Artist: Madonna
Album: CONFESSIONS II
Song Title: L.E.S. Girl
概要
「L.E.S. Girl」は、マドンナが世界的スターダムを駆け上がる直前、1980年代初頭のニューヨーク・ロウアー・イースト・サイド(L.E.S.)での下積み時代を回顧するノスタルジックなトラックである。『CONFESSIONS II』のコンセプトである「過去との対話とダンスフロアでの自己解放」に連なる本作は、きらびやかなディスコビートの裏に、パンクとニューウェーブが交錯していた当時のイーストヴィレッジの荒々しくもロマンチックな空気感を閉じ込めている。家賃を滞納し、ひび割れた鏡でメイクをしながらクラブへ通い詰めた無名時代の彼女自身のペルソナと、ストリートでギターを弾くパンクな恋人との痛ましい失恋が描かれている。セント・マークス・プレイスやアベニューBといった具体的な地名が織り込まれたリリックは、極貧の中で野心だけを胸に生き抜いた彼女の「ハスラー」としての原点を示すと同時に、過ぎ去った青春とアンダーグラウンド・カルチャーへの哀悼歌(エレジー)としても機能している。
和訳
[Verse 1]
On Avenue B, she paints her lips cherry red
アベニューBで、彼女は唇をチェリーレッドに塗る
※アベニューBはニューヨークのアルファベット・シティ(ロウアー・イースト・サイドの一部)を走る通り。80年代当時は犯罪率も高く荒廃していたが、アーティストやミュージシャンが集まるカウンターカルチャーの温床だった。
Mirror cracked in her hand
手にはひび割れた鏡を持って
Eyeliner smeared, running out the door
アイラインは滲んだまま、ドアを飛び出すの
Still there from the night before
前夜からずっとそのままの姿で
※前夜のクラブでの熱狂や、朝帰りしてそのまま翌日の夜を迎えるような、当時のアンダーグラウンドなライフスタイルをリアルに描写している。
[Chorus]
Lower East Side girl
ロウアー・イースト・サイド・ガール
Lost in a fragile world
壊れやすい世界で迷子になっている
The night is kind
夜は優しいけれど
The day is blue
昼間は憂鬱なの
Everything fades away
すべては色褪せていく
Except for you, you, you
あなた、あなた、あなた以外はね
[Verse 2]
She wears his leather jacket out in the rain
彼女は雨の中、彼のレザージャケットを着て出かける
Sleeps to forget his name
彼の名前を忘れるために眠りにつくの
Polaroids are taped to the wall
壁にはポラロイド写真が貼られている
※スマートフォンが存在しなかった80年代特有のアイテム。アンディ・ウォーホルや当時のダウンタウンのアートシーンでもポラロイドは象徴的なツールだった。
Can't forget that boy at all
あの男の子のことが、どうしても忘れられない
[Chorus]
Lower East Side girl
ロウアー・イースト・サイド・ガール
Lost in a fragile world
壊れやすい世界で迷子になっている
Ignored all the signs
すべての予兆を無視して
The rent is overdue
家賃は滞納しているわ
※無名時代のマドンナが実際にドーナツ屋でアルバイトをしながら極貧生活を送り、家賃の支払いに苦労していたというファンには有名な生々しいエピソード。
Everything fades away
すべては色褪せていく
Except for you, you, you, you
あなた、あなた、あなた、あなた以外はね
[Verse 3]
He played guitar on St. Mark's Place
彼はセント・マークス・プレイスでギターを弾いていた
※セント・マークス・プレイスはイーストヴィレッジの中心的なストリートであり、ニューヨーク・パンクやニューウェーブ・カルチャーの聖地。
Had a Marlon Brando face
マーロン・ブランドみたいな顔立ちで
※映画『欲望という名の電車』や『乱暴者』などで知られるマーロン・ブランド。反逆児でありながらセクシーな不良っぽさを持つ、典型的なバッドボーイのメタファー。
Painted nails the same shade as his boots
ブーツと同じ色にマニキュアを塗って
Bleach blonde dirty roots
ブリーチした金髪、根元は黒く汚れたまま
※マニキュアを塗ったストリート・ミュージシャンや、根元がプリン状態のブリーチヘアは、当時のニューヨーク・パンク/グラムロック・シーンの典型的なスタイル。ファンの間では、マドンナの元恋人であったダン・ギルロイ(ブレックファスト・クラブのメンバー)や、当時の周囲のアーティストたちのペルソナを掛け合わせた姿だと解釈されている。
[Chorus]
Lower East Side girl
ロウアー・イースト・サイド・ガール
Lost in a fragile world
壊れやすい世界で迷子になっている
Drink too much whiskey
ウイスキーを飲みすぎて
Cigarettes when he kissed me
キスした時のタバコの匂い
Lower East Side boy
ロウアー・イースト・サイド・ボーイ
I wasn't meant for you
私はあなたには向いていなかったのね
※野心を抱いて世界的スターへと駆け上がったマドンナ(Girl)と、アンダーグラウンドなストリートに留まり続けた恋人(Boy)との、避けられなかった決定的な決別を意味している。
[Outro]
Everything fades away
すべては色褪せていく
Everything fades away
すべては色褪せていくの
