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Cashmere Thoughts - JAY-Z 【和訳・解説】

Artist: JAY-Z

Album: Reasonable Doubt

Song Title: Cashmere Thoughts

概要

1996年リリースのデビューアルバム『Reasonable Doubt』に収録された本作は、JAY-Zの多面的なペルソナの中でも、とりわけ冷徹で洗練された「ピンプ(ポン引き)」としての美学が全開になった一曲である。プロデューサーのClark KentがHamilton Bohannonの1973年の楽曲「Save Their Souls」をサンプリングして作り上げた、ファンキーでありながらもラグジュアリーなビートが特徴的だ。タイトル「Cashmere Thoughts(カシミアの思考)」が示す通り、JAY-Zは自身のラップや思考を「カシミア」「シルク」「ミンク」といった最高級の素材に例え、圧倒的な言葉遊びで自らの価値を誇示している。楽曲の随所に挿入されるClark KentやSauce Moneyとの会話では、ストリートの最下層である売春の上がり(hoe money)をかすめ取る冷酷なハスラーとしてのスタンスを語り、90年代ブルックリンのアンダーグラウンドな空気感と、マフィオソ・ラップの洗練を見事に融合させている。

和訳

[Intro]

Hah, hah, hah, hah, yeah, yeah

What it is, player?
調子はどうだ、プレイヤー?

(You player, it's all about you
(あんただよプレイヤー、全部あんたのことさ

How you gon' say that man)
なんてこと言うんだ)

If I had your hand I'd turn mine in, man
もし俺がお前の手札を持ってたら、自分の手札なんて降りちまうぜ
※ポーカーの手札に例え、相手の持っているもの(女、金、成功)が羨ましいと持ち上げている、ハスラー同士の軽口。

(Far as I'm concerned, if I had your hand, I cut mines off)
(俺に言わせりゃ、もし俺があんたの手札を持ってたら、自分の手なんか切り落としちまうよ)

Hah, man, you know, man, I'm just dealing that hoe money
ハッ、なぁ、分かってるだろ、俺はただ娼婦どもからの上がりを扱ってるだけさ

You know, hoe money is slow money, but it's sho' money
知っての通り、娼婦の稼ぎは貯まるのが遅いが、確実な金(sho' money)だからな
※「sho'」は「sure」の訛り。

(Check this out man, you run up on your bitches
(なぁ聞いてくれ、あんたが自分のビッチどものところに駆け寄って

This is what you tell 'em
こう言うんだろ

Stick they hands in they panties, grab that knot
パンティの中に手を突っ込んで、あの札束を掴み出せ

Stick they arm in that car window, and drop it like it's hot)
車の窓に腕を突っ込んで、素早く手放せってな)
※「knot」は丸められた札束の隠語。「drop it like it's hot」は熱いものを落とすように素早く渡せ、という意味のピンプ・スラング。

[Verse 1]

Uhh, I talk jewels and spit diamonds: all cherry
あぁ、俺は宝石のような言葉を語り、ダイヤモンドを吐き出す、すべてが新品だ

Like a hymen, when I'm rhyming with remarkable timing
処女膜のようにな、俺が驚異的なタイミングでライムを刻む時はな
※「cherry」はスラングで処女(あるいは無傷・新品)を意味し、直後の「hymen(処女膜)」と掛けて、自分のフロウが常に新鮮で完璧であることを表現している。

Caviar and silk dreams, my voice is linen
キャビアとシルクの夢、俺の声はリネンだ
※高級食材や高級素材を並べ、自身の言葉のラグジュアリーさを強調している。

Spitting venom up in the minds of young women
若い女たちの心の中に毒を吐き出すのさ

Mink thoughts to think thoughts type similar
ミンクのような思考、似たような思考を巡らせる

Might you remember, my shit is cold like December
覚えておくんだな、俺のシットは12月みたいに冷酷だってことを

Smoother than Persian rugs, the cashmere
ペルシャ絨毯よりも滑らかな、カシミアだ

Chromosomes make a nigga Jigga - Jay-Z, lethal drugs
染色体がこの俺をジガにするんだ - JAY-Z、致死量のドラッグさ

