Artist: Lil Durk
Album: Deep Thoughts
Song Title: Monitoring Me
概要
本作「Monitoring Me」は、シカゴ・ドリルシーンの覇者であるLil Durkが、自身を取り巻く複雑な人間関係、ネット上のフェイクなラッパーたち、そして高度化する警察の監視(Monitoring)に対する苛立ちとパラノイアを赤裸々に吐き出したハードコアなトラックである。アルバム『Deep Thoughts』に収録された本作では、サビ(コーラス)を持たない1バースのフリースタイル的な構成が採用されており、息をつく暇もないほどの密度でコンシャスなリリシズムが展開される。歌詞の中では、SNSで虚勢を張る「スタントマン」のようなギャングスタへの痛烈な批判、ヒットマンを抱えるボスとしての圧倒的な権力、そしてFaceTimeの読唇術まで用いる連邦警察(Feds)の執拗な捜査手法が言及されている。OTFの重鎮であるBoonaやVarney、今は亡きPlutoといった身内のネームドロップを織り交ぜつつ、ストリートの掟と司法の網の目の狭間でサバイブするトップラッパーの緊迫した日常を描き出した、ドリルミュージックの真髄とも言える一曲だ。
和訳
[Verse]
He said somethin' in public, I got in his DM and made him apologize
あいつが公の場で何か言ってきたから、DMに突っ込んで謝らせてやった
※SNS上でのビーフやトラッシュトークに対し、裏で直接プレッシャーをかけて黙らせるストリートのボスの権力。
I can't tell you what I had told him for real, my shit be monetized
俺がマジで何を言ったかなんて教えられない、俺の発言は金になるからな
※自分の発言やアクションがそのまま収益(バズや曲の再生数)に直結するため、タダで情報を明かさないというハスラーのスタンス。
Lil' bro want that fast shit, when he go to Six Flags, he don't get on rides
弟分は手っ取り早いスリルを求めてる、シックス・フラッグスに行っても絶叫マシンには乗らないんだ
※「fast shit」はストリートでの手っ取り早い金稼ぎや暴力(発砲など)。シックス・フラッグス(遊園地)のアトラクションよりもリアルなストリートの抗争にスリルを感じている若きギャングスタの狂気。
I be with the niggas who take the rapper's shit and make 'em buy it back
俺はラッパーからチェーンを奪って、本人に買い戻させるような連中とつるんでる
※他のラッパーからジュエリーなどを強奪し、それを法外な値段で返還させるストリートの恐喝手口。
I done charged a ball player a thousand dollar line just to say he drinkin' Act'
俺はプロ選手がアクタヴィスを飲んでると言うだけで、1ラインにつき1000ドルも請求したことがある
※「Act'」はActavis社のプロメタジン・コデイン・シロップ(リーン)。スポーツ選手がストリートのステータスとしてリーンを飲んでいると自慢するためのブツを法外な値段で売りつけたハッスル。
Half them niggas who rap that be in the 'Raq don't even be in the 'Raq
「ラック」にいるってラップしてる連中の半分は、「ラック」にすらいないんだ
※「'Raq」はシカゴの通称(Chiraq)。シカゴのストリートの過酷さを歌いながら、実際には安全な郊外や他州に逃げているフェイクなラッパーたちへのディス。
One of the opps lil' fast ass, you can tell his ass used to run laps
敵の素早いクソ野郎の1人、あいつが昔トラックを走ってたってのは見ればわかるぜ
※逃げ足の速い敵を陸上競技(run laps)に例えて嘲笑している。
I can merch on all my kids, lil' boy, you ain't make a gun clap
俺の子供たち全員にかけて誓うぜ、坊や、お前は銃を撃ったことなんてないだろ
※「merch」はシカゴのスラングで「誓う」こと。自分の子供の命を懸けて相手のフェイクっぷりを断言している。
You can't tell me shit, evеn though we cool, I can't tell him give yo' gun back
お前は俺に何も言えない、俺たちがクールな関係でも、あいつにお前の銃を返せなんて言えないんだ
※仲間が奪った銃を、いくら相手と顔見知りでも返してやらないというストリートの無情な掟。
I can't sеnd no money in my name 'cause lil' bro a killer, he killed his gump ass
俺の名前で金を送ることはできない、弟分はキラーで、あのマヌケ野郎を殺したからな
※「gump」は間抜け、バカ。刑務所にいるヒットマンの弟分に自分の名義で送金すると、警察に組織的な殺人を疑われる(RICO法などの対象になる)ため、監視を警戒している。
I don't even know if the feds tryna set me up 'cause you woofin' with yo' lil' gump ass
連邦警察が俺をハメようとしてるのかも分からない、お前みたいなマヌケが吠えまくってるからな
