Artist: Lil Durk
Album: Deep Thoughts
Song Title: Keep On Sippin’
概要
本作「Keep On Sippin’」は、シカゴ出身のドリルスターであるLil Durkが、自身の深刻な薬物依存(リーンや処方薬)との闘い、そしてそれに伴う精神的な苦悩を赤裸々に綴った内省的なトラックだ。プロデューサーのTouchofTrentによる哀愁漂うビートの上で、Durkは最愛の仲間を失った悲しみや恋人との関係の破綻から逃れるためにカップを煽り続ける「Sad Boy」としてのリアルな姿を提示している。注目すべきは、彼が帰依するイスラム教の教え(悪魔を意味するシャイターンなどの語彙)と、ストリートの誘惑の間で引き裂かれる葛藤を描いている点である。また、アウトロでは黒人コミュニティやインナーシティにおける「リハビリテーションやセラピーへの偏見」に真っ向から切り込んでおり、単なるトラップミュージックの枠を超え、次世代の若者たちに負の連鎖からの脱却を促すコンシャスなメッセージ性を内包した重要な一曲となっている。
和訳
[Intro]
(TouchofTrent be wilding with it)
(TouchofTrentがヤバいビートを鳴らしてるぜ)
[Verse 1]
I done gave you everything, how you gon' keep on tripping?
俺は全てを捧げたのに、なんでお前は文句ばかり言い続けるんだ?
I gave my word to my higher self, say, "I ain't gon' keep on sipping"
ハイヤーセルフに誓ったんだ、「もうシロップをすするのはやめる」ってな
※「sipping」はプロメタジンとコデインを含む咳止めシロップ(リーン)を飲む行為。自己のより高次な精神や神に対する断薬の誓いを示している。
I know how love is, so therefore, I'ma keep my distance
愛がどういうものか分かってる、だからこそ距離を置くんだ
I know how love is, when I stay away, that's when I'm the richest
愛ってやつを分かってる、俺が離れている時こそが一番豊かになれる時なんだ
Wish I—
俺が—
[Chorus]
Keep on sipping
すすり続ける
When you damn near goin' broke, you wanna keep on sipping
無一文になりかけてる時こそ、すすり続けたくなるんだ
I made a promise to myself, I ain't gon' keep on sipping
自分自身に約束したんだ、もうすすり続けるのはやめるって
When my girl had broke my heart, it made me keep on sipping
彼女に心を砕かれた時、その痛みが俺にすすり続けさせた
Thinkin' 'bout bro 'nem on that death bed, I keep on sipping
死の床にいた兄弟たちのことを考えると、俺はすすり続けてしまう
※「bro 'nem」は「兄弟たち(仲間たち)」を意味するシカゴ特有のAAVE。King Vonをはじめとする、銃撃で命を落とした親友たちへの消えないトラウマから逃れようとする姿を描写している。
Them Percocets and Xannies make me wanna keep on sipping
パーコセットとザナックスのせいで、さらにすすり続けたくなるんだ
※パーコセット(鎮痛剤)とザナックス(精神安定剤)。これらをリーンと併用する極めて危険な多剤乱用の現状を吐露している。
Before I threat you, I'll keep it in and keep on sipping
お前を脅しちまう前に、感情を押し殺してすすり続けるんだ
Pass mе my cup, so I keep on sipping
俺のカップを渡してくれ、すすり続けるために
Pass me my cup, so I—
俺のカップを渡してくれ、俺が—
[Verse 2]
She told me that shе had my back when I did my time, but I know that she lying, she lying, she lying
俺が服役した時、彼女は支えると言ってくれたが、それが嘘だってことは分かってる、嘘だ、嘘だ
First day up in rehab, I was actin' like I was denial, I lied, lied, lied, lied
リハビリ施設の初日、俺は依存を否定しているように振る舞ったが、嘘をついてた、嘘だ、嘘だったんだ
※ヒップホップコミュニティでは自身の弱さを見せることがタブーとされがちだが、ここではリハビリ施設での防衛本能と虚勢を正直に告白している。
When you cash out on a porn star, you put your lifestyle on the line
ポルノスターに大金をつぎ込む時、お前は自分のライフスタイルを危険に晒しているんだ
I told 'em I'd stop drinkin', they instantly knew I was lying
みんなに飲むのをやめると言ったが、奴らは即座に俺が嘘をついていると見抜いた
You dancin' 'round with the demons, you spiritual, take a bath