18-carat gold pen, when it hits the sheets
18金のペンが、シーツに触れる時
※「sheets」はベッドのシーツと、歌詞を書く紙(paper sheets)のダブルミーニング。

Words worth a million like I'm rapping 'em through platinum teeth
言葉は100万ドルの価値を持つ、まるでプラチナの歯越しにラップしてるようにな

I got the Grey Poupon, you been warned
俺はグレイ・プーポンを持ってる、警告したはずだぞ
※「Grey Poupon」は高級マスタードのブランド。ロールスロイスに乗った金持ち同士がマスタードを貸し借りする有名なテレビCMがあり、ヒップホップにおける富の象徴的なメタファー。

'Cause all beef return well done filet mignon
なぜなら、すべてのビーフはウェルダンのフィレミニョンになって返ってくるからな
※「beef」はラッパー同士の抗争のこと。俺に抗争(牛肉)を仕掛けても、完全に焼き尽くして(well done)、最高級のステーキに変えて食ってやるという鮮やかなパンチライン。

The Don, smell of Dom on my breath as I
ドンだ、吐息からドンペリの香りを漂わせながら俺は

Yawn, (slow) when you hoes try to con a pro
あくびをするんだ(ゆっくりと)、お前ら娼婦がプロを騙そうとする時にな
※「con」は騙すこと。女がピンプを出し抜こうとしても、余裕であくびをしながら見透かしている。

As if you didn't know, Jay's about getting dough
知らなかったとは言わせないぜ、JAYは金を稼ぐことしか頭にない

Spitting flow like fine wine down your earlobe
上質なワインのようなフロウを吐き出し、お前の耳たぶに注ぎ込む

I'm smooth, but deadly like a pearl handled pistol
俺は滑らかだが、真珠のグリップのピストルみたいに致命的だ

Honeys hum in melody when I rub it like crystal
ハニーたちはメロディをハミングする、俺がクリスタルのように擦り上げる時にな

The proper etiquette when I drop the subject verb
俺が主語と動詞を落とす時の、適切なエチケットだ

Then the predicate with this rich nigga rhetoric
そして述語を、この金持ちのレトリックで続けるのさ

I'm solid gold, I rap like a mink stole
俺は純金だ、ミンクのストールのようにラップする

I stick pearl tongues your world'll never know
お前の世界じゃ絶対に知ることのない、真珠の舌を突き入れるぜ

From New York to Paris, the vocal style vary
ニューヨークからパリまで、ボーカルスタイルは変化する

From nice to deadly like a bad bag of D, now
ナイスなものから、質の悪いDの袋みたいに致命的なものまでな
※「bag of D」はヘロイン(Dope)の袋のこと。純度が悪く混ぜ物が多い粗悪なヘロインは使用者を死に至らしめる(deadly)ため、自分のラップの殺傷力の高さを例えている。

Notice the child swift like a Lotus
ロータスみたいに素早いガキに注目しな
※「Lotus」はイギリスの高級スポーツカー。

Focus on the loc', I be the greatest nigga that wrote it
このイカれた奴にフォーカスしろ、俺はこれを書いた史上最高の男だ
※「loc'」は狂った奴(loco)を指すスラング。

Return of the Jedi from Rio De Janeiro on the red eye
リオデジャネイロから深夜便でジェダイの帰還だ
※「red eye」は深夜に出発し早朝に到着する飛行機便のこと。

Yet I still feel the need to be fly
それでも俺はまだ、最高にイケてる(フライでいる)必要があると感じてる

I dip-dye when I'm rapping, then slide like satin
俺はラップする時に浸し染めし、サテンのように滑り込む

You know the black got white china in the brain cabinet
分かってるだろ、黒人は脳のキャビネットに白い陶器を持ってるんだ
※「white china(China White)」は非常に純度の高いヘロインのこと。自身の脳内に、最高級の陶器のような美しさと、純度の高い麻薬のような中毒性を併せ持つライムを隠し持っているというダブルミーニング。