※「woofin'」は口先だけで威勢を張ること。フェイクな連中がSNS等で騒ぎ立てることで、結果的に警察(feds)の監視を引き寄せていることへの苛立ち。
Ain't no killer said that they seen't you kill, yo' lil' ass just a stunt man
キラーの誰もがお前が殺すのを見たなんて言ってない、お前はただのスタントマンだ
※スタントマンのように「演じている」だけで、実際のストリートの抗争では誰も殺していないフェイクギャングへの痛烈な批判。
You know brodie got shot in his arm, that Micro Mini get shot with one hand
兄弟が腕を撃たれたのは知ってるだろ、あのマイクロ・ミニは片手で撃てるんだ
※腕を負傷した仲間でも、Micro Draco(小型のアサルトピストル)なら片手で扱って反撃できるという殺傷能力の誇示。
I ain't gon' say he gon' miss his target 'cause he up too close to miss his one man
あいつが的を外すなんて言わない、あいつは一人を仕留めるために外しようのない至近距離まで近づくからな
I just did it just 'cause I fuck with 'em, I'll air one before Jumpman
あいつらとつるんでるからやっただけだ、ジャンプマンよりも先に一発ぶっ放してやる
※「air one」は発砲すること。マイケル・ジョーダンの「Jumpman」ロゴ(Air Jordan)の「Air」と発砲の「Air」を掛けた巧みなワードプレイ。
How you gon' tell a nigga, don't fuck with another nigga and you ain't done shit?
お前は何もしてないのに、どうして他の奴に「あいつらと関わるな」なんて言えるんだ?
How you gon' tell a nigga he safe when he in yo' city? You ain't even the gunman
どうして自分の街に来れば安全だなんて保証できるんだ?お前はガンマンですらないだろ
How you gon' tell the killer you can't send him nothin' 'cause you bought a bitch a lil' somethin'?
ビッチにちょっとした物を買ってやったからって、どうしてキラーに送金できないなんて言えるんだ?
※刑務所にいる仲間(キラー)への支援(Commissary)よりも女遊びを優先する薄情な連中への軽蔑。
You know that money be different, they come to your building to kill you and the doorman
金が絡めば次元が違うって分かってるだろ、奴らはお前のビルにやって来て、お前もドアマンも殺すんだ
※ヒットマンに多額の金が支払われれば、ターゲットだけでなく目撃者となる無関係な人間まで容赦なく消されるというストリートの無慈悲な現実。
I was a Jeezy fan, but I was seein' red, ain't build me a snowman
俺はジージーのファンだったが、赤を見ていた、雪だるまなんて作らなかったぜ
※Young Jeezy(現Jeezy)の代表的なシンボル「Snowman(コカインの隠語)」。Jeezyのファンでありながらコカイン(白)ではなく血(赤)を流す抗争に生きていたというリファレンス。
You put a switch on a new Glock, bet the lil' bitch'll start jammin'
新品のグロックにスイッチを付ければ、あのビッチはジャムり始めるに決まってる
※「switch」はグロックをフルオート連射可能にする違法な改造パーツ(Glock Switch)。しかし新品に無理に取り付けると弾詰まり(jam)を起こしやすいという、銃器に精通したリアルな知識。
I don't even got to pay a nigga to do nothin', I got killers, all my friends
俺は何もしない奴に金を払う必要なんてない、俺にはキラーたちがいる、全員俺のダチだ
Name the top five bitches out right now, I had ass all in my hand
今イケてるトップ5のビッチの名前を挙げてみろ、全員のケツを俺の手で揉んだことがあるぜ
※業界のトップクラスの女性たちと関係を持ってきたという強烈なボースト。
I ain't gon' say the name right now, it's a possibility you they man
今は名前は出さないでおく、お前がその女の男である可能性もあるからな
※相手を小馬鹿にしつつ、ネームドロップによる無用なビーフを避ける余裕。
That's on Pluto grave, lil' bitch, yo' bitch ass ain't gettin' in that van
プルートの墓にかけて誓うぜ、ビッチ野郎、お前のクソみたいなケツはあのバンには乗れない
※「Pluto」はOTFの初期メンバーであり亡くなった親友。彼の名にかけて、敵やフェイクな奴らは自分たちの仲間(バンに乗る)には絶対に入れないと宣言している。
How you gon' wipe my ass when you see me when yo' lil' bitch ass wiped the stand?
お前のビッチみたいなケツが証言台を拭いたのに、どうやって俺に会った時に俺を拭き取ろうって言うんだ?
