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Huey - Earl Sweatshirt 【和訳・解説】

Artist: Earl Sweatshirt

Album: I Don’t Like Shit, I Don’t Go Outside: An Album by Earl Sweatshirt

Song Title: Huey

概要

アール・スウェットシャツの2ndスタジオアルバム『I Don't Like Shit, I Don't Go Outside』のオープニングを飾る本作「Huey」。タイトルの由来は、ブラックパンサー党の創設者であるヒューイ・P・ニュートン、あるいは社会風刺アニメ『The Boondocks』の主人公で知的かつシニカルな少年ヒューイ・フリーマンのメタファーであるとファンの間では解釈されている。アール自身が「randomblackdude」名義で手掛けたメロウで哀愁漂うオルガンのループに乗せ、前作『Doris』リリース後の異常な熱狂、業界のプレッシャー、そして最愛の祖母の死に直面した彼自身の極めて内省的でダークな現状が綴られている。Odd Future期の若々しい狂気から脱却し、閉鎖的で憂鬱な「Sad Boy」的ペルソナを確立したターニングポイントであり、彼特有の高度なダブルミーニングと冷めたトーンが炸裂する、自己紹介と現状報告を兼ねた重要なイントロダクションである。

和訳

[Verse: Earl Sweatshirt]

Foot and hand on the gates
ゲートに手足をかけてよ
※かつて彼が問題児として施設に入れられていた過去や、自由を求めて壁を乗り越えようとしていた若き日の情景を示唆している。

We was jumpin' 'em, fuck, I'm like quicksand in my ways
俺たちは飛び越えてたんだ、クソ、俺のやり方はまるで流砂みたいだ
※「quicksand(流砂)」は、一度足を踏み入れると抜け出せなくなる状態の比喩。自身の破壊的な行動パターンやうつ状態から抜け出せないもどかしさを表現している。

Was always stuck in 'em, stuck it in and I ambulance-came
いつもそれにハマってた、突っ込んだ途端に救急車みたいにイいちまった
※「stuck it in」で性行為を暗喩し、「ambulance-came」で救急車のサイレンのようにやかましく、かつ「すぐに来る(早漏)」ことを自虐的に描写している特異なパンチライン。

The first time, which ain't fast if you Los Angeles-raised (Nigga)
初めての時はな、まあロサンゼルス育ちなら早くもねえか(Nigga)
※LA特有の悪名高い「ひどい交通渋滞」を引用し、LAでは救急車(ambulance)であっても目的地に早く到着できないという事実と、自身の早漏ジョークを掛け合わせた高度な言葉遊び。

My bitch say the spliff take the soul from me (Ayy)
カノジョは、ジョイントが俺から魂を吸い取ってるって言うんだ(Ayy)
※「spliff(マリファナとタバコを巻いたもの)」への過度な依存が、彼の感情や生命力を奪っている(鬱状態を悪化させている)という周囲からの指摘。彼の内面的な疲弊を浮き彫りにしている。

And the clique tight-knit, it's like the 'lo rugby
俺のクルーの絆は固いぜ、まるでポロのラガーシャツみたいにな
※「tight-knit」は「絆が固い」ことと、服の「編み目がきつい」ことのダブルミーニング。「'lo」はストリートで神聖化されているブランド、Polo Ralph Laurenの略称であり、ラガーシャツの頑丈な生地に自らのクルーを例えている。

Beat the fuckin' beat up like it stole from me (Yup)
このクソみたいなビートをボコボコにしてやるよ、まるで俺から何か盗んだ奴のようにな(Yup)
※巧みなラップスキルでビートを乗りこなす(殺す)様を、ストリートの報復(窃盗犯への制裁)になぞらえている。

You can talk to Clancy, you need a feature or quote from me (Bitch)
俺の客演かコメントが欲しいなら、クランシーに話を通せ(Bitch)
※Christian Clancy(クリスチャン・クランシー)は、Odd Future及びアールの当時のマネージャー。音楽業界の人間関係への嫌悪感から、ビジネスのやり取りはすべてマネージャーに丸投げしている彼の閉鎖的なスタンス(I Don't Go Outside)を表している。

I'm off Delancey, I reek of reefer and show money
俺はデランシー通りを抜けたとこ、ウィードとライブのギャラの匂いをプンプンさせてるぜ
※デランシー(Delancey Street)はニューヨークのロウアー・イースト・サイドにある通り。「reefer(大麻)」と「show money(ライブの現金収入)」という、ハスラー的な成功の象徴を身にまとっている。

It's Early, running with niggas who cold runnin' shit
アーリーの登場だ、冷徹にシーンを仕切るダチらとつるんでる
※「Early」はEarlの愛称。「cold runnin' shit」は、感情を挟まず無慈悲かつクールに業界やストリートをコントロールしている仲間たちを描写している。

The wins like lotion: He get 'em, he gon' rub 'em in
勝利ってのはローションみたいなもんさ、手に入れたら奴はそいつを塗りたくる
※「rub 'em in」はローションを肌に「擦り込む」ことと、勝利や成功を他人に「見せびらかす、自慢する(rub it in)」ことを見事に掛け合わせたパンチライン。

Critics pretend they get it, and bitches just don't fuck with him
評論家どもは理解したフリをするし、ビッチたちは俺に関わろうともしねえ
※音楽メディアがアールの複雑なリリックを深読みして勝手に評価する一方で、彼のダークで内向的な性格ゆえに女性からは敬遠されているという、リアルで皮肉な現状分析。

I spent the day drinkin' and missin' my grandmother, just
一日中酒を飲んで、死んだばあちゃんを恋しく思ってた、ただ
※2013年頃に他界した彼の祖母への深い喪失感。このアルバム全体に漂う重苦しいトーンの根源の一つが、身内の死とそれによるアルコール依存への逃避であることを明かしている。

Grab a glass and pour some cold white wine in it
グラスを掴んで、冷えた白ワインを注ぐ
※悲しみを紛らわすための飲酒。白ワインは比較的洗練された酒の象徴。

Or Colt .45 in it—you know how I get it
それともコルト45でも入れるか、俺がどうなっちまうか分かるだろ
※「Colt .45」はアメリカのストリートで定番の安価なモルト・リカー(アルコール度数の高いビールの一種)。上品な白ワインから一転、安酒で泥酔して荒れる自身のリアルな姿を描写している。

I'm toastin' myself, and a toast to all my niggas
俺自身に乾杯、そして俺のダチ全員にも乾杯だ
※「toast」はグラスを掲げて乾杯する行為。

And ain't no time limit, I'm toasted as hell
制限時間なんてねえ、俺は死ぬほど酔っ払ってる
※前の行の「toast」を引き継ぎ、「toasted」で「酒やドラッグで極限まで酔っ払った/ハイになった状態」を表現する言葉遊び。

And I gotta jot it quick 'cause I can't focus so well
さっさと書き留めねえとな、ろくに集中できねえから
※薬物やアルコール、そして重度のうつ状態により思考のピントが合わず、インスピレーションが消える前に急いでリリックを書かなければならないという、天才ラッパーの脆く痛々しい舞台裏。

[Outro: Paloma Elsesser]

And now, a formal introduction
さて、正式な自己紹介をしよう
※パロマ・エルセッサー(モデル/友人)によるスポークン・ワード。この短い曲自体がアルバム全体に向けた「序章」であり、ここからアールの暗く閉ざされた世界(I Don't Go Outside)への本格的な没入が始まることを宣言している。