Artist: JAY-Z
Album: Reasonable Doubt
Song Title: 22 Two’s
概要
1996年リリースのJAY-Zの歴史的デビューアルバム『Reasonable Doubt』に収録された本作は、彼の類まれなるリリシズムと遊び心が極限まで発揮された一曲である。プロデューサーのSki Beatzによるジャジーでレイドバックしたビートに乗せ、JAY-Zは最初のヴァース内で「To」「Too」「Two」という同音異義語を正確に22回使用するという高度なギミックを展開する。また、イントロとアウトロにはニューヨークのクラブカルチャーで伝説的なプロモーター、Maria Davisをフィーチャー。彼女が主催していたショーケース「Mad Wednesdays」でのライブパフォーマンスという設定で楽曲が進行し、A Tribe Called Questのクラシック「Can I Kick It?」のコール&レスポンスを引用して観客(リスナー)を巻き込んでいく。西海岸ヒップホップ全盛の時代に迎合する東海岸の同業者たちを鋭く批判しつつ、Roc-A-Fellaというインディペンデント・レーベルを通じた「黒人コミュニティの経済的自立」というコンシャスなメッセージをアウトロで提示する、非常にコンセプチュアルな重要曲である。
和訳
[Audience clapping]
(拍手喝采)
[Intro: Maria Davis]
Yo wassup everybody, this is Maria Davis
ヨォ、みんな調子はどう?マリア・デイヴィスよ
Mad Wednesdays, we here tonight to have a good time
マッド・ウェンズデーズ、今夜は思いっきり楽しむためにここに集まってるわ
(Yo! Start the show! Start the show!)
(ヨォ!ショーを始めろ!ショーを始めろ!)
Wait a minute; I see my man over there, Jay-Z
ちょっと待って、あそこに私の仲間、JAY-Zがいるわ
Jay-Z, Dame Dash let me hear that lil tape of yours, and it's phat
JAY-Z、デイム・ダッシュがあんたのあのテープを聴かせてくれたけど、最高(ファット)だったわ
※「Dame Dash」はJAY-Zと共にRoc-A-Fellaを設立したDamon Dashのこと。「phat」は90年代特有のスラングで「最高にイケてる」の意。
Why don't you come up here and kick a lil freestyle?
ステージに上がって、少しフリースタイルをカマしてくれない?
Put that champagne down, and kick a lil freestyle for me tonight
そのシャンパンを置いて、今夜は私のためにフリースタイルを披露してよ
[Intro: JAY-Z & Audience]
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
※A Tribe Called Questの1990年のクラシック「Can I Kick It?」の有名なコール&レスポンスを引用し、観客を煽っている。
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Y'all motherfuckers must've heard that Tribe Called Quest shit
お前ら、ア・トライブ・コールド・クエストのあの曲を聴いたことがあるに違いないな
Let's do it again!
もう一回いこうぜ!
