Artist: Lil Durk
Album: Almost Healed
Song Title: Before Fajr
概要
Lil Durkのアルバム『Almost Healed』に収録された「Before Fajr」は、彼が信仰するイスラム教の夜明け前の礼拝(Fajr / ファジル)をタイトルに冠した、緊迫感と暴力の連鎖を描き出すハードコアなトラックだ。アグレッシブなビートに乗せ、Durkはシカゴの過酷なストリートで毎日のように目撃する死のテープや、夜明け前まで敵を追い回すヒットマンたちの狂気を冷徹な視点でスピットしている。同時に、高級ブランド(Bottega VenetaやCartier)への執着、薬物(AdderallやFentanyl)への依存、そして身内の裁判や逮捕状(Warrant)といったラッパーとしての成功の裏に潜むパラノイアが交錯する。信仰による浄化を求めながらも、ギャングスタとしての業から逃れられないLil Durkの複雑な精神状態(Sad BoyとHustlerの境界線)が生々しく記録された一曲である。
和訳
[Verse]
Every day I can watch lil' bro bring out the red tape
毎日、俺の弟分が赤いテープを引っ張り出すのを見ている
※「red tape」は警察が殺人現場に張る規制線(ポリスライン)。弟分が日常的に殺人を犯しているという描写。
Headaches, I know you seen't that clip, looked like his head fake
頭痛がする、あの動画を見たろ、あいつの頭はまるで作り物みたいだったぜ
※頭を撃ち抜かれた悲惨な現場の映像(clip)についての言及。
Every day lil' bro chase all the opps before the Fajr prayer
毎日、弟分はファジルの礼拝の前にすべての敵を追いかけ回してる
※「Fajr」はイスラム教の1日5回の礼拝のうち、夜明け前に行う最初の祈り。夜通しで敵を狩り、神聖な祈りの時間が来る直前まで殺し合いをしているというシカゴの狂気。
His ass skate all around them cars, it look like hockey players
あいつは車の間をスケートみたいに滑り抜ける、まるでホッケー選手みたいにな
Every day, green Bottega boots, look like I'm Raphael
毎日、緑のボッテガのブーツを履いてる、まるでラファエロになった気分だ
※「Bottega Veneta」の緑色のブーツを、『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』の緑色のキャラクター(ラファエロ)に例えたワードプレイ。
Told the booster, "Get all the clothes they got, they gon' shut Barneys down"
万引き屋(ブースター)に言ったんだ、「店にある服を全部持ってこい、バーニーズが閉店しちまうぞ」ってな
※「Barneys New York」は2020年に破産した高級デパート。
Lil Threat just had somethin' around his neck, look like it knock armies down
リル・スレットは首に何かをぶら下げていた、軍隊だってなぎ倒せそうな代物だったぜ
※「Lil Threat」はOTF周辺のメンバー、OTF Threat。首に下げているのは重いジュエリーか、あるいはアサルトライフルなどの大型銃器の比喩。
Hit a bitch, fucked up everybody relationships, she a Barbie now
ビッチとヤッて、みんなの人間関係をめちゃくちゃにしてやった、彼女は今じゃバービーだ
※整形手術(Barbie)を受けて綺麗になった女性を巡る、身内や敵との恋愛トラブル。
Chief Wuk, he a real witness, he seen me knock niggas' mamas down
チーフ・ワック、あいつは本物の目撃者だ、俺が野郎どもの母親をヤるのを見てきたからな
※「Chief Wuk (Varney)」はOTFの重鎮。敵の母親と性的関係を持つという究極のディス。
Opps FaceTime showin' they lil' watch, nigga, put that Cartier down
敵どもはFaceTimeでしょぼい時計を見せびらかしてやがる、おい、そのカルティエを置けよ
Even when it rain, put it in wet mode to bring that 'Rari out
雨が降っていても、ウェットモードにしてあのフェラーリを引っ張り出すぜ
Who your top killer? I'll check his temp— man, what's your body count?
お前んとこのトップキラーは誰だ?あいつの体温を測ってやるよ、なあ、お前のキルスコアはいくつだ?