※「wipe the stand」は法廷の証言台に立つ(スニッチする)こと。「wipe someone's ass」は殺害するというドリルスラング。警察にチクるような臆病者が自分を殺せるわけがないという強烈なパンチライン。
I know he was a real killer 'cause I seen him do it, he ain't even wipe off his hand
あいつが本物のキラーだって知ってる、あいつがやるのを見たからな、手すら拭かなかったぜ
※証拠隠滅(硝煙反応などを消す)すら気にしないほど冷酷なヒットマンの描写。前の行の「wipe」との対比。
I ain't never see you do nothin', I ain't ever see you shoot shit up
お前が何かするのを一度も見たことがない、お前が何かを撃ち抜くのも一度も見たことがない
I ain't never hear you say nothin', but I heard you told dude, "Get up"
お前が何か言うのを一度も聞いたことがないが、お前があいつに「起きろ」と言ったのは聞いたぜ
If you post in the hood, we gon' get up wit' you
お前がフッドにいると投稿したら、俺たちがお前のところに向かうぜ
※SNSで居場所を明かせば即座に襲撃するというドリルシーンの容赦のない報復。
If you post you got a show, we gon' get up wit' you
お前がライブがあると投稿したら、俺たちがお前のところに向かうぜ
Man, the nigga I love'll get hit up wit' you
なあ、俺の愛するダチがお前と一緒に撃ち込まれるんだ
※愛する仲間が敵を襲撃する(あるいは巻き添えになる)覚悟。
See, Boona a bug, he gon' up wit' you
いいか、ブーナはイカれてる、あいつはお前に銃を向けるぜ
※「Boona」はOTFのコアメンバーであるOTF Boona。「bug」は頭がおかしい、キレやすい危険人物を指す。「up」は銃を構えること。
See, I pay 'em just not to get rid of niggas
いいか、俺は奴らを消さないためだけに金を払ってるんだ
※ボスの命令一つでいつでも人を殺せる狂犬のような仲間たちを、金でなだめて制御しているという底知れぬ権力の誇示。
Talkin' 'bout them ones with Twitter fingers
Twitterで指を動かしてるだけの連中のことを話してるんだ
※「Twitter fingers」はネット上でだけ強がるキーボード・ウォリアーへの揶揄。
Bro body came straight from a misdemeanor
兄弟の遺体は軽犯罪のせいで真っ直ぐ送られてきたんだ
※些細な軽犯罪で逮捕されたりトラブルになった結果、命を落とすことになったストリートの不条理。
How you put on that switch? You a pistol cleaner
お前はどうやってそのスイッチを取り付けたんだ?お前はただのピストル清掃員だろ
※銃のカスタム(スイッチの装着)なんてできないような素人を馬鹿にしている。
Keep your mouth closed, you won't get subpoenaed
口を閉ざしておけ、そうすれば召喚状を受け取ることもない
※警察に一切喋らなければ裁判に巻き込まれることもないというストリートの絶対的ルール。
Feds watch FaceTime wit' a lip reader
連邦警察は読唇術のプロを使ってFaceTimeを監視してるんだ
※警察の監視(Monitoring)が高度化しており、FaceTimeの音声がなくても唇の動きで犯罪の証拠を掴まれるという、現代のギャングスタが抱えるパラノイア。
You know Varney, he the one with the tooth missin'
お前もヴァーニーを知ってるだろ、あいつは歯が欠けてる奴だ
※「Varney」はLil Durkの長年の親友で車椅子生活を送るOTFの重鎮、Chief Wuk(Varney)。
You know shorty gon' leave your roof missin'
あいつがお前の車の屋根を吹き飛ばすのは分かってるだろ
※「leave your roof missin'」は屋根(頭)を撃ち抜く、あるいはコンバーチブルのように吹き飛ばすという脅し。Varneyの欠けた歯(tooth missin')と掛けている。
Why the fuck you gon' ride wit' a new nigga?
なんでお前は新顔の奴と一緒に車に乗るんだ?
※素性の知れない人間(警察の潜入捜査官や裏切り者の可能性がある)を簡単に信用する者への警告。
I done mixed my Tris with a root beer
俺はトリスをルートビアで割ったんだ
※「Tris」はリーン(コデインシロップ)のブランド。通常はスプライトで割るが、ルートビアで割るという好みの描写。
Fuck Wock' 'cause it make me take two shits
ウォックなんてクソくらえだ、あれを飲むと2回もクソに行きたくなるからな
※「Wock'」はWockhardt社のシロップ。副作用に対する愚痴というリアルな薬物常用者の日常。
She be suckin' my dick at Ruth's Chris
彼女はルースズ・クリスで俺のチンポをしゃぶってる
※「Ruth's Chris」は高級ステーキハウス。公共の高級レストランでの破天荒な性行為の誇示。
Can't tell me what you did 'cause you ain't do shit
お前が何をしたかなんて俺に語ることはできない、お前は何もしてないんだからな