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Well I'm gone... check this out
よし、いくぜ… 聴いてくれ
[Verse 1: JAY-Z]
Too much West Coast dick lickin'
ウェストコーストのケツを舐める奴らが多すぎる(1)
※このヴァースには「Too (to/two)」が正確に22回使用されるというギミックが仕掛けられている(ここが1回目)。当時、2PacやSnoop Doggら西海岸のアーティストがシーンを席巻していた中で、それに媚びてスタイルを真似る東海岸のアーティストたち(West Coast dick lickin')を痛烈に批判している。
And too many niggas on a mission, doin' your best Jay-Z rendition
そして必死になって、JAY-Zの最高のモノマネをしてる奴らが多すぎる(2, 3)
Too many rough motherfuckers, I got my suspicions
タフぶってるクソ野郎どもが多すぎる、俺は疑ってるぜ(4)
That you're just fish in a pool of sharks, nigga, listen
お前らはサメのいるプールで泳ぐただの小魚に過ぎないってな、なぁ、聞けよ
Too many bitches wanna be ladies, so if you a ho
淑女になりたがるビッチが多すぎる、だからお前が娼婦なら(5)
I'ma call you a ho, too many bitches are shady
俺はお前を娼婦と呼ぶぜ、いかがわしいビッチが多すぎるんだ(6)
Too many ladies give these niggas too many chances
多くの淑女どもが、男たちに何度もチャンスを与えすぎている(7, 8)
Too many brothers wannabe lovers don't know what romance is
恋人気取りの兄弟たちが多すぎるが、ロマンスが何なのか分かっちゃいない(9)
Too many bitches stuck up from too many sexual advances
あまりに多くの性的な誘いを受けて、調子に乗ってるビッチが多すぎる(10, 11)
No question; Jay-Z got too many answers
疑いの余地はない、JAY-Zは多すぎるほどの答えを持っているんだ(12)
I been around this block too many times
俺はこのブロックを数え切れないほど回ってきた(13)
Rocked too many rhymes, cocked too many nines, too
あまりに多くのライムをカマし、あまりに多くの9ミリ銃の撃鉄を起こしてきたんだ(14, 15, 16)
To all my brothers it ain't too late to come together
俺の兄弟たちへ、団結するのに遅すぎることはない(17, 18)
'Cause too much black and too much love, equal forever
なぜなら、溢れんばかりの黒人の誇りと愛が、永遠を意味するからだ(19, 20)
I don't follow any guidelines 'cause too many niggas ride mine
俺はどんなガイドラインにも従わない、俺のやり方に乗っかる奴らが多すぎるからな(21)
So I change styles every two rhymes
だから俺は2つのライムごとにスタイルを変えるのさ(22)
※ここで正確に22回目の「Two(Too/To)」が登場する。自身の圧倒的なスキルを証明すると同時に、誰にも真似できないように常にフロウを進化させていると宣言する完璧なパンチライン。
[Interlude: JAY-Z]
Hah, what the fuck
ハッ、なんてこった
That's 22 two's for y'all motherfuckers out there, nahmean?
そこのお前らのために22回の「Two」をカマしたぜ、分かるか?
Shall I continue? Check it out, what?
続けてもいいか?聴いてくれ
[Refrain: JAY-Z]
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Can I kick it? (Yes you can!)
カマしてもいいか?(あぁ、いいぜ!)
Well I'm gone... yo, yo, yo
よし、いくぜ… ヨォ、ヨォ、ヨォ
[Verse 2: JAY-Z]
Copped to reach my quota, push rock, roll up smooth like on ya
ノルマを達成するために買い付け、クラックを捌き、お前の上を転がるようにスムーズに巻き上げる
※「push rock」はコカインの塊(クラック)を密売すること。ハスラーとしての冷徹な日常の業務を描写している。
Whole groove like hold-up, swoll up
強盗のようにグルーヴ全体を支配し、ポケットを膨らませる
Too many faggot niggas clockin' my spendin'
俺の金遣いを監視してる弱虫野郎どもが多すぎる
Exercisin' your gay-like minds like Richard Simmons
リチャード・シモンズみたいに、お前らのナヨナヨした精神を鍛えてるんだな
※「Richard Simmons」は中性的なキャラクターとハイテンションな指導で一世を風靡したフィットネス・インストラクター。ヘイターたちの女々しさを揶揄するヒップホップ特有のネームドロップ。
If you could catch Jay right, on the late night
もし深夜に、上手いことJAYを捕まえられたとしても
Without the eight, right, maybe you could test my weight, right
38口径を持っていなければ、俺の器を試せるかもな
※「the eight」は.38口径の拳銃のこと。「test my weight」は度胸や実力を試すという意味と、ドラッグディールにおけるブツの重さ(スケール)を試すという意味のダブルミーニング。
I dip, spit quicker than you ever seen
俺は姿を消し、お前が見たこともない速さでライムを吐き出す
Administer pain, next the minister's screamin' your name
痛みを与えてやる、次はお前の葬式で牧師が名前を叫ぶ番だ
※「Administer(痛みを与える)」と「minister(牧師)」で踏む言葉遊び。
At your wake as I peek in, look in your casket
お前の通夜に顔を出し、棺桶の中を覗き込みながら
Feelin' sarcastic, "Look at him, still sleepin'"
皮肉たっぷりに言ってやるよ、「見ろよ、こいつまだ寝てやがる」ってな
※敵を葬った上で、その葬儀に平然と現れ死体を嘲笑うという、マフィオソ・ラップの真骨頂とも言える極悪な描写。
You never ready, forever petty minds stay petty
お前は一生準備不足だ、ちっぽけな思考はずっとちっぽけなままさ
Mine's thinkin' longevity until I'm seventy
俺の思考は70歳になるまでの長寿を見据えてる
Livin' heavenly, fuck, felony after felony, what?
