Artist: PARTYNEXTDOOR
Album: PARTYNEXTDOOR 4 (P4)
Song Title: L o s e M y M i n d
概要
PARTYNEXTDOORのアルバム『PARTYNEXTDOOR 4 (P4)』に収録された「L o s e M y M i n d」は、2000年代初頭のヒップホップ・クラシックと、現代のダークで退廃的なオルタナティヴR&Bを見事に融合させた一曲だ。本作の最大の特徴は、今は亡き伝説的ラッパーDMXのメガヒットアンセム「Party Up (Up in Here)」のアイコニックなフックを大胆にサンプリングしている点にある。原曲が持つアグレッシブで暴力的な熱狂を、PNDは密室でのドラッグと複数人とのセックスによる「理性の喪失」という極めて官能的かつ自己破滅的な文脈へと変換してみせた。楽曲の前半から中盤にかけては、富と名声を手にしたプレイボーイとしての享楽的なペルソナが全開だが、白眉となるのはアウトロの独白である。そこでは、真実の愛や家庭的な平穏への強い憧れと、金で買える刹那的な快楽から抜け出せないトキシック(有害)な現実との間で引き裂かれる彼の葛藤が赤裸々に描かれている。OVO Soundが長年提示してきた「トロントの夜の孤独」を体現する、痛切な名曲である。
和訳
[Intro]
Okay
オーケー
Jahron, meet Jada
ジャロン、ジェイダを紹介するよ
※「Jahron」はPARTYNEXTDOORの本名(Jahron Brathwaite)。実名を出すことで、これから語られる内容が極めて私的な実体験に基づくものであることを示唆している。
Jada, meet Jahron, hm-hm
ジェイダ、こちらはジャロン
[Verse 1: PARTYNEXTDOOR]
Ayy, y'all gon' make me lose my mind
なあ、君たちのおかげで俺はおかしくなりそうだ
※DMXの「Party Up (Up in Here)」の有名なパンチラインからの引用。怒りによる我を忘れる状態を、快楽と薬物による理性の崩壊へと巧みにダブルミーニング化している。
Fuckin' two bitches at one time
一度に二人の女とヤっている
Couldn't make me choose if it depended on my life
命がかかっていたとしても、どちらか一人を選ぶなんてできない
One's half-Spanish and one's half-white
一人はスパニッシュのハーフで、もう一人は白人のハーフ
Ooh, ooh-oh, oh-oh, oh-oh, and my tattoo is on her body
そして俺のタトゥーが彼女の体に入っている
※相手の肉体に自身のタトゥーを彫らせる行為は、彼女を完全に所有し支配しているという強烈な自己顕示欲と独占欲の表れである。
Woah, oh-ooh-woah, oh-oh, oh-oh, there's no controllin' her
彼女をコントロールすることなんてできない
[Pre-Chorus: PARTYNEXTDOOR]
When she's off that Molly (Molly)
彼女がモリーで飛んでいる時は
※モリーはMDMA(エクスタシー)の俗称。PNDの楽曲で頻繁に描写される、ナイトライフにおけるドラッグカルチャーと性的な解放の結びつき。
When she's rollin' that body (Body)
彼女がその体をくねらせている時は
When she's talkin' that softly (Softly)
彼女がそんな風に甘く囁く時は
Hard to get her off me (Me)
彼女を俺から引き剥がすのは難しい
Drippin' in Dior, you like it
全身ディオールで決めている、君はそれが好きなんだろ
I could put ten on the floor if you like it
君が望むなら、床に1万ドル投げたっていい
※「ten」は1万ドル(10 bands/10k)を指すストリートスラング。ストリップクラブや寝室での気前の良さを通じて、自身の経済的成功を見せつけている。
If y'all keep fuckin' me more then y'all might be
君たちがこのまま俺とヤり続けるなら、君たちは
Bad for me
俺にとって毒になるかもしれない
[Chorus: PARTYNEXTDOOR & DMX]
Y'all gon' make me lose my mind (Losе)
お前らのせいで俺は正気を失いそうだ
Y'all gon' make me lose my mind
お前らのせいで俺は正気を失いそうだ
Up in hеre, up in here
この場所で、この中で
Y'all gon' make me go all out
お前らのせいで俺は暴走しそうだ
Up in here, up in here
この場所で、この中で
Y'all gon' make me act a fool
お前らのせいで俺は馬鹿な真似をしそうだ
Up in here, up in here
この場所で、この中で
Y'all gon' make me lose my cool
お前らのせいで俺は冷静さを失いそうだ
Up in here, up in here
この場所で、この中で
※このコーラス全体がDMXのサンプリング。スタジアム級のヒップホップアンセムのフレーズを、ベッドルームの密室劇のBGMとして機能させるギャップが、PNDのプロデューサーとしての卓越したセンスを示している。