お前は悪魔たちと踊り回っている、スピリチュアルな人間なら風呂に入って身を清めろ
※精神的な不浄やドラッグによる悪魔的な誘惑との対峙。彼が信仰するイスラム教における沐浴(グスル)を通じた浄化の概念が背景にあると解釈できる。
If you tapped in with the higher power, you don't need to be embarrassed
より大いなる力と繋がっているのなら、何も恥じる必要はない
She told me if I keep sippin', ain't no need to get married
彼女は俺に言ったんだ、もし俺がすすり続けるなら、結婚する必要なんてないってな
My first day havin' withdrawals, couldn't believe, it was scary
離脱症状が出た初日、信じられなかったよ、本当に恐ろしかった
※リーンの主成分であるオピオイドの深刻な禁断症状(震え、発汗、悪寒など)への恐怖。トップラッパーがここまで赤裸々に離脱症状の恐怖を語るのは異例である。
Visine, it was blurry, in the deep, you witness murder
バイシンをさしても視界はぼやけてた、どん底の中で殺人を目の当たりにするんだ
※「Visine」は充血を取る目薬。ここではドラッグによる視界のぼやけと、シカゴのストリートでトラウマとなる殺人の記憶がフラッシュバックする様子が重なっている。
I damn near couldn't believe all the things I done heard of
俺が耳にしてきた数々のこと、ほとんど信じられなかったぜ
So I—
だから俺は—
[Chorus]
Keep on sipping
すすり続ける
When you damn near goin' broke, you wanna keep on sipping
無一文になりかけてる時こそ、すすり続けたくなるんだ
I made a promise to myself, I ain't gon' keep on sipping
自分自身に約束したんだ、もうすすり続けるのはやめるって
When my girl had broke my heart, it made me keep on sipping
彼女に心を砕かれた時、その痛みが俺にすすり続けさせた
Thinkin' 'bout bro 'nem on that death bed, I keep on sipping
死の床にいた兄弟たちのことを考えると、俺はすすり続けてしまう
Them Percocets and Xannies make me wanna keep on sipping
パーコセットとザナックスのせいで、さらにすすり続けたくなるんだ
Before I threat you, I'll keep it in and keep on sipping
お前を脅しちまう前に、感情を押し殺してすすり続けるんだ
Pass me my cup, so I keep on sipping
俺のカップを渡してくれ、すすり続けるために
Pass me my cup, so I—
俺のカップを渡してくれ、俺が—
[Verse 3]
Dead and gone, they'll show you love just with a hashtag
死んでいなくなれば、奴らはハッシュタグだけで愛を示してくる
※アーティストが亡くなった時だけ「#RIP」とSNSで騒ぎ立てる現代の薄っぺらい追悼カルチャーへの痛烈な批判。
You say that we family, you not around, that shit a red flag (Yeah, yeah)
家族だって言うくせに、そばにいないじゃないか、そんなのは危険信号だ (Yeah, yeah)
Tell 'em that you love me, don't say it back, that shit a red flag (Hmm)
愛してると伝えても返事がない、そんなのは危険信号だ (Hmm)
This new generation don't show you love, just with a head-tap (Yeah)
この新しい世代は愛を示しはしない、あるのは頭への一撃だけだ (Yeah)
※「head-tap」は頭を撃ち抜くことを意味するドリルシーンのスラング。若者たちがリスペクトよりも致命的な暴力で自己主張するストリートの現状を嘆いている。
Say it to my face, you basically tellin' me on the ****, federal
面と向かって言えよ、お前は基本的に****の上で俺に語りかけてる、警察の捜査対象だぜ
※「federal」は連邦捜査局(FBIなど)のことで、「通信傍受されるような手段で犯罪やビーフの話をするな」というストリートの鉄則。伏字部分は電話やSNSアプリを指していると推測される。
You ain't never speak your mind before you hear, jack, terrible
お前は噂を聞く前には自分の意見を言ったことがないな、全くひどいもんだ
Test my gangster like you said you was, I'm darin' you
お前が言ってた通りに俺のギャングスタとしての度胸を試してみろよ、やってみろってんだ
I see them minions, boy, you scarin' who?
