差する、圧倒的なエンディング。