I never cry, if I did, I'd cry ice
俺は絶対に泣かない、もし泣いたとしても、氷の涙を流すぜ
※「ice」はダイヤモンドのこと。

From my nigga Sauce, I hit you with this advice
ダチのソースからの、このアドバイスを食らわせよう
※「Sauce」はJAY-Zの長年の友人で、楽曲にたびたび客演や声で参加しているラッパー/ハスラーのSauce Moneyのこと。

Life's short, so play hard and stick hard
人生は短い、だから激しく遊んで、激しく突き刺せ

And the only time you love them is when your dick hard
そして女を愛するのは、お前のイチモツが硬い時だけにしろ
※女に情を移さず、セックスの対象(あるいは金づる)としてのみ扱えという、ピンプとしての冷酷な哲学。

[Interlude]

Whoooh! (That's cashmere baby)
Whoooh!(それはカシミアだぜ、ベイビー)

Nah, you know, that's just laid back man
いや、なぁ、これはただリラックスしてるだけさ

(Man, shit, J to the A to the Y to the Z)
(おい、クソ、J・A・Y・Zだぜ)

Cashmere baby
カシミアさ、ベイビー

(Motherfucking pimp, that's what he be)
(筋金入りのピンプだ、こいつはそういう奴さ)

Cashmere baby
カシミアさ、ベイビー

(It don't get no hotter than that, baby)
(これ以上熱いものはないぜ、ベイビー)

Sho' yo right, sho' yo right
間違いない、間違いない

(Them niggas know)
(あいつらも分かってるさ)

[Verse 2]

Check it out, check it out
聴いてくれ、聴いてくれ

Ghetto's Errol Flynn, hot like heroin
ゲットーのエロール・フリン、ヘロインみたいに熱いぜ
※「Errol Flynn」は1930〜40年代に活躍したハリウッド俳優で、数々の浮名を流した伝説的なプレイボーイ。

Young pimps is sterile when I pimp through your borough and
俺がお前らの区をピンプとして練り歩けば、若造のピンプどもは無力になる
※「sterile」は不妊、無菌という意味だが、ここでは男としての能力がない(不能・無力)状態を指す。

I gotta keep your tricks intact
お前の客を無傷に保っておいてやるよ
※「tricks」は売春婦を買う客のこと。俺の魅力で客を奪ってしまえるが、あえて残しておいてやるという皮肉。

'Cause I walk like a pimp, talk like a mack, man
なぜなら俺はピンプのように歩き、マックのように喋るからな
※「mack」はピンプ(ポン引き)と同義で、口八丁手八丁で女を操る男のこと。

The star player, the golden bar layer
スタープレイヤー、金の延べ棒を敷き詰める男

The sweet Ms. Fine Thing player, sho' yo right
愛しの最高の女(Ms. Fine Thing)を転がすプレイヤー、間違いないぜ

I'm game tight, so why should it change tonight?
俺のゲームはタイトだ、今夜になって変える必要なんてないだろ?

Go tell your peeps, dog, I'm lethal til it ain't right
お前の仲間に伝えてこいよ、兄弟、俺は理不尽なほどに致命的だってな

I pimp hard on a trick, look
俺は女から激しく搾り取るんだ、見な
※ここの「trick」は文脈的に騙すこと、あるいは売春婦自身(本来は客を指すが、ピンプのコンテクストではコントロールする対象全般)を指す。

Fuck if your leg broke, bitch, hop up on your good foot
お前の脚が折れてようが知ったこっちゃねえ、ビッチ、無事な方の足で飛び跳ねて稼いでこい
※James Brownのヒット曲「Get on the Good Foot」のフレーズをもじりつつ、怪我をした娼婦にすら休みを与えずに客を取らせるという、血も涙もない極悪なピンプのセリフで曲を締めくくっている。