I ain't gon' even stunt, these niggas would rather die instead of livin'
強がるつもりはないが、こいつらは生きるよりも死ぬ方を選びたがる
I ain't gon' even stunt, these niggas would rather die instead of killin'
強がるつもりはないが、こいつらは殺すよりも死ぬ方を選びたがるんだ
※シカゴのストリートの若者たちが、生きる希望を持たず、自暴自棄になって死に向かっているという悲痛な達観。
I ain't gon' even cap, you know I'd rather die than be a witness
嘘はつかない、俺は目撃者(スニッチ)になるくらいなら死んだ方がマシだって分かってるだろ
I ain't gon' even cap, the niggas who rap 'bout, keep niggas out my business
嘘はつかない、ラップでイキってる野郎どもは、俺のビジネスから手を引かせておけ
They on go mode
奴らはいつでも臨戦態勢(ゴーモード)だ
I can't let them niggas trick me out a promo
あいつらに俺のプロモーションを邪魔(トリック)させるわけにはいかない
Your lil' thirty ass wanna take a picture, show hoes our photo
お前の30歳のケツが一緒に写真を撮りたがってる、ビッチどもに俺たちの写真を見せびらかすためにな
You ain't gon' die in the trenches at all, lil' bro, I'ma send you a boatload
お前はスラムで死ぬようなタマじゃないよ、弟分、お前には船いっぱいのブツ(大金)を送ってやるさ
Before the Calvin Klein, I had a four-five tucked in Polos
カルバン・クライン(のパンツ)を穿く前は、ポロ(ラルフローレン)の中に45口径を隠し持ってたんだ
I couldn't believe it how his ass was leakin', ripped his torso
あいつの血がどれだけ漏れ出てるか信じられなかった、胴体が引き裂かれていたんだ
Overslept, I had a warrant right before the court closed
寝坊しちまった、裁判所が閉まる直前に逮捕状(ワラント)が出されてたんだ
I'm so paranoid, I get to blowin' before the door close
俺はパラノイア(被害妄想)が酷くて、ドアが閉まる前に銃をぶっ放しちまう
Can't have a bitch to come to me, you know that shit a no-no
ビッチを俺のところに呼ぶわけにはいかない、それは絶対にご法度だって分かってるだろ
※セットアップ(罠)を恐れ、不用意に女性を自分のテリトリーに引き入れないというストリートの警戒心。
I know they really hate me now because I'm more-more famous
奴らが今、俺を本気で憎んでることは分かってる、俺がもっともっと有名になったからな
He can't even make it out the city, he ain't make no more bangers
あいつはこの街から抜け出すことすらできない、もうバンガー(ヒット曲)も作れないんだ
Whenever Deeski beat his murder, he gon' be more-more dangerous
ディースキーが殺人容疑を切り抜けたら、あいつはもっともっと危険になるぜ
※「Deeski」はOTF Doodie Lo。無罪を勝ち取ったことで、さらにストリートで恐れられる存在になるという誇示。
How these killers get on the 'net you would think there's no more gangsters
キラーたちがネットでイキってるのを見たら、もう本物のギャングスタなんていないって思うだろうな
I just took two Adderall, I don't want the G6
アデラールを2錠キメたところだ、G6は要らないぜ
※「Adderall」は集中力を高める処方薬。「G6」は強力な違法ドラッグの隠語。
Boonie used to sell the dog, he know how to remix
ブーニーは昔ドッグ(ヘロイン)を売ってた、あいつは混ぜ方(リミックス)を知ってるんだ
※「Boonie」はOTF Boonie Moe。純度を下げるために混ぜ物(カット)をして利益を上げるハスラーの技術。
And he want the Fentanyl, the real Percs ain't even hittin'
あいつはフェンタニルを欲しがってる、本物のパーコセットじゃもう効かないんだ
※薬物耐性がつき、さらに強力で致死性の高いフェンタニルを求めるという悲惨な依存症の末路。
I just told the bitch to drink the semen, she keep spittin'
ビッチに精液を飲めと言ったが、彼女はずっと吐き出しやがる
He'll still be dead right now, but we ain't get him
あいつは今でも死んでるはずだ、ただ俺たちが仕留めてないだけでな
He'll still be alive right now, but he ain't get it
あいつは今でも生きてるはずだった、だが、あいつは何も分かっていなかったんだ
I just seen him open pints back to back, he ain't mixin'
あいつがパイント(のリーン)を立て続けに開けるのを見たばかりだ、あいつはソーダで割りもしない
※「pints」はコデインシロップのボトル。そのまま原液を飲むほどの重度の中毒者。
I just seen him hold his breath, he'll chase you down for eight minutes
あいつが息を止めるのを見たばかりだ、あいつはお前を8分間追いかけ回すぜ