[Verse 2: PARTYNEXTDOOR]
All I can think about is your booties, and
俺の頭の中は君たちのお尻のことでいっぱいだ
Y'all ridin' me like Suzukis, and
君たちはスズキのバイクみたいに俺に跨っている
※スズキは日本のバイクメーカー。女性が騎乗位で激しく動く様子を、スピードの出るスポーツバイクのライディングに例える定番のメタファー。
Y'all sayin' y'all never do this, but
君たちはこんなこと絶対しないって言うけど
Tonight, you're doin' it to me (Oh, no)
今夜、君たちは俺にそうしているじゃないか
And I say, oh, oh-oh, oh-oh, oh-oh-oh
だから俺は声を上げるんだ
My hands all on her body
俺の手は彼女の体の至る所にある
Tryna control it, I can't control it when she's off that—
コントロールしようとするけど、彼女がアレで飛んでいる時は無理なんだ
[Pre-Chorus: PARTYNEXTDOOR]
When she's off that Molly (When she's off that)
彼女がモリーで飛んでいる時は
When she's rollin' that body (When she's rollin')
彼女がその体をくねらせている時は
When she's talkin' that softly (When she's talkin')
彼女がそんな風に甘く囁く時は
Hard to get her off me (Off)
彼女を俺から引き剥がすのは難しい
Drippin' in Dior, you like it
全身ディオールで決めている、君はそれが好きなんだろ
I could put ten on the floor if you like it
君が望むなら、床に1万ドル投げたっていい
If y'all keep fuckin' me more then y'all might be (Be)
君たちがこのまま俺とヤり続けるなら、君たちは
Bad for me (Me)
俺にとって毒になるかもしれない
[Chorus: PARTYNEXTDOOR & DMX]
Y'all gon' make me lose my mind (Yeah, yeah)
お前らのせいで俺は正気を失いそうだ
Y'all gon' make me lose my mind (My mind)
お前らのせいで俺は正気を失いそうだ
Up in here, up in here (Ooh, mm)
この場所で、この中で
Y'all gon' make me act a fool (Fool)
お前らのせいで俺は馬鹿な真似をしそうだ
[Outro: PARTYNEXTDOOR]
I love to love (And I love you, dear)
俺は愛することが好きなんだ(私もあなたを愛してるわ、あなた)
I really don't need a girl
女の子なんて本当は必要ない
I wanna get married (I'd just love to get married)
結婚したいんだ(結婚できたらどんなに素敵かしら)
I love that peace (You are my love, darling)
あの平穏な日々を愛している(あなたは私の愛する人よ、ダーリン)
I could be single for the rest of my life
一生独身でも構わない
I want some kids (I wanna have your kids)
子供が欲しいんだ(あなたの子供を産みたいわ)
I want you here (Mhm-hm)
君にここにいてほしい
Why would I date one girl (You only need one girl) and spend a million dollars on gifts? (You'll never be satisfied)
なんで一人の女の子と付き合って(あなたには一人の女の子だけで十分よ)、プレゼントに100万ドルも使わなきゃいけないんだ?(あなたは絶対に満たされないわ)
(No one will love you the way that I love you)
(私が愛するほど、あなたを愛してくれる人はいないわ)
When I can date ten and spend a hundred thousand dollars on any of them (And end up alone)
10人と付き合って、それぞれに10万ドルずつ使うことができるっていうのに(そして最後は一人ぼっちになるのよ)
※このアウトロは、PNDの内面に抱える深い葛藤と虚無感を見事に表現している。彼の独白に対し、女性のバックグラウンドボーカルが良心や元恋人の幻影のように合いの手を入れる構成となっている。純愛や家庭への憧れを語りつつも、最終的には自己正当化のために金と複数人との関係という冷酷な論理に逃避してしまう。ファンの間では、彼自身の富がもたらした人間関係の崩壊と、「結局は孤独に行き着く」という自己認識の哀愁を自嘲気味に描いた、アルバム内でも屈指の極めてパーソナルで重要なシーンとして高く評価されている。