手下どもが見えるぜ、坊や、お前は誰を怖がらせてるつもりだ?
※「minions」は取り巻きや下っ端。大勢を引き連れて虚勢を張る敵に対する冷徹なディス。
I don't need a big gun, I got my big palms (Big palms)
デカい銃なんて必要ない、俺にはこのデカい手のひらがあるんだ (Big palms)
I'm tryna get shit done, but that's the shayṭān (Shayṭān)
俺は物事を成し遂げようとしているが、それがシャイターンってやつだ (Shayṭān)
※「shayṭān」はイスラム教における悪魔。自らが真っ当に生きようとしても、依存症や暴力の誘惑(悪魔の囁き)が立ちはだかる葛藤を示している。
I turned my life around, I gave it to Islam (Islam)
俺は人生を好転させたんだ、イスラム教に身を捧げた (Islam)
I wanna drink your lean, but I ain't get none
お前のリーンを飲みたいが、俺は一滴も手に入れてない
※信仰によって人生を立て直したと語る直後に、それでもなおリーンへの強烈な渇望が消えないという、依存症のリアルで矛盾した心理を吐露している非常に重いパンチライン。
[Chorus]
Keep on sipping
すすり続ける
When you damn near goin' broke, you wanna keep on sipping
無一文になりかけてる時こそ、すすり続けたくなるんだ
I made a promise to myself, I ain't gon' keep on sipping
自分自身に約束したんだ、もうすすり続けるのはやめるって
When my girl had broke my heart, it made me keep on sipping
彼女に心を砕かれた時、その痛みが俺にすすり続けさせた
Thinkin' 'bout bro 'nem on that death bed, I keep on sipping
死の床にいた兄弟たちのことを考えると、俺はすすり続けてしまう
Them Percocets and Xannies make me wanna keep on sipping
パーコセットとザナックスのせいで、さらにすすり続けたくなるんだ
Before I threat you, I'll keep it in and keep on sipping
お前を脅しちまう前に、感情を押し殺してすすり続けるんだ
Pass me my cup, so I keep on sipping
俺のカップを渡してくれ、すすり続けるために
Pass me my cup, so I—
俺のカップを渡してくれ、俺が—
[Outro]
There's a stigma in the inner cities
インナーシティには偏見があるんだ
※「inner cities」は低所得者が多く住む都市部の中心地。貧困や犯罪率が高いエリア。
Yeah
For young, Black boys and young, Black women to— to go to rehab
若い黒人の少年たちや、若い黒人の女性たちが、リハビリ施設に行くことに対してのな
Yeah
To seek therapy, to seek help
セラピーを受けたり、助けを求めたりすることにな
This for the youth or this for the older people who wanna— who wanna do better
これは若者たちのため、あるいはより良くなりたいと願う年長者たちのためのものだ
Of course
もちろんだ
And— and feel like they embarrassed or feel like a lot goin' on or people gon' talk about it
それに、恥ずかしいと感じたり、色んな問題を抱えすぎていると感じたり、他人に噂されるんじゃないかって思ってる奴らのためにな
Well, if I do it, they gon' do it
俺が行動を起こせば、あいつらも行動を起こすはずさ
※ギャングのボスであり絶対的な影響力を持つ彼自身が、己の依存症やトラウマを認めて治療を受ける姿を見せることで、フッドの仲間や次世代に「精神科やリハビリに行くことは恥ではない」と導こうとする強い決意表明。