天国のように生きるんだ、クソ、重罪に次ぐ重罪を重ねてな、文句あるか?
Nigga you broke, what the fuck you going to tell me?
お前は文無しじゃないか、俺に何を言おうってんだ?
[Outro: Maria Davis & JAY-Z]
Jay-Z, Jay-Z, now you know this is a phat track (aight)
JAY-Z、JAY-Z、これが最高のトラックだって分かってるわよね(あぁ)
Now this is comin' on your new album, on Roc-A-Fella Records in '96?
これが96年にロッカフェラ・レコードから出るあなたのニューアルバムに収録されるのね?
(No doubt, no doubt)
(間違いない、間違いない)
Well, it is definitely the bomb! But you know I do wanna say somethin' to you, I know you've been havin' a lot of problems with the law
ええ、間違いなく爆弾(最高)だわ!でもね、あなたに言いたいことがあるの。あなたが警察と色々トラブルを抱えてるのは知ってる
But I know you innocent, and I'm behind you 100%
でも私はあなたが無実だって分かってるし、100%あなたを支持するわ
Mad Wednesdays, Ruby King, DJ Ace, Dame Dash, Roc-A-Fella Records, we all behind you, you can come back any time!
マッド・ウェンズデーズ、ルビー・キング、DJエース、デイム・ダッシュ、ロッカフェラ・レコード、みんながあなたを支持してる、いつでも戻ってきて!
(Hah, thanks a lot)
(ハッ、ありがとな)
Wait a minute, wait a minute, wait a minute, wait a minute, Ace, turn that music down. I smell some reefer, now you see? That's why, our people don't have anything, because we don't know how to go in places and act properly
ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って、エース、音楽の音を下げて。マリファナの匂いがするわ。ほら、分かる?だから私たち黒人は何も手に入れられないのよ、場所をわきまえて適切に振る舞う方法を知らないからよ
※「reefer」はマリファナのこと。クラブでのマナーの悪さをたしなめ、黒人コミュニティの社会的地位の向上を訴えるマリア・デイヴィスのコンシャスなメッセージ。
(Hey, shut the fuck up!)
(おい、黙れよクソババア!)
Wait a minute, wait a minute, who told me shut the eff up? Who told me to shut the eff up? Get him out of here! I'm not gonna continue this show, until you throw him out! Get him out right now, then I'ma continue my speech!
ちょっと待って、ちょっと待って、誰が私に黙れって言ったの?誰が私に黙れって言ったのよ?彼をつまみ出して!彼をつまみ出すまで、このショーは続けないわよ!今すぐ彼をつまみ出しなさい、そしたら話を続けるから!
Thank you, he's out of here now, now like I was sayin'... we gotta build our own businesses, we gotta get our own record companies goin' like Roc-A-Fella Records, we got to put money back into our own community...
ありがとう、彼は今つまみ出されたわ。さて、さっき私が言っていたように…私たちは自分たちのビジネスを築かなきゃいけない、ロッカフェラ・レコードみたいに自分たちのレコード会社を立ち上げなきゃいけないの。お金を自分たちのコミュニティに還元していかなきゃいけないのよ…
※ヒップホップファンの間で高く評価されているアウトロ。Roc-A-Fella Recordsが単なるインディペンデント・レーベルにとどまらず、黒人コミュニティにおける経済的自立(ブラック・オウン・ビジネス)と富の還元の象徴であることを強調し、ストリートの現実とビジネスの理想を見事に繋ぎ合わせている。
