Artist: JAY-Z
Album: Reasonable Doubt
Song Title: Friend or Foe
概要
JAY-Zの1996年のデビューアルバム『Reasonable Doubt』に収録された「Friend or Foe」は、ヒップホップ史に名を残すプロデューサー、DJ Premier(Preemo)との記念すべき初コラボレーション楽曲である。ホーンのループが印象的なミニマルかつ緊張感のあるビート上で、JAY-Zは自分のシマ(縄張り)に侵入してきたよそ者のドラッグディーラーを淡々と尋問し、脅迫するという、まるでマフィア映画のワンシーンのようなストーリーテリングを展開する。声を荒げることなく、理路整然とした冷酷な語り口で相手を追い詰めていく構成は、ストリートのボスとしての彼の揺るぎないペルソナを決定づけた。1分49秒という短いランタイムでありながら、高度なワードプレイと緊迫感を凝縮したこの曲は、後に『In My Lifetime, Vol. 1』で続編「Friend or Foe '98」が作られるほどの人気を博し、JAY-Zのストーリーテラーとしての並外れた才能を世に知らしめたクラシックである。
和訳
[Intro]
Check one, check two
チェック・ワン、チェック・ツー
Shit, you know what to do
クソ、どうすりゃいいか分かってるだろ
Preemo, Cold Crush when I give it to you
プリモ、俺が合図したらコールド・クラッシュだ
※「Preemo」はプロデューサーのDJ Premierのこと。「Cold Crush」は伝説的なヒップホップクルーCold Crush Brothersを指すとともに、「冷酷に叩き潰す」という意味合いを持たせ、プレミアのビートの強力さを称えている。
[Verse]
Friend or foe, yo? State your biz
味方か敵か、ヨォ?用件を言え
Ummm, you tendin' dough? Ah, there it is
うーん、金を稼ぎに来たのか?あぁ、やっぱりな
※「tendin' dough」は金を稼ぐこと。ここではよそ者がドラッグの密売(シノギ)をしに来たことを見抜いている。
Me, I run the show, oh, and these kids
俺か、俺がここを仕切ってるんだよ、あぁ、それにこのガキどもは
Don't like nobody comin' around here fuckin' with they dough for shit
よそ者がここに来て、自分たちのシノギを邪魔するのを絶対に許さない
※「fuckin' with they dough」は彼らの金儲けの邪魔をすること。
You enterprisin' though, and I like it
お前が野心的なのは確かだ、そこは気に入ったぜ
But fuck with the big dogs, yo? I gotta bite ya
だが大犬どもにちょっかいを出すってのか、ヨォ?なら噛み付くしかないな
Look, it's out of my hands
いいか、俺の手に負えることじゃないんだ
And you gettin' money 'round here, it's not in the plans
お前がこの辺りで金を稼ぐなんて、計画にはないんだよ
Don't hop yo' ass out of that van, head back to Kansas
そのバンから降りてくるな、カンザスに帰りな
※「head back to Kansas」は映画『オズの魔法使い』のドロシーのセリフ(ここはカンザスじゃない)に由来し、自分の居場所じゃない田舎へ帰れという警告。
I'm sendin' niggas back up in canvases
俺は奴らをキャンバスに包んで送り返してるんだ
※「canvases」は死体袋(ボディバッグ)のこと。自分の縄張りを荒らすよそ者を殺して死体袋で送り返しているという冷酷な脅し。
Chance is slimmer than that chick in Calvin Klein pants is
その可能性は、カルバン・クラインのパンツを履いてるあの女よりも細いぜ
※当時カルバン・クラインのモデルを務めていたケイト・モスの極端に痩せた体型(スーパーモデルブーム)を引き合いに出し、お前が生き残る「可能性(チャンス)」は極めて低い(スリムだ)という秀逸な言葉遊び。
Let me guess – they said it was money 'round here
当ててやろうか、この辺りは金になるって言われたんだろ?
And the rest is me stoppin' you from gettin' it, correct?
で、残りの問題は、お前が稼ぐのを俺が止めるってことだ、合ってるか?
Sorry to hear that, my guess is you got work at the hotel
そいつは気の毒にな、俺の推測じゃ、お前はホテルにブツを隠してるな
※「work」は販売用の大量のドラッグのこと。
I'll take care of that, you'll soon see
それは俺が処理しておく、すぐに分かるさ
Now, please give me the room key
さあ、その部屋の鍵を渡してくれ
You're twitchin', don't do that, you makin' me nervous
ピクピク痙攣してるぞ、やめろ、俺まで神経質になっちまう
My crew, well, they do pack, them dudes is murderers
俺のクルーはな、あぁ、銃を携帯してる、あいつらは人殺しなんだ
※「pack」は銃を携帯していること。
So, please, would you put your hand back in sight?
だからお願いだ、手を俺の見えるところに戻してくれないか?
※相手が隠し持った銃を抜こうとして手を動かした動作を、冷静に制止している緊迫感のあるシーン。
They don't like to see me nervous, you can understand that, right?
あいつらは俺が神経質になるのを見るのが好きじゃないんだ、理解できるだろ?
You draw? Better be Picasso—you know, the best
お前、描くのか?ピカソ並みじゃないとな、つまり最高レベルってことだ
※「draw」には「銃を抜く」と「絵を描く」のダブルミーニングがあり、絵を描くなら天才ピカソ(銃を抜くなら超一流の早撃ち)でなければ俺たちには勝てないという、ヒップホップファンの間で語り継がれる極めて有名なパンチライン。
'Cause if this is not so? Ah, God bless
もしそうじゃなかったら?あぁ、神のご加護を
You leave me no choice, I'll leave you no voice
俺に選択の余地を与えないなら、お前には声を残さない
※「声を残さない」=殺して永遠に沈黙させるという意味。
Believe you me, son
俺の言葉を信じな、坊や
I hate to do it, just as bad as you hate to see it done
俺だってこんなことしたくない、お前がやられるのを見たくないのと同じくらいな
Now calm your boys
さあ、お前の仲間たちを落ち着かせな
'Cause I'm findin' it a little hard to concentrate with all the noise
この騒音の中じゃ、少し集中しづらくなってきたからな
Get the point? I'll let you go; before you leave
分かったか?行かせてやるよ、だが立ち去る前に
I guess I ought to let you know, I need those keys
言っておくべきだろうな、その鍵が必要なんだ
And a promise you never, no matter the weather
そして約束しろ、どんなことがあっても絶対に
※「no matter the weather」は天候に関わらず、つまり「どんな状況でも」の意。
Ever ever ever ever ever ever come around here no mo' – ha-haha
二度と、二度と、二度とここには近づかないってな – ハ・ハハ
