Artist: Olivia Rodrigo
Album: GUTS
Song Title: pretty isn’t pretty
概要
オリヴィア・ロドリゴの2ndアルバム『GUTS』(2023年)の11曲目に収録された「pretty isn’t pretty」は、ザ・キュアーやザ・スミスを彷彿とさせる80年代風のジャングル・ポップやドリーム・ポップのサウンドに乗せて、現代社会にはびこるルッキズム(外見至上主義)や美の基準に対する終わりのない闘いを歌った楽曲である。Z世代を代表するポップアイコンとして絶大な支持を得る彼女だが、本作では自身の容姿に対するコンプレックスや、SNS、雑誌、男性からの視線(メイル・ゲイズ)によって植え付けられる強迫観念を赤裸々に吐露している。どれだけ化粧をし、食事を制限しても決して満たされることのない「完璧な美」という虚像に対する無力感と怒りは、世界中の同世代の若者から深い共感を呼んだ。彼女のソングライターとしての鋭い社会的視点と、等身大の脆さが見事に交差したインディー・ロックの秀作である。
和訳
[Verse 1]
Bought a bunch of makeup, tryna cover up my face
メイク道具をたくさん買って、自分の顔を隠そうとした
I started to skip lunch, stopped eatin' cake on birthdays
お昼ご飯を抜くようになって、誕生日のケーキも食べるのをやめた
※思春期の若者が陥りがちな過度なダイエット文化や、摂食障害スレスレの危うい精神状態を非常に生々しく描写している。楽しいはずの誕生日のケーキすら罪悪感の対象になってしまうという悲痛なリアリティがある。
I bought a new prescription to try and stay calm
落ち着きを取り戻すために、新しい処方箋の薬を買った
※不安やプレッシャーに対処するための抗不安薬などを指している。自己肯定感の低さが精神衛生にまで悪影響を及ぼしていることが伺える。
'Cause there's always somethin' missin'
だっていつも何かが足りないから
There's always somethin' in the mirror that I think looks wrong
鏡を見ると、いつもどこかがおかしいって思ってしまうの
[Chorus]
When pretty isn't pretty enough, what do you do?
「可愛い」だけじゃ十分に可愛くない時、どうすればいいの?
※「pretty(可愛い)」という基準をクリアしたと思っても、社会が求めるハードルがさらに高く設定されるため、決してゴールに辿り着けない絶望感を表現している。
And everybody's keepin' it up, so you think it's you
周りのみんなは平気な顔をしてるから、自分だけがおかしいんだって思っちゃう
※SNSなどで他人のフィルター越しに作られた完璧な姿ばかりを目にすることで、「自分だけが劣っている」という強迫観念に苛まれる現代特有の孤独感である。
I could change up my body and change up my face
自分の体型を変えることも、顔を変えることだってできる
I could try every lipstick in every shade
あらゆる色合いのリップを全部試すことだってできる
But I'd always feel the same
でも、きっと私の気持ちはずっと変わらない
'Cause pretty isn't pretty enough anyway
だって結局、「可愛い」だけじゃ十分に可愛くないんだから
[Verse 2]
You can win the battle, but you'll never win the war
一つの戦いに勝てても、この戦争に勝つことは絶対にない
※「コンプレックスを一つ解消する(=戦いに勝つ)」ことができても、ルッキズムという巨大な社会構造(=戦争)に打ち勝つことはできないという、核心を突いたパンチラインである。
You fix thе things you hated, and you'd still feel so insecure
嫌いだった部分を直しても、まだ不安なまま
And I try to ignorе it, but it's everythin' I see
気にしないようにしてるのに、目に入るものすべてがそう
It's on the poster on the wall, it's in the shitty magazines
壁のポスターにも、くだらない雑誌の中にも
It's in my phone, it's in my head, it's in the boys I bring to bed
私のスマホの中にも、頭の中にも、私がベッドに連れ込む男の子たちの中にもある
※メディアやSNSだけでなく、「ベッドを共にする男性」の無意識な視線(メイル・ゲイズ)や品定めからも逃れられないという恐怖。最も親密な関係性においてすら、女性がルックスでジャッジされるという残酷な事実を暴いている。
It's all around, it's all the time, I don't know why I even try
どこにでもあって、いつでもそう、どうして私が頑張ってるのかさえ分からなくなる
[Chorus]
When pretty isn't pretty enough, what do you do?
「可愛い」だけじゃ十分に可愛くない時、どうすればいいの?
And everybody's keepin' it up, so you think it's you
周りのみんなは平気な顔をしてるから、自分だけがおかしいんだって思っちゃう
I could change up my body and change up my face
自分の体型を変えることも、顔を変えることだってできる
I could try every lipstick in every shade
あらゆる色合いのリップを全部試すことだってできる
But I'd always feel the same
でも、きっと私の気持ちはずっと変わらない
'Cause pretty isn't pretty enough
だって、「可愛い」だけじゃ十分に可愛くないんだから
[Bridge]
And I bought all the clothes that they told me to buy
言われるがままに、服を全部買った
I chased some dumb ideal my whole fucking life
これまでのクソみたいな人生ずっと、馬鹿げた理想を追いかけてきた
And none of it matters, and none of it ends
でもそんなの何の意味もないし、決して終わることもない
You just feel like shit over and over again
ただ何度も何度も、自分がクソみたいな存在に思えてくるだけ
[Outro]
No, it'll never change
いいえ、絶対に変わることはない
Pretty isn't pretty enough, mmm
「可愛い」だけじゃ十分に可愛くないの
Everybody's keepin' it up, oh
みんな平気な顔をしてる
Pretty isn't pretty enough
「可愛い」だけじゃ十分に可愛くないの
But pretty isn't
でも「可愛い」だけじゃ
※文章が途中で不自然に途切れて楽曲が終わる。これは、美の基準を追求することに終わりがない(=完結しない)という楽曲のテーマを、構成そのもので体現した巧みなギミックである。